知恩院のライトアップへ行ってきました。もちろん、ひとりで。

2010年11月24日(水)


知恩院のライトアップへ行ってきました。もちろん、ひとりで。

デカい、とにかくデカい、知恩院
玄関にそびえ立つ国宝・三門からしてもう、デカい。同じく国宝・御影堂もまた、デカい。
大晦日に大勢の坊さんがバックドロップで打つ重文・大鐘楼も、やはり、デカい。
敷地自体も無茶苦茶に、デカい。ついでに、連日信徒さんを乗せてやってくる大型バスも、デカい。
とにかく巨大、とにかくスケールが違う、圧倒的存在感を誇る浄土宗総本山でございます。
ここまであからさまにデカいと、嫌われても不思議はありません。
ステイスモールを美徳とする京都では、嫌われても不思議はありません。
が、知恩院を悪くいう声はあまりないんじゃないでしょうか。むしろ「さん」づけで、親しまれてるような。
偽京都人の私もまた、知恩院が嫌いではありません。というか、結構、好きです。
三門の前を通れば不思議と心が温まり、時間があれば御影堂へ立ち寄ったりもします。
徳川が朝廷を牽制する気満々で再建した、キナくさいといえばかなりキナくさい、巨大伽藍。
似たような目的で築城された二条城には滅多なことがなければ立ち寄らないのに、
知恩院には不思議と親しみを感じるのです。これは一体、何故なのでしょう。
法然上人の深き慈愛が、徳川の思惑など軽々と超え、我々を導いて下さってるのでしょうか。
それとも単に、片方は入城券が必要で、もう片方は参拝無料だからでしょうか。
そのあたりを確かめるために、というのは大嘘ですが、
とにかく割と高価な拝観料をふっかける紅葉たけなわな秋の夜間拝観へ行ってきました。
普段は無料の境内を全域有料化して行われるライトアップ、そのお値段、実に800円なり。
無料でなくとも、知恩院は、法然上人は、慈愛の光を見せてくれるのでしょうか。
 (2012年付記:知恩院は現在大修理中。記事内の友禅苑以外は、当分拝観できません)


うっすらとライトアップされた、日本最大級の木造門、三門。
「空」「無相」「無願」と3つの解脱の境地を表すため、「山」ではなく「三」表記になってます。
が、もちろん、門の前では悟りもひったくれもない観光客が写真を撮りまくってます。
ちなみに、ライトアップでタダ見できるのは、ここだけです。


ライトアップの受付があるのは、三門の横、普段の拝観入り口手前の特設テント。
お値段は先述の通り、800円。で、800円で境内・方丈庭園友禅苑すべてが拝観可能。
ちなみに、昼間の方丈庭園・友禅苑共通拝観料は、500円。お得なような、高価いような。
早くも雰囲気出してる女人坂をちょこっと登り、まずは友禅苑を拝観します。


友禅苑。友禅とはもちろん友禅染とか京友禅の、友禅
知恩院前で暮らしていた友禅の始祖・宮崎友禅斎の、生誕300年を記念して作られた庭園です。
といっても友禅斎、生年月日などのプロフはほとんど不明だそうですが。昭和29年製。


庭園は、東山の湧き水を引き入れた補陀落池と、枯山水の庭園・鹿野苑で構成されてます。
補陀落とは、観音菩薩が降り立ったとされる、インド南方の海上にある山。
鹿野とは、釈迦が悟りをひらいた後、初めて説法を行った聖地・サルナートの別称。
まさに浄土を表現した庭なわけですが、もちろん拝観者の大半は紅葉しか見てません。


仏教の四大聖地のひとつである、サルナート
「鹿野苑」の名は、その地に多く住む鹿を、釈尊が施鹿林と称して保護したことに由来するとか。
その慈愛を、法然上人が最初に念仏を広めた場所で表現したのが、この庭というわけです。
深い、そして暖かい。でも、もちろん拝観者の大半は紅葉しか見てません。


補陀落池には、見事過ぎる紅葉を背負って聖観音像が、屹立。
高村光太郎の親父・高村光雲作の観音さんが、民衆を浄土ではなく茶屋へ誘っております。
1杯500円で営業してる茶屋では、兄ちゃんが襖に隠れて呼び込み中。
苑内には茶室が2つありますが、お茶を出してるのは多分、「華麓庵」の方。
大沢商会京電の創立者である大澤善助の息子・大沢徳太郎の別邸から移築したものです。


紅葉を背に、漆黒の彼方を見据える、宮崎友禅像。
正面から見ると、目つきが異常にぶっ飛んでて怖かったりします。
本当に来歴が不明な人だそうで、そもそも友禅染には一切関与してないという説さえあるとか。


友禅苑を出て、女人坂をちょこっと登った真葛庵では、それとなく行灯を展示。
男坂との合流地点では、おばちゃんにしか見えない13歳の頃の法然上人=勢至丸がお出迎え。
男坂、ちょっと近づくと係員の兄ちゃんがすぐに「危ないですので」うんぬんと声をかけてきます。
もちろん、危なくなくてもしんどいので、帰りの際も通るのは女人坂です。


滑走路に着陸する飛行機のような気分になりながら、行灯の中を御影堂へ。
このあたりは、普段は無料で入れる場所。そこが、いかに金をとれる状態になってるのでしょうか。
左のでっかいのはもちろん、御影堂。右奥のちっこいのは、中で傅大士がピースしてる、経蔵


御影堂、夜でも中に入ってお参りすることができます。
係員の女の子がこれまたエンドレスに「ようこそお参りくださいました」と、靴の袋を配布中。
堂々と葵の御紋が刷られた幕越しに、堂々と聳え立つ多宝塔aka七百五十万霊塔を眺めるの図。


御影堂から見て左手奥にある納骨堂の前には、紅葉が映える庭あり。
池に小さな太鼓橋がかかる、立派なものです。タダでは入れる時は、案外意識しないんですけどね。
ただ、建物の迫力は相変わらず凄いですが、ライトアップ自体は、地味。


地味とはいえ、友禅苑+方丈庭園が夜料金で100円ずつアップとしたら、700円。
となれば、ここの料金は100円。そう思えば、慈愛を感じませんか。感じませんか、ああそうですか。
あ、でも知恩院のライトアップは毎年内容が変わるので、次回以降はもっと凄いかも知れません。
(2012年付記:とか思ってたら、前述通り御影堂は修復で拝観中止に)


知恩院のライトアップ、いよいよ大詰めの方丈庭園でございます。
徳川将軍が大名との謁見などを執り行うために作られた、パブリックスペースたる、大方丈。
対して将軍上洛時の宿として使われたという、プライベートスペースたる、小方丈。
その2つの重要文化財の中から見ることを想定して作られた庭園でございます。


でも平民たる我々は、建物の中から見ることは許されないのでございます。
なので、地べたから眺めるのみでございます。なので、かような無作法もまかり通るのでございます。
しかしそんな民草にも、池の紅葉は慈愛の微笑みを浮かべるのでございます。
京都市指定名称。しかし、公開されたのは、1990年。それまでは、長く非公開だったそうです。


庭園は、方丈と共に江戸時代初期に作られています。
作庭を担当したのは、小堀遠州の高弟であった妙蓮寺石立僧・玉淵とも伝えられているとか。
大方丈の庭は東山の裾を利用した池泉回遊式庭園、
小方丈は知恩院所有の 『阿弥陀如来二十五菩薩来迎図』枯山水で表現したもの。


桂離宮の作庭にも参画したかも知れないという玉淵が参画したかも知れないという、庭。
伝聞形ばかりのどうしようもない物言いで恐縮ですが、とにかく、美しい。ちょっと、狭いけど。
奥の方には、スポンサーとしてこの庭を作らせた徳川家康・秀忠・家光の霊を祀る権現堂があります。
拝んでるのは、最近流行りの歴女でしょうか。あんまりそうは見えないけど。


で、帰ります。
あ、方丈の中は団体だと入れるそうですよ。もうすぐ修復に入るらしいけど。
(2012年追記:もう、入った。正確には御影堂の工事のため、無期限拝観休止)
800円の出費を超えて輝く法然上人の慈愛、あなた見出すことはできたでしょうか。
私は、う~ん、修行が足りないようです。何の修行か、わかりませんが。

平日だったからか、あるいは800円がコスパを意識させるのか、若者客は少なめです。
カップル率こそ高いですが、無駄にはしゃいだり色気を吐き出したりする奴は、あまりいません。
あ、でも何故か、地元DQNカップル率が高かったように思います。
「デカいもん建てて公家にハッタリかませ」という精神が、京都のDQN魂を刺激するのでしょうか。
それとも単なる偶然、この日がたまたまそうだったのでしょうか。
それをのぞけば、雰囲気はごくごく、落ち着いたもの。
単独男はほとんどが、カメラマン。男性グループといえば、出張らしきサラリーマンたちぐらい。
ひとりで普通に観光で来た独男は皆無ですが、客の狂騒よりも景観が全然勝ってるので、
よほど濃厚な被害妄想に囚われてない限りは紅葉と庭をじっくり楽しめるのではないかと。

そんな知恩院ライトアップ。
好きな人と見れば、より紅葉なんでしょう。
でも、ひとりで見ても、紅葉です。


【客層】 (客層表記について)
カップル:3
女性グループ:1.8
男性グループ:0.7
混成グループ:0.2
修学旅行生:0
中高年夫婦:2
中高年女性グループ:0
中高年その他:2
単身女性:0.2
単身男性:0.1

【ひとりに向いてる度】
★★★
門前にたむろする客からイメージされるような
色気のプレッシャーは、さほどない。
細かいことを気にしなければ、
ひとりでも落ち着いて拝観することができる。
ただ、細かいことを気にしたら、
それほど居心地がいいわけでもない。

【条件】
平日水曜+紅葉最盛期 18:20~20:00

知恩院
東山区林下町400
通常拝観 9:00~16:30
(御影堂と方丈庭園は拝観休止中)

京阪電車 祇園四条駅下車 徒歩約10分
阪急電車 河原町駅下車 徒歩約20分
地下鉄東西線 東山駅下車 徒歩約8分
京都市バス 知恩院前下車 徒歩約5分

総本山知恩院 – 公式

友禅苑 – 総本山知恩院

国宝・御影堂 大修理 – 総本山知恩院

知恩院 – Wikipedia