詩仙堂へ紅葉を見に行ってきました。もちろん、ひとりで。

2010年11月28日(日)


詩仙堂へ紅葉を見に行ってきました。もちろん、ひとりで。

仙人。独男なら、誰もが憧れるものでしょう。
それも、ただ現世から逃げるのではなく、やることやってから隠居した仙人なら、尚更。
おまけに、隠居してからも「実は隠密で・・・」と噂されるような危険な存在感を放ってるとなれば、
独男のみならず独女からも憧れの目で見られようというものです。
詩仙堂を建てた石川丈山は、別に自分が仙人だといってたわけではありません。
元々は徳川家康から厚い信頼を受け、大坂夏の陣では一番槍の功を競うほどの、武士。
それが30前後ですっぱり辞職、母を養うため仕官したのち、一乗寺に凹凸窠なる草庵を建て隠棲。
庵には中国の詩家36人の肖像を掲げた「詩仙の間」を設け、「詩仙堂」の名はそこから生まれました。
仙人は、詩家の方だと。しかし、多くの人はそんな丈山にこそ「仙」なるものを見出します。
リア充な武士キャリアを断ち、30年も清貧を旨とする隠遁生活を続けただけでも、かなり独にして、仙。
しかも学問に長け、漢詩・隷書・作庭などもこなし、同時代の教養人とも幅広い交流を持ち、
おかげで幕府のスパイ疑惑も招いてしまう。もう、完璧です。何が完璧かわかりませんが、完璧です。
独男好みの、丈山。そんな丈山が作った、独男好みの、詩仙堂。
しかし今、季節は、晩秋。京都に「独」も「仙」もない観光客が最も押し寄せるシーズン。
本来は渋好みのはずの詩仙堂にも、「穴場」という言葉に踊らされた人民が大量にやってきて、
この静寂に満ちた狭い草庵を満員電車のごとき肉まみれ空間に変えてしまうのでした。


人間だらけの小有洞 = 入り口。はっきり言って、混んでます。
が、混んでるのはここからではなく、ここへ至るまでの坂道の時点で既に、混んでます。
道が人間で埋まってるわけではないですが、特攻の車がバンバカ通るため、結構、混雑。
もちろん、小有洞を過ぎても、受付で拝観料払う時も、人間だらけです。


「梅関」の扁額が揚げられた老梅関を、チューブで押し出されるようにくぐる。
扁額をじっくり見ながら、老梅が生えてたというかつての姿に思いを巡らせたいところですが、
大量の人間に前後を挟まれてるので、立ち止まることさえままなりません。
そんなコンフュージョンな状況を冷ややかに見つめる、門右手にある白砂の庭。


で、詩仙堂でございます。中は撮影禁止ゆえ、しばし外観をお楽しみ下さい。
その割には、丈山が「凹凸窠十境」と見立てた本玄関・蜂要も嘯月楼も写ってませんが、
やはり大量の人間に前後を挟まれてるので、立ち止まることさえままなりません。
人いなさそうですが、目の前は立入禁止域、黒くつぶれてるところには人間が密集してます。


長身の丈山が、巣へ入る蜂のように背をかがめて通った、低めの玄関・蜂要。
その写真が全然撮れずに、玄関脇の「死生大事」とその向こうの人間たちを撮るの図。
死なないこと生きのびること、それが一番大事。靴脱いであがりこみ、「詩仙の間」へ向かいます。


で、「詩仙の間」。撮影禁止のため、漆黒の闇、ご了承下さい。
中国の名詩人36人を、友人だったという儒学者・林羅山と喧嘩までしながら厳密に選び抜き、
肖像画を探幽尚信の狩野ブラザーズに描かせ、そして詩文は丈山自らが隷書で決め、
並べ方も熟考を重ねられたという、間。まるで漢詩の「俺MIX」状態です。
その素晴らしさをじっくり堪能したいところですが、次から次へと人間がなだれ込んでくるので、
やはり立ち止まることさえままなりません。


「詩仙の間」を抜けると、書院。そして、この有様です。


この有様です。、その2。


この有様です、その3。


この有様です、その4。


この有様です、その5。


この有様です、番外編・本堂出口。
靴を踏んだり踏まれたり、蹴りを入れたり入れられたりしないよう、気をつけましょう。


この有様です、その6。


この有様です、その7。


この有様です、その8。
だいたい、こんな感じであります。詩仙堂の「仙」は、厳しい。かくも、厳しい
しかしこの厳しさはひょっとすると、「仙」を極めた丈山の厳しさそのものなのかも知れません。
現世でやることやった上で隠棲し、隠棲中も厳しく己を律していたという丈山。
何となく仲間と思って擦り寄ってきた独男たちを、その厳しさで蹴散らしてるのかも知れません。


この有様です、ダメ押しでその9。
そのダメ押しの上・嘯月楼に、武士丸出しの鋭い眼光を放つ丈山が、立ってる気がします。
「仙」を舐めんなよ、と。「独」を舐めんなよ、と。戦わない奴に「上がり」はないぞ、と。
世を拗ねてるだけの現代の独男たちへ向け、そんなことを言ってる気がします。


しかし丈山、詩仙堂の評判が立ち来客が増えると、トンズラを試みたこともあるとか
「煩わしさにたえられぬから故郷に帰りたい」(淡交社 『京の古寺から・詩仙堂』 )と。
煩わしさどころではない現代の混雑加減を見て、丈山はどう思うのでしょうか。


で、帰ります。疲れた、人間に疲れた。
そういえば、鹿おどしの音が聞こえませんでした。秋期は休業なんでしょうか。
あるいは、鳴ってるけど人の声が大き過ぎて、聞こえないんでしょうか。

客層は、ごく一般的な観光地という感じ。
中高年メインに若者が混じる、ベッタベタなライン。
しかし、無茶苦茶混んでる割に雰囲気は落ち着いてます。
マナーの荒れは特になく、ひとりでいても意外なほどプレッシャーは感じません。
ただ、まともに拝観するなら、やはり紅葉シーズンは外すべきでしょう。

そんな秋の詩仙堂。
好きな人と観れば、より紅葉なんでしょう。
でも、ひとりで観ても、紅葉です。

【客層】 (客層表記について)
カップル:1
女性グループ:1
男性グループ:0
混成グループ:1
修学旅行生:0
中高年夫婦:2
中高年女性グループ:2
中高年団体 or グループ:2.5
単身女性:0.3
単身男性:0.2
【ひとりに向いてる度】
★★
カップル率は低く、色気のプレッシャーは少ない。
しかし、狭いこともあって、人圧は超強烈。
加えて、ある種の幻滅感も、超強烈。

【条件】
日曜 + 紅葉盛り過ぎ 13:40~14:10

 

詩仙堂
京都市左京区一乗寺門口町27
9:00~17:00

京都市バス or 京都バス
一乗寺下り松町下車 徒歩約10分
叡山電車 一乗寺駅下車 徒歩約15分

京都 詩仙堂 丈山寺 – 公式

詩仙堂 – Wikipedia