法界寺の裸踊りを見に行ってきました。もちろん、ひとりで。

2011年1月14日(金)


法界寺の裸踊りを見に行ってきました。もちろん、ひとりで。

褌一丁で歓喜に沸く男たちの姿。
それは、男子の草食化が嘆かれる現在でも、決して珍しいものではありません。
神事、仏事、祭り、その他その他。季節の折々に、全国からそんなニュース映像はやってきます。
しかし「裸踊り」で検索をかけると、最初に出てくる仏事は、この法界寺の裸踊り。
あとは、どっかの自称宇宙人が国会の中で裸踊りをやらかしたとか、
結婚式の余興で裸踊りを試みる馬鹿をどう止めたらよいかとか、そんなしょぼい話ばかりです。
野趣溢れるワイルドな裸踊りの躍動を伝えるページは、意外と見当たりません。
どうしたんだ。いったい、どうしたんだ、裸踊り。
京都の比較的マイナーな祭事に天辺を獲られるほど、弱体化したのか、裸踊り。
それともいわれのない偏見により、グーグル八分でも喰らってしまったのか、裸踊り。
いや、でも、ひょっとすると、ただ裸の男が踊るだけの裸踊りは、案外珍しいのかも知れません。
護符や宝木を奪い合うわけでもなく、火の粉を浴びるわけでもなく、滝に打たれるわけでもなく、
ただただ大量の男たちが下帯姿でお堂に現れ、ただただ踊る。
修正会の精進潔斎と豊穣祈願、そしてある種のセックス・アピールをピュアな形で見せるその姿は、
本尊・胎内仏が今もディープな子宝信仰を集める「乳薬師」こと法界寺にふさわしいのみならず、
グーグルの評価通り、やはり日本の裸踊りを代表しているものなのかも知れません。
自分でも何言ってるかよくわかりませんが、とにかく裸踊り、行ってきました。


18時前に着いた、法界寺境内。
本堂の重文・薬師堂と、鎌倉初期の建築である国宝・阿弥陀堂が出迎えてくれます。
最澄作と伝わるミニ仏を内蔵し、子宝&授乳にご利益のある本尊・薬師如来立像は、薬師堂に安置。
裸踊りは、右側の阿弥陀堂・広縁にて厳修。国宝で、裸踊りを行うわけです。


18時前では、裸踊りは何ら始まる気配なし。
その代わりというか、庫裏にある参拝入口手前では粕汁接待をやってました。
もちろん、頂きます。奉仕の方が煮詰まらない火加減で焚いた粕汁は、絶妙の味加減。
踊り開始は、19:30。それまで時間があり過ぎるので、しばし夜の日野をうろついてみましょう。


日野は、かの親鸞の生誕地。というかそもそも、親鸞は日野家の子。
真宗が近所に誕生院を建て、宗派は違いますが法界寺の再興にも手を貸してます。
加えてこのあたりは、かの鴨長明『方丈記』を記した方丈庵を結んだ地・外山にも、近し。
跡地は現在も山の中なので、夜は真っ暗です。裸踊りのついでに訪問する人は、ご注意下さい。


19時頃に法界寺へ戻ってみると、大混雑になってました。
寺前には露店が立ち、そこへ路線バスと見物客がのたくり、ひしめいています。
ちなみに、バス停は目の前にありますが、最寄り駅・地下鉄石田駅からはかなり遠いです。
さらにちなみに、バス停の名前は『法界寺前』ではなく、『日野薬師前』。ご注意下さい。


そこら中で子供が接待の粕汁を飲んでいる、法界寺の山門周辺。
正式名称、東光山法界寺。しかしバス亭が示す通り、「日野薬師」の呼称の方がよりメジャーです。
「日野のお薬師さん」あるいは「乳薬師」と呼ばれるなど、国宝を抱える割に、テイストは庶民的。
観光客が少なく運営は大変らしいですが、ゆえにディープさが残ってるともいえます。


開始10分前の境内。人、いっぱいです。
裸踊りは、元旦から14日間行われる修正会の結願の日に催される祭事。
なので右奥の薬師堂では19時から修正会法要が行われますが、注目する人はさほど、なし。
大半の人は、阿弥陀堂の裏に設置された楽屋を見つめ、そこから飛び出してくる男たちを待ってます。


そして19:30、下帯姿の少年たちが現れました。
井戸水を頭からかぶる水垢離で精進潔斎をした少年たちは、阿弥陀堂の広縁へ突進、
五穀豊穣・万民快楽・諸願成就を祈りながら裸体をもみ合わせ、頭上高くで両手を打ち合わし、
帰依を願い「ちょーらい(頂礼)」と連呼します。裸踊りの始まりです。


ちょーらい、ちょーらい。


ちょーらい、ちょーらい。


ちょーらい、ちょーらい。


ちょーらい、ちょーらい。


ちょーらい、ちょーらい。
1分ほど踊り、1分ほど休憩。これを7~8セット、繰り返します。トータルで10分ちょっと。
●●先生~っ」と連呼する子供がいたりと、実に地元テイストあふれる元気なものでありました。
写真では全然わかりませんが、少年たちの全身から立ち上る湯気、もの凄いです。


子供バージョンが終わり、20時からは、大人バージョン。
大人といっても、かなりハードアダルトというか、寒さが骨身に沁みそうな方々が奮闘されます。


ちょーらい、ちょーらい。


ちょーらい、ちょーらい。


ちょーらい、ちょーらい。
そういえば、前列の鬱陶しい報道やカメラマン、帰ったな。何故だ。


ちょーらい、ちょーらい。


ちょーらい、ちょーらい。
セット構成は、子供バージョンと同じ。で、10分ほど踊って、終了。
踊りに使った下帯は、妊婦が腹帯にすると安産の御利益があるとか。豊穣であります。


19時から続いてた薬師堂の法要は、裸踊りが終わるのと共に終了。
坊さんたちが縁側へ出てきて、ぐるぐる回りながら周囲に集まる民へ加持、結縁していきます。
で、帰りました。帰る途中、オムライス屋スーに寄りました。スーっとしたオムライスを、食いました。

客層は、圧倒的に地元テイスト。
いわゆるカップルは、ほぼ皆無。いても、地元の夫婦と区別がつきません。
メインは中高年家族連れ・若い子供連れ。身内や知り合いが踊るのを、見に来てる人たちです。
子供、極めて多し。完全に普通の縁日状態で、そこら中を走りまわってます。
観光客は、絶無。興味本位な若者や物好き系な奴もいないことはないですが、地味。
単独のほとんどはカメラマン男、あるいはなんちゃってカメラ老人。

そんな法界寺の裸踊り。
好きな人と見たら、よりちょーらいなんでしょう。
でも、ひとりで見ても、ちょーらいです。

【客層】 (客層表記について)
カップル:0.5
女性グループ:0
男性グループ:0
混成グループ:0
修学旅行生:0
中高年夫婦:2
中高年女性グループ:0.5
中高年団体 or グループ:5
 (地元の小中学生・若い家族連れなど含む)
単身女性:1
単身男性:2

【ひとりに向いてる度】
★★★
色気のプレッシャーはもちろん、
観光ハイなどの鬱陶しさは、全くない。
ただ、再生産系のプレッシャーと、
地元テイストゆえのアウェー感は、強めかと。

【条件】
金曜 17:50~20:20

法界寺
京都市伏見区日野西大道町19
通常拝観 9:00~17:00

京阪バス 日野薬師下車すぐ
市営地下鉄 石田駅下車 徒歩約16分

法界寺 – Wikipedia

法界寺 – 京都観光Navi