伏見万灯流しへ行ってきました。もちろん、ひとりで。

2011年8月6日(土)


伏見万灯流しへ行ってきました。もちろん、ひとりで。

伏見の街に漂う、「死」の匂い。
とか言うと伏見の人に怒られそうですが、でも、夜の伏見に濃厚なる何かを感じることは、否めません。
特に、京町通とか。京町通から、ビデオ1観月橋店へ行くあたりとか。
不埒な物件をカバンに抱え、不穏な闇に怖気つきながら、あの辺を歩く方も多いのではないかと。
洛内にも同様の「匂い」はありますが、ここのはテイストが違うというか、もっともっと、生々しい。
その生々しさは、きっと、鳥羽伏見の戦いに由来するものでもあるんでしょう。
鳥羽伏見の戦い。明治元年に、新政府軍と旧幕府軍が洛南でまき起こした、内戦。
鳥羽、そしてここ伏見、さらには私の地元の八幡までを戦場とした市街戦が繰り広げられました。
戦争やってる当事者はもちろんバンバカ死んだわけですが、一帯の建物も燃えまくり、焼けまくり。
はっきり言って、迷惑です。戦争当時、私は生まれてませんが、結構、迷惑です。
かつて壮麗を極めたという石清水八幡宮山麓の高良神社・頓宮などは、この戦乱で焼けました。
後の神仏分離により目ぼしい伽藍が破却の憂き目に合う八幡さんにあって、
これらの山麓の建物は後世、良い観光資源になってくれたはずです。ああ、もったいない。
「戦争なら、よそでやれ」という感情は、幕末維新に戦災を蒙ったエリアに共通してるのか、
鳥羽伏見の戦いの戦没者を慰霊するこの「伏見万灯流し」も、始まったのは、2004年。
実に戦後140年を経て、やっとこさ、市民からも慰霊してもらえるようになったのであります。


万灯流しは、寺田屋の前にある寺田屋浜で、放流が行なわれます。
万灯流し、献灯受付中。一基、1000円也。あ、観るだけならタダですよ。
寺田屋って、あの寺田屋です。坂本龍馬がどうたらこうたらの。
玄関の標識に思いっきり「坂本龍馬」と書いてありますが、別に龍馬が住んでるわけじゃありません。


放流を待つ、五色灯篭。何とも風情のあるビジュアルであります。
が、見ればわかる通り、観光向けな現在の形に整備されたのは、割と最近です。
港としての機能を失って以後、このあたりは長くドブ川のような状態が続いてたとか。


まだ明るいにも関わらず、結構な人出の宇治川派流。
相当早くから陣取ってるカメラマンもいます。どうでもいいことですが、ここ、すごく蚊が多いです。


放流の前に、御香宮神社の神職による祝詞奏上が行なわれます。
そういえば御香宮は、新政府軍の本営。あそこから、敵方の伏見奉行所をボコボコに撃ちこんだとか。
ボコボコにされ過ぎた伏見奉行所は、地上から消滅。
「京町通からビデオ1観月橋店へ行くあたり」は、ちょうどその辺にあたります。


などとどうでもいいことを言ってるあいだに、放流が始まりました。
流す係員の人たちは、胸までどっぷり漬かりながら、手作業で燈篭を流していきます。


まだ全然明るい空を背景に流れていく、幽玄かつ幻想的な灯篭。


奥でちらっと月桂冠の酒蔵を見ながら流れていく、幽玄かつ幻想的な灯篭。


月桂冠を避けるように片側へ寄り切って流れる、幽玄かつ幻想的な灯篭。


時折、係員からつっかえ棒で押し出されながら流れる、幽玄かつ幻想的な灯篭。


月桂冠にちょっと心を許して寄り始めた、幽玄かつ幻想的な灯篭。


露出補正-1で撮ると、それなりにそれらしい絵にはなってくれるけど、
「真っ暗でどこ流れてても一緒だろ」とも思える、幽玄かつ幻想的な灯篭。


逆流しないよう、幽玄かつ幻想的な係員に押し返される、最後尾の幽玄かつ幻想的な灯篭。


思いを乗せてどこまでも流れていく・・・と、宇治川へ入ってゴミと化すので、
十石船乗り場付近で幽玄かつ幻想的な係員に回収される、幽玄かつ幻想的な灯篭。
万灯流し、以上であります。


今宵も特にイベントに参加する気はなさそうな、寺田屋。
前の道は、完全に生活道路化してます。夜は、道を見切ってるがゆえにブッ飛ばす車、特に多し。
ボ~っと写真なんか撮ってると轢き殺されるので、気をつけましょうね。


十石舟の帰りには大中へ寄りましたが、となれば、大黒にも寄らないわけにはいきません。
大黒ラーメン。大中と同じく、異常な安さと異常な美味さを誇る、伏見の名店です。
頼んだのは、ラーメン並470円と、炒飯220円。超常現象のような価格であります。


安いですが、ここのラーメンはマジで、しっかりと、美味いです。もちろん、炒飯も。
おまけに、割引券を必ずくれます。なので、これだけ食っても会計は600円を割ったりします。
伏見、何かおかしくないか?

伏見万灯流しの客層は、ほとんど地元メイン。
新撰組のファンみたいなのがいっぱいいるかと思ったら、あまりその筋の方は見かけませんでした。
鳥羽伏見の戦いの慰霊がどうとかいうより、地域の灯篭流しとして定着し始めてる感じでしょうか。
カップル率はどうということはなく、いても完全も地元テイスト。他の層も概ね、そんな感じ。
単独は、男女ともカメラマン以外はあんまりいませんでした。

そんな、伏見万灯流し。
好きな人と行ったら、より伏見なんでしょう。
でも、ひとりで行っても、伏見です。

【客層】 (客層表記について)
カップル:1
女性グループ:1
男性グループ:若干
混成グループ:若干
子供:2
中高年夫婦:2
中高年女性グループ:1
中高年団体 or グループ:3
単身女性:微量
単身男性:若干
【ひとりに向いてる度】
★★★
色気や人圧などのプレッシャーは、ほとんどなし。
ネイティブ主体だが、アウェー感もさほどない。
ただ、単純に蚊が多い。

【条件】
土曜 17:45~21:00


伏見万灯流し
毎年8月第1土曜日に開催
 (2012年度より事業は伏見観光協会へ移管、
                 詳細は同協会HPへ)

京阪電車 中書島駅下車 徒歩約5分
近鉄電車 桃山御陵前駅下車 徒歩約12分
JR奈良線 桃山駅下車 徒歩約20分

公式 – NPO法人伏見観光協会