清水寺での盂蘭盆会・六斎念仏奉納へ行ってきました。もちろん、ひとりで。

2011年8月7日(日)


清水寺での盂蘭盆会・六斉念仏奉納へ行ってきました。もちろん、ひとりで。

盂蘭盆会。平仮名だと、うらぼんえ。いわゆる、お盆のことであります。
なのにトップ画像は、イカついお面の方が刀を構えてて、物騒この上ないのは、何故。
それにそもそも、清水寺って念仏の寺だったっけ。
そう思っていただけると嬉しいんですが、これはいわゆる京都の六斎念仏であります。
元来は殺生禁断や謹慎を定めた「六斎日」に、念仏を修するところから始まった、六斎念仏。
それが時代を経て踊り念仏へ変容し、さらに「見せる」ことを意識し始めて、芸能化。
京都は最先端の芸能が集結する場でしたから、一旦芸能化するとその流れは止まらず、
長唄・地唄・歌舞伎などを貪欲に吸収、あげくセリフ付きの狂言まで取り入れてしまったという、
特殊過ぎる発展をした民俗芸能というか、信仰行事というか、まあそんなんであります。
現在も市内のあちこちに保存会があり、お盆を中心に奉納演舞を行なってますが、
「清水の舞台」を文字通りの桧舞台とした、こちらの清水寺盂蘭盆会奉納も、そのひとつ。
この舞台での奉納は、かつて六斎の最高の栄誉だったそうで、それを平成十年に復活。
中堂寺六斎会が、牛若丸と弁慶の対決を描いた『橋弁慶』を上演することでも知られます。
そう、トップ画像のイカついマスクマンは、弁慶なのです。


えとですね、清水寺ってね、山の上にあるんですよ。知ってましたか。
くそ暑い中を山登りするとね、体力が失われるわけですよ。なので、まずは腹ごしらえです。
中華そばで有名な『味の小松』で、冷麺。900円ぐらいでしたでしょうか。
外の二年坂は賑やかですが、店の中はひっそりしてます。


冷麺パワーで、何とか上りきった清水坂&仁王門前。
夏の閑散期を何とかしようと仕組まれた「京の七夕」の短冊が、あちこちで揺れてます。
仕掛けのかいあってか、とんでもない暑さにもかかわらず、清水坂を上る者、多数。


300円払って入った、清水の舞台上。まるで市民プールのような芋洗い状態です。
左側で舞台に座り込んでるのは、もちろん六斎の登場を待つ人たちであります。


15時ジャスト、まずは本堂の中で上鳥羽の橋上鉦講中の奉納が始まります。
上鳥羽の橋上鉦講中は、「念仏へ帰れ」派というか、とにかく念仏主体の念仏六斎です。
六斎念仏の、念仏六斎。大して芸能全開なのは、芸能六斎。


シンプルな読経と太鼓で、じっくりと念仏を唱えていきます。
本堂の中では、東日本大震災の慰霊が行なわれてました。


15時半あたりからは、舞台を「舞台」へ移して、中堂寺六斎念仏の奉納が始まります。
こちらは、バリバリの芸能六斎。人数も一気に増えて、老若男女数十名が、舞台に集結。
頭目らしきおっちゃんが大太鼓を「ドーン」と一発決めるだけで、場はもうカーニバル状態へ。
『発願』 『六段』 『すがらき』 『石橋』 と、演目は進みます。


そして出ました、『橋弁慶』。子役の牛若丸と、怖過ぎる面の弁慶の、死闘であります。
中堂寺六斎は戦前の一時期、すぐ近所の壬生寺・壬生狂言を60年ものあいだ継承してたそうで、
その時の遺産として、壬生狂言から抜粋したかたちで無言劇が演じられます。


時々床で足を滑らせ、見る者を冷や冷やさせながらも、牛若丸は大熱演。
弁慶の迫力は、言うまでもなし。ちなみにこの面、壬生寺からの寄贈。さすがにイカツさが、違います。
二人の対決は五条大橋が有名ですが、この清水の舞台でも一戦交えたという説もあるんだとか。


『橋弁慶』に続いては、長唄の同名曲を太鼓曲化した『越後獅子』、そして『越後さらし』。
『越後さらし』は、新規に創作された、小学生たちによる二枚のさらしを交互に振る演舞。
写真だと新体操のリボンみたいに見えますが、実際はもうちょっと迫力あります。


そして、これぞ六斎の基本にして最高の醍醐味、『四つ太鼓』。
太鼓を片手だけで叩く一本ぶち、両手を使う二本ぶち、二人同時に打つ相打ち、
太鼓を六つに増やしての六つ太鼓、そして高度なぶち捌きが冴えるデレデレ太鼓へ。
幼児のおどけた演舞から、少女達の熱演、そして青年のハードな叩きっぷりまで、
とにかく、太鼓、太鼓、太鼓であります。


続いては、『祇園囃子』。月鉾と函谷鉾の曲を、抜粋して六斎風にアレンジしたんだとか。
、何故か重鎮クラスの二人が、太鼓バトルにも見える緊迫感溢れるプレイを展開します。


『祇園囃子』では、中盤に何と、棒振りも登場します。
祇園祭の棒振りといえば綾傘鉾ですが、あそこの棒振りは中堂寺の近所の壬生六斎が担当。
何か関係あるんでしょうか。こちらの棒振りも、厄除け祈願でブンブン棒を振り回していました。


大人の凄技が連発されたあとは、子供がコミカルに活躍する 『猿廻し』。
中央の大太鼓を囲む形で、猿廻しが踊るような微笑ませ言い演舞を見せてくれます。


で、いよいよクライマックス、『獅子と土蜘蛛』の始まりです。
二人羽織の獅子さんたち、ご入場。客を威嚇したり、逆立ちしたりと、多彩なアクションを見せます。
六斎ごとに善玉だったり悪玉だったりする獅子ですが、こちらは善玉。


清水の舞台上で見事に決められた、六段の碁盤乗り。
もう、見てるほうも、怖い。離れて見ると、舞台が微妙に傾いてるのがわかるから、余計に怖い。
ちなみに六段の碁盤乗りは、約20年ぶりの快挙だとか。


碁盤乗りを決めて休憩する獅子を、土蜘蛛が攻撃。糸を吐きまくります。
こちらの蜘蛛も、壬生狂言ゆかりの面を装着。ずっと顔隠してますが、見ると、怖いです。
連発される糸に苦しみながらも、獅子は蜘蛛を退治。
『攻め太鼓』に乗って勝利をアピールしまくって、めでたく結願。1時間20分の熱演でした。


奥の院から、公演が終わったばかりの舞台を眺める。
六斎の途中は意識しませんでしたが、改めて何の変化もない、いつも通りの清水寺です。


帰り、あんまり暑いから、六花亭でかき氷、食ったった。以上であります。

「8月は観光閑散期」とか言ったのは誰だ、というくらい、無茶苦茶に人多いです。
もちろん大半が、観光客。カップル率も、高し。で、その多くが典型的な観光ハイ。
この日はえらい暑さで、近くのバス駐車場から歩いてさえバテ果てるはずなんですが、
皆さん、脳内物質でも出てるのか、疲れ知らずのはしゃぎっぷりを見せてくれます。
六斎目当ての客は、おそらく、そんなに多くはありません。
陣取る人で舞台は埋まってますが、何かわからんけど釣られたという感じの人たちも、多し。
千日参りと六斎見物の人は地元感が強いですが、あとは完全にいつも通りの清水寺であります。
海外客が戻ってきたのか、外人率は欧米・アジア系とも高し。基本、団体ばっかり。
中国系団体は道の真ん中でも平気で立ち止まり、坂で大渋滞を発生させたりしてました。
日当たりのいいところでこれに捕まると、熱中症で死ぬかも知れないので、注意しましょう。

そんな、清水寺・盂蘭盆会の六斎念仏奉納。
好きな人と見たら、より六斎なんでしょう。
でも、ひとりで見ても、六斎です。

【客層】 (客層表記について)
カップル:3
女性グループ:1
男性グループ:若干
混成グループ:2
子供:1
中高年夫婦:1
中高年女性グループ:1
中高年団体 or グループ:1
単身女性:若干
単身男性:若干

【ひとりに向いてる度】

色気・人圧・暑さが一丸となって襲いかかる、修羅の庭。
六斎は是非見てほしいが、場所が鬼門であることは否めない。
よく見えるからといって舞台の端にいると、
背後から阿呆に押されたり、あるいは密集による熱中症で、
ふらつき落下するかも知れないので、注意。

【条件】
日曜 14:30~17:00


清水寺・盂蘭盆会 六斎念仏奉納
たぶん毎年8月第一日曜に開催
15:00~

中堂寺六斎 公式 – 京都 中堂寺六斎会

清水寺
京都府京都市東山区清水1-294
6:00~18:00
京阪電車・清水五条駅下車 徒歩25分
京都市営バス「清水道」及び京阪バス「五条坂」
下車徒歩約15分

公式サイト 音羽山 清水寺

wikipedia 清水寺