八大神社の鉄扇音頭奉納を観に行ききました。もちろん、ひとりで。

2011年8月31日(水)


八大神社の鉄扇音頭奉納を観に行ってきました。もちろん、ひとりで。

京都には、いわゆる盆踊りというものが、ありません。
いや、そんなことはないか。ある、確かにある。町内の盆踊り大会も、あるといえばあります。
しかし、何というか、「京都といえば○○音頭」みたいなのは、ないんですよね。
祇園祭音頭とか、舞妓はん音頭とか、そういうのはあります。西陣音頭もあったかな。
でもそういうのは、まあ、そういうものです。伝統というよりは、昭和のテイストが濃いものです。
民俗的な匂いが残る盆踊りは都市部では見当たらず、滋賀県の江州音頭が妙に浸透してたりして。
若干中心部を離れると、今度はあくまで「魅せる」芸能的な六斎念仏が、一気にメジャー化。
「みんなで、一緒になって、踊る」ということが、あんまりないわけです。
千年単位でこの街に根付く個人主義が、原始的な集団エクスタシーと相性が悪いのか。
7月の祇園祭で全ての祝祭エネルギーを使い果たすため、8月に余力など残ってないのか。
それともやっぱりただただ暑いので、夜であろうと踊る気になどなれないのか。
理由はいくつか妄想できますが、とにかく現状、京都の街中にめぼしい盆踊りはありません。
が、六斎念仏の盛んな旧農村エリアよりさらに外、特に洛北方面へ行くと、
今度は超素朴&超ネイティブな盆踊りが、しっかりと受け継がれてたりします。
鉄扇音頭や題目踊りなど、音頭の原始形態を保ち、念仏の香りが濃厚に漂う音頭の数々。
8月の末に八大神社で行なわれる鉄扇音頭奉納も、そんな音頭のひとつなのです。


八大神社は、一乗寺にあります。というか、詩仙堂の隣と言った方が速いでしょう。
叡電一乗寺駅を降り、曼殊院道から詩仙堂や狸谷不動尊へ行く坂道を登ること、数分。
背後にはかなりきれいな夜景が見えますが、しんどいので、写真撮る気になれません。


渋さで売る詩仙堂の隣にしては、かなり派手めな入口。
「詩」や「仙」な雰囲気を吹っ飛ばす迫力に満ちた「宮本武蔵」の文字が、躍ってます。
そう、ここは、武蔵が京の兵法家・吉岡一門と決闘を行ない、圧勝した場所。
実際はここより下、一乗寺下り松のあたりですが。70人相手に勝ったそうです。真偽は知りません。


鉄扇音頭奉納の案内。あくまでメインは八朔祭・お千度であることがわかります。
ちなみに「午後八時」は、その八朔祭・お千度が始まる時間です。鉄扇音頭奉納は、そのあと。


真っ暗な坂を登り、途中に貼られた宮本武蔵映画の展示なんかをチラ見しつつ、境内へ。
入ってみると、櫓は立ってるものの、まだまだ準備中の雰囲気。というか、いるの、関係者のみ。
場違い感が凄過ぎますが、とりあえずしばらくあたりをウロウロしてみます。


本殿の脇では、立派な武蔵像、そして本物の初代・一乗寺下り松の古株を展示中。
初代さん、宮本武蔵の決闘の時代の前から、昭和二十年頃に至るまで、存命だったそうです。
現在、決闘の地には立つのは、四代目。八大神社よりも詩仙堂への客を、より多く見送ってます。


そうこうしてるうちに、20時、お千度が始まりました。
氏子さんたちが、本殿の周囲を回ります。もちろん、千周回るわけがなく、三周だけです。
神職や音頭の踊り子さんや音頭取りの人たちが、三周回ってから、本殿の中へ。
で、しばし、いろいろ、祈願。それが終わると、参集殿で直会。
完全なる直会で、皆さん、くつろいでらっしゃいました。鉄扇音頭、まだまだ先のようです。


またしても手持ち無沙汰なので、境内のあちこちを再びうろつきます。
そういえば八大神社には、普通の「氏子」とはちょっと違う「宮座」なる組織が残ってるそうです。
氏子によって構成された集団「宮座」が、神事や祭祀を行うんだとか。


21時、ついに鉄扇音頭、スタートです。
踊り子さんに周囲を囲まれながら、音頭取りのおっちゃんたちが櫓へ上がり、音頭を歌い始めます。
完全なる、アカペラ。太鼓なし、鉦もなし、拍子木もなし。歌声の他は、手拍子あるのみ。
極めてゆったりした歌に合わせ、赤たすきのおばちゃんたちがゆったりと踊ります。
「鉄扇音頭」といっても、「鉄の扇を振りかざす」といったへヴィメタルな踊りではありません。


「鉄扇」は「鉄の扇」という意味ではなく、人の名前。坊さんの名前。
江戸中期、一乗寺の僧侶・鉄扇から伝えられた音頭を伝承してるから「鉄扇音頭」なんだそうです。
鯖街道経由で伝わったのか、福井・熊川宿で鉄扇音頭を伝承する人たちも参加されてました。
音頭は15分ほどであっけなく、終了。一曲だけの奉納でした。曲名、何だっけ。
昔はそれこそ無礼講で朝まで踊ったそうですが、現在はそうも行きません。私も帰ります。


一乗寺ゆうたら、ラーメンや!!と、帰りに寄ったのは、何故か北白川の『あかつき』。
ラーメン街道に背を向け、天一本店も東龍もスルーしてやってきたのは、単なる思いつきです。
昔はラヲタみたいな兄ちゃんがやってる店だった記憶があるんですが、
今は若夫婦みたいな人たちがやってる普通な感じの店でした。前からこんなんやったっけ?

鉄扇音頭、客層といえるほどの客は、いません。
数人の地元・近所の人達が大半、そこに好き者独男が数名まじるくらい。
あと、ほんのちょっと、好き者風の単独女子。それくらいです。
別段、排他的な雰囲気はありませんが、あまりにも超ネイティブな雰囲気ではありました。

そんな、八大神社の鉄扇音頭奉納。
好きな人と行けば、より鉄扇なんでしょう。
でも、ひとりで行っても、鉄扇です。


【ひとりに向いてる度】
★★★
プレッシャーの類は全くない。
ただ、他人の家に上がりこんでるような
場違い感は、強烈。

【条件】
水曜 19:50~21:10

八大神社
京都市左京区一乗寺松原町1番地
拝観自由

八朔祭お千度+鉄扇音頭奉納
毎年8月31日 20:00頃~

叡山電鉄 一乗寺駅下車 徒歩約10分
京都市バス or 京都バス 一乗寺下り松下車
徒歩約7分

公式サイト – 八大神社