安井金毘羅宮の例大祭・神幸渡御へ行ってきました。もちろん、ひとりで。

2011年10月9日(日)


安井金毘羅宮の例大祭・神幸渡御へ行ってきました。もちろん、ひとりで。

「課長と奥さんが早く別れて私と一緒になってくれますように」。実際は、その課長の姓名はもちろん年齢から会社名まで書いてあったのだが、それだけなら珍しくもない不倫成就の嘆願である。祇園に近く水商売関係の参詣者も多いだろう土地柄か、ここに掛けられる絵馬の二割近くが不倫絡みなのだ。問題は奉納者名の後の空スペースに、あきらかに異なる筆跡で記されていた文字である。
「そうはなるものか」
鉛筆書きの尖った文字が突き刺さっているようであった。 (入江敦彦 『京都人だけが知っている』

この文章がきっかけになったのかどうかは知りませんが、
とにかく、愛情が呪いの域に達した恐怖絵馬で一気に名を上げた、安井金毘羅宮。
一応、縁結びの神様でもあるわけですが、奉納される絵馬は相変わらず縁切り祈願が大多数。
「あの人と別れたい」「あの人とあの人が別れて欲しい」といったベーシックなものならず、
「あの人がこの世と縁が切れますように」と、現世との縁切りを祈願するものも多数、奉納。
中には、部署名・配偶者名・子供の名前まで記入して「逝ってくれ」と願うものなどもあって、
愛欲に無縁な私にとっては、もはや恐怖を越え、不可解・不条理極まる世界であります。
何でそんなに人が好きになるんだ? 何でそんなに人が嫌いになるんだ?
10月初旬に行なわれる例大祭は、そんな疑問に答えてくれるもの、ではありません。
安井といえば、9月第4月曜に美容業界が定休日返上でバックアップする「櫛祭り」が有名ですが、
この日の祭りは全然オーソドックスな、神輿巡幸。もちろん、縁切り神輿とかも、ありません。


東大路通に面した、安井金毘羅宮・一の鳥居。
「悪縁を切り、良縁を結ぶ祈祷所」の看板が、今日も善男善女を招きこんでいます。
いや、どちらかといえば悪女ばっかりなのかも知れませんが。あと、冷やかし観光客と。
ここから少し参道を歩いて、本殿へ向かいます。


参道といっても、周囲は完全に都市化されており、
あたりを埋め尽くすのは、住居・ビル・店舗、そしてアンティークな香り漂うラブホ「アオイ」。
参道自体も石畳の部分以外の大半は駐車場だったりします。


いくらなんでもラブホはあんまりだと思って北門へ回ると、こちらにもラブホ。
その名も「LOVE」。安井金毘羅宮の御利益を考えると、感慨深いものがあります。
「神社のそばにラブホ」は、近所の八坂神社でも見かけるパターンです。「ユーズ八坂」とか。
色街の発生の経緯から考えると、これくらいの方がむしろ「伝統的」なのかも知れませんが。


ラブホはともかく、安井金毘羅といえば何といっても、縁切り縁結び碑。
巡幸に出る法被姿の子を、祭の開始を待つ観光客が取り囲んでるようにも見えますが、
実際には観光客の大半は例大祭のことを知らずに来てます。


そんな観光客にも、見境なくサービス噛みをお見舞いする、獅子舞。
「噛まれると、長生きできます。死ぬまで生きられます」とか言いながら、
ほとんど押し売り状態で客の頭を噛みまくってました。


祭りの準備が整った、本殿。祭神は、大物主神・源頼政・そしてあの崇徳天皇。
「大魔縁になって日本を呪いまくってやる」と宣言された、あのお方でございます。恐ろしや。
寵愛した阿波内侍をこの地へ住ませたのが、ゆかり。やはり愛欲がらみであります。


とか言ってる間に、14:30、駐車場の車に見守られながら、行列がスタートしました。


一の鳥居で神輿を待つ見物人、というのは嘘で、ほとんどの人はたまたま立ち寄っただけです。


緑と異国情緒溢れる建物の間から現われた、神輿、というか御鳳輦。
しつこいですがこの建物、ラブホです。


参道の間近にまで迫った建物をすり抜けて、一の鳥居へ向かう御鳳輦。
しつこいですがこの建物、ラブホです。


木が低いため、天辺の鳳凰を一時外して通過する御鳳輦。


で、一の鳥居を抜け、東大路へ出ます。


事前にネットで調べた限りでは、行列は東大路を北上、
路地へ入って甲部歌舞練場のわきをかすめたりしながら、御旅所へ向かうことになってました。
祇園の裏通りを行列が進むさま、絵になりそうな予感・・・。


と思ったら、行列はすぐに東大路上でUターン。
あれっ。違うルートで行くんでしょうか。


「まあルートが変わっても御旅所へ行くのには違いないだろう」とか思いながら、
行列を追っかけてる、ローソン祇園安井店前。


追っかけてるうちに、結局一の鳥居へ帰ってきてしまいました。あれっ。
一度境内へ戻る段取りなんでしょうか。


ホテルアオイに出迎えられながら、どんどん本殿へ進む行列。
境内の奥のほうからは「ご苦労さん」という声が聞こえてきます。あれっ。


本殿前。行列、本当に終了してしまいました。
境内にあったルート図には、よく見るとちゃんとショートカットの道程が書いてありましたよ。
時間にして、30分。衣装の着付けの時間の方が長いんじゃないでしょうか。

客層は、境内は立ち寄っただけの観光客が7割、残りは地元の見物人とカメラマン。
観光客はカップル・女性グループ・混成グループの観光ハイや奴らばかりですが、
巡幸を追っかけてくる奴はほとんどいないし、そもそも祭り目当てで来てる奴もほとんどいません。
絵馬に群がり大騒ぎとかもなく、ほとんどが縁切り縁結び碑にたまるのみ。回避は容易です。
地元民は普通にただ見物するのみ。単独は、カメラマンとおひとりさまがちょっとだけ。
あと、祭りの日でも「マジ」の方はいるかなと思ったら、やっぱり見かけませんでした。

そんな安井金毘羅宮の例大祭・神輿渡御。
好きな人と見たら、より縁切りなんでしょう。
でも、ひとりで見ても、縁切りです。

【客層】 (客層表記について)
カップル:2
女性グループ:2
男性グループ:1
混成グループ:1
子供:若干
中高年夫婦:2
中高年女性グループ:1
中高年団体 or グループ:2
単身女性:微量
単身男性:若干
【ひとりに向いてる度】
★★★
客層の割に、プレッシャーは薄め。ディープさも、さほどなし。
参拝+絵馬見物メインで訪れ、
巡幸はちょっとしたサプライズとして見物するくらいが
ベストではないかと。

【条件】
日曜 13:20~15:10

 

安井金比羅宮
京都市東山区東大路松原上ル下弁天町70
拝観自由

京都市バス 東山安井下車 徒歩約1分
京阪本線 四条駅下車 or
阪急京都線 河原町駅下車 徒歩約25分

安井金比羅宮のホームページ – 公式サイト