神護寺の金堂夜間拝観とライトアップへ行ってきました。もちろん、ひとりで。

2011年11月13日(日)


神護寺の金堂夜間拝観とライトアップへ行ってきました。もちろん、ひとりで。

暑いです、2011年の秋。
暦の上ではすっかり紅葉シーズンですが、京都市街地のもみじは今だ色づく気配さえなし。
なので、市街地よりも早く紅葉が拝める洛北・高雄の神護寺へ行ってみることにしました。
宇佐八幡宮神託事件の巨根坊・道鏡と闘った和気清麻呂の私寺・神願寺が、
平安以前より山岳信仰が根づいていた高雄山寺と、ドッキングして生まれた、神護寺。
住持した空海によるライバル最澄への潅頂でも知られる、新仏教興隆の基礎を築いた寺です。
が、神護寺といえば、そんなプレ平安期 or 平安初期のパイオニアたちのみならず、
平安末期~鎌倉初期に大暴れした中興の祖・文覚上人でも有名かも知れません。
武士時代に同僚の嫁・袈裟御前へ手を出し、手を出すのみならず「俺と一緒になれ」と迫り、
困った袈裟御前に「旦那を殺して」と言われ意気揚々と太刀を振るえば当の袈裟御前を殺してしまい、
逃げるように仏の道へ入り、でも煩悩は全然消えず武者修行ならぬ無茶修行をさんざんやらかし、
その勢いで神護寺再興を後白河法皇に強訴し、強訴し過ぎて伊豆へ流罪になり、
流罪先で流罪仲間の源頼朝に「やってまえ」と決起をけしかけ、鎌倉幕府成立の道を開いた、文覚。
実にとんでもない奴ですが、そのとんでもない奴が再興した神護寺もまた、
なかなかにとんでもないシチュエーションを誇ってます。一言で言うと、参道、過酷。
で、過酷だけど、煩悩も色濃く漂ってるという。文覚っぽいといえば、文覚っぽいかも知れないという。
そんな神護寺の夜の紅葉、秋感の全くない汗だく状態で見てきました。


北野白梅町のだいりき亭でメシを食い、10分遅れで来たJRバス高雄京北線に乗り、
すっかり暗い周山街道を登坂中の図。うねりまくる山道と離合待ちを、とことん堪能できます。
神護寺へは、車かバスしかアクセス手段がありません。
なのでバス車内は人だらけかといえば、逆。枯れた入り+枯れた味わいです。
しかし対向車線は、神護寺・高山寺西明寺の「三尾名刹」か、常照皇寺からの帰りなのか、一杯。
バスは、市バスとJRバスがあります。JRの方が便が多いでしょうか。どっちも一日券は使えません。


約30分で辿り着いた、山城高雄バス停そばの神護寺入り口。
昭和、それも昭和40年代的な香りが、濃厚に立ち込めております。
嵐山高雄パークウェイ開通当時の匂いが、シネスコサイズの世界の匂いが、今なお残るみたいな。
写真左の建物は、もみぢ家本館。左には、山本食堂なる商店。共に、お土産を販売中。


入り口から神護寺へは、さらに参道を20分ほど歩かなくてはいけません。
おまけにその参道のほぼ全てが、坂。石段。しかも、上りと下り、両方あります。
写真は、参道入り口近くの下り坂。足元の光は、地元保勝会によるライトアップの行灯。
大勢の帰りの人が「最後まで来て、これか。もう死ぬ」とか言いながら、坂を上ってました。


大体道中の真ん中あたりになるんでしょうか、高雄橋で清滝川を渡ったあたり。
実に俗っぽいビジュアルですが、周囲でかかってる音楽がまた、店の有線みたいで俗なんですよね。
行灯は近隣小学校のお手製ですが、あまりの音の俗さが、妙な罪悪感さえ誘います。


高雄橋の近くに設けられてた、ライトアップ受付。拝観料、800円なり。高いぞ。
奥に見えるのは、これまた昭和の動態保存みたいな喫茶店&旅館
ここから先は、地獄の上り坂。参道のライトアップなど、もはやフォローしてる余裕はありません。


道中にある茶店は多くが店仕舞いしてましたが、硯石亭はお琴の演奏会を開催。
名物のもみじ餅でも食いながら一休みしようかと思いましたが、この時点で時刻は18時。
ライトアップは19時まで。あきらめて、苦行を続行します。


闇の先、かすかに楼門が見えてきました。と同時に、坂は激烈に急化。
しんどい。地元の八幡山で登り参拝は慣れてるつもりでしたが、でも、しんどい。
アップダウンがとにかく、しんどい。帰りも全く同じ疲労が待ってるのかと思うと、また、しんどい。


やっとこさ、到着。楼門です。応仁の乱で焼け、1623年ごろの再建。
しょぼいカメラでは全くその威容感が伝わりませんが、実物を見るとかなり感動します。
疲れ果てて、頭がハイになってるだけかも知れませんが。


楼門では、改めてチケットの検札が行われます。
登山の途中でなくすと、中へ入れてくれないかも知れないので、注意しましょう。
無理に入ろうとゴネたりしたら、両脇に安置された持国天と増長天にボコられるかも知れません。


楼門を入ってすぐのところでは、二胡のコンサートを開催中。
さすがに800円とって何もイベントがないのでは具合が悪いと思ったのか、
純粋に仏縁を深めたくての趣向かは、信心の足りぬ私には与り知らぬところであります。


で、紅葉でございます。


石段と紅葉でございます。


横からの石段と紅葉でございます。


逆からの石段と紅葉でございます。


夜間特別公開中の金堂でございます。
国宝・薬師如来像や、文覚上人の流罪仲間・頼朝像の写しも拝観できるのでございます。


紅葉でございます。


紅葉でございます。


毘沙門堂でございます。


ライトアップの時間は、神護寺名物のかわらけ投げは出来ないのでございます。
あと、大師堂の特別拝観も夜はなかったんじゃないでしょうかでございます。


正直、紅葉には早かった。いや、今年の秋が遅過ぎた。
信じられないかも知れませんが、私この時、シャツ一枚です。私だけではなく、薄着の人は多いです。
登山で体温上がってるのは確かですが、やはり今年の秋は、暑過ぎる。


で、帰るのでございます。境内滞在時間、40分。
境内はさほど広くもなく、ライトアップされてるポイントは少なく、紅葉は3分~5分咲。
かわらけ投げはできず、特別拝観も夜はクローズ。開いてたとしても、別途有料。
これで800円はどう考えても高過ぎると思いましたが、全ては信心の足りぬ私の戯言でございます。


神護寺の参拝は、むしろこの参道にこそ価値を見出すべきなのかも知れません。
平安仏教の創始者たちが、そして過剰なパワーで再興を果たした文覚が、歩んだ山道。
疲労+暗闇で、もうほとんど何も見えないものの、スピリチュアルな何かは、感じます。
感じることにするしかないじゃないかと思いながら目にした、もみぢ家別館の俗な川床ライトアップ。


で、戻ってきた高雄橋。
本堂ライトアップは19時で入山受付終了。19時過ぎに来た客は、追い返されてました。
ここから先、トドメを刺される登り坂があるんですが、写真ありません。撮ってる余裕、なかったから。


死ぬ思いで入口まで戻ると、売店がまだ開いてました。
名物もみじの天ぷらも、販売中。もみぢ屋は箱に入って650円、隣の山本食堂は袋入りで350円。
もちろん、山本食堂のを買いました。胡麻をまぶした甘めのおやつ仕様でしたよ。
「もみぢ家」は、奥に食堂がありましたが、満員でした。

客層は、県外感強し。
地元感は極めて低いです。あまり人が住んでないところだから当たり前ですが。
人の数の割にバスの混み方はさほどでもなく、バス客は若い奴ばっかりだったから、
中年以上は車かツアーでしょうか。
カップルは普通に多いですが、それ以外も多し。中年夫婦や、若い家族連れなども。
拝観料とアクセスの困難さのせいか、市内中心部の観光地ほどの幼い観光ハイや恋愛ハイはなし。
といって、ディープかつ穏やかな大人な雰囲気かと言えば、そうでもなし。
リゾートの感もあり、ディープな宗教テイストや秘境テイストを期待すると、肩透かしを食らいます。
単独は、男がカメラマンと変人くらい。普通の単独はあまりいません。

そんな神護寺の、金堂夜間拝観と境内のライトアップ。
好きな人と行ったら、より紅葉なんでしょう。
でも、ひとりで行っても、紅葉です。


【客層】 (客層表記について)
カップル:3
女性グループ:1
男性グループ:0
混成グループ:1
修学旅行生:0
中高年夫婦:2
中高年女性グループ:1
中高年団体 or グループ:2
単身女性:0
単身男性:若干

【ひとりに向いてる度】
★★★
色気のプレッシャーは、まあまあ。
アウェー感は、微妙に、かつ結構、あり。
昭和フェチな方には、割とおすすめかも。
あと、体力ない人が一人で行くのは、
天候によってはちょっと危険かも知れない。

【条件】
日曜 17:30~19:10

神護寺
京都市右京区梅ヶ畑高雄町5番地
通常拝観 9:00~16:00
ライトアップ(11月前半) 17:00~19:00

JRバス・高雄京北線 山城高雄下車 徒歩約20分
京都市バス8号系統 高雄下車 徒歩約20分

遺迹本山 高雄山神護寺 – 公式

神護寺 – Wikipedia

高雄保勝会 – 保勝会公式