石清水八幡宮の厄除大祭・焼納神事へ行ってきました。もちろん、ひとりで。

2012年1月19日(木)


石清水八幡宮の厄除大祭・焼納神事へ行ってきました。もちろん、ひとりで。

石清水八幡宮はその創建時から、明確に王城守護を目的としています。
平安京陰陽道に基づいて展開した怨霊防衛線構築の最終ステージにおいて、
裏鬼門守護の責を担うべく、パワフルで雄弁な神・八幡神を勧請して建てられた、国策神社。
そう、石清水は紛れもなく「国のための神社」であり、地元の言い方だと「お上の神さん」なわけです。
それゆえ明治維新の際に神仏分離令が出ると、「お上」からのお達しと慌てふためき、
山中の仏教施設を片っ端からブッ壊したり売り飛ばしたりもするわけですが、それはともかく。
しかし、そんな「お上」第一な石清水八幡宮にも、民衆と切り結ぶ接点は存在します。
それが、厄除。いわゆる厄年とか、厄ばらいとかの、厄除です。
こちらも元々は、京への疫神侵入を阻止する朝廷の祭祀「畿内十処堺疫神祭」が由来であり、
疫神社 = 現在の山麓頓宮に道祖神を招き、国家安泰を祈願する「お上」なものでしたが、
やがて民衆からの厄除信仰の方が強くなり、1月15日~19日の祭儀は「法会」という名でお祭り化。
京都や大阪から大挙して参拝客が押しかけ、それを目当てにした土産店なども多数立ち、
田楽・舞楽・相撲の奉納も行われるなど、それは大層な賑わいだったといわれてます。
神仏分離で石清水がズタボロ化したのちも、民衆ベースである厄除信仰は根強く持続したようで、
敗戦で戦勝の神としての名声を失ってもなお、「法会」だけはしばらく隆盛を保ったそうです。
現在は「厄除大祭」と呼ばれるこの祭儀、古代祭祀のルーツは18日に斎行される 「青山祭」 に残り、
「お祭り」テイストの方は期間最後の日に行われるこの焼納神事が担ってる感じでしょうか。
焼納神事は要するに左義長 or どんど焼きであり、規模もそこそこなもんですが、
厄除開運餅がタダでもらえるということもあり、結構人気があります。
そんな焼納神事へ、「法会」の残り香を嗅ぎに行ってきました。


何か妙に怖くも見える、男山ケーブル・八幡市駅。
厄除大祭でどれくらい利用者がいるのか確認したくて、乗ることにしました。
よくわかりませんがこの一帯、何故か昭和あるいは戦中なテイストを感じるんですよね。
ケーブル駅のコンクリや近所の家のコンクリ壁、そして断じて登ってはならぬアソコの階段とか。


歌舞伎 『引窓』 南邸碑もありますが、この隣は戦中感溢れる廃洋館。
ちなみに廃洋館は、元医院・立本さん。今は野良猫と不法駐輪に手を焼いてるみたいです。
右の写真は、その野良でしょうか、猫が睨みを効かせ番をする「アソコ」ことビルマ僧院跡・入口。
今の土地所有者って、誰なんでしょ。門司の「世界平和パゴタ」は、去年のクリスマスにつぶれたし。
(2013年注)世界平和パゴタは2012年9月に再開。


収益の半分を正月の一ヶ月間だけで稼ぎ出す、男山ケーブル。
三が日ほどではないにせよ、厄除大祭もまた大事な稼ぎ時になってるようです。
実際、9:45の便を待ってると、京阪八幡市駅から降りて来た人たちが大量に乗りこんできました。
車内は満員状態。もっとも、往時の賑わいはこんなもんではなかったそうですが。


突っ立ったまま、日本一のケーブル鉄橋を見るの図。
しかし昔は石段の表参道&裏参道まで人で埋まる有様で、それぞれ上りと下りの一通にしたとか。
子供は学校を休んで交通整理に駆りだされ、土産屋から芝居小屋までが軒を並べたそうです。
今は、土産屋はおろか露店の一つもなく、ただ過剰な大自然の中を歩くのみ。


そういえば八幡の 「厄神詣」 は、新年を表す季語にもなってます。
帰りに買い求める 「八幡土産」 もまた、同様に季語。それだけ知名度があったんですね。
ブツとしては紙鯉とかんざしが特に有名で、大村しげがよく「八幡さんのかんざし」と言及してました。
いずれも昭和末期には完全に絶滅。私が育った「八幡」は、ただただ貧しく不気味な町でした。


とか思いながら10時前に広場へ着くと、既に数百人が餅待ち行列。
写真では大した量には見えませんが、実際の行列は蛇状に延々と続いてます。
おおお、さすが厄除信仰のメッカ、石清水。正に「世は変われども神は変わらず」てなもんです。
そばでは祓串 = 護摩木500円なりも絶賛発売中。購入する人はあんまり見かけないけど。


10:10過ぎ、社務所から出てきた神職たちは、南総門脇に集合。
儀式を行ってから本殿へ入り、10時半頃、神火を掲げて護摩が設置された広場へ。
護摩へ四方向から点火し、祝詞を奏上し、やはり四方向からおまじないみたいなことをするうち、
お札やらお守りやらが大量に混入した護摩は、火の手を上げ始めました。


で、護摩、大炎上。


里神楽奉納、それを撮りまくるオッサン達の向こうでも、大炎上。


もうすぐ無料で配られる厄除餅の火あぶりが始まっても、大炎上。


祓串の投げ込みが始まっても、大炎上。


遂に餅の振る舞いが始まっても、大炎上。


若い神職が延々と祝詞を奏上してる間も、大炎上。


ゆとりのある神学生たちが半笑いで祝詞を読む間も、大炎上。


全然途切れない餅行列の向こうでも、大炎上。


餅配布の回転率は案外早かったりしても、大炎上。


火からこぼれた祓串を拾い集める間も、大炎上。


集めた祓串をまた投げ込みまくる間も、大炎上。


1500食用意してた餅が、11:30頃に全部なくなっても、大炎上。


行列の後尾100人~200人くらいがもらえなくても、大炎上。


「すんませんっ」と陳謝するボーイスカウトの銅像の向こうでも、大炎上。
焼納神事、こんな感じであります。「餅もらわないのか」と問われたら、厄年でもないですし。
というか、写真撮ってる間に全部はけた感じです。1500個といっても、結構、あっという間です。
どうしてももらいたい方は、ガッチリ並んだ方がいいかも知れませんね。

客層は、徹底的に中高年メイン。
30台後半より下の人間は、基本、いない感じ。ほとんどは、老人夫婦とおばちゃん2人組。
観光テイストは果てしなく、希薄。でも、地元テイストでもなく、近隣からの人が多い感じでしょうか。
宗教的ディープさもなく、民間信仰的な妖しさも全然なく、ほんとにいわゆる「どんど」な雰囲気。
カップルは、全くいません。というかそれ以前に、若者自体がほぼ全く、いません。
平日の昼間なので、家族連れや壮年のおっさんも、あまり見かけず。
単独はほぼ全員が、おっさんカメラマンです。

そんな石清水八幡宮の厄除大祭・焼納神事。
好きな人と行けば、より厄除なんでしょう。
でも、ひとりで行っても、厄除です。


【客層】 (客層表記について)
カップル:0
女性グループ:若干
男性グループ:0
混成グループ:0
修学旅行生:0
中高年夫婦:4
中高年女性グループ:3
中高年団体 or グループ:2
単身女性:0
単身男性:1

【ひとりに向いてる度】
★★★★
プレッシャーの類は、特になし。
ネイティブ感に溢れてるわけでもないので、
浮いたり不審者に見えたりすることもないだろう。

【条件】
平日木曜 9:40~12:00

石清水八幡宮
京都府八幡市八幡高坊30
通常拝観 だいたい6:00~18:00

京阪電車八幡市駅下車 男山ケーブル乗り換え
男山山上駅下車 徒歩約5分
ひたすら階段の場合は、徒歩約20分

石清水八幡宮 – 公式

石清水八幡宮 – wikipedia