植藤造園の夜桜を見に行ってきました。もちろん、ひとりで。

2012年4月12日(木)


植藤造園の夜桜を見に行ってきました。もちろん、ひとりで。

「桜守。なんと匂やかで優雅な職業名であろうか」
という書き出しで始まるのは、入江敦彦の 『京都人だけが知っている』 ですが、
テレビなどで見かける当の桜守・十六代佐野藤右衛門氏は、職業名が持つ優雅さとは真逆に、
コテコテな地の言葉、いわゆる京言葉ではない京都の地の言葉をしゃべりまくってます。
何というか、聞きようによっては柄の悪い大阪弁よりさらにダーティにも聞こえる、
「け」 の語尾の連発がわけのわからんアーシーな粘着力を感じさせる、京都の地の言葉。
私の実家は建築に噛んでた時期があり、その時期に見かけた職人さんたち、
いや、そのプロフェッショナリズムにより敬意を表すなら、むしろ 「おっさんら」 と呼ぶべき彼らが、
正にその 「地の言葉」 で話す人たちでした。「け」 の人たちだったわけです。
なので私には、佐野藤右衛門氏が単なる植木屋か土建屋のおっさんに見えたりします。
たけしのアート番組とかで 「映画の監督っちゅうのは・・・」 みたいなことを話してるのを見ると、
「おいおいおっさん、ええ加減にせえ」 と、思わず突っ込みたくなったりします。
実際には、たけしよりもはるかに偉い人かも知れないのに。
そんな (どんなだ) 佐野藤右衛門氏、春になると広沢池近くの自邸の桜を一般開放しています。
家業である造園業・植藤造園の、桜畑。桜守の桜、というわけです。
周囲はかなりな山の中ゆえ、夜は闇の中に桜が美しく映え、年々人気も上昇中。
私ももちろん夜桜を拝ませてもらうべく、乗り慣れない路線のバスに揺られ、
洛西は嵯峨野に近い広沢池へ向かったのでした。


59系統のバスに乗り、山越で降り、現地に着いたのは18時頃。
まだ、明るい。なので、広沢池で桜と夕暮れを見て、時間をつぶすことにしました。
もちろん、ここはここで桜の名所であります。時間が悪過ぎて、全然桜が桜の色をしてませんが。
ついでに天気もよろしくなくて、夕暮れも全然見れませんでした。徒労。


でも、完全に徒労といえなくもない味がある、しょぼい日暮れの広沢池。
平安の昔から大宮人が舟遊びを楽しんだ水上には、客待ちのボートが浮かんでます。
桜が植樹されたのは割と最近で、明治以降。池の東・西・南で、山桜が咲き誇ってたそうです。
しかし、車の数が増えると共に枯れ、現在は東側に御覧の樹がちょこっと残るのみ。


特に池の南側は、道の両端に植えられたてたんだとか。
春になれば桜が花のトンネルを形成し、それは見事なものだったそうです。
とか言ってる間に、周囲はすっかり陽が暮れました。ぼちぼちと植藤造園へ向かいます。
一条通を東進、出迎えてくれたのは、路駐の車と、道に溢れんばかりの枝垂桜。


で、桜畑、入口。
ほな、しょうもないことグダグダ書いてんと、夜桜、たんと見てもらおか。


安もんのカメラで撮った下手糞な写真や、すまんの。
せやけど、撮ってる対象がええと、撮る奴が下手糞も、結構いけるもんやろ。


何で急にコッテコテの地の言葉になったんかって、
そら、そうゆう地の言葉によって育まれた桜を見とるんやさかい、当たり前ちゃうけ。


ちゃうけゆうても、お茶受けのこととちゃうで。
ちゃうけは、ちゃうけや。お茶受けちゃうねんから、茶店もないで。ちゃうけ。


もっともらしいこと、書いた方がええってか。どうでもええやろ、そんなん。
桜見て、心を通わせて、「別嬪さんや」って声かけたったら、それでええんや。ちゃうけ。


な。別嬪さんやろ。ちゃうけ。
何や。佐野藤右衛門がどういう人かの説明がないってか。そんなん、自分で調べ。


今、花を見とるねん。邪魔すんなや。
「桜守」 がどうたらこうたら書いてる奴なんか、そこら中におるやろ。それ、読めや。


ほんまに別嬪ぞろいや。ちゃうけ。
何や。写真ではそう見えんってか。それやったら、自分の足で行け。自分の目で見ぃ。


これだけキレイな桜やから、人もぎょうさん来てはるわ。
せやけど、ややこしいことやら堅苦しいことやらをベラベラ喋るようなんは、おれへんで。
酒呑んでカラオケ歌とてなんて、もってのほかや。そもそもここ、単に個人宅の敷地やしな。
みな静かに、のんびりとええ感じで、桜と心、通わせてはる。


ほんまに静かかゆうたら、えらい日常的な話、聞こえたりするけどな。
「揚げ60枚もろた」 「永谷園のすしの素が美味い」 「息子が弱い。嫁の声しか聞こえへん」 とか。
そんな、どうでもええゆうたらとことんどうでもええ話聞きながら、この桜を見るんや。
京都に生まれて、京都のねきに生まれて、良かったと思うのは、こういう時や。


ほんでもって、この記事はここでしまいや。
写真がちょっと少なめやけど、そらそうやろ。こんなもん、実物見な、話ならんで。
どこの誰やわからん奴が書いたブログ見ただけで、実際に行った気になるなんて、あほらし。
あんた自身が、損してる。わかるのと、わかった気になるのとは、違うんや。ちゃうけ。

客層は、地元の中高年がメイン。おばさんグループ、多数。
ただ、グループなのか、たまたま同席して喋ってるだけなのか、区別がつきませんが。
大覚寺の華道祭絡みか遠方から来てる人もいましたが、観光テイストは基本的にかなり希薄。
門前には路駐の車が散見できますが、客の雰囲気はあくまで近所の人が多い感じです。
カップルは、いません。若者らしい若者も、いません。物好き風が若干と、学生風がいる程度。
単独は、カメラ親父がちょこっといるくらいでしょうか。

そんな植藤造園の夜桜。
好きな人と見たら、より桜守なんでしょう。
でも、ひとりで見ても、桜守です。

【客層】 (客層表記について)
カップル:微量
女性グループ:1 (近所あるいは学生風)
男性グループ:0
混成グループ:0
子供:0
中高年夫婦:2 (中年夫婦、若くない)
中高年女性グループ:4
中高年団体 or グループ:2 (家族連れ)
単身女性:0
単身男性:1 (カメラ親父)

【ひとりに向いてる度】
★★★★
プレッシャーもさほどなく、アウェー感も希薄。
アクセスは若干よろしくないが、
かなり、おすすめ。

【条件】
平日木曜 18:00~20:00

植藤造園
京都市右京区山越中町13
常識の範囲内で観覧自由

京都市バス 山越下車 徒歩約5分
JR嵯峨野線 太秦駅下車 徒歩約20分
嵐電北野線 鳴滝駅下車 徒歩約18分

植藤造園 – 公式

桜の開花情報とご来園時のお願い – 植藤造園