石清水八幡宮の石清水灯燎華へ行きました。もちろん、ひとりで。

2012年5月5日(土)


石清水八幡宮の石清水灯燎華へ行ってきました。もちろん、ひとりで。

石清水八幡宮と 「灯り」 は、様々な縁を持っています。
中世において油の独占的販売権を握り、その名と財力を轟かせた大山崎油座は、
そもそもは淀川を挟んで鎮座する石清水八幡宮に、灯油を納めるのを本務とした神人でした。
「だから何だ」 と言われると返す言葉がありませんが、そんな由緒もあるという話です。
また時代を下ると、かの発明王エジソンは電球開発の際にフィラメントの寿命で苦心、
世界中の竹を試した末、石清水八幡宮の竹が最適であることを発見、実用化にこぎつけました
これも 「だから何だ」 と言われると返す言葉がありませんが、そんな由緒もあるという話です。
さらに言うと、二股ソケットで日本中の家庭の電灯を消さずに済ませた松下幸之助は、
熱烈な石清水八幡宮崇敬者であり、初期松下の商標 「M矢」 は八幡御神矢がモチーフになってます。
これまた 「だから何だ」 と言われると返す言葉がありませんが、そんな由緒もあるという話です。
こんな感じで、どことなく希薄感は漂うものの、それなりに縁がある八幡と 「灯り」 。
その縁をより深きものにしようと、GWの夜に重文・本殿を始めとして境内一円をライトアップ、
期間限定の神札などパワスポ商品も用意して、観光客との縁もついでに深めてしまおうというのが、
石清水八幡宮、春の最大集客イベントである、石清水灯燎華でございます。
灯燎華の期間は3日間。しかし、私は地元民ゆえ二夜出かけ、見所を拾いまくってみました。
荘厳なビジュアルから、妙味溢れるアイテムまで、夜の 「八幡さん」 、たっぷりとご堪能ください。
あ、ちなみにTOP画像は、エジソン記念碑のフィラメント型ライトアップです。
ドクロベエでは、ありません。ウォーズマンでも、ありません。


18時頃、男山ケーブルに乗って、メイン会場である山上へ向かいます。
ケーブル、普段は運転終了に近い時間ですが、灯遼火のため22時まで延長運転中。
山上に着いても外はまだ明るいので、石翠亭の走井餅茶屋へ寄り、暗くなるのを待つことにします。
かしわ餅・走井餅・抹茶のセット570円を、食す。一番手前の裸の餅が、走井餅です。


石翠亭には出店が並ぶも、半分くらいは八つ橋など京都のものなのを見て、
「八幡は京都とちゃうぞ」 とか思いながらスルー、早めながら電飾本殿へやってきました。
家光の寄進により再建された、八幡造の重文。改修が終わったばかりの楼門が、特に輝いてます。
いつ見ても強攻型ロボットに変形しそうな迫力がありますが、夜見ると、尚更です。


でもやっぱり、まだ早いなというわけで、書院の茶席へ。
書院には、重森三玲が手がけた石庭あり。その拝観+お茶も楽しもうという趣向です。
三玲というと吉田の感が強いですが、石清水も崇拝してたそうで、社務所再建の際に作庭を担当。
あ、右の写真のように門は開いてるので、タダでも石庭自体は見れなくもありません。


それでもわざわざ500円払って見た、ライトアップ石庭。
鎌倉期石灯篭+14個の石+白砂で表現される枯山水の海に、500円の値打ちを感じます。
造営は、昭和27年。戦後すぐで資材が無く、石は男山に散在していたものをそのまま使ったとか。
あ、お茶を頂くといっても、この石庭を見ながら飲むわけではありません。あしからず。


どこでお茶を頂くかと言えば、書院の中、畳を見つめながら。
もはや、禅です。畳の目もまた枯山水に通じることを、思わず悟ってしまいそうです。
そういえば三玲は、石のみならず、台風でぶっ壊れた鳥居もまた上手く利用して、庭を造ってます。
同席した物好きな兄ちゃんが、その庭について巫女さんに細かく尋ねてましたよ。


こちらがその、廃鳥居庭園。社務所を出て、参道を左に行ったとこ。
庭園です。心霊スポットではありません。左上に写ってるのも、オーブではありません。
しかし、ライトアップされないハミ子の 「庭園」 には、独特の霊気が漂い、案外いい味出てます。
私、子供の頃、よくここに座りました。バチが当たって、今もなお独男なんでしょうか。


廃鳥居庭園の目の前の参道は、しっかりとライトアップ中。
竹をフルに活かした行灯とオブジェ、そして宿坊の灯篭で、静粛なムードを演出しています。
ゆえに俄のカメラ爺が大量に群れ集い、参道真ん中に三脚置いたまま世間話する阿呆も、多出。
写真は、あまりに見苦しい人間を真っ黒に潰した一枚。というのは嘘で、単なる下手糞仕様。


行灯の導線の先にあるのは、もちろん本殿の南総門です。
手水所前にテントが設けられ、そこに神職連中が集まってパンフ類を配ってました。
あ、石清水灯燎華、基本的に拝観は無料です。キンキラキンの本殿を見るのなどは、全然、無料。
ただ、建物の中に入ったり、茶を飲んだりすると、細かく金がかかる仕掛けになってます。


で、キンキラキンに輝く本殿を、改めて無料で拝むの図。
本殿周りの授与所では、灯燎華限定の菖蒲神札や菖蒲御守などが販売されてます。
楽殿では、大量の見物人が集まる前で、巫女さんたちが神札授与の舞をエンドレスで披露中。
ただし、実際に札を買う客はさほどいないので、もっぱらデモの舞を繰り返してました。


本殿前では、八幡大神様に祈りを捧げる献灯も行われてます。
ペーパーに 「家内安全」 などお好みの祈願と名前を書きこみ、ホチキスで円筒形に。
それを蝋燭と共に好きな場所へ置く、と。奉納料、500円。細かく金がかかる仕掛けになってます。
写真左側の灯りが、そう。パッと見は埋まりが悪いですが、客は案外たくさんいます。


献灯、私もやってみました。独虚坊名義で「除災招福」を。
八幡大菩薩ということで、「敵国調伏」 をお願いしようかと思いましたが、やめときました。
本殿では、内陣の昇殿参拝も実施中。参拝料、500円。細かく金がかかる仕掛けになってます。
でもどうせならと、東側の祈祷入口へ。手前の受付で500円払い、靴脱いで内陣へ。


案内の神職さんに連れられ、20人ぐらいがまとまった形で、まず神前へ。
軽く身を清めるお祓いを受けてから、畳が敷かれた舞殿に座り込み、ゆっくりじっくりと参拝。
続いて、建物についての話、徳川がどうたらの話、徳川寄進なのに徳川の家紋が見当たらない話、
でも実は神様の真正面にすかし葵紋があるとかの話を、ありがたく拝聴いたします。


参拝に続き、案内を聞きながら本殿の周囲を歩いて見学します。
あえて未完成のまま放置されている流れ左三つ巴紋や、信長寄進の金ピカな金銅製雨樋、
様々な動物が極彩色で掘られた欄間彫刻と、その花形で左甚五郎の作とも伝わる 「目貫きの猿」、
そして鬼門の位置が屏風でしっかり霊的にガードされてるのを見て、昇殿参拝、終了。


さて、見るもん見たし、食うもん食ったし、そろそろ山下りるか。
というわけで、エジソン記念碑のウォーズマンとドクロベエの習合体に挨拶して、下山。
エジソン記念碑は、もちろんここの竹が電球のフィラメントに使われたことを記念したものです。
石段の参道は、特にライトアップなし。暗闇の中、鳩茶屋の幟が不気味に揺れてました。


下った先、二の鳥居を抜けると、辺りは急に華やかに。
勅祭・石清水祭が行われる山麓下院の一帯もまた、実はライトアップが行われています。
正直、かなりキレイです。多分、山上よりキレイです。でも何故か、人は異常なほどいませんけど。
右の方で輝く鳥居は、『徒然草』仁和寺の法師が石清水と間違えた、高良神社のもの。


「聞きしにも過ぎて尊くこそおはしけれ」 と法師に言わしめた、高良神社。
現在のこじんまりとした姿を見ると、吉田兼好が仁和寺を嫌って嘘を書いた気もしますが、
かつては頓宮・極楽寺と共に、石清水と間違っても不思議のない壮大な伽藍を誇っていたとか。
しかし、鳥羽伏見の戦いのとばっちりを受け、丸焼け。現在の社殿は、明治時代の再建です。


石清水祭で放生会が行われる安居橋でも、ライトアップ&ライブ中。
駅前のジャズ喫茶キャンドルの仕切りなのか、八幡出身のサックス奏者・内藤大輔が登場、
『Autumn Leaves』 『Bye Bye Blackbird』 といったスタンダードに加え、オリジナルもプレイ。
オリジナル曲 『光』 のイントロが、ちょいスピリチュアルな感じで、よろしゅうございました。


頓宮とその周囲の回廊も、ちょっとだけライトアップ中。
頓宮もまた、鳥羽伏見の戦いのとばっちりを受け丸焼けとなり、大正期に再建されたもの。
回廊は、昭和に至るまで放置だったんじゃないでしょうか。現在の見た目は、一番ボロいですけど。
本当にちょっとだけのライトアップですが、そのちょっとさ加減が、妙に味、あります。


21時前、一の鳥居前まで、帰って来ました。
もうすぐ終了時刻ですが、ライトアップされた鳥居と走井餅が、健気に客を待ってます。
山上の客は下りもケーブルに乗るようで、この時間のケーブル駅は逆に、結構な混み加減。
もったいない。次回以降お越しになる方は、山麓の散策もどうかお忘れなく。

客層は、7割くらいが観光というか、近隣を含む外来系。
メインは家族連れです、若いのも、中高年も。あとは夫婦風とか。
そこに、カメラ老人グループ+KBSカルチャー系の団体客などが混ざる感じ。
カップル、意外に多いです。それも、八幡全開のDQNではなく、郊外然・消費者然とした。
ただ、特に盛り上げれるアイテムがないためか、さほど恋愛ハイを撒き散らすようなことはありません。
地元系の人間も若干はいますが、やはり八幡全開のDQNではなく、非DQNばかり。
単独は、大半が男で、カメと物好き系と変人。女は、濃い口のディープ系がチラっといるくらい。
人の数は、近所の人しかいない山麓を除けば、まあまあという感じ。多からず、少なからず。
観光ハイの馬鹿騒ぎはないですが、スピリチュアルな静寂を味わえるわけでもない、
そんな感じででしょうか

そんな、石清水八幡宮の石清水灯燎華。
好きな人と行けば、より八幡大菩薩なんでしょう。
でも、ひとりで行っても、八幡大菩薩です。

【客層】 (客層表記について)
カップル:2
女性グループ:若干
男性グループ:若干
混成グループ:0
子供:0
中高年夫婦:2
中高年女性グループ:若干
中高年団体 or グループ:5
単身女性:微
単身男性:1

【ひとりに向いてる度】
★★★★
若干うっとおしいのが多いシチュエーションではあるが、
混雑度は低いし、そもそもあたりは暗いので、
細かいことはさほど気にならない。
山麓には、是非寄ってくれ。

【条件】
GW祝日 18:00~21:00


石清水八幡宮
京都府八幡市八幡高坊30
通常拝観 だいたい6:00~18:00

京阪電車八幡市駅下車 男山ケーブル乗り換え
男山山上駅下車 徒歩約5分
ひたすら階段の場合は、徒歩約20分

石清水灯燎華
毎年5月3日・4日・5日開催

石清水八幡宮 – 公式

石清水八幡宮 – wikipedia