下鴨神社の御蔭祭へ行ってきました。もちろん、ひとりで。

2012年5月12日(土)


下鴨神社の御蔭祭へ行ってきました。もちろん、ひとりで。

毎年更新される、神。
と書くと、まるで神をカードか賃貸契約呼ばわりしてるみたいで恐縮ですが、
京都を名実共に代表する神社であり、三大祭の一つ・葵祭を行う上賀茂神社と下鴨神社は、
実際に毎年5月12日、その葵祭が開催される正に直前、「神の更新」 のようなことを行ってます。
その名を、上賀茂神社は、御阿礼 (ミアレ) 神事。下鴨神社は、御蔭 (ミカゲ) 祭。
「御生」 「御荒」 「御顕」 「産霊」 などなど、様々な字で 「ミアレ」 と表現されるこの神事は、
神地に新たに顕れた荒御魂を、本宮の和御魂と合体させ、霊力をより若々しきものにするもの。
正に、アップデートです。そう呼ぶと、何か神罰が下りそうですが、でも、アップデートです。
現在は学生バイト大量動員の平安コスプレパレードで知られる葵祭・路頭の儀も、
そもそもはこの更新された神に挨拶すべく、朝廷が勅使を派遣してるだけだったりします。
本当は、葵祭よりも重要な神事なのかも知れないのです。というか、多分、そうです。
二千年もの歴史を持つとも言われるこの更新、旧儀が途絶したり、名称が変わったりはしてますが、
生まれたてホヤホヤの神を扱うがゆえのスピリチュアルなテイストは、今なお猛烈に、健在。
特に下鴨神社の御蔭祭は、普段は元官営神社ならではの気高さを誇る同社が、
この日は一転してアーシーなまでのネイティブ感を全開にし、かつての神領域を巡行。
観光客&カメが喜ぶ平安装束のみならず、バス使用も辞さず祖社を回り、歓迎されるその様は、
賀茂の地に根づく信仰の深さと豊かさを、リアルなものとして感じさせてくれるはずです。
そんな御蔭祭、途中からではありますが、ちょっとしつこく追っかけてみました。
妙にバスの写真が多いですが、それこそリアルとご理解下さいませ。


やって来ました、午前11時の叡電・八瀬比叡山口駅。
御蔭祭、下鴨神社の祭事ですが、肝心の荒御魂が顕れるのは摂社である、御蔭神社。
御蔭神社があるのは、比叡山の西麓に繋がる、御蔭山。つまりここが、最寄り駅になるわけです。
と言っても、駅前の客が皆、御蔭祭へ行くわけではありません。というか、大半は比叡山客。


比叡山+特別公開中の瑠璃光院もスルーしやってきた、参道入口。
御蔭祭が始まるのは、実は朝の9時頃。下鴨神社にて、まず進発の儀が執り行われます。
勧盃の儀や樹下神事の後、平安装束の行粧列はバスでここまで移動する、と。で、もう来てる、と。
私は寝坊したので、下鴨を諦めてパスし、こっちへ先回りした、と。で、それに失敗した、と。


同志らしき連中4~5人と共に、完全なる山道を歩くこと、4~5分。
渋過ぎる森の中に、突然、鳥居が現れました。賀茂御祖神社境外摂社・御蔭神社、到着です。
鴨大神降臨の地とも、山背国が賀茂神宮を建てた地とも伝わる御蔭山の奥に潜む、静謐極まる社。
霊気が、溢れてます。霊気が、漏れてます。これは神聖な儀式が、期待できそうですね・・・


と思ったら、御蔭神社、満員電車の如き大混雑。
11時からの御蔭山の儀が終わったらしく、狭い境内は見物客と供奉者でごった返しまくり。
御蔭山の儀は、神饌などで神のご機嫌をうかがう儀。多分。気になるなら、自分で調べてください。
平安コスの供奉の方々は、直会なのか、そこら中で弁当食ったり、着替えたりしています。


正午からの御生神事が始まるまでは、本殿、一般参拝が可能です。
見物客と一緒に、私も東西二つの本殿を参拝しました。何故か賽銭箱、なかったけど。
割拝殿の前では、きれいどころの巫女さんにより神酒が振舞われ中。もちろん、私もいただきます。
寸志を入れようと思ったら、こちらも入れ物がありませんでした。金、避けてるんでしょうか。


で、11時45分、偉いさん連中が本殿へ参入、遂に御生神事が始まります。
御生木を東西本殿の内陣に納め、そこへ迎えた荒御魂を神霊櫃へ遷すという、御生神事。
一般人は五色幕の外で待つのみながら、「産霊」 が齎す緊張感は、否が応でも伝わってきます。
みんな、緊張してます。出てきた人をバンバカ写真撮ってますが、緊張してるはずです。


さっきのお清めの人に続き、12時13分、荒神霊、登場。
真ん中の白い箱 = 神霊櫃が、そうです。生まれたばかりの、極めて危険な、荒々しき神。
目まで覆う勢いのマスク+手袋という厳重装備の神職たちに運ばれ、神霊櫃は素早く境内を退出、
山の中で待つ行粧列と合流し、一斉に境内を出た大勢の見物人と共に山麓へ向かいます。


原始的な森の中を、雅楽を響かせながらゆっくりと進む、雅な人たち。
「延暦寺文書」 に 「西 神聖影山」 と記された時代の姿を連想させるビジュアルです。
が、御蔭神社の神地は元来、駅の南西あたりだったとか。今は病院とかがあるあたりでしょうか。
移転は1835年と、割と最近。もっとも、その頃は駅前もこんな山奥だったでしょうけど。


山麓へ着くと、行粧列はバスに乗り、荒神霊と共に巡行へ入ります。
茶屋のおばちゃんに頭を下げられながら、御蔭神社旧社を囲ってた川沿いを走るバス。
旧社は水害で埋まり、さらに地震も食らい、揉めた末に伝統ある地を捨て、現在地へ移りました。
これからバスが向かうのは、やはり下鴨摂社の赤ノ宮。 「路次祭」 なる神事を行うのです。


赤ノ宮、本名・賀茂波爾神社の最寄り駅は、叡電一乗寺駅。
京都バスの方が便利かも知れませんが、私はバスが苦手なので、再び叡電に乗車です。
「買うのは来年でいいから」 という柴漬け試食をスルーし、12時40分、20人ほどの同志と電車へ。
一乗寺では、降車でまごつく人が結構いました。路次祭は、13時から。間に合うでしょうか。


と思ってたら、余裕で間に合いました。バス、寄り道でもしたんでしょうか。
赤の宮は、完全にお祭り状態。狭い境内には露店が密集して並び、子供神輿や太鼓の姿も。
近くでバスを降りた行粧列は、総代らしき礼服姿の人たちや近所の人たちに迎られながら、参入。
最後に、神霊櫃入りの錦蓋を積むトラックが、本殿前まで器用に進入。路次祭、開始です。


神職の後姿しか見えませんが、路次祭、執行中。
地元の人や好き者、報道などに見守れられ、祝詞奏上など一般的な神事が行われます。
路次祭とは、下鴨神社のかつての神領内にある祖社を、御生神事の還立行粧が巡行すること。
そのためか、地元の人たちは、この赤ノ宮のことを 「下鴨の御旅」 と呼ぶんだそうです。


本殿で祭事が行われてる間、行粧列の皆さんはお休みタイム。
刀を担いだりしてた平安コスの子供たちも、アーシーな屋台に溶け込んでたりします。可愛い。
現在は赤の宮だけで行われている路次祭ですが、かつてはいくつもの祖社でも斎行されていたとか。
巡行ルートも現在より東寄りで、赤山禅院や鷺森神社、一乗寺の下り松の前を通ってたそうです。


神事が終わったら、路次祭の目玉・舞楽 『還城楽』 の奉納がスタート。
大混雑の境内で観客と混じってスタンバってた面顔の舞人が、13時40分、舞殿へ登場。
当然、神様の方を向いて舞うわけですが、ちょこっとこっち向いて、恐ろしい顔を見せてくれました。
20分ほどの舞楽が終わると、行粧列は再出発。神宝かつぎ、再びバスへ乗り込みます。


バスが次に向かうのは、下鴨中通にある中川原公園。
中川原公園、神社でも史跡でも何でもありません。名前の通り、普通の児童公園です。
馬を扱える手頃な場所が他にないためか、神霊を神馬へ載せる儀式は、公園にて斎行されます。
赤の宮を出るバスを見送ってから、私は市バスで下鴨中通に近い府立大前まで、ワープ。


今度こそ間に合わんと思いながら公園へ行くと、行粧列はまた未着。
神馬役の馬や替え馬、先行していた錦蓋などが、本当に普通の公園で暇そうにしてました。
行粧列は14時50分頃、北大路に止めたらしきバスから狭い路地を通り、雅楽の響きと共に登場。
右後の方に見える浅黄幕で囲まれた神霊幄で、神馬に遷御の儀が執り行われます。


荒神霊を載せた神馬と共に、フル仕様となった行粧列は、下鴨中通を南進。
実に京都の祭りらしいビジュアルですが、この実際に徒歩列が再興されたのは、割と最近。
全部バスもあんまりということなのか、元・下鴨本通のこの道だけ、1992年に徒歩列になりました。
全行程を旧儀に戻す話もあるとか。いつか、バス移動の写真の方が貴重になるかも知れません。


下鴨中通を抜けた行粧列は、下鴨本通を横断、下鴨神社へ向かいます。
御蔭祭の行粧列が全て車移動に変わったのは、高度成長期真っ只中の、昭和38年。
経済よりも神や旧儀を優先することは珍しくない京都ですが、何せこの3日後にあるのが、葵祭。
大通で超大々的な交通整理が行われるため、その割を食った側面もあるのでしょうか。


糺の森へ入った途端、客層は 「世界遺産」 のそれに変わりました。
地元メインの雰囲気だったのが、一転して観光化。それが相応しいビジュアルでもありますが。
表参道は、完全通行止め。隣の馬場では、写真を撮ったり、先を越そうと爆走する観光客、多出。
行粧列は、糺の森の中心に位置する祭場・切芝に入り、そこで切芝神事に入ります。


行粧列に率いられ、神馬は切芝に設けられた幄へ。
人の頭の向こう、五色幕の中にチラッと白いのが見えるでしょうか。それが、神馬です。
切芝神事は、この神馬に舞や音曲を奉納、もてなすもの。御蔭祭の定番ビジュアルであります。
そのため、前面は血走ったカメだらけ、それに釣られて観光客も押し寄せ、大混雑状態。


舞の奉納、始まりました。舞われるのは、古代より伝わる歌謡 『東遊』 。
参道東側からは全く何にも見えなかったので、北側、カメさんたちの正面に来てみました。
陪従の奏でる音で舞う、青摺袍姿の舞人たち。カメさんのためではなく、神のために舞ってます。
有度浜に、駿河なる有度浜に、打ち寄する波は、七草の妹、ことこそ良し、ことこそ良し。


広角で撮られることが多い切芝の 『東遊』 、望遠で撮ってみました。
宇多天皇が報賽のため、藤原時平に奏上させたことに始まるという、 『東遊』 の奉納。
舟に乗って東よりやって来たという下鴨神社祭神・賀茂建角身命の来歴を、奏上してるんだとか。
七草の妹は、ことこそ良し、逢えるとき、いざさは寝むなや、七草の妹、ことこそよし。


『東遊』 の奉納が終わると、列奉行から御白杖が氏人童形へ渡されます。
御白杖とは、巡行の道筋を示すとされるもの。氏人童形とは、文字通り、子供のこと。
神聖な本殿への還立に先立ち、行粧列の先導権を、より清浄な存在である子供へ委譲する、と。
そんな感じでしょうか、知らんけど。続いて 「三代詠(三台塩)」 奏され、行粧列は本殿へ。


奉仕する各々の名前がコールされながら、行粧列は境内へ参入。
中門の向こうへは、神馬を始めトップ連中のみが入り、あとの所役の人たちは御役御免。
入るべき人間と馬が入ると、中門は閉められ、御神櫃から荒神魂を遷御する本宮の儀が始まります。
神が、更新されるわけです。アップデートされるわけです。上書きインストールされるわけです。


神様更新中の本殿。もちろん、関係者以外完全立入禁止です。
一般参拝を受け入れながらのバックグラウンド処理など、できるわけがありません。
「何かあるのか」 と wktk な顔の世界遺産客の外人などと共に、ひたすら終わるのを待つのみ。
結局1時間ほどして開門、参拝した本殿は、至っていつものままでございました。


やはり賽銭箱が取り払われた本殿にお参りし、退出すると、時間は17時半。
疲れた、追っかけてるだけながら。と思いながら、抜け殻となった神馬幄を眺めるの図。
切芝および表参道、さっきまでの賑わいが嘘のように、普段通りの静けさを取り戻しています。
が、三日後には葵祭の社頭の儀で、またとんでもなく華やかな大混雑となるわけです。

客層は、御蔭神社に関しては、割と濃い目。
濃いというか、こういうのが好きそうな人が多いです。空気も若干、ディープ寄り。
学生系・勉強系みたいなのも多く、神職さんに地軸の話や社家の話をしてる人もいたりして。
アーシーな神事ながら、特に地元寄りということもなく、観光寄りということもなく、
ディープハイも観光ハイもない中、混雑の割に落ち着いた雰囲気が漂います。
カップルは、物好き系がいるくらい。女性グループ・男性グループも、同じ。中高年は、信者系。
単独女は、おひとりさま系、そして何かもう濃過ぎる人。男は、カメおよび物好き系。
直会奉仕のおばちゃんが非常に多く、その空気・存在感が結構強かったりします。

赤ノ宮は、完全地元メインの中に、御蔭神社の客を3割ほど混ぜた感じ。
下鴨神社は、基本、普段通り。祭のことを知ってて来た人間は、切芝以外は少ない感じです。
カップル、そこそこ多し。あと、全体的に若いの、多し。ただし、祭りに寄ってくるのは、中年寄り。
単独、女はディープ者、多し。男は、カメと、ごくごく普通の若い奴。

そんな下鴨神社の御蔭祭。
好きな人と行ったら、よりミアレなんでしょう。
でも、ひとりで行っても、ミアレです。

【客層】 (客層表記について)
御蔭神社
カップル:1
女性グループ:1
男性グループ:1
混成グループ:若干
子供:0
中高年夫婦:1
中高年女性グループ:1
中高年団体 or グループ:3
単身女性:1
単身男性:1

赤ノ宮
カップル:若干
女性グループ:若干
男性グループ:若干
混成グループ:若干
子供:2
中高年夫婦:若干
中高年女性グループ:若干
中高年団体 or グループ:4
単身女性:若干
単身男性:2
下鴨神社
カップル:2
女性グループ:2
男性グループ:若干
混成グループ:若干
子供:0
中高年夫婦:1
中高年女性グループ:2
中高年団体 or グループ:若干
単身女性:若干
単身男性:1


【ひとりに向いてる度】
★★★★
色気的なプレッシャーは、ほぼない。
御蔭神社と切芝の混み方はなかなかだが、
他に人圧のプレッシャーを感じるような場所は、
まずないだろう。
御蔭神社はディープな雰囲気が濃いが、
普通に見物に行くと浮く、というほどでもない。
個人的には赤ノ宮のにぎわいを推すが、
本当にどっぷりとネイティブテイストのため、
部外者は案外ここが一番浮くかも知れん。
当たり前のことだが、
全部見ようとして全部追っかけると、
死ぬほど疲れる。

【条件】
土曜 11:00~17:30

御蔭神社
京都市左京区上高野東山207
叡山電鉄 八瀬比叡山口駅下車 徒歩約12分
京都バス 八瀬駅前下車 徒歩約15分

赤ノ宮神社
京都市左京区高野上竹屋町36
叡山電鉄 一乗寺駅下車 徒歩約6分
京都市バス 一乗寺赤ノ宮町下車 徒歩約2分
京都バス 赤の宮下車 徒歩約3分

下鴨神社
京都市左京区下鴨泉川町59
通常拝観 6:30~17:00
京都市バス 下鴨神社前下車すぐ
京阪電車 出町柳駅下車 徒歩約10分

世界遺産 下鴨神社 – 公式
賀茂御祖神社 – Wikipedia