晴明神社の晴明祭へ行ってきました。もちろん、ひとりで。

2012年9月22日(土)


晴明神社の晴明祭へ行ってきました。もちろん、ひとりで。

晴明神社は元々、名づけの神様として親しまれてたそうです。
何ゆえに名づけの神になったかといえば、「晴明」 = 「せーめー」 = 「姓名」 だと。
スピリチュアルな世界とグダグダな日常が恐ろしいまでに混在する京都らしいエピソードですが、
しかし、私が晴明神社のことを知った頃には、ここは既にいわゆる 「聖地」 と化してました。
「母親は狐だった」 「何ちゃらを駆使して怨霊と戦った」 「箱の中身を思い通りに変化させた」
「死者を復活させることができた」 「自分も一旦死んで、骨にまでなったが、何ちゃらで復活した」
「小さい鬼を操った」 「でも嫁にそいつらキモいから家入れんなと言われ、橋の下の石櫃に隠した」
「隠したままほったらかしにされた石櫃が千年後になって出てきて、大騒ぎなった」 などなど、
無理目なエピソードが千年の時を越えて無限に捏造、もとい二次創作されまくる、陰陽師・安倍晴明
その邸宅跡に建てられた晴明神社は、晴明に最もゆかりが深い特級のパワースポットとして、
陰陽師ブームの発生以降、ややこしい思考や嗜好を持つ人達の間で、一気に聖地化。
拡張された敷地には式神オブジェが立ち、近所には五芒星グッズを売る店が現れて神社と揉め、
今や隣の西陣織会館を凌ぐ勢いを誇る、一大観光スポットと化したのであります。
しかしそれ以前は先述のように、地元の人の為の駄洒落爆発な名づけの神様だったのであり、
明治期に荒れた神社を救ったのも、「晴明」 を 「清く明るいことやろ」 とか言いそうな氏子さんたち。
また現在も西陣の人達にとって 「せーめーさん」 はごくごく普通の氏神さんのようで、
その辺のネイティブ感がよく現れてるのが、その名もずばりの例祭 「晴明祭」 ではないでしょうか。
陰陽大爆発な世界を連想したくなる名前ですが、実際に行われるのは、ごく普通の神幸。
でも、神輿や法被にはもちろん、五芒星。で、ネイティブな西陣の街中を進む、と。
混在してます。ある意味、極めて京都らしい神幸と言えるかも知れません。
そんな晴明祭、暇にまかせて追いかけてみました。


12:40頃にやって来た、行列の出発点である西陣織会館前。
西陣織会館は名前の通り、西陣織の博物館みたいなハコもの。着物ショーとか、やってます。
神社の中で並ばないのは、狭い境内が神輿と担ぎ手だけで既にいっぱいになってるからでしょうか。
神幸列の出発は、13時。菊鉾や扇鉾の鉾山車、馬などが、路上でスタンバイ中。


神社の門前&堀川通歩道は、大量の露店が立ち、完全に普通のお祭りモードです。
御馴染の式神オブジェが、屋台の影に隠れてしまい、所在無げにしてるのがわかるでしょうか。
露店のラインナップは、ベタ路線。五芒星焼きや占い系みたいな面白いものは、特に見かけません。
子供も大人も実にネイティブで食いつきがよろしく、おかげで歩道は歩きにくいこと、甚だし。


そこら中でものを食ってる人を潜り抜け、侵入した境内。人だらけです。
普段はその筋の方や五芒星ステッカー客で賑わいますが、この日は神輿+地元民ばかり。
「せーめーさん」 の像が立つ本殿では、前日夜は湯立神楽奉納+この日も午前中に神事を執行。
元は晴明の命日 = 9月26日に行われてた晴明祭ですが、現在は秋分の日に行われてます。


13時、行列は先行して西陣織会館を出発し、その最後尾につく形で、神輿も出発。
境内を出ると、魑魅魍魎と露店と烏合の衆が入り混じる参道を通って、まっすぐ堀川通へ進入。
鳴カンを鳴らしまくりながら、しばし担がれ、少し下ったところで台車へ乗せられ、あとはヨーサノー。
ここから、あちこちで差し上げを決めながら、街中を小まめに巡幸していくわけであります。


以降は本当に普通なので、写真の羅列で恐縮するのであります。
狭い葭屋町通を、すぐそばまで見物客に囲まれながら南進する、少年鼓笛隊。


大宮中立売を左折する、八乙女。


写ってないけど長者湯の横を北上する、五芒星入りの唐櫃。


狭い松屋町通を北上する、子供神輿と五芒星の法被。


何となく、鼓笛隊の五芒星入り大太鼓のアップ。


何となく、疲れた馬と、五芒星入り法被と馬のアップ。


やたら人が多い大宮通を通る、菊鉾+扇鉾。
大宮通の千両ヶ辻では、晴明祭と連携してるのか 「千両ヶ辻 伝統文化祭」 を、開催中。
いろんな展示や和洋雑貨の即売会、また町家見学などもやってたので、非常に混んでました。
とはいえ、ここも観光客な感じの人は少なく、どちらかといえばネイティブテイスト強め。


西陣亭の前を進む、荷太鼓+猿田彦の面の山車。


さっきの千両ヶ辻へ突入し、差し上げまで決める、神輿。


神幸列は、15時頃に西陣小学校へ入り、ハーフタイム休憩。
暇なので西陣織会館へ入ってみると、先述の着物のファッションショーをやってました。
何故か 「Smells Like Teen Spirit」 のボサノバカバーに乗り、モデル歩きを決めるモデルさん。
後ろに見えてるのは、織機です。尖閣でも影響したのか、以前多かった中国人は、少なめ。


15:40頃、西陣小学校から再出発する行列の、菅蓋と錦蓋。


子供を噛みまくる獅子舞 @ 萬重前。


今出川通へ進入する晴風稚児 @ バイクショップ HEAT前。


路上で立ち止まる四神稚児&晴風稚児 @ 本家玉壽軒前。


黒門通を南進する、神職 @ 丸忠前。

陰陽師本舗前。
見物人の拍手に出迎えられながら本社へ到着した行列は、境内へ入らず、そのまま解散。
神社前の堀川通には、既に馬のレンタル元らしき岸本乗馬センターの車が止まってて、馬も直帰。
子供達にいじり倒された獅子舞の中の人は、疲れ果てたのか、その辺に座り込んでました。


行列から遅れること40分、神輿が到着。
参道ではなく、その手前の葭屋町通から担ぎ上げ、鳥居前でまず差し上げ。


境内に入っても、もちろん差し上げ。
本殿前を何度もまわり、「せーめーさん」 に見せるよう、念入りに差し上げ。


見物人が逃げ回るような勢いで、差し上げ。
もちろん妖しき呪文など唱えず、「ホイットホイット」 +鳴カン鳴らしまくりで、差し上げ。


で、雅楽が響く中、遷霊。


差し上げにすっかりご満悦の表情を浮かべる、晴明公。


遷霊が終われば、祭儀は終了。私も、帰ります。
「魔界」 のカケラもない、全くもって普通な、全くもってオーソドックスな祭でありました。
帰り際、鳥居前で振り返ると、闇夜に浮かぶ五芒星の扁額と 「ぷにょぷにょすくい」 のコラボ、あり。
極めて、混在してます。そして、ここにだけは確かに 「魔界」 があったような気がします。

客層は基本、地元の人しかいません。
神社境内や周辺は、いわゆる濃い人や冷やかし観光客が増えますが、
巡幸ルート上は、家の前 or 近くで行列を見守るおばちゃん・親子連れが大半です。
あとは、子供とカメ男がいるくらい。カップル・女性グループ・観光客などは、本当に見かけません。
単独も、いるのはカメ男くらい。濃い女子も、路上ではさほど見かけることはありませんでした。
祭のテイストは、熱狂的でもないけど、醒めたものでもないという感じ。
穏やかに愛され、大事にされているのを、感じます。パワスポ云々の言説とは、真逆のテイスト。
超ネイティブでありながらも、アウェー感はさほどなく、ほのぼのささえ感じたりして。
陰陽がどうこうより、むしろその辺が不思議で面白い祭じゃないでしょうか。

そんな晴明神社の、晴明祭。
好きな人と行けば、より陰陽師なんでしょう。
でも、ひとりで行っても、陰陽師です。

【客層】 (客層表記について)
カップル:若干
女性グループ:若干
男性グループ:微
混成グループ:微
子供:2
中高年夫婦:若干 (全部地元)
中高年女性グループ:3(全部地元)
中高年団体 or グループ:4 (全部地元)
単身女性:若干
単身男性:1 (カメラマン)

【ひとりに向いてる度】
★★★★
各種プレッシャー&アウェー感は、希薄。
京都らしい街中での祭を、のんびりと見物できる。
ただし、陰陽師がどうとかいうのを期待して行くと、
徹底的に拍子抜けする。

【条件】
土曜祝日 12:40~18:20


晴明祭
毎年秋分の日に開催

晴明神社
京都市上京区堀川通一条上ル806
通常参拝 9:00~18:00

京都市バス 一条戻橋・晴明神社前 or
堀川今出川下車 徒歩約2分
市営地下鉄 今出川駅下車 徒歩約12分

晴明神社 – 公式

晴明神社 – Wikipedia