即成院の二十五菩薩お練り供養大法会へ行ってきました。もちろん、ひとりで。

2012年10月21日(日)


即成院の二十五菩薩お練り供養へ行ってきました。もちろん、ひとりで。

仏像を見て 「ウルトラマンに似てる」 と思う人は、多いでしょう。
光の国 or M78星雲、何でもいいですが、とにかく極楽浄土みたいな所から現れ、
怪獣や宇宙人が引き起こした苦境にのたうちまわる我々人類を救ってくれる、ウルトラマン。
人を浄土へは連れて行きませんが、暴れる怪獣は速やかにあの世へ送ってくれる、ウルトラマン。
そして、これはシリーズ初期だけかも知れませんが、南方仏教感が妙に漂う、ウルトラマン。
何か、仏と似てるな、と。もちろんそれは、ある種の本末転倒ではありますが。
本当かどうかは知りませんが、ウルトラマンの造形は、弥勒菩薩を参考にしたんだそうです。
しかし、デザイン上の類似や、顔面のツルンとした質感といったものものの類似以上に、
より本質的に両者は似てるというか、私達の心の中の何かが両者は同じと言ってる気がします。
この感情は一体、何なんでしょうか。単に元ネタと二次創作を識別しない阿呆脳の産物でしょうか。
それとも、私達の深層心理に引き継がれているかも知れない仏教の外来性に関する記憶と、
宇宙人の救済者・ウルトラマンの異人感が、シンクロしてたりするのでしょうか。
そんなわけのわからんことを、即成院二十五菩薩お練り供養を見てる間に、考えてました。
本堂を浄土、地蔵堂を現世と見立て、その間を人間が扮した二十五菩薩が練り歩くことで、
極楽往生の様を具現化した、泉涌寺塔頭・即成院の二十五菩薩お練り供養大法会。
そこに現れた菩薩たちは、ギンギラギンかつド派手なコス&生々しいまでの異国テイストが、
ウルトラマンというより 『ウルトラ6兄弟VS怪獣軍団』 の凶暴な怪神・ハヌマーンに似てましたが、
しかし、仮面に神々しさと妖しさが宿るその姿は、やはり実にウルトラ的だったのです。
そんなお練り、肝心の二十五菩薩像を拝まぬままの見物してきました。
異人の救済を感じるか、仏像コスプレに見えるかは、あなた次第。


12:30頃にやって来た、泉涌寺総門&即成院山門の前。
一応言っておくと、右が泉涌寺総門で、左が即成院山門。即成院、人も車も、多いです。
泉涌寺道は大勢の老若男女、もとい老々男女が歩いてましたが、今日はその8割が即成院の客。
門の近くには、1000円也の特別拝観受付あり。しかし、お練りだけなら、タダで見れます。


タダで入った境内。入ってすぐのところに、仏のランウェイ、あり。
奥に見える建物 = 本堂を浄土に、写ってませんが左にある地蔵堂を現世に、それぞれ見立て、
その間に逆L字型で架けられたこの木橋の上を、コスプレ二十五菩薩さんたちが練り歩くわけです。
木橋には既にカメがくっついてますが、開始30分前でも殺人的な混雑という感じはありません。


本堂手前では、何かの会長という人が、福引大会を司会中。
会長、寺の外にまで聞こえる大声で、かつノンストップで、しゃべる、しゃべる、しゃべる。
あ、さっきの木橋が逆L字で曲がる角、一番仏がよく見えるポイントですが、あそこは報道用ゾーン。
ただ、橋の上はどこでもこんな感じで、よく見えます。多くの人は後の方で、のんびり待機。


「来年もお楽しみに!!!」 と会長が言って、福引は終了。
那須与一像や、写真の犬像などを眺めてるうち、13時前、稚児たちが本堂へ入りました。
祈祷か何かが、行われてるようです。本堂内には入れませんが、中の様子は音声で実況生中継。
雅楽が鳴り、謎の呪文と妙にリズミカルな呪文が唱えられ、タダ見客の我々も一緒に、合唱。


で、13:15、遂にお練り、開始。同時に、即成院の説明も始まりました。
いわく、真言宗であるの件。平安時代の創建であるの件。元々の場所は伏見だったの件。
でも伏見城築城で移転させられたの件。明治の廃仏でぶっ潰れたの件。泉涌寺に間借りしたの件。
学生が仏像のオーケストラと仏縁を結んだ件、チャリティの坊主CDをよろしくの件、などなど。


最初にランウェイへ登場するのは、僧・山伏・楽人・稚児など。
全員がゆっくりと、現世の地蔵堂へ向かいます。仏が出てくるのは、3往復の最後だけです。


現世に着いた皆さんは、すぐに浄土の本堂へ逆進を開始。
写真は、楽人&稚児山伏&稚児。稚児、普通に笑ったりぐずったりしながら、淡々と歩いてます。


全員が本堂へ戻ると、すぐに2往復目のお練りが、スタート。
今度は列尾に、東京芸大と組んで平安時代の色の塗り方で再現したという如来像が、参加。


全員が現世に到着すると、またすぐに浄土へ帰還。
稚児たちは、仏様へのお供えものを乗せた膳を持参。落としたりしながら、やはり淡々と歩きます。


13:45、「皆様、お待たせいたしました」 という声で少し笑いが起こる中、
いよいよ本当にコスプレ二十五菩薩が登場する、三度目のお練りが、遂に始まりました。
最初に出てくるのは山伏ですが、その後ろには小さな神輿と、御詠歌を歌う妙齢女性達の姿、あり。
客はざわめきますが、どっからでも見えるためか、観光ハイな馬鹿騒ぎ感は、さほどなし。


妙齢女性達の後ろには、信者さんや稚児が続き、散華を行います。
散華は、何かが書かれた紙を撒くという感じ。後の方で見ていた人たちも、前へ寄る。
信者さんは景気よく散華を撒いてますが、稚児は上手く撒けず、手を伸ばす人に手渡す子も多し。
その後、派手な袈裟でラスボス感漂う坊さん達も散華を散布。菩薩、なかなか出てこないな。


とか思ってると、ジャスト14時、遂に菩薩が登場しました。
先頭は、プリンセス京都の社長か何かがやってるという、大地蔵菩薩。


続いて、ポーズがいちいち格好いい、観世音菩薩。


やはりポーズがいちいち格好いい、大勢至菩薩。


持ってる行灯みたいなのが重そうな、普賢菩薩。


こんな感じで、後にも大量の菩薩が延々と練り歩き。
基本、舞うのは先頭だけで、後の菩薩は着物女性に支えられて、淡々と歩くのみです。
後へ行くほど 「中の人」 の年齢は下がるようで、それに伴い 「淡々」 の度合いも上がったりして。
東南アジア炸裂な御詠歌が、仏教が外来宗教であることを再認識させてくれること、しきり。


お面を被ってるのが丸見えになってる、薬王菩薩。
しかし、丸見えなのに、いや、むしろ丸見えだからこそ、最初期のウルトラ感を強く感じます。
一定の人が、何故かゴムスーツの汚れに感じてしまう 「異人」 のリアリティ。多分、そんなのです。
懐かしさと妖しさ、恐怖と笑い、それらが入り混じった畏敬の念とでもいうか。大層ですが。


で、全菩薩が地蔵堂へ入ると、すぐに浄土への逆進、開始。
御詠歌を歌うおばちゃん達が先行して、金剛鈴を鳴らしながら、本堂へ。


おばちゃん達に続き、山伏やラスボス感漂う坊さん達も、本堂へ。
そういえば、菩薩が地蔵堂入りした時点で多くの人が帰ってました。興味が尽きたんでしょうか。


続いて、稚児&信者さんが、歩きながらまた散華を散布。
前方が空いたので、私も1枚もらいました。即成院、移転する前は三重塔があったんでしょうか。


で、菩薩も、帰還。観世音と大勢至はポージングし、他は淡々と歩きます。
報道の連中が退いたので、菩薩の右横顔と後姿を、報道ゾーンから拝ませていただくの図。


次々と浄土へ帰還する、菩薩。後の方は、完全に単なる子供ですが。
本堂へ戻ると、中で菩薩が舞を奉納。タダ見はやはりできませんが、音はやはり実況生中継。


そうこうするうち、14:40頃、お練り供養は終了。
菩薩の登場時間、短かったな。でも、その辺もまた、ウルトラ的と言えるかも知れないな。
そんな愚にもつかんことを考えながら、お練り名物である木橋の五色リボンも、握っておきます。
リボン、阿弥陀如来の手と繋がっていて、願いが届くそうです。というわけで、鷲づかみ。


帰り際、混雑時には見えなかった特別拝観の看板を見かけました。
ストリートビューでも何かが見えるようにしてるそうで、その宣伝文句も一緒に躍ってます。
「圧巻!」「あなたの目が、今、仏さまの目線に」 「Google ストリートビューで世界初の体験を」 。
Googleの色分け字に、心意気を感じます。が、特別拝観はやっぱり金が惜しいので、パス。

客層は、中高年あるいは老人メインです。
夫婦風、女性グループ、その他、それぞれの属性で多し。ツアー客風も、多数。
ただ、信心深そうな人が多く、いわゆる観光ハイなテイストは、それほどでもありません。
といっても、地元っぽい連中が多い、ネイティブ感あふれる仏事というわけでもなし。
若者は、少なめ。門前は泉涌寺へ行く客はかなり通りますが、ここへはあまり立ち寄らず。
単独は、女は腐系な方がちょっとだけいる程度でしょうか。
男は、カメラマンと若い変な男がちょっといるくらい。

そんな即成院の、二十五菩薩お練り供養。
好きな人と行ったら、よりウルトラなんでしょう。
でも、ひとりで行っても、ウルトラです。

【客層】 (客層表記について)
カップル:微
女性グループ:微
男性グループ:微
混成グループ:微
子供:0
中高年夫婦:3
中高年女性グループ:2
中高年団体 or グループ:4
単身女性:若干
単身男性:1

【ひとりに向いてる度】
★★★
色気のプレッシャーは、全然ない。
人圧も、それほどではない。ただ、かなりあっけなく終わる。
世間に流通してる菩薩が並んだ写真を見て、
ストレンジで面白いものを期待すると、肩透かしを食らうかも。

【条件】
日曜 12:30~14:50


二十五菩薩お練り供養
毎年10月第3日曜 開催

泉涌寺塔頭 即成院
京都市東山区泉涌寺山内町28
9:00~17:00

京阪電車 東福寺駅下車 徒歩10分
JR奈良線 東福寺駅下車 徒歩10分
京都市バス 泉涌寺道下車 徒歩7分

現世極楽浄土 即成院 – 公式

即成院 – Wikipedia