亀岡祭の山鉾巡行へ行ってきました。もちろん、ひとりで。

2012年10月25日(木)


亀岡祭へ行ってきました。もちろん、ひとりで。

山鉾巡行は、祇園祭だけの専売特許というわけではありません。
「山車」 でも、「屋台」 でも、あるいは 「だんじり」 でも、名前は何でもいいですが、
「曳山を曳いて盛り上がる」 祭礼というのは、日本全国に数え切れないくらい存在するわけです。
もちろん当の京都でも、近郊には多くの祭があり、その内のいくつかは曳山祭だったりします。
そして、近郊であるがゆえに、祇園祭から強い影響を受けた曳山祭も、存在したりします。
中でも、極めて似てて、極めて規模が大きく、そして極めて魅力的なビジュアルを持つ祭といえば、
京都府亀岡市の城下町を舞台に繰り広げられる、鍬山神社例祭・亀岡祭でしょう。
京都から出雲へ続く山陰道の要衝として、古くより軍事的に重要視されてきた亀岡 = 亀山は、
信長にブチ切れる前の明智光秀亀山城を建てたことで、城下町として一気に発展。
この地を開拓したという伝説を持つ地元の氏神・鍬山神社も、手厚い保護を受けるようになり、
長く途絶していた例祭もまた江戸前期に復興、城主の援助もあり、規模が拡大します。
江戸中期になると町衆達も多彩な練り物を出すようになり、その流れで、山鉾もまた、出現。
近郊というか、実際の交流も盛んであるがゆえに、祇園祭の影響を受けまくった10数基の山鉾が、
西陣織や海外から取り入れた豪華な織物で懸装し、城下を練り歩くようにまでなりました。
「口丹波の祇園祭」 としてその名を轟かせた亀岡祭でしたが、城が消滅した明治以降は、衰退。
昭和期は大半の山鉾が巡行を休んでたそうですが、平成に入ると、祭復興の気運が上昇。
山鉾が次々復活し、最近は全ての鉾が勢ぞろいしての城下町巡行も開始されてます。
現在もかなり天然で残る亀岡の城下町ビジュアルの中、本家によく似た山鉾が進む様は、
ある意味、本家以上のマジなタイムスリップ感が堪能できること、請け合い。
で、知名度はもうひとつゆえに、そんな醍醐味が至近距離で楽しめるわけです。
そんな亀岡祭、早朝から夕方まで、潜りこんでみました。


暇なので、朝の7時に着いてしまった、亀岡祭当日のJR亀岡駅
傘型提灯がディスプレイされてますが、駅前は当然、閑散としてます。開いてる店もほぼ、なし。
気温は、少しだけ肌寒いくらいでしょうか。遠くに見える山には、丹波名物の霧が薄くかかってました。
早く着き過ぎた人は、山へ霧を見に行くのもいいかも知れません。そんな人、いないでしょうが。


祭りの気配は全くない町をしばらく歩くと、御覧の 「祭の跡」 が登場。
旧大手門前にあり、鍬山神社御旅所でもある形原神社の参道です。宵山、賑やかだったようで。
御旅所では、バイト学生が集まり点呼を取ったり、神輿の台車の移動をやったりと、早くも忙しそう。
いくつかの露店は、9時からの神輿巡幸に合わせるのか、既に営業の準備を始めてました。


見物人のこっちは暇なので、早朝の城下町を徘徊してると、おっ、山鉾。
各町の山鉾は、昨夜の宵山&花灯炉を終え、多くがブルーシート姿で巡行開始を、待機中。
亀岡祭の山鉾は、今も城下の町衆が支えてます。最近復活したのも多く、その動きは現在進行形。
それにしてもナチュラルレトロなこの町並は、下手な写真で全然伝わりませんが、素晴らしい。


城下町をウロウロしてるうちに、国道9号線へ出てしまったの図。
腹が減ったので何か食える店はないかと、2車線で死ぬほど混んでる道沿いを、しばし徘徊。
丹波出身である親の帰省の際、何度も何度もこの渋滞に出くわし、私は車が心底嫌いになりました。
裏道へ回る車も多く、おかげでアホが登校児童へ突っ込むという悲惨な事故も起こってます。


結局食う店は見つからず、面倒くさくなったので松屋で牛丼を食らい、
食ってもまだ時間はあり暇なので、亀岡祭の元締め・鍬山神社へ向かってみたの図。
鍬山神社は、かつて湖であった亀岡の地を、自ら鍬を持って肥沃な農地にした大己貴命を祀る社。
高槻へ続く酷道を、ひたすら山と田んぼを見ながら歩い続けると、大鳥居が見えてきました。


少し紅葉が進む参道を進み、やはり少し紅葉が進んでる境内へ。
鍬山神社の祭神は、先述の大己貴命と、後からこの地に降臨し合祀されたという八幡神。
神殿は、御覧のように両神が同じ大きさで並列してます。間には、喧嘩しないよう、小池があるとか。
で、お参りしたら他にすることもないので、帰還。境内では、小さな子供神輿もスタンバイ中。


で、9時半頃に御旅所へ戻ってきたら、神輿が鳥居から出てきたところでした。
神輿、超巨大。 「絶対担げない」 と思わせるサイズで、トラックの荷台へ速攻で載せられます。
神輿は、鍬山と八幡の、2基。鍬山は兎、八幡は鳩の紋入り。そこら中の提灯も、兎と鳩の紋入り。
神輿トラックは、やたらそこら中で人を噛む獅子舞と共に、出発。時間やコースは、知らん。


10時になると、各町の山鉾はすっかり出来上がり、動き始めます。
メインパレードたる城下町巡行が始まるのは11時からですが、既にそれに向け移動、と。
御覧の際どい右折に挑む山鉾は、羽衣山。謡曲 「羽衣」 の天女と漁夫を御神体とする山鉾です。
出しているのは、西竪町&東竪町。町衆が懸装品を手作りして、つい最近復活したとか。


山鉾は、祇園祭より小ぶりという感じでしょうか。先の羽衣山で、最大級。
なので、中へ乗り込んで、祇園囃子を摂取したというお囃子を奏でるのも、大半が子供。
こちらの山鉾は、呉服町から出た、高砂山。謡曲 「高砂」 に題材をとり、御神体は 「尉」 & 「姥」 。
「尉」 「姥」 セットの御神体ゆえか、「夫婦和合の神」という看板を持った子が先導してます。


乗ってるのは子供が多いですが、引いてるのは、大人。
学生風&外人学生風が、多し。公募ボランティア風も多し。女人禁制は、特にないようです。
神社と同じ名前であるこちらの鍬山は、御神体も神社と同じ鍬山大明神。楽々荘がある北町から。
町並と無類のマッチングを見せますが、胴掛幕はイギリス・ヴィクトリア朝時代の毛織物だとか。


11時、城下町の中心・旅籠町山通に鉾が集結、順次巡行が始まりました。
通は、御覧の通りの大混雑。祇園祭と同じく 「くじ改め」 が行われますが、全く見えません。
「くじ改め」 があれば 「くじ取らず」 の鉾もあって、それが奥に見える城下町の京口・三宅町の翁山
めでたい能楽 「翁」 別名 「式三番」 に由来し、直径145cmの車輪を軋ませてやってきます。


賑やかに巡行が行われる旅籠町通、正直、背景はさほどよろしくありません。
むしろ、ちょっと外れた通の方が、家屋のサイズ感や、背景も空も見栄えが良かったりして。
ただ、電線だけはどこでもどうにも邪魔で、御覧の難波山は、鉾頭をつけたり外したりしてるの図。
矢田町・上矢田町・京町が出す山で、御神体は主人公 「王仁」 。王仁三郎じゃないですよ。


他にも見栄えの良いとこはないかと歩き回り、塩屋町の蛭子山に出くわすの図。
オランダ人を描いた綴織の見送りが見どころだそうですが、御神体の恵比寿人形も、ナイス。
亀岡祭の山鉾は全て、こんな感じで人形が乗ってるとか。見た目は鉾でも、正式には全て山、と。
では、鉾頭に見える棒は一体、何なんでしょう。折ったり曲げたり、いろいろしてますけど。


で、鉾頭がもはやN電のポールみたいな八幡山、亀山城下商店街を行くの図。
電線配慮以上に城下町ゆえの急カーブが大変そうな山鉾ですが、案外、どこも結構楽そう。
八幡神が乗るこの八幡山は、心棒で車輪を浮かし、360度回転できる構造が残されてるそうです。
西町からの山。八幡神ゆえ、ポール、もとい鉾頭に弓矢が付いているのがわかるでしょうか。


亀岡の山鉾は、見送幕も見逃せません。いや、私は値打ちがよくわかりませんけど。
西陣の大型綴や朝鮮毛綴、鎖国時代でも西洋のブツを導入するなど、色々気合が入ってます。
レアな町並が残る紺屋町の武内山は、見送幕に中国清朝・皇族級の人が用いるという織物を使用。
応神天皇を抱く武内宿称が御神体ゆえ、武内山祇園祭・蟷螂山の旧材を使ってるそうです。


城下町は、道幅こそかなり狭いですが、町自体は案外広かったりします。
全部の山鉾を見て回るのは、可能ではあるものの、結構しんどいです。先回りは、ほぼ無理。
なので、望遠で楽して撮った、本町の三輪山。御神体が大物主なので、神門は見事に、三ツ鳥居
あ、切妻屋根もまた、見事。祇園祭の山鉾も大半が切妻屋根なので、この辺も類似度、高し。


とか言ってる間に、12:45、巡行は何となく終わってました。結構、あっけない。
ここの山鉾は自分の町へすぐ戻れるため、祇園祭の巡行のようなルーズなノリはありません。
巡行のど真ん中である新町・旅籠町がホームの稲荷山は、早くも会所みたいなとこで、御休憩中。
稲穂を天秤棒で背負う御神体・稲荷神さんも、一仕事終えて満足されたのか、実にいい顔です。


完全にお開きムードが広がる13時前、何とか拝めた、呉服町の浦島山
名前の通り、御神体はもちろん浦島太郎。呉服町ゆえか、天水引は極めて上等なんだとか。
お囃子を奏でた子供たちは 「おつかれさん」 と帰され、いくつかの山鉾では早くも解体がスタート。
実に天晴れな城下町と山鉾、そして実に天晴れな天気に恵まれた、良き巡行でございました。


さて帰ろうかと思ったら、朝に出発した還幸列が、城下町へ帰還。
太鼓、花傘、榊、剣鉾2本、唐櫃、トラック神輿、太鼓、そしてまたトラック神輿という布陣です。
行列、帰ってきたと思ったら向きを変え、翁山の三宅町へ。小まめで念入りな巡行ぶりであります。
獅子舞は朝に見かけた時と同じく、そこら中の家々で、押し売りの如く人々を噛みまくり。


しばらくすると還幸列は、今度は本当に戻り、旅籠町通に神輿を安座して、休憩。
「還幸の巡行、見ようかな、どうしようかな」 とか考えながら、回転焼を買い食いして徘徊してると、
街角の八幡神提灯が、凄まじいオンタ+メンタ感を放ってるのに、どうにもこうにも目が行きました。
口と目の、この逝きっぷり。特に、メンタの口のマシナリーなエクスタシー感が、エグ過ぎる。


わけのわからんことに感動しながら、各町の 「街中美術館」 も、拝見。
祇園祭の屏風祭みたいな感じですが、展示お宝アイテムの大半は、城下町らしく、甲冑です。
心暖まる名前の 「手作り甲冑」 なども、とくと拝見。母さんが夜なべをして、甲冑を作ってくれた・・・。
それにしても、腹、減った。でも、飯が食えそうなところ、あまりないな。あ、町家カフェ、あるな。


町家カフェ、ランチやってるな。でも、入るの、何か、恥ずかしいな。
というわけで入るのを止め、腹が減ったままウロウロしてると、15時、還幸列の巡行が再開。
行列は、ひたすら9号線へ向かって進んでいきます。何となくという感じで、私も追いかけてました。
途中、三吉堂の前を通ったので、名物のでっち羊羹を購入。三吉堂、しんこも美味いですよ。


9号線を渡った行列は、いかにも 「今」 の亀岡という感じの新興住宅街を、巡行。
しかし、その先に一の鳥居らしき鳥居が現れ、それを潜ると、こんな田園風景が広がりました。
朝にも近くまで来ましたが、こっちのルートの方が町との落差が激烈で、風景の美しさが沁みます。
行列は、左横の矢田天満宮で一旦休憩。馬は近くの畦道で、文字通り道草をバクバク御賞味。


スーパーマツモト総本店のあたりから別行動だった神輿&ハードな太鼓が、
天満宮で休憩してた行列と合流し、川沿いの 「何この大自然」 な風景の中を練り歩くの図。
とんでもない所へ来たとか思いましたが、この先は普通に住宅地。ここもやはり 「今」 の亀岡です。
あ、でも気温は確実に低いのか、あるいは冷込みが強いのか、この辺から寒さは、激烈化。


さらに住宅地の中を進むと、16時過ぎ、朝も見た鍬山神社・二の鳥居が現れました。
亀山藩主から手厚い保護を受けたという鍬山神社ですが、もちろん地元住民の信仰も篤く、
新興住宅地が増えた現在でも、実にネイティブな感じのほのぼのした神輿の出迎えを目にします。
走り回り続けた獅子舞や、子供神輿も一緒に、行列は境内へ。それにしても、寒い、寒過ぎる。


本殿前まで来ると、行列はお開き。神輿はもちろん、宮入りです。
「バイト集まって」 と呼ばれた連中が、「ホイット」 ではなく 「わっしょい」 で、本殿まで舁き。
京都学園移転するらしいで。学生おらんようになるで。京都から引っ張ってこんと」 という話に、
京都との興味深い距離感を感じつつ、あまりにも寒過ぎるので、私はここで退散しましたとさ。

客層、完全に地元メイン。
20~30代をごっそり抜いた、烏合の衆という感じ。DNQテイストは、極めて希薄です。
観光客はいなくはないし、ツアー団体もいることはいますが、数的に大したことなし。
いわゆる観光ハイのわかりやすく浮かれた人たちは、あまりいないんじゃないでしょうか。
年齢は、平日の昼間だから当たり前ですが、圧倒的に中高年がメイン。
カップル、女性グループ、男性グループ、混成グループ、いずれもほとんど見かけません。
単独は、カメラマンの男。カメラ爺。写真コンテストをやってるせいか、結構多く、素行もエグいです。
単独女は、近所の人以外は、皆無状態。

田舎丸出しの荒っぽいノリでもなく、洛南のような荒んだノリの祭りでもなく、
無駄にプライドの高いものでもく、穏やかで、自然に絵になる、美しい祭ではないかと。
ただ、これだけ見事な巡行だと、この先数年で客数が増えていくのは確実と思われるので、
それに連れ、客筋もいくらか変化していくかも知れません。

そんな亀岡祭の、山鉾巡行。
好きな人と行ったら、より城下町なんでしょう。
でも、ひとりで行っても、城下町です。

【客層】 (客層表記について)
カップル:微
女性グループ:微
男性グループ:微
混成グループ:微
子供:2
中高年夫婦:1
中高年女性グループ:2
中高年団体 or グループ:4
単身女性:微
単身男性:1

【ひとりに向いてる度】
★★★★
色気などのプレッシャーは、ほぼ皆無。
城下町巡行のピークタイム以外は、人圧もたいしたことなし。
ある意味、本家よりも味のある山鉾巡行が、今なら楽に味わえる。
ただ、夕方までいる場合は、寒さに気をつけよう。

【条件】
平日木曜 7:00~16:45


亀岡祭 山鉾巡行
毎年10月25日 10:00 開催

亀山城 城下町
JR山陰線 亀岡駅下車 徒歩約15分

鍬山神社
JR山陰線 亀岡駅下車 徒歩約35分
亀岡市コミュニティバス 鍬山神社前下車
徒歩約2分
 
 
亀岡祭山鉾連合会 – 公式

亀岡祭 – 亀岡市観光協会

亀岡祭 – Wikipedia

鍬山神社 – Wikipedia