金福寺へ紅葉を観に行ってきました。もちろん、ひとりで。

2012年11月19日(月)


金福寺へ紅葉を観に行ってきました。もちろん、ひとりで。

洛北・一乗寺に立つ禅坊、金福寺
「金が貯まって福来たる」 という、現世利益大爆発の寺というわけでは、ありません。
むしろ、その逆です。侘びと寂びの風味を全面に押し出した渋き草庵・芭蕉庵で知られる寺です。
もともとは貞観年間、やたらあちこちに寺を作った慈覚大師円仁の遺志を安恵僧都が継ぎ、
大師自作の聖観音菩薩像を本尊とする天台宗の寺として創建されるも、のちに荒廃。
江戸中期に至って、近所の圓光寺・鉄舟和尚が臨済宗南禅寺派の寺として再興しますが、
この鉄舟がかの俳聖・松尾芭蕉と友達であったため、金福寺は一気に寂への道を歩み始めます。
京都を訪れた芭蕉は、たびたびこの禅坊を訪れ、風雅の道について鉄舟と語り合ったとか。
そして、裏山に建つボロ小屋を見て、こんな句を詠みました。 「憂き我を さびしがらせよ 閑古鳥」。
その句に感動した鉄舟は芭蕉の高風を偲ぶべく、このボロ小屋を 「芭蕉庵」 と命名。
「芭蕉庵」 の名は、近所の村人にまで浸透するようになりましたが、鉄舟が死ぬと寺はまた、荒廃。
熱烈な芭蕉ファンであった与謝蕪村は、荒廃しきった芭蕉庵を憂い、一門と共にまた、再興。
再興の経緯を 『洛東芭蕉庵再興記』 へしたためたると共に、庵の落成時には、
「耳目肺腸 ここに玉巻く 芭蕉庵」 と、耳や目や肺や腸から零れ落ちる喜びを表す句も残しました。
と、俳句に興味ない人間にとっては 「だから何だ」 なエピソードがテンコ盛りの金福寺ですが、
そんな教養のない私にも、そして貴方にも、この寺の紅葉の美しさは理解できるはず。
寂全開でモノクロームな存在感を放つ芭蕉庵に、色を添える紅葉。いいです。凄く、いいです。
なので人もいっぱい来ます。「穴場」 を欲しがるような人が、いっぱい来ます。
そんな人達で大混雑の金福寺、行ってみました。


叡山電車一乗寺駅を降り、詩仙堂を中心とする渋ゾーンへ向かうの図。
白川通を越え坂を登り始めると、道は御覧のように、ゾロゾロ進む人と車でかなりな混雑です。
「車はここで降りてくれ」 という看板を完全スルーのタクシーを見ながら、私も一生懸命、プチ登山。
中谷で丁稚羊羹を買いこむ団体客や、観光案内もする交通整理のおっさんに、秋を感じます。


金福寺への分かれ道で、詩仙堂へ向かう大勢の人達とお別れです。
北山別院をスルーし、辻産業の案内看板に導かれ、それなりに多い同士と共に、金福寺へ。
勝手口みたいな入口から寺へ入りますが、入口すぐの所に村上たか女の弁天があるため、混雑中。
しょうがない、塀の外にはみ出てたタダ見全開の紅葉でも眺めて、少し待ちましょうか。


で、境外へはみ出しまくってる、紅葉。


入口へ戻り、俳聖カルタを売ってる受付と、蹲踞の底の紅葉。


狭くて写真が撮り難いため、通行止状態が続く 「芭蕉庵」 の入口と、紅葉。


中に入ると、実際は無茶苦茶に狭い庭と、紅葉。


おまけに、大半の人間が立ち止まって写真を撮るため、歩く場所がない庭と、紅葉。


スペースを見つけると、物陰にカメがいたりする庭と、紅葉。


芭蕉庵へのアプローチに向かうところと、紅葉。


足を滑らせながら登ってる途中に見た、芭蕉庵と紅葉。


後を振り返ると、本気で登山してる気になる風景と、庭と、紅葉。


近くで見ると、あまりに渋過ぎる、芭蕉庵と紅葉。


でも、もっと近づくと、まともに写真が撮れん、芭蕉庵と紅葉。


どっかのおばさんが、「近くで見るときれいじゃない」 とか言ってる、芭蕉庵内部。


思いっきり背中を反らして撮った、芭蕉庵屋根と紅葉。


あれこれと上手い撮り方はないかと試して撮った、芭蕉庵屋根と内部と紅葉。


何となく撮った 「憂き我をさびしがらせよ閑古鳥」 と、筆者影。


さらに山道化する道を登って拝んだ、与謝蕪村と江森月居の墓。


その墓が眺め続けているであろう京都市街と、紅葉と、2本の樹木。


滑落の恐怖を感じながら下り、本堂で見た、枯山水。
そして、村山たか女の直筆や完熟リョナ絵と共に閲覧した、各種展示。


ボタンを押すと15分も続くたか女の説明を、聞き流しながら眺めた、紅葉。


で、帰り際に見た、村上たか女創建の弁天堂。以上でございます。

客層は基本、中高年の烏合の衆という感じ。
団体こそいませんが、あくまでも観光モードの中高年が多いです。
人数自体はたいしたことがないものの、境内が極端に狭いため、非常に混みます。
カップルは少なく、若者も全般的に少なめ。いやゆる、観光ハイの馬鹿騒ぎはありません。
ただ、高人圧+中高年の観光モードゆえ、特に渋かったり穴場感が溢れてるわけでもなかったり。
ただ逆に、いかにも穴場を狙った感じな自意識が肥大したタイプの人間も、さほどいません。
人数が少ない分、撮影のためだけに来てる男グループ&男単独が放つ、
むさ苦しい存在感は妙に目立ったりもします。

そんな金福寺の、紅葉。
好きな人と観たら、より紅葉なんでしょう。
でも、ひとりで観ても、紅葉です。

【客層】 (客層表記について)
カップル:若干
女性グループ:1
男性グループ:若干
混成グループ:0
子供:0
中高年夫婦:2
中高年女性グループ:3
中高年団体 or グループ:3
単身女性:若干
単身男性:1

【ひとりに向いてる度】
★★★
色気のプレッシャーは、特にない。
狭さと混雑が気にならなければ、特に問題はないだろう。
ただし、穴場を期待すると、肩透かしを食らうかも。

【条件】
平月曜+紅葉ピーク寸前 11:10~12:20


金福寺
京都市左京区一乗寺才形町20
9:00~17:00

叡山電車 一乗寺駅下車 徒歩約15分
京都市バス 一乗寺下り松町下車 徒歩約5分

金福寺 – Wikipedia