2013年への年越しを、嵯峨嵐山で迎えました。もちろん、ひとりで。 【後篇】

2013年1月1日(火)


嵯峨嵐山で迎えた2013年の年越し、続きです。

夜、嵐電嵐山駅へ降り立つと、田舎の匂いを感じることがあります。
匂いといっても、田舎の雰囲気というような話ではありません。物理的な匂いの話です。
田舎の匂いというか、畑の匂いというか。とにかくそんな匂いを、濃厚に感じることがあります。
当然といえば、当然です。近くの嵯峨野には、農業をやってるところが多く存在するわけですから。
とはいえ、昼間の観光客だらけな嵐山では、まず嗅ぎ取ることが出来ない、そんな匂い。
でも、日が暮れて人がいなくなり、店も閉まって辺りが闇に包まれると、息を吹き返す、そんな匂い。
四季を通じて美しい自然に恵まれた嵐山ですが、それら 「観る自然」 とは一味違う、
よりネイティブな自然が息づく嵯峨嵐山の顔を、そんな匂いに見出したりすることがあります。
2013年の年越しで訪れた、大晦日深夜の嵯峨嵐山も、正にそんな 「夜の嵐山」 でした。
「除夜の鐘&初詣巡りの客を乗せた人力車やタクシーが、正月料金で発狂したように荒稼ぎ」 とか、
花灯路に群がるような阿呆の若者が、路上で酒盛り&除夜の鐘乱打&絶叫カウントダウン」 とか、
赴く前は色々勝手な妄想をしてたんですが、現場にはそんな外道な輩の姿、一切なし。
ごく普通に地元の人たちが、昼間の顔とは全く違う観光街を歩いて近所の寺や神社へ出かけ、
ごく普通に除夜の鐘を撞き、ごく普通に初詣を行う姿が、そこにはありました。
あまりにもごく普通にネイティブ過ぎて、メシ食うところを見つけるのにも難儀しましたが、
しかしそのネイティブな姿は、阿呆の若者+阿呆の観光客が多い東山エリアの年越しよりも、
はるかに魅力的で、かつはるかに本来的なものに見えたのでした。
そんな嵐山での年越し、後篇です。前篇以上に、鐘難民の鐘難民ぶり、全開です。
漆黒の嵯峨嵐山を徘徊する気分、存分にお楽しみください。


天龍寺の除夜の鐘が大混雑なので退散し、野宮神社の初詣もパスし、
不気味な竹林の中や暗過ぎる道をトボトボ歩いてやってきた、元旦0:20の常寂光寺、門前。
あけましておめでとうございます。でも、鐘難民である私の2012年は、まだ終わってはいません。
開いてる山門の奥からは、鐘の音が聞こえてます。大丈夫、ここで去年を終わらせる。


普段は拝観料が要るけど、今夜は無料開放になってる山門をくぐり、
激急な坂と真っ暗な足元に震えながら境内に着くと、ここも大混雑で全然終わらないよの図。
やはり地元風の中年家族連れメインの客が、100人ほど、鐘撞きを待ってます。駄目。もう、駄目。
美しい夜景に見惚れ、見惚れたまま滑落する恐怖を感じながら、坂道降りて撤退です、撤退。


常寂光寺を出て、今度こそはと仏に祈りながら、次の二尊院を目指します。
あ、ちなみに写真のここ、落柿舎あたりです。真っ暗で私も確証ありませんが、多分そうです。
電飾オブジェがあちこち林立してた嵐山花灯路の時でさえ、この辺はかなり暗く見えたもんですが、
虚飾を剥いで暗さが剥きだしになると、たまに車でも来てくれないと、写真さえ撮れません。


地元風の人たちの後ろを追いかけるように、足元を伺いながら歩いてると、
ネイティブで心温まる焼き芋&綿菓子の屋台が立った、二尊院門前にたどり着きました。
いや、それとなく話を聞くと、屋台ではなく子供向け接待みたいです。さらに、ネイティブであります。
2012年は 「そうだ、京都行こう」 に取り上げられた二尊院ですが、そんな空気、全くありません。


境内へ向かう紅葉の馬場の石段を照らすのは、キャンドルの行灯。
実に、美しい。花灯路でも似たようなことはしてましたが、人が全然少ない分、実に、美しい。
というか、真っ暗過ぎて人の姿が見えなかっただけかも知れませんが、それならそれで、美しい。
さて、時間は0:40。除夜の鐘も、ぼちぼち終了です。この凛とした美の中で、決めましょうか。


とか思いながら鐘楼へ行くと、ここもやっぱり150人くらいの行列があるぞの図。
「数字の読みの甘い奴は、どんな事業も成し得ぬ」 と、角倉了以像に叱咤される気になります。
どうしましょう。ここで、しばらく待って様子を見るか。それとも、大覚寺のラストへ滑り込んでみるか。
大覚寺へ行ったら鐘撞き終了、こっちへ戻るとこっちも閉門とか、嫌だし。どうしましょう。


そんな不毛な思案をしながら、鐘楼の傍で振舞甘酒はちゃっかり頂くの図。
地元の人たちが座り込んで甘酒飲む姿が、そこら中に発生。極めてネイティブな光景です。
二尊院は本堂も開いてて、お参りすることも可能。といっても、鐘や甘酒ほどの人気はないですが。
実にいい雰囲気であります。が、でもやっぱり大覚寺へ行ってみようと決め、25時前、退出。


「駄目だ、やっぱり間に合わない」 と焦りながら、20分ほど闇の中を歩き、
1:20、人も車も人力車もいない大覚寺門前へ到着すると、「除夜の鐘」 の看板が、健在。
よかった、まだやってた。喜び勇んで入ろうとした瞬間、開放されてた唐門が音を立てて、クローズ。
「ギリアウトか」 と半泣きで池側から境内へ入ると、鐘楼では30人程が鐘待ち中。間に合った。


30人なら、楽勝で待てる。と、行列の最後尾へ並び、ラストの栄誉を得ました。
考えてみると、金を払った2010年の長楽寺を除けば、このネタで鐘を撞くの、初めてです。
初めてだ!初めて、やらせてもらえるんだ!!初めて、金を払わずにやらせてもらえるんだ!!!
と、狂気の感慨に打ち震えながら、大きく振りかぶって、鐘をゴ━━━━━━━━━━━━ン。


鐘を撞くと、傍にいるお坊さんから、有り難いお守りを頂きました。
一緒に節分関係のパンフも頂き、五大堂でお参りしていって下さいとも言われたので、お参り。
もう2時近いですが、五大堂、大混雑です。客はもちろん地元風の中高年と子供。若者、いません。
中では、奉仕のおばちゃんが甘酒やおみくじを推し中。私は、2秒でお参りだけ済ませ、退出。


さて、無事本懐を遂げることが出来たので、帰ります。
が、どうやって帰ろうか。この辺で動いてるのは、阪急だけ。JR嵯峨野線も、終夜運転はなし。
また渡月橋渡るの、何か、面倒くさいなあ。と思って、気がついたら広沢池方面へ東進してたの図。
「もっと面倒くさいことをしてしまった」 と後悔しながら、とんでもない闇の中を歩くこと、しばし。


広沢池の手前まで来ると、児神社の提灯が点いてるのが見えました。
児神社。ちごじんじゃ。この近所に遍照寺を建てた真言僧・寛朝の侍児を祀る神社です。
寛朝の死後、悲しみの余り侍児は池へ身を投げ、それを哀れんだ人々がこの社を建てたんだとか。
あんまり独男には関係無さそうな社ですが、これも何かの縁、ここで初詣をしていきます。


ついでと言ってはあまりにも失礼ですが、広沢池畔の弁財天にも、お参り。
ここであと数時間待ったら、初日の出が拝めるんでしょう。待つ間に、寒さで死にそうですが。
お参りの後は、理由無き東進を再開。元旦2時半の嵯峨野の空は、異常なくらい星がきれいです。
人の姿は、もちろん、なし。でもその割に、公園の公衆便所へ寄ると、人に出くわしたりします。


漆黒の広沢池を去り、漆黒の山越を超え、たどり着いてしまった、福王子神社
近くにある仁和寺の鎮守であり、私の中では七草粥が異常に美味いことで印象的な神社です。
境内は、賽銭箱の入替など初詣準備の真っ最中。もちろんここでも、しっかり初詣をしておきます。
それにしても、えらいところまで来たな。どうせなら、このまま北野天満宮まで歩いてやろうか。


そうだ、北野天満宮と平安神宮では、市バスが臨時終夜運転をやってたはず。
そんなことを思い出して、仁和寺の前を通り過ぎ、完全に眠ってる嵐電各駅の前を通り過ぎ、
一条通の千成餅の 「4月から営業」 張り紙に喜んだりするうち、遂に北野天満宮バス停へ到着。
バスは、四条大宮 or 京都駅への直通のみ。でも、これなら、帰れます。よかった、よかった。


もちろん、天神さんの前まで来ながら、お参りせず帰るわけにはいきません。
ここでもしっかりと、3度目の初詣をやっていきます。と、境内へ入ると、御覧の通りの大混雑。
時間は、午前3時。ボチボチと初詣に出てきた若者たちで、参道は満杯状態。露店もフル稼働状態。
元気が余ってる人間に囲まれると、今までの肉体疲労が急に前景化してきました。しんどい・・・。


もちろん本殿正面は大混雑なので、隅っこの方でチャッチャとお参りを済ませ、
おみくじを引いたら 「あなたの運勢は、このままでは下降線を辿ります」 の中吉が出たの図。
恋愛は 「嘆きの心を祈りに変えて尽くせば、必ず結ばれます」 ですって。このサイト、閉鎖するか。
願望の 「すぐには難しいが、小さな願いごとは叶う」 が、みみっちくて、何だか泣けます。


私の今の小さな願いは、空いてるバスで席に座り、京阪の駅まで戻ること。
小さい。実に、小さい。なのできっと、叶うはず。そう思って臨時バス乗り場へ行くと、大混雑。
満員のバスへ半泣きで乗りましたが、ただ、バスは超高速で爆走し、あっという間に京都駅へ到着。
微妙に願いが叶った感じでしょうか。で、京都駅からは、終夜運転してる京阪七条まで、徒歩。


京阪七条から急行で戻ってきた、午前5時の八幡市駅。
ピークタイムに比べると少なめですが、それでもそれなりの数の初詣客らしき人たちが、
電車同様に終夜運転されてる男山ケーブル乗り場へ向かって、そぞろ歩いて行く姿が見られます。
私も行きたいところですが、疲労でもう、駄目。以上、2013年の年越しでございました。

嵐山の客層は、本文中に書いてる通り、概ねどこもネイティブ寄りです。
いわゆる観光テイストは、とことんありません。むしろ他のエリアよりネイティブ寄りというか。
といって、アウェー感も特になし。ひとりで鐘めぐりしてても、浮くことはないでしょう。
馬鹿騒ぎではない京都の年越しをひとりで楽しみたい向きには、嵐山、割とおすすめかも。
ただ、観光関係の施設がほぼ全部閉まってる分、飲食はかなり不便であることと、
寒さ&道の暗さが半端無いことは、改めて言っておきます。

そんな、嵯峨嵐山での年越し。
好きな人と越せば、よりゆく年くる年なんでしょう。
でも、ひとりで越しても、ゆく年くる年です。

2013年への年越しを、嵯峨嵐山で迎えました。もちろん、ひとりで。 【前篇】
2013年への年越しを、嵯峨嵐山で迎えました。もちろん、ひとりで。 【後篇】

2014年への年越しを、京都で迎えました。もちろん、ひとりで。

2012年への年越しを、京都で迎えました。もちろん、ひとりで。 【1】
2012年への年越しを、京都で迎えました。もちろん、ひとりで。 【2】

2011年への年越しを、京都で迎えました。もちろん、ひとりで。 【1】
2011年への年越しを、京都で迎えました。もちろん、ひとりで。 【2】
2011年への年越しを、京都で迎えました。もちろん、ひとりで。 【3】

常寂光寺
京都市右京区嵯峨小倉山小倉町3
通常拝観 9:00~17:00

JR嵯峨野線 嵯峨嵐山下車 徒歩約15分
嵐電 嵐山駅下車 徒歩約15分
阪急 嵐山駅下車 徒歩約25分

常寂光寺 – 公式
常寂光寺 – Wikipedia 

二尊院
京都市右京区嵯峨二尊院門前長神町27
通常拝観 9:00~16:30

JR嵯峨野線 嵯峨嵐山下車 徒歩約15分
嵐電 嵐山駅下車 徒歩約15分
阪急 嵐山駅下車 徒歩約25分

二尊院 – Wikipedia
二尊院 – 京都観光Navi


大覚寺
京都府京都市右京区嵯峨大沢町4
通常拝観 9:00~17:00

JR嵯峨野線 嵯峨嵐山駅下車 徒歩約17分
嵐電 嵐電嵯峨駅下車 徒歩約20分
京都市バス・京都バス 大覚寺バス停下車 すぐ

旧嵯峨御所 大覚寺 門跡 – 公式
大覚寺 – Wikipedia
 
 
児神社
京都市右京区嵯峨釣殿町
拝観たぶん自由

京都市バス 広沢池・佛大広沢校前下車すぐ
JR嵯峨野線 嵯峨嵐山駅 徒歩約16分
嵐電 車折神社駅下車 徒歩約16分

児神社 – 京都風光 京都寺社案内

福王子神社
京都市右京区宇多野福王子町52-6
拝観終日自由

京都市バス 福王子下車すぐ
嵐電 宇多野駅下車 徒歩約5分
JR嵯峨野線 花園駅下車 徒歩約22分

福王子神社 – Wikipedia
福王子神社 – 京都観光Navi
 
 
北野天満宮
京都市上京区馬喰町
4月~9月 5:00~18:00
10月~3月 5:30~17:30

京都市バス 北野天満宮前下車すぐ
嵐電 北野白梅町駅下車 徒歩約5分

北野天満宮 – 公式
北野天満宮 – Wikipedia