下鴨神社の御粥祭へ小豆粥を食べに行ってきました。もちろん、ひとりで。

2013年1月15日(火)


下鴨神社の御粥祭へ行ってきました。もちろん、ひとりで。

小豆には、魔力が秘められてるんだそうです。
といっても、昭和の相場師を狂わせた 「赤いダイヤ」 云々といった話ではありません。
また、夜の川で小豆を洗うという、何が恐いのかよくわからん妖怪・小豆洗いの話でもありません。
餡子にしたり赤飯炊いたりして食べる、いわゆる食物である、あの小豆の話であります。
小豆が持つ赤黒いビジュアルに、昔の人は何かしらスピリチュアルなパワーを感じてたようで、
年頭&夏越の祓には、その力で邪気を祓うべく、小豆を用いた食物を食す風習を生み出しました。
6月の夏越祓には、氷をイメージした外郎の如き生地に小豆をぶっこんだ、水無月を。
そして年頭に当たっては、白い粥の中で餅と共に小豆が点々と泳ぐ、小豆粥を。
特に小豆粥は、ものごとの変わり目に発生する境界領域に於いてパワーを発揮するとかで、
転居や葬式の際に食べる地方さえあるようですが、最もポピュラーなタイミングはやはり、小正月
宮中では平安時代の頃から、正月最初の満月の日 = 小正月に小豆粥が食されてたそうで、
そのスピリチュアルな食風習は、現在に至るも様々な形で日本全国に残ってます。
京都でも 「1月15日 = 小豆粥」 という認識は家庭の献立カレンダーレベルで根付いてますが、
あちこちの神社もまた、宮中行事を神事化した形で小豆粥の奉納 or 接待を斎行。
中でも、宮中との結びつきが強い上賀茂下鴨の両賀茂社では、御粥祭なるものが行われ、
下鴨の方は有料ながら小豆粥の接待もあるというので、私も出向いてみました。
相場師を狂わせ、謎の妖怪も生んだ、小豆。その魔力を食らう様、とくと御覧下さい。
当日は奇しくも初えと祭もやってたので、その様子も併せてどうぞ。


晴れ間と小雨が交錯する天気の中をやって来た、1月15日正午過ぎの、糺の森。
出町デルタの参道入口からこの辺までは、普段と同じか、あるいはちょっと多いくらいの人出。
穏やかな雰囲気の中、河合神社の 「かりん美人水」 看板が、程よい数の参拝客を出迎えてます。
美容に効く河合神社、美容に効く休憩所が出来たそうで。しょーばいはんじょでささもてこい。


美容に興味も関心も利害もない私は、河合神社を華麗にスルーして糺の森を直進、
榊の付いた南口鳥居を潜って結界へ侵入、赤の呪力が渦巻く御粥祭真っ只中の境内へ。
境界領域にてパワーを発揮するためか、小豆粥接待のテントは鳥居と楼門の間に設置されてます。
「正月の甘酒接待も同じ場所だったけど」 とか、そんなつまらない事、言ってはいけません。


で、テントに近づいて拝んだ 「除災招福長寿がゆ」 の文字。
小豆粥は邪気を祓うのみならず、福を招き、長寿まで叶えるくれるそうです。有難や、有難や。
しかし、粥、残ってるかな。御粥祭は午前中から始まり、神前に粥を奉納する神事も、既に斎行済。
「先着順」 とか言ってた気もするし、売切れだったら、嫌だな。とか思いながら、テントの中へ。


おばちゃん達が奉仕してる受け渡し口へ行くと、御粥、普通に残ってました。
即座に300円のお供えを支払い、木の皿に乗せた粥を受け取って、適当な席に座ったの図。
やや赤味がかってるけど基本的には白い粥の中で、点々と浮かぶ赤い小豆。赤の呪力、感じます。
「なら、赤飯粥食え」 「椀の方が赤いぞ」 とか、そんなつまらない事、言ってはいけません。


「望正月」 の別名もあり、食す粥も 「望粥」 と呼ばれたりする、小正月。
こちらの小豆粥にも、当然のように餅が入ってます。それも、焼き餅。それも、結構たくさん。
味は、ほぼ無味です。素材の味を楽しむ感じの仕上がり。神社らしいといえば、神社らしいというか。
時折姿を見せる米の塊みたいなのもまた、豊かな食感を生み、いいアクセントになってました。


そういえば小豆粥は 「京都・大阪は辛口、江戸は甘口」 と言われるんだとか。
元旦の雑煮が 「白味噌&甘口 vs 澄まし汁&辛口」 なのと逆だなとか思いつつ、有難く完食。
本殿の神様に赤の呪力を頂いたことを感謝し、受け渡し口隣の返却口へ食器を返し、ごちそうさま。
で、退散と言いたいところですが、この日の下鴨神社は初えと祭なるものも行われるのですよ。


下鴨神社の本殿へ入ると、手前に干支ごとのお社が七つ並んでますが、
初えと祭は、干支を守るその社 = 言社の祭で、通常は正月最初の干支の日に行われます。
が、2013年 = 巳年の最初の干支の日は3日のため、初詣の混雑を避けるため、遅らせたとか。
ゆえに、楼門には 「御粥祭」 と 「初えと奉祝祭」 を仲良く併記。それを見守る、干支の蛇。


初えと祭が始まるのは、13時。それまで暇なので、しばし境内をうろつきます。
まず本殿へお参りし、干支社横の 「檜皮奉納のお願い」 を奉納する気もないのに眺めたり。
そこで 「こんな小さいのん入れるだけやと、●●には呼んでもらえへん」 てな話を、盗み聞きしたり。
本殿を出て、松の前に結いつけられたカラフルなおみくじを、意味もなく写真に撮ってみたり。


特に用事も興味もないけど、糺の森をうろついてみたり。
御手洗川 or 奈良の小川 or 泉川 or 瀬見の小川と、やたら名前の変わる川を眺めたり。
全然よくわからないけど、最近発掘され整備されたという古代祭祀の跡を、ぶらぶらしてみたり。
全然よくわからないから、祭祀跡に置かれた 「祭祀」 という表記を写真に撮ってみたり。


で、13時、そろそろ始まる頃かなと思って本殿へ行くと、
ちょうど神職さんたちが社務所を出て楼門をくぐり、本殿へ向かうとこだったの図。


そこそこの見物人が本殿中門の外で見守る中、初えと祭が開始され、
修跋、献饌、祝詞奏上、神職さんによる玉串の奉納などなどが行われてるの図。


で、神事が一通り終わると、見物客にも木の葉の玉串が渡され、
たまたま居合わせた観光客も混じり、それぞれの干支のお社へ奉納するの図。


もちろん、私も混じるの図。どの干支社を参ったかは、内緒の図。
玉串、私がもらったとこで終了し悪いなと思ったら、奉納したのを再利用してました。


そのあと、神饌を下げられ神職さんたちが退場し、宮司さんから挨拶。
今年は初えと祭を遅くしたの件、干支社は朝廷の暦をここで作ってたことに由来するの件、
干支みくじは今日限りなのでよろしくの件などの話があって、トータル30分程の初えと祭は、終了。
で、すぐ横の授与所では、十二支が揃った件の特性干支みくじ500円也を、絶賛発売中。


特製干支みくじ販売の横では、客引きなのか、御神酒の振る舞いも、あり。
ティアラみたいなのをつけた巫女さんが酒をついでくれるため、当然ながら客は、殺到。
エンドレスループで酒をつぎ続ける巫女さんを見て、大変だなあとか思いつつ、当然私も並びます。
御神酒、量は少なめ。味は、もちろん御粥の味でも小豆の味でもなく、普通に酒の味です。


さて、食うものを食い、見るものを見て、呑むものも呑んだので、本当に帰ります。
え。買うものは買ったのか、ですって。ああ、干支みくじ。買ったに決まってるじゃないですか。
写真出すと干支がバレるから、隠してるだけですよ。本当ですよ。買いましたよ。嘘じゃないですよ。
そんな手ぶらの帰り際、御粥のテントを見ると、まだ接待をやってました。時刻は、13:40。


売り切れを危惧して早めに来たけど、ゆっくり来ても充分間に合ったな。
むしろ今時分から来た方が、空が晴れてるから、写真はキレイに撮れたんじゃないかな。
また、食う前にネタを色々拾った方が、良かったな。粥食うだけでは、長尺の記事は作りにくいしな。
そんな下らんことを考えながら、でもまだネタ不足を危惧し、鴨川を飛び石で渡っておくの図。


さらにネタ不足を危惧して、出町妙音堂にも寄っておくの図。
別名、伏見御所の弁財天。元々、この地へ移転した伏見宮の念持仏だったんだとか。
よく知りませんが蛇に縁のあるお堂だそうで、ゆえに蛇年である2013年は人気上昇中だそうです。
確かに狭い境内には、ちょこちょこながら人が途切れることなし。朱印をもらう人の姿も、あり。


「京都で一番キツい」 というおみくじを引いてみたら、見事に凶が出ました。
中は、恐いことばかり書いてあります。恐過ぎて、書き写せません。絵からしてもう、悲惨。
下鴨の干支みくじをスルーしたのが、まずかったんでしょうか。とにかく、枝に結んでさっさと帰ろう。
恐怖くじとさよならして、バス団体と入れ違いにお堂を退散。帰ったら、小豆粥、食べようかな。

この日の下鴨神社の客層は、地元6:観光4、あるいは7:3くらいのテイスト。
観光客自体は普段通りにいる感じでしたが、地元勢が普段より多い感じなので、
バランス的には少なめになってたという感じでしょうか。
地元勢は大半が、中高年。夫婦や親子連れも多いですが、妙齢女性同志が多く見えました。
カップルは、少なめです。はしゃぐ若者グループも、見当たらず。若者自体が、少なめ。
単独は、男女ともチラホラといて、属性もバラバラ。カメは、さほどいません。
特にディープとかネイティブとかいう感じでもないが、やかましい馬鹿騒ぎ感もなく、
淡々としながらもいい感じの行事・神事ではないでしょうか。

そんな下鴨神社・御粥祭の、小豆粥。
好きな人と食べたら、より小正月なんでしょう。
でも、ひとりで食べても、小正月です。

【客層】 (客層表記について)
カップル:1
女性グループ:若干
男性グループ:0
混成グループ:0
子供:0
中高年夫婦:2
中高年女性グループ:3
中高年団体 or グループ:3
単身女性:若干
単身男性:若干

【ひとりに向いてる度】
★★★★
たいした混雑もなく、プレッシャーも特に無い。
また、その逆のアウェー感や浮きを感じることもないだろう。
ただ、小豆粥はあくまでも神社の小豆粥というか、
素朴で淡々とした味なので、妙な期待はしないように。

【条件】
平日火曜 12:30~14:10


下鴨神社
京都市左京区下鴨泉川町59
6:30~17:00

京都市バス 下鴨神社前下車すぐ
京阪電車 出町柳駅下車 徒歩約10分

世界遺産 下鴨神社 – 公式

賀茂御祖神社 – Wikipedia

御粥祭
毎年1月15日 開催