先斗町歌舞練場へ鴨川をどりを観に行ってきました。もちろん、ひとりで。

2013年5月2日(木)


先斗町歌舞練場へ鴨川をどりを観に行ってきました。もちろん、ひとりで。

「おけいはんの民」 にとって、先斗町はよくわからんところです。
あ、「おけいはんの民」 とは、京阪で入洛する同胞を、私が勝手に呼んでる名前。
より厳密に定義すれば 「花街に出入りできない、貧しきおけいはんの民」 となりますが、
とにかく三条大橋 or 四条大橋で鴨川を日常的かつ強制的に渡る必要がある我々にとって、
先斗町はよくわからんというか、微妙な距離感を感じるところだったりします。
何故そんな距離感を感じるかといえば、多分、前を通り過ぎることがあまりにも多いからでしょう。
先斗町のあの狭い路地、いかにもわかりやすい京都的なビジュアルを見せる、あの路地。
我々とて、あそこを歩くことはあります。しかし、その数千倍、前を通り過ぎることの方が、多い。
それも大抵は 「橋増やせよ」 「歩道拡げろよ」 「京阪と阪急の間に地下道作れよ」 と激怒しながら、
人事不詳の観光客や酔客をかわしつつ、この花街の入口を日々通り過ぎているわけです。
人は、通り過ぎることが多い場所に対し、妙に無関心になったり、距離を感じたりします。
子供の頃から目にし続けながらも、中がどうなってるのか知らないし、知る気も全然起こらない。
四条大橋西詰・東華菜館に感じるこんな気持ちを、先斗町にも感じたりするのです。
この感じ、わかってもらえるでしょうか。わかってもらっても、特に何にもならないんですが。
そんな (どんなだ) 先斗町で、毎年5月に行われる舞踊公演が、鴨川をどり
都をどりと同じく、第1回京都博覧会の附博覧として明治5年に創設された、歴史あるをどりです。
総踊がノンストップで爆走する都をどりとは対照的に、セリフ多用の舞踊劇を打ち出し、
始まったばかりの川床と共に、京の初夏の風物詩として愛され続けています。
その鴨川をどり、GW+開幕2日目ながら、飛び込みで行ってみました。
あ、先斗町の読み方が分からん人は、自分で調べて下さいね。


三条大橋東詰から眺めた、先斗町歌舞練場、その異容。
おけいはんの民には見慣れた光景ですが、これから中に入ると思うと、緊張するものです。
劇場建築の名手と言われた大林組技師・木村得三郎設計による、東洋趣味を加味した昭和建築。
どうでもいいですが、建物の左側が 「゚|||゚」 的な顔文字に見えて、しょうがありません。


三条大橋を渡り、若干エロき木屋町通を下ると現れる、鴨川をどりの表看板。
大丸高島屋に支えられ、周辺を徘徊する酔客やエロき民に、雅の世界をアピールしてます。
妙といえば妙ですが、そもそも先斗町は木屋町通を流れる高瀬川の旅客や船頭のための花街。
ここに門があるのは、正しいのです。知らんけど。じゃ、チケット買いに行きましょうか。


13時前、普通席の当日券、あっさり買えました。GWながら、楽勝。
観覧料は、特別席4000円と茶券付4500円、そして普通席2000円というラインナップ。
「どの回にします?」 と訊かれたので、普通席は結構空いてるようです。特別席の入りは、知らん。
私は14時20分の回でお願いしました。席の場所は、問答無用のおまかせ状態。


それにしても先斗町歌舞練場、つくづくと中途半端に、古い。
見慣れているつもりでも、金払った目で改めて眺めると、その古さが生々しく目に沁みます。
建物のみならず、公演スケジュールと時間を告げる看板もまた、アートの域に達した古さを誇示。
昭和が売りのショップが飾るインテリアではありません。これが、2013年の鴨川をどりです。


そんなしょーもない冷やかし客の頭上には、化け物の姿あり。
ふやけたガンダムが、ラリって目玉を破裂させたようなこの化け物こそ、先斗町の守り神。
美貌&美声が過ぎて、面かぶって戦争した中国の蘭陵王、その舞楽面を鬼瓦で型取ったものです。
ロクに金を落とさず写真だけ撮っていく観光客たちに、凄い眼で睨みを効かせてます。


開演まで間があるので、一旦劇場を離れ、昼の先斗町へ。
GW中ながら程よい混み加減の路地を、何か食おうかなとか考えながら、歩きます。
せっかくをどりを見るんですから、ちょっと高めの店で、張り込んだ昼食を楽しんでみましょうか。
そうそう、鴨川納涼床も、もう始まってました。ひとり昼床、いっちゃいましょうか。


とか思いながら歩いてるうちに四条側の出口へ着いてしまい、
「みっけ!!」 と路地を指差す馬鹿をよけて鴨川へ下り、三条まで河川敷を歩くの図。
川床、しっかり出てしっかり営業もしてますが、正直言ってこの日、寒い。もう無茶苦茶に、寒い。
でもだからこそ、どの店も空いてそうなんですけど。さて、どこで食べようかな・・・。


とか言いながら、気がついたら何故か、珉珉三条大橋店に入ってた・・・。
餃子+ライス+スープ+バナナまでついた、麻婆豆腐定食650円を食らってた・・・。
炎と叫びが飛び交う戦場の如き厨房を眼前にして食う、鍋焼状態の麻婆豆腐は、正に炎の味。
その厨房とホールを自在に操るお姉さんの姿は、ほとんど千手観音状態でありました。


珉珉と歌舞練場の距離は、徒歩にしてわずか1分。
しかし、鍋焼麻婆豆腐の麻辣汗はなかなか引かず、熱醒ましでしばし近隣をうろつきます。
珉珉の餃子定食には世話になったなあ、餃子に日替わりの一品がついて500円だったもんなあ、
などと考えながら、全然関係ないお好み焼き・山志づなめで歌舞練場を撮るの図。


閉店以来シャッターが下りたままの状態が続く 『ぎょくえん』 を見て、
往年のあんコーヒーに思いを馳せたりながら、13時55分、いよいよ歌舞練場へ入ります。
玄関前は、狭い道に出る客と入る客が溢れ、ちょっとした混雑。チケット買った時とは、大違いです。
「お茶席のみの入場はお断りします」 の文字を見ながら、おばちゃんや外人と共に、私も中へ。


玄関先でチケットをもぎられ、入り込んだ、歌舞練場内。
夏の京の七夕の時には舞妓茶屋になってたロビーは、本来の業務で賑わってます。
お茶席は4階にあるため、それなりの身なりで4500円を払った人は、エレベーターに乗り上階へ。
それなりの身なりでない貧民や外人団体は、階段で2階へ。私も、もちろん、階段へ。


2階へ行く前、ちょっとバルコニーへ寄っていきます。
舞妓茶屋の時も、無料の電飾に群がる民を見下した場所です。ここまで来てみろ、と。
河原からだとここ、異常に低くて間抜けに見えるなんてこと、関係ありません。俺はまた、勝った。
あ、提灯の千鳥饅頭みたいなマークは、鴨川をどり創設時に作られた先斗町の紋章。


2Fへ行くと、案内の人が席まで連れてってくれましたが、すし詰め状態。
右隣に座ってた妙齢女性の方、周囲へ麻辣の鋭い香りを放ってたのは、私です。すんません。
左隣で男に尻を撫でられてた外人女性の方、餃子臭を爆裂させてたのは、私です。すんません。
共に、をどりの雅なイメージが壊されたとしたら、この場を借りて陳謝しておきます。


私の周囲がすし詰めといっても、会場全体が混んでるわけではありません。
4000円の一階席は9割方埋まってましたが、二階席は半分も埋まってません。何なんだ。
とにかく狭くて窮屈なので、開演ギリまでロビーにて600円で買ったパンフを眺めること、しきり。
公演の内容と、マグロのように酒を抱く元部長など大量の広告に、目を通しておきます。


とか言ってるうちに、14時20分、鴨川をどりは始まりました。
今年の演目は、 『女舞忠臣蔵』 。読んで字の如く、舞妓さんたちが忠臣蔵を演じるものです。
長きに渡って鴨川をどりの座付作者として活躍したという、日本舞踊の脚本家・海津勝一郎の作。
平成11年に上演された作品を、海津氏没後13回忌の追善の意味で再演するんだとか。


鴨川をどりは、北野をどりと同じく、二部構成になってます。
第一幕は、浅野内匠頭の死から大石内蔵助たちの自刃までを描く舞踊、というかもう、芝居。
芸舞妓さんたち、ハードなヅラをガッツリかぶって侍を熱演、実にドラマチックな舞台を展開します。
ドラマチック過ぎたのか、隣の外人は欠伸しながらよりハードに女のケツを撫でてましたが。


何故か録音の拍手が鳴って第一幕が終わると、10分休憩。
すぐ席を立ち、「食堂喫茶」 の文字をポスターで隠した休憩室などで時間を潰します。
そういえば、2階の空席には団体でも遅れて来るのかと思ってましたが、結局は誰も座ることなし。
何だ、空いてるんじゃないか。今からならもう、移動しても別に問題ないんじゃないか。


「席、変わっていいですか」 と案内の人に言おうかと思いましたが、
公式サイトに載ってた求人案内を見てたので、何か、ややこしいことを言う気になれず。
「言うべきことは言うべき」 「仕事は仕事」 「コミュ力がない」 とか言う正しい人が、私は嫌いです。
で、ブザーが鳴り、尻を撫でられ続けている外人女の横へまた着席。第二幕、始まります。


第二幕は、女舞忠臣蔵・見立仮名手本。
忠臣蔵の名場面を、をどりならではの見立てで賑やかに演じるというものです。
芸舞妓さんの数が一気に増え、動きも華やかに。お囃子ボックスも開き、演奏も生になりました。
隣の外人たちも、尻を撫でるのを止め、大喜びで豪華絢爛な舞台に見入ってます。


傘を使って表現されたユーモラスな猪が登場する五段の見立てなど、
観客を大いに沸かせてから、最後はそのまま客を連れて行く形で、桜満開の清水寺へ。
芸舞妓さんがずらりと並ぶ 「花の清水」 の総踊りへなだれ込み、をどりながら幕が閉じて、終了。
休憩をはさんで、トータル約1時間20分の夢の時間でございました。


終われば、お茶席に寄る用もないので、とっとと帰ります。
これでまたしばらくの間、通り過ぎるだけの先斗町となるわけです。ごきげんよう。
あ、そういえば、劇場を出ると玄関前へ舞妓さんが顔を出して、観光客の人垣を作ってました。
客引きでしょうか。そんなに空いてるなら、席変えてくれって言っとけばよかった。

客のメインは、完全に中高年。
観光系ももちろんいますが、案外と地元・近隣系の人も多い感じです。
特に和装の人ほど、地元・近隣っぽい感じ。ただし、客全体の和装率は、一階でも3割程度。
カップルは、ほとんどいません。それ以前に、若者自体がかなり、いません。
桟敷席に、若者か人妻か不明の女性団体がいましたが、まとまったものとしては、それくらい。
混成グループは、全て外人。全員、外人。ユーロ系の、何語かわからん言葉を話す連中。
単独はそこそこいて、女は普通の観光か好き者系、男は普通に独な奴らです。

特別席&お茶席に手を出すと、かなりのアウェー状態が予想されますが、
少なくとも2000円の普通席なら、独男だろうが何だろうが、浮くということはまずないでしょう。
興味がわけば、思いつき一発で立ち寄ってみるのも、いいんじゃないでしょうか。
私と同じ 「おけいはんの民」 で、歌舞練場に入ったことがない方には、
軽い気持ちでふらっと訪れることをおすすめしときます。

そんな先斗町歌舞練場の、鴨川をどり。
好きな人と観たら、よりをどりなんでしょう。
でも、ひとりで観ても、をどりです。

【客層】 (客層表記について)
カップル:若干
女性グループ:1
男性グループ:0
混成グループ:1 (外人団体)
子供:0
中高年夫婦:1
中高年女性グループ:2
中高年団体 or グループ:6
単身女性:若干
単身男性:若干
【ひとりに向いてる度】
★★★
色気のプレッシャーは、全然ない。
2階の普通席なら、特に浮くこともないだろう。
ただし、調子に乗ってお茶席などへ紛れ込んだら、
どうなるか、知らない。

【条件】
GW平日木曜 13:00~15:50


先斗町歌舞練場
京都市中京区先斗町三条下ル

京阪電車 三条駅下車 徒歩5分
市営地下鉄 三条京阪駅下車 徒歩5分
阪急電車 河原町駅下車 徒歩10分

先斗町歌舞練場 – 公式

鴨川をどり
毎年5月開催

鴨川をどり – 公式

鴨川をどり – Wikipedia