壇林寺へ紅葉を観に行ってきました。もちろん、ひとりで。

2014年11月28日(金)


壇林寺へ紅葉を観に行ってきました。もちろん、ひとりで。

琴平町の 『川蝉』 へ結局行かず終いになったことを、悔やんでます。
琴平町は、京都ではなく香川 aka うどん県の町。 『川蝉』 は、そこにあったうどん屋です。
讃岐うどんに魅せられた 「巡礼者」 から、その無茶な値段設定や店主のキャラが秘かに愛され、
いつかは必ずその門をくぐらなければならぬラスボス的な感じで、伝説化さえしていた店であります。
『川蝉』 、私も一度は行きかけました。 「巡礼」 してた頃、行きかけました。が、店前で逃げました。
「日本一うまい」 と書かれた巨大幟&店前に散乱する●●にひるみつつ特攻しようとした瞬間、
店主らしきおっさんが出てきて、手に持つ丼から●●を目の前の川へ●●●したのを見て、逃げました。
見たくない何かを見せられる恐怖を感じて。または、香川に抱く幻想を破壊される恐怖を感じて。
あるいは、自分が吐き散らかした幻想の廃棄物を、濃縮ウランにして返されるような恐怖を感じて。
以来、勝負せねばと思いつつ逃げ続けてたんですが、 『川蝉』 、ストビューで現在地を見ると、更地
結局、私は逃げたままになったのでした。悔やんでます。もうこんなことは、繰り返したくない。
というわけで今回、檀林寺へ特攻したのです。香川から京都へ話を戻し、檀林寺へ特攻したのです。
九相図で知られる檀林皇后が、中国から禅僧を呼んで嵯峨野に建立するも廃絶した元・檀林寺を、
京都観光の大衆化が進んだ昭和の高度成長期になってどっかの誰かが再興した、現・檀林寺。
しかし、その実態は●●●とも言われ、ネット上では●●いだの●●だの●●●●●●だのと泣き喚く者が続出。
京都幻想や京都妄想を機嫌良く吐き散らかした末、 「本物」 ノイローゼに罹った輩に対して、
吐き散らかしたその廃棄物をウラン弾にしてお見舞いしまくってるようなスポットなのであります。
正直、私も避けてました。冷やかし目線さえ、バルタン星人の如くブーメランで返されるかもと感じて。
でも、 『川蝉』 クローズを受け、考えを改めたのです。全ては、諸行無常だと。一期一会だと。
それにここの紅葉は、 『川蝉』 のうどんが案外美味かったと言われるのにも似て、案外、好評。
この機会に、もう二度と悔やまないよう、嵯峨野へ出かけたのでした。


と、悲壮なまでの決意をもって出かけたように言ってますが、本当はそうでもありません。
この日、実は二尊院へ行こうと思ってたんですよね。ただ、嵐山に着いたら曇ってきたんですよね。
私、曇天で写真撮るの、嫌いなんですよね。で、二尊院も行くのをやめようかなと思ったんですよね。
とか思案しながら、嵯峨野をうろつくこと、しばし。嵯峨野、紅葉が盛りゆえ、平日ながら凄い混雑。


で、二尊院の前まで来たら、やっぱり天気が今イチのままなので、入る気が消滅。
門前をバンバカ通るタクシーに轢かれそうになりながら退散し、また嵯峨野うろつきを再開します。
タクシーをかわした後、体当たり爺や前後不覚の着物婆などもかわしてたら、祇王寺前に出ました。
祇王寺は以前紅葉の記事を作ってますが、そういえばその隣の滝口寺は、まだです。行っとくか。


と思って、濡れ落葉が多い道を歩いて滝口寺へ向かう途中、檀林寺の前へ出ました。
咄嗟に、 「やるか」 と思いました。 「入るか」 とか 「行くか」 とかではなく、 「やるか」 と思いました。
先述の通り、オリジナル檀林寺は檀林皇后が創建した寺。場所は、現在の天龍寺の辺とされてます。
では、ここは何なんだと問われたら、松森山法宝閣・檀林寺門跡です。だから、 「やる」 なのです。


塀には、門跡印の五本線。さすが、門跡です。何せ自分で名乗ってるから、門跡です。
「いいのか」 と思われるかも知れませんが、そもそも明治4年以後の門跡は基本、全て 「私称」 。
言い切れば、何であろうと真実になります。京都は、そんな呪術が今尚効力を持つ、魔都なのです。
ただ紅葉は、ナチュラルにナイス。ヤバい金をかけてる匂いは、しません。いい機会だし、やるか。


踏み込んだ門跡の門には、怪しいといえば限りなく怪しい貼り紙が、あれこれとあり。
ただ最近、この正面に祇王寺の売店が出来たため、以前ほど商魂的浮き加減は感じませんけど。
奥の受付で、入場料ではなくあくまで拝観料400円を支払い、中へ。受付のおばちゃんは、割と普通。
ただ、券とパンフがあるのに、くれたのは券だけ。速攻で冷やかしと見切り、パンフはケチる気かな。


とか思ってたら、おばちゃん、わざわざ受付から出てきて、案内を始めてくれました。
来たなあと思いましたが、案内自体は 「本堂へ行ってくれ」 や出口の場所など、ごく普通の内容。
おばちゃん、ひと通り説明してくれた後、パンフをくれ、受付へ戻っていきました。やっぱり、割と普通。
紅葉は、盛り過ぎという感じ。ただ、この辺の紅葉らしく、落葉の枯れた感じがいい味を出してます。


で、侘な気分でしばし眺める、紅葉。


侘な気分で眺める、紅葉。


侘な気分で眺める、紅葉。


侘な気分で眺める、紅葉。


何たらカエルが住む瓢箪池を埋める、紅葉。


何たら橋をも埋める、紅葉。


水面はおろか水中までもぎっしりと埋める、紅葉。


振り返れば、竹林と、紅葉。


また振り返れば、何らかの建物と、紅葉。


そして足元には、何らかの鉢に溜まった水と、紅葉。


と、庭園を見てたら、受付のおばちゃんがまた来ました。いよいよ本気で、来たなあ。
「この落ちた葉の感じがこれまたいいでしょ。よう座りはって下から葉っぱを撮りはるんですよ」 と、
しゃがみ込みを促すので、御覧の如くしゃがみ込みましたが、おばちゃん、その後はすぐ受付へ帰還。
おばちゃんはむしろ客引きに御執心で、外人にも 「The Garden 何ちゃら」 と声を掛けてました。


で、また庭園鑑賞に戻り、何らかの子持ち仏像と、紅葉。


何らかの燈籠と、紅葉。


何らかの陵と、紅葉。


と、しばらく見てたら、受付とは別のおばちゃんが来て、 「本堂行ってください」 。
「法宝閣造り、法楼風を残した特殊な構造の典型、よく旧態を示している」 とパンフにあるものの、
私の腐った目にはどうにもこうにも昭和の秘宝館にしか見えない本堂へ行くと、おっちゃんがモギリ。
で、おっちゃん、モギリをするだけでなく、がっつりへばりついてブツ解説を始めました。来たなあ。


こちら檀林寺の本尊は、檀林皇后を象ったという准胝仏母尊で、藤原時代製。
そう、藤原時代製です。 『藤原時代』 という町工場が作ったのではありません。藤原時代製です。
言い切れば、何であろうと真実になります。京都は、そんな呪術が今尚効力を持つ、魔都なのです。
賽銭入れて拝むと、おっちゃんはその時だけ黙り、終わると 「ありがとうございます」 。割と普通。


賽銭入れるとこ見せたら、何かにターボかかるかと思いましたが、対応はずっと普通。
本尊以外にも、何ちゃらかんちゃら像や何ちゃらかんちゃら図などを、普通に説明してくれました。
ただ、ブツの陳列のされ方、およびブツに添えられた但し書きの内容は、かなり普通ではありません。
「卑弥呼の鏡」 や 「空海の自筆」 に加えて、平安期ものや奈良期ものがゴロゴロ転がってます。


「ゴロゴロ転がってる」 というのは、比喩ではありません。実際に、ゴロゴロ転がってます。
大半はケースにも入れられず放置されてる、平安期や奈良期、あるいはそれより昔のブツの数々。
平安期の盆の中に奈良期の何かが放り込まれてたり、ケースの隅は隅で菊紋の瓦が溜まってたり。
さらには、真面目に空海について語ってるおばさん客がいたりして、正に 「状況、カオス!」 です。


1000年前のアイテムを間近で見過ぎたせいか、何か凄く疲れたので、本堂を退出。
本堂入り口では絵はがきセットが売られてましたが、これを売りつけられるということも特になし。
退出する際に深くおじぎをしてくれたおっちゃん、客を見て、売りつけるのかな。ない気がするけどな。
何か、謎。とか思いつつ本堂を出ると、正面に自称・桃山時代の灯籠があり、また面食らうの図。


謎な気分のまま、改めて庭園にて眺めた、紅葉。


謎な気分のまま、さらに眺めた、紅葉。


で、帰ります。帰る際も、丁寧に 「お参りありがとうございました」 と言われました。
壇林寺は、鏡なのかも知れません。下衆な期待をして入ると、下衆な己の姿を見せられるという。
私には 「昭和期京都観光の変種、その動態保存」 に見えた壇林寺、あなたにはどう見えるでしょう。
門前で入ろうかどうか迷い、 「ここ、大丈夫なん?」 とか言ってる連中の声を聞きながら、退散。

客は、観光系の女性2人組が数組いたのと、
単独男数人 (中年+中国系若者) 、単独女数人 (中年+普通の観光系) 。
単独は、 「?」 という微妙な顔をした奴が多かったので、間違って入った系の可能性、大。
逆に、冷やかし丸出しで 「ディープ京都」 とか言い出しそうな奴の姿は、あまりなし。
マジな寺と思ってる人もいて、池を見て「あんなに葉っぱが溜まってると、上を歩けそう」 とか、
帰り際に 「いいもの見せていただきました」 とか言ってる妙齢女性もいたりしました。
まあ、御覧のように紅葉は実際にいいんですけどね。拝観料は充分ペイしたと、私は思います。
こういうスポットを楽しむ心や愛せる心が無い人には、かなり痛い経験にはなるでしょうが、
京都、あるいは観光とは何かを考えるなら、一度は行くべき場所なのかも知れません。

そんな壇林寺の、紅葉。
好きな人と観たら、より川蝉なんでしょう。
でも、ひとりで観ても、川蝉です。


【ひとりに向いてる度】
★★★★
世間的に言われてるほど、エグくはない。
後は、あなたの心次第。

【条件】
平日金曜+紅葉盛り過ぎ 14:20~15:00
 

檀林寺
京都市右京区嵯峨鳥居本小坂町2-10
9:00~16:45 火曜定休

嵐電 嵐電嵐山駅下車 徒歩約20分
京都市バス or 京都バス
嵯峨釈迦堂前下車 徒歩約10分

檀林寺 – Wikipedia

檀林寺 – 京都観光Navi