妙満寺の釈尊成道会・大根だきへ行ってきました。もちろん、ひとりで。

2014年12月7日(日)


妙満寺の釈尊成道会・大根だきへ行ってきました。もちろん、ひとりで。

当サイトは、10月を過ぎた頃から、一気にアクセス数が下がります。
理由は、明白です。稼ぎ頭である川床記事鱧記事への訪問客が、激減するからです。
その下がりっぷりは、 「見てて凹む」 などという段階を遙かに越え、もはや面白い程のレベルであり、
「人は所詮、食い物にしか興味を持たない」 という真実を思い知らされること、しきりであります。
が、そんな人の業を嘆き悲しんでいても、あるいはボヤき揶揄していても、仕方ありません。
それに、この業を逆に捉えるならば、アクセスを稼ぐ方法が眼前に示されてるとも言えるわけです。
そう、要は何か、食い物を扱えばいい。秋以降の京都に於ける食い物ネタを、何か扱えばいい。
湯気がぼわ~っと出てる美味げなもので、なおかつなるべく値が張らないものなら、尚のこと、いい。
そこで、大根だきですよ。冬の食い物ネタとして、大根だきですよ。何か仏罰必定な気もしますが。
鳴滝・了徳寺の大根焚きを筆頭に、あちこちで冬の風物詩として行われる、京都の大根だき。
当サイトでも、表の動機としては仏の御心に触れるべく、裏の動機としては冬の食い物ネタ採取として、
了徳寺千本釈迦堂などいくつか大根だきを食ってきましたが、今回出向いたのは、妙満寺です。
妙満寺。妙なことが満ち溢れてるというわけではない、顕本法華宗総本山、妙塔山妙満寺であります。
現在は岩倉にあるこちらの寺が、日什大正師により創建されたのは、1389年の六条坊門室町。
秀吉の時代には寺町二条へ移転し、以後400年に渡り 「寺町二条の妙満寺」 として知られますが、
現代に入ると都心部の喧噪が如何ともし難くなり、昭和43年に比叡山麓たる現在地へ移転。
移転はしたものの、 「成就院 雪月花の三名園」 と称された松永貞徳造営 「雪の庭」 は健在であり、
むしろ比叡の峰を借景に得たことで、冠雪の眺望がかつてよりも高い評判を呼んだりしてます。
そんな冬に絡んだ名声も高い妙満寺、駄目押しなのか、初冬には釈尊成道会として大根だきも開催。
で、その大根だきへ、妙なる動機に満ち溢れた精神をもって寄せて頂いたというわけです。
冬&アクセスを呼ぶであろう大根、 「雪の庭」 と共に堪能してきました。


市営地下鉄・国際会館駅を出て、11時開始の大根だきのため妙満寺へ向かうこと、しばし。
妙満寺の本当の最寄り駅は、叡山電車・木野駅。私は諸般の事情により、地下鉄から20分徒歩。
国際会館方面から見る岩倉南部は、丸っきり開発された郊外ですが、時折思い出した様に畑も出現。
見かけた畑では、大根 or かぶの姿あり。妙満寺の大根だきと、関係があったりするんでしょうか。


何故か箱物という印象が沸くブックオフ京都宝ヶ池店王将宝ケ池店などを見ながら、
宝ケ池通を西へ歩いて行くと、普通の住宅が増え始め、それに伴い路上の飛び出し小僧も増加。
それでも、また箱物という印象が沸くライトオン京都岩倉店を見て 「こんなとこに寺あるのか」 と思い、
日日を間違えたのかとさえ考えましたが、寺へ近付くと御覧の大根だき幟が出てて、ちょっと安心。


昭和43年移転を妙に実感させる昭和テイストな駐車場&看板を抜け、到着した、妙満寺。
比叡山三千の学頭にまでなりながら、歳67にして宗を改め日蓮聖人門下へ入った日什大正師が、
68歳ににして入洛、後円融天皇より二位僧都の位と洛中弘法の綸旨を賜わり創建した寺であります。
その思いを門前の池の鯉と噛みしめたいですが、大根が売り切れるといけないので、さっさと中へ。


門すぐの所にあるには、この寺が転々と移転を重ねた件についての文が掘られた石碑あり。
妙満寺が最も長く所在したのは、寺町二条。梶井が妙な気分となり檸檬を買った、あの辺ですね。
しかしその地でも焼失は何度も食らい、戦中には強制疎開も食らい、戦後には都市化で結局、移転。
苦難多き寺史へ思いを馳せたいところですが、大根が売り切れるといけないので、さっさと中へ。


あ、大根売り切れを気にするのは、私が一度、売り切れの憂き目に遭ってるからです。
その時は、13時の時点で売り切れました。現在は、12時半過ぎ。少し焦りながら、妙満寺境内へ。
境内はテントと床机が並び、大根だき真っ最中。妙なもので満ちてるということは、無論、ありません。
あ、左奥の仏舎利大塔は、若干妙なインパクトを誇ってますが。日本初のブッダガヤ大塔建築とか。


手前のテントに設けられてた受付にて500円を支払い、黄色い大根チケットをゲット。
加えて、 「よろしかったら、どうぞ」 とお札まで頂きました。玄関に貼るとよろしいのだそうですよ。
受付横には、月見団子を供えるような大根のディスプレイあり。種類は、聖護院ではなく普通の大根。
周囲では、奉仕のおっちゃんの 「もう黄色いのん、売らへんのやな」 の声あり。やはり、際どかった。


で、小振りな鍋が並んでる隣のテントへ移動し、チケットと交換で頂いた、大根だき。
椀の中には、大根2切れと揚げ。大根に柚子をトッピングするのが、妙満寺流。いや、知らんけど。
大根、さっきのディスプレイでは普通の大根に見えましたが、こちらはカットもサイズ自体も、大きめ。
大きさも、そして寒さの中で食欲をそそる強度も、正に聖護院級です。では早速、食いましょうか。


いや、そんな俗な食欲に捕われることなく、釈迦の覚醒にこそ思いを馳せて食うのが、
釈尊成道会・大根だきの本義ではないかと思いつつも、箸はノンストップで大根を突きまくるの図。
大根、味付け&煮込み加減は、他と比べるとややレア寄り。いわゆる真っ黒系とは逆のテイストです。
ただ、芯が残ることは無論なく、出汁と共に甘味も利き、少し残されてる皮の食感も実に、ナイス。


ひっきりなしに近所の親子連れがやって来る中、屋根の無い床机の隅っこに座り、
小さい子供たちが私には見えない何かと遊んだりするのを眺めながら、あっという間に大根を完食。
バキバキに手慣れてる大御所の大根だきとは違い、ある意味で町内会の模擬店的なテイストであり、
故に売り切れで食べられない地元の方がいたら申し訳ないとも思う、そんな大根だきでありました。


で、食器を返しに行ったら、お茶まで振る舞われたので、床机を見ながら飲むことしばし。
その場で立って飲もうとしたら、 「座ってゆっくりどうぞ」 と言われました。すんません、行儀悪くて。
あ、ちなみに妙満寺、大根炊きが開催されるこの辺は、入場無料。さっきの仏舎利大塔も、拝観無料。
大根炊きの料金だけで大根炊きが頂けます。 「雪の庭」 とかは 「雪の庭」 の料金が要りますけど。


で、お茶も飲み終わったら、拝観無料の境内をしばしうろつきます。
御覧のように巨大&昭和チックで、放送で延々南無経が流れてる本堂を眺めたり。


本堂側から見てもアジアンテイスト爆裂な、妙味溢れる仏舎利大塔を眺めたり。


その仏舎利大塔を案内に書かれた通り三周しながら、埋め込まれた仏像を拝んだり。


とかやってるうちに、滅多に来れない寺ゆえ有料ゾーンも気になってきて、入口の寺務所へ。
誹諧の祖・松永貞徳が、当時の住職との縁で造営したという 「雪の庭」 、やはり見とくべきでしょう。
寺務所へ入って受付の呼鈴を押すと、穏やかなお坊さんが出てきて、拝観料250円を支払い、中へ。
あ、玄関の看板には 「拝観料300円」 と書かれてましたが、今日は大根だき割引なんでしょうか。


で、 「雪の庭」 。雪はないけど、 「雪の庭」 。


雪はないけど駒札はある、 「雪の庭」 。


雪はないけど石と砂と樹はある、 「雪の庭」 。


雪はないけど手水はある、 「雪の庭」 。


雪はないけど灯籠はある、 「雪の庭」 。


で、奥には展示室があり、そこで 「安珍・清姫の鐘」 も見ることしばし。


展示室には日什大正師のライフヒストリー展示などもあり、それも見ることしばし。


で、展示室を出てもう一度見た、雪はないけど庭はある、 「雪の庭」 。


で、寺務所を出たら、14時前。食うもん食って見るもん見たので、ぼちぼち帰ります。
帰り際、給仕のおばちゃんが来客に謝ってました。大根、やはり売り切れのようです。何か、すまん。


そういえば来た時は、その売り切れを恐れ、門前の池をじっくりと見てなかったのでした。
というわけで帰りがけ、悠々と泳ぐ鯉の勇姿を、どこの誰とも知らぬ子どもと共に見ること、しばし。
で、じぃ~っと見てたら、 「大根だきは終了しました」 という放送あり。売り切れを通り越して、終了と。
地元の方の分を分捕るのは恐縮ですが、それでも妙なる大根が食いたいという方は、お早めに。

客層のメインは、地元の親子連れです。
文字通りの家族連れであり、周囲の近郊郊外住宅地テイストを反映してか、
小さい子どもを連れてるような若い家族が客の大半を占めてます。
無論、中高年もいることはいますが、他の大根だきほどの集中動員感はありません。
カップルは、ほとんどなし。というか、若者自体の姿が、そもそもほとんどなし。
好き者らしき姿も見かけず、逆にディープな信徒感もまた、特になし。
単に近所の人が多い感じですが、それ故のネイティブ感やアウェー感もまた、希薄気味です。
単独は、老人の男女がチラホラいるくらい。好き者の姿は、やはりなし。
庭の客は、中高年夫婦ばかりで、あと妙齢の単独がチラホラいる程度でした。

そんな妙満寺の、釈尊成道会・大根だき。
好きな人と食べたら、より妙満なんでしょう。
でも、ひとりで食べても、妙満です。

【客層】 (客層表記について)
カップル:0
女性グループ:0
男性グループ:0
混成グループ:0
子供:0
中高年夫婦:2
中高年女性グループ:1
中高年団体 or グループ:7
単身女性:絶微
単身男性:微
【ひとりに向いてる度】
★★★★
色気や人圧のプレッシャーは、特になし。
また、ネイティブゆえのアウェー感も、さほど感じない。
ただ、早めに行かないと、本当にすぐ売り切れる。

【条件】
日曜 12:30~14:00


妙満寺 大根焚き
毎年 12月第1日曜 開催

妙満寺
京都市左京区岩倉幡枝町91
9:00~16:00

叡山電車 木野下車 徒歩約3分
京都バス 幡枝 (妙満寺)下車すぐ 
市営地下鉄 国際会館駅下車 徒歩約20分
 

総本山妙満寺 – 公式

妙満寺 – Wikipedia