ホテル洛西で聖夜を過ごしました。もちろん、ひとりで。 【前篇】

2014年12月24日(水)


大枝・沓掛のホテル洛西で聖夜を過ごしました。もちろん、ひとりで。

メリークリスマス!!当サイト恒例の聖夜お泊まりネタ、2014年度版です。
異教の宗主生誕を姦淫&浪費で祝福する日本のクリスマスに、背を向け続けるこの阿呆企画、
プレハブ宿 or 寺の宿坊 or 町家宿一棟借りと、2010年より阿呆なお泊まりを延々続けてきましたが、
しかし2013年に至り、こんなアホ企画も何かしらテーマ的なものを孕むことになってしまいました。
2013年の聖夜を過ごしたのは、私の地元・八幡にある遊廓跡・橋本。そこの転業旅館・多津見旅館
京都と大阪の国境にして石清水八幡宮門前という、実に 「境界」 的な地で聖夜を過ごした結果、
私は、仇敵・クリスマスの本質の如きものとして、 「境界」 を意識することになってしまったのです。
本来の起源がローマの 「太陽神誕生祭」 = 冬至の日であるように、根元から様々な 「境界」 を孕み、
その 「境界」 性が、遊興や性的放埓へ人を駆り立てる魔力を発揮してると思われる、クリスマス。
そんな本質の如きものが、見えてしまった。単なる思いつきではあるものの、一応、見えてしまった。
見えてしまったのなら、追求すべきです。発端が思いつきであっても、テーマは追求すべきです。
というわけで、この適当テーマの深化を図り、2014年聖夜も 「境界」 にて過ごすことにしたのでした。
今回泊まったのは、ホテル洛西。西京区・大枝に建つ、ラブホが転業したホテルであります。
山陰道で京都から丹波へ抜ける老ノ坂の入口に位置し、古より国境として認識され続けてきた、大枝。
それ故に、都の北西 = 乾の方角より侵入するエイリアン = 鬼の住む地なる伝説も長く持つ、大枝。
現代にあっても、 「境界」 に多発しがちな心霊スポットを京都最強 or 最凶レベルで複数保持し、
これまた聖と聖が交錯する 「境界」 に多発しがちなエロゾーンも、現役ラブホ街としてしっかり保持。
郊外の開発で見え難くなった 「都の境」 を、ある意味、最も生々しく現在へ伝える場所なのです。
今回泊まったホテル洛西は、そんなラブホ街の一軒であり、一般ひとり客の宿泊も大丈夫なホテル。
「境界」 的な場所に建つゆえ、アクセスは若干不便ながら料金お手頃+部屋確保も楽とあって、
繁忙期に宿泊場所で困った観光客を中心として、色んな意味で色んな注目を集めてる宿であります。
そんな元ラブホでの聖夜お泊まり、件の心霊スポット訪問などと併せて、やらかしてみました。
クリスマスの本質は、 「境界」 が孕む魔力の本質は、見えるのでしょうか。


17時過ぎ、阪急・桂駅より京阪京都交通の国道線・JR亀岡行きバスに乗るの図。
ホテル洛西は、同路線の 「薬師湯前」 が最寄り停留所。本数は、毎時2本程度。鉄道は、なし。
「薬師湯前」 手前にある凡庸なニュータウン・桂坂方面なら、もっと大量にバスが走ってるんですが。
夕方の桂駅周辺は、これまた凡庸なベッドタウンの風情。境界感も、京都感も、全くありません。


が、このバスが 「これより狭い道を走ります」 と前置きしてから走る道は、旧山陰道
七条大宮辺りから始まり、この先の老ノ坂峠を越えて出雲へと通じる、日本最古の道であります。
「狭い道」 の辺は、洛内通過を禁じられた参勤交代の大名行列がよく通りよく使った、宿場町・樫原。
バスはそんな宿跡の前をクネクネと走りますが、狭くて揺れまくるので写真はロクに撮れません。


旧道を抜けたバスは、山陰の方々には馴染み深い現代の山陰道・国道9号線へ進入。
この辺は、昭和の高度成長期に建設された、桂大橋西端から峠の手前までの新建設区間です。
周囲にはわかりやすいロードサイド店舗が並び、そして道を見切った大量の地元車が爆走してます。
私も子供の頃、親の南丹への帰省でよく通りました。昔はもっと車線が少なかった気もしますが。


とはいえ帰宅ラッシュ時ゆえ、道幅が増えても道は混み気味であり、バスも遅延気味。
八幡から京都市街をバイパスし北上、この辺でR9入りしたのを思い出しつつ揺られること、しばし。
大枝は、西国方面との結節点でもあるのです。最近は、 「にそと」縦貫道がここで繋がりましたし。
とかいってる内に、その縦貫道の高架の真下にある 「薬師湯前」 へ到着。降りたのは、私ひとり。


で、降りた先にはいきなり、大量のラブホ。ホホホホホホホホホホホホホホホホホホ。


ホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホ。


ホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホ。


ホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホ。


近所の成章高校の子が自転車で爆走するのを避けながら、ホホホとラブホ街を歩き、
現R9と旧R9の合流点まで進むと、藪の中に 「ホテルアップル」 という恐ろしい看板が出てたの図。
これから行くホテル洛西は、この 「ホテルアップル」 が一般ホテル化したもの、だと思います。多分。
どこにも 「ホテル洛西」 という文字はありませんが、書かれてる電話番号は紛れも無く、同じです。


で、ホテル洛西がある旧道へ入れば、またしてもホホホホホホホホホホホホホホホ。


ホホホと歩いてると、また同番号の 「ゲストハウス」 看板があり、別の意味でホホホ。


で、 「ホテルアップル」 &名も無きゲストハウスと同番号を掲げるホテル洛西に、到着。
よく見えませんが、敷地にはモーテル以外の何物でもないワンルームワンガレージ的な棟が林立。
モータリゼーションが進展した高度成長期 = R9の発展期に誕生したことを窺わせる風情であります。
完全なる転業では無く、客に合わせてラブホにもゲストハウスにもホテルにも化ける感じでしょうか。


入口には、ケバケバしいというより健気とも言える、根性のイルミネーションあり。
クリスマス仕様なのかどうかは知りませんが、何にしても、手作り感は過剰なくらい溢れてます。
独男的には 「敵」 なラブホ、近年は住宅環境や性意識の変化などにより、経営が大変らしいですね。
あと、一般ホテルがラブホ商売を始めたのも、大きいとか。で、ラブホは一般ホテル商売をする、と。


イルミ以外は暗い敷地へ入り、フロントを探すと、 「受付」 と書かれたプレハブあり。
背後に思いっきり 「アップル」 の看板があり、ここでいいのかと迷いましたが、他に 「受付」 はなし。
で、行くと、開いてない。 「人が居なければ電話くれ」 的な張り紙がありましたが、中には人が居ます。
で、ノックしようとしたら、横からおばちゃんが現れ、受付に入ってくれました。対応は、そういう感じ。


楽天からの予約だったので画面を見せようとしたら、おばちゃんは見る気、全くなし。
特に何を確かめるわけでもなく手続きを始め、宿泊料金2990円を支払うと、鍵を渡してくれました。
一応門限を確認したら、おばちゃん曰く 「別に無い」 と。ただ翌日のチェックアウトは 「10時までに」 。
で、指定された部屋がある棟へ。で、思いっきり 「アップル」 の名が残る玄関を通り、2Fの部屋へ。


階段を登ってると、設備の更新が止まったであろう時代の残り香を感じさせるデコ、あり。
この記事用に、数少ないラブホ書の一冊である金益見 『性愛空間の文化史』 を読んだんですが、
ラブホの変遷を追ったこの本は、 「ホテルが消えてラブが残った」 的な言葉で締めくくられてました。
それに倣えば、ホテル洛西はさしずめ 「ラブが消えてホテルが残った」 施設という感じでしょうか。


でも、ドアを開けて中へ入れば、割とラブが残ってる感じの部屋。


かなりラブが残ってるというか、ラブ以外の用途が考え難いベッド。


ラブ以外も一応想定してるコーヒー、でもその奥の窓の仕様は、ラブ。


で、またしても 「アップル」 名義の案内が乗るテーブル。こんな感じであります。
どうにもこうにも見たまんまな古ラブホですが、ゆえに、寝るのには困ることが無いクオリティです。
これで、3000円弱。アクセスの若干不便さ+外観の激しい風味を考えても、まあこんなもんかな、と。
案内には、 「亀岡牛ステーキ 8000円」 の文字。誰が食うんでしょう。そして、誰が焼くんでしょう。


亀岡牛は遠慮して外で飯を食いますが、その前に 「境界」 の本丸へ挨拶しときます。
「境界」 の本丸とは、言うまでも無く、老ノ坂にある首塚大明神と、モーテル・サンリバーの廃墟跡。
もっと遅くに行った方が霊気も上がるというもんですが、老ノ坂から帰れるバスが無くなるんですよね。
で、一旦、退出。出る際に気付きましたが、棟の玄関前にはナンバープレート隠しも、完備。ラブ。


首塚には酒呑童子の首が埋まってるので、何かクリスマスらしい酒でも持ってくか。
そう思い、R9を東へ10分ほど歩いて、酒が買えそうなコンビニが並ぶ沓掛交差点の辺へ来たの図。
沓掛。峠の入口であることを明確に示す地名です。実際、かつては旅人相手の商売で賑わったとか。
丹波の産物が京坂へ運ばれる際の経由地であり、旅籠・煮売り屋・茶屋などが並んでたそうです。


ただ現在の沓掛は、車で簡単に峠を越えられる為か、さほど楽しい店は見当たりません。
面白い酒を置いてそうな店も見当たらず、結局サークルKでしょぼいスパークリングワインを購入。
芸大がすぐ近くですが、それっぽい輩も見かけず。やはり、現代にして現役のロードサイドであります。
そんなロードサイドの 「国道沓掛」 から、亀岡行きバスに乗車。現代から古の国境へ、出発です。


いっぱいの高校生を乗せ、また成章高校の前でどっと生徒を乗せ、バスは老ノ坂を登坂。
ラブホ街を抜けると道が急に狭化しますが、これは純粋な古道ではなく、明治に出来た通称・新峠。
疏水を引いたことで知られる北垣国道田辺朔郎が、京都・宮津間道路の一部として作った道です。
が、それでも十二分に狭く、そしてグニャングニャンであります。私も子供の頃は、よく酔いました。


急坂緩和の為、とことんグニャングニャンなR9を走り続け、バスは 「老ノ坂峠」 に到着。
一応、付近に数軒の民家や霊園もある所ですが、降りたのは当然というか何というか、私ひとり。
あ、 「老ノ坂」 という名前はよく考えれば妙な名前ですが、これは大枝 = 大江の坂がなまったもの。
旧道は、ここより少し南を直線&激坂で登っており、首塚はその峠の天辺付近にあるわけです。


バス停から西側へ少し進んだ辺りには、新峠建設の際に掘られた老ノ坂トンネルあり。
このトンネルもまた心霊スポットとして有名ですが、何度も通ってる私には実感不能ゆえ、省略。
首塚がある旧道へは、御覧のトンネル京都側出口、その手前で分岐する狭い脇道から向かいます。
脇道は、画面左側に拡がる漆黒の闇の中の道です。この中へ、突っ込んで行くのであります。


で、暗闇の中にいきなり現れた、サンリバー跡。ホホホホホホホホホホホホ。


ホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホ。


ホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホ。


ホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホ、という感じでございます。
恐らくはホテル洛西と同じく、 「作れば儲かった」 時代に作られたであろう、モーテル・サンリバー。
こちらはラブもホテルも残さず、廃墟と都市伝説だけを残して、 「境界」 の彼方へ旅だったわけです。
それにしても、暗い。肉眼で、何も見えない。霊感が無い私以上に、カメラのAFが霊的挙動不審。


サンリバーに合掌してから、更なる本丸たる首塚に向けて、もっと真っ暗な道を歩きます。
この辺は近世以後、峠町として繁栄。旅籠屋・茶屋・煮売り屋が並び、編笠餅が名物だったとか。
かの伊能忠敬も測量中に宿を求めたそうですから、それなりな規模の町だったのかも知れません。
が、山陰道がさっきのR9に移ってから、こっちは寂れたわけですね。というわけで、以下は後篇。

ホテル洛西で聖夜を過ごしました。もちろん、ひとりで。 【後篇】 へ。


 
 
 
 
 
 
ホテル洛西
京都市西京区大枝沓掛町7-47

京阪京都交通 薬師湯前下車 徒歩約8分
阪急電車 桂駅下車 徒歩約1時間
 

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