建仁寺塔頭・両足院へ半夏生の特別庭園公開を観に行ってきました。もちろん、ひとりで。

2015年6月24日(水)


両足院へ半夏生の特別庭園公開を観に行きました。もちろん、ひとりで。

現代美術家の榎忠は、かつて、頭を半刈りにしてハンガリーへ赴きました
全身の片側の体毛を全て刈るという、文字通り 「半刈り」 の状態で彼の地へ赴いたわけです。
冗談では、ありません。いや、冗談を具現化することで現実を照射する試み、というべきでしょうか。
日本語のコンテクストの中でしか成立しない駄洒落を、自分自身の体を張ってオブジェクト化し、
コンテクストが全く通用しない場所へ単身赴き、その通用しなさ加減に身を晒すということ。
寝小便の沁みた蒲団の如きコンテクストを纏ったまま、 「やってみました」 と外部へ出るのではなく、
入国拒否などによりコンテクストの無力さを直接感得&体現し、不潔な蒲団を焼くということ。
その姿勢は、経済的無力化の進行と並行して 「貧者の核」 のようなコンテクストの暴力が横行し、
駄洒落レベルの言説がヴゥードゥーの如く呪力を持つ現代日本に於いてこそ、必要なのではないか。
こんな思索を半刈りについて巡らせた私は、建仁寺塔頭・両足院での半夏生の特別庭園公開を、
顔の半分だけを化粧した 「半化粧」 状態で観に行くことにした、というのは無論、嘘です。
両足院。祇園の真南に建つ臨済宗建仁寺派大本山・建仁寺の、数多き塔頭のひとつであります。
南北朝時代、饅頭の祖・林浄因を連れて帰朝した建仁寺35世・龍山徳見を開山とする形で創建され、
天文年間の火災&再建を期に 「両足院」 へ改名し、再建を重ねながら現在に至る寺であります。
建仁寺といえば、何といっても俵屋宗達 『風神雷神図』 のオーナーとして名高い大寺なわけですが、
こちらの両足院も、近年人気がエスカレートしまくってる伊藤若冲作の 『雪梅雄鶏図』 をオウンド。
黒田官兵衛の長男・黒田長政ゆかりにして鞍馬寺の仏像胎内より出たという毘沙門像も祀り、
「饅頭発祥の寺」 という呼称もある名刹ですが、名刹ゆえか、毘沙門堂以外は基本的に非公開。
ただ、特別公開は時折行われ、葉が白く変化する半夏生が色づく梅雨時にも庭園特別公開を実施。
で、その特別公開へ今回、半刈りでも半化粧でもなく極々普通に出かけてみたというわけです。
私が纏う独男コンテクストを、半夏生の白い輝きは焼いてくれるでしょうか。


京阪の四条駅改札を出て、ぐるっと南側へ回ってしばらく地下道を南下して長い階段を登り、
出口に突っ立つ中国人女をかわし外へ出て、歩いてる観光客の約9割が中国人の団栗通を東進。
ウインズ京都をスルーし、やはり中国語しか聞こえない花見小路もスルーし、到着した建仁寺門前。
「饅頭発祥の寺」 両足院は、ここの塔頭。だから、ここへ入ります。塔頭と饅頭、何か似てますね。


門前には半夏生拝観の看板が出てましたが、折角なので建仁寺も拝んでおきましょう。
建仁寺。言うまでもなく、臨済宗開祖である栄西源頼家を開基として建立した大本山であります。
私はよくこの辺を歩くんですが、頻度が高過ぎる為か、記事にする意欲が妙に涌かないんですよね。
御覧の三門も、浜松市にあった安寧寺から譲り受けたものということを、今回初めて知りました・・・。


三門の北側に聳えるこちらの法堂は、譲り受けたものではなく、建仁寺生え抜きの伽藍。
というか、現存する京五山の法堂としては相国寺に次いで古いものであります。だそうであります。
空いてるように見えますが、観光客の姿はそれなりにあり。ただ境内が広く、混むようなことは、なし。
花見小路が無国籍化してもなお、この辺は禅の凜とした空気&のんびり感が漂ってて、平和です。


贅沢といえば贅沢極まりないかも知れないそんな感慨を楽しみながら、ぼちぼち両足院へ。
両足院があるのは、建仁寺境内の東側。御覧の看板がやたら出てるので、迷うことはないでしょう。
入口の手前にも、こんな感じで案内、あり。東南アジア系観光客が、この看板の写真を撮ってました。
特別公開を観に行くのかと思ったら、連中、そのまま花見小路へ歩いて行きました。どういうんだ。


というわけで、両足院入口。横の石碑には、思いっきり 「毘沙門天」と書かれてますが。
正門でなく、地元の人用に普段も開いてる毘沙門堂用ゲートを、特別公開でも使う感じでしょうか。
門を潜った先には無論毘沙門堂がありますが、今日の目当ては庭ゆえ、軽くお参りだけしてスルー。
さらに奥へ入り、お守り各種の授与所もスルーして受付へ向かい600円払って、靴を脱ぎ堂内へ。


で、庭。堂内へ入れば、早くも禅テイストが溢れる、庭。


庭。廊下の横にも、何気に禅テイストが溢れる、庭。


で、本堂へ入ると、ボランティアか何かのスタッフのおじさんが伽藍の説明などをしてました。
逆サイドの庭側には、両足院名物である茶室の拝観受付あり。追加で500円払う必要があるけど。
至近距離にて半夏生を観ようと思うのなら、庭を出て茶室へ行かなくてはならんというシステムです。
が、とりあえずはデフォ額で観れる範囲で観ようと思い、スルー。お参りしてから、奥へ進みます。


で、庭。茶室の拝観入口になってる伽藍と、丸窓と、庭。


庭。順路に従って進む本堂と、その向こうに半夏生が見える、庭。


で、半夏生。葉が花のように白く変化してるのが実に不思議な、半夏生。


半夏生。単に日光で表面が飛んでるようにしか見えないけど、半夏生。


で、庭園。本堂の端から観た、半夏生が群生する名勝・池泉回遊式庭園。


門。やはり本堂の端から観た、群生する半夏生と、何らかの門。


縁側。半夏生が群生してる庭園を借景として、本堂裏側の、縁側。


書院。書院から庭園を観る人間越しに、庭園を借景として、書院。


で、茶室拝観。やはり庭へ降りたくなり、さっきの受付で500円払い、茶室拝観。


庭の松。庭に降りて観ると迫力が違う、庭の松。


庭の池。石灯籠越しで、本堂を借景として眺める、庭の池。


通路。彼方でチラ見できる茶室を借景として眺める、通路。


で、臨池亭。白木屋祖・大村家の寄進による茶室、臨池亭。


水月亭。やはり大村家寄付で、織田有楽斎作・如庵の写しという茶室、水月亭。


で、茶。茶室拝観はお茶付きで、この日はたまたま煎茶で出された、茶。


茶菓子は、両足院のアイコン・月星紋入りオリジナル饅頭。流石は 「饅頭発祥の寺」 です。
ここの開山・龍山徳見の俗弟子・林浄因は、来日後、僧侶の為に中国の肉饅頭を菓子へと魔改造。
奈良へ移った浄因は塩瀬総本家の始祖となり、曾孫はこの寺を創建。ゆえに 「饅頭発祥の寺」 だと。
そんな由緒ある饅頭は、饅頭の味。餡子が緑色だそうですが、一口で丸呑みしたので、詳細不明。


で、庭。臨池亭のあたりから改めて眺めた、庭。


蜻蛉。庭を飛び回り、茶室の中にも入ってきたりしてた、蜻蛉。


で、半夏生。改めて見ても、表面が日光で飛んでるようにしか見えない、半夏生。


門。観るもん観たので、庭から上がって本堂を出る際に観た、門。


で、またお守り各種の授与所をスルーして両足院を退出、建仁寺境内を通って帰るの図。
それにしても、緑が濃い庭でした。正直、半夏生の白よりも緑の濃さの方が、目に焼き付きました。
そういえば、この近くの歌舞練場は明治まで藪林で、舞妓が脅える所だったと聞いたことがあります。
緑が濃いのも道理か、と適当なことを思いながら、何となく緑焼けしたような気分で帰りましたとさ。

客層のメインは、地元風の中高年女性。
2~5人程度のグループが多く、この手の連中は概ね茶室へ行きます。
後は中高年夫婦と中高年混成グループがいるくらいで、いずれにせよ観光感は希薄。
若者の姿は、カップルを始めとしてほとんど、なし。建仁寺境内は、結構いたんですけどね。
単独は、女は若いのと中高年が少しずついた程度。男は、ほぼ私ひとりだけでした。
本当に 「半化粧」 の顔して行ったら、浮くどころの騒ぎではなかったでしょう。

そんな建仁寺塔頭・両足院の、半夏生の特別庭園公開。
好きな人と行ったら、より半化粧なんでしょう。
でも、ひとりで行っても、半化粧です。

【客層】 (客層表記について)
カップル:0
女性グループ:0
男性グループ:0
混成グループ:0
子供:0
中高年夫婦:2
中高年女性グループ:5
中高年団体 or グループ:3
単身女性:若干
単身男性:俺だけ
【ひとりに向いてる度】
★★★★
特にプレッシャーがあるタイプの客層ではない。
地元メインだが、他所者がアウェー感を感じることもないと思う。
ただ、基本的に狭いので、混んでなくても体感人圧は、高め。

【条件】
平日水曜 13:00~14:30


両足院 半夏生の庭園特別公開
毎年 6月上旬~7月上旬 開催

建仁寺塔頭・両足院
京都市東山区小松町591
通常非公開 特別公開時のみ拝観可能

京阪電車 祇園四条駅下車 徒歩約8分
阪急電車 河原町駅下車 徒歩約13分
京都市バス 東山安井下車 徒歩約5分
 

京都 両足院 – 公式

建仁寺塔頭 両足院 – Facebook 公式