京都みなみ会館の真夏のムカデ祭り in 京都へ行ってきました。もちろん、ひとりで。

2015年8月24日(月)


京都みなみ会館の真夏のムカデ祭り in 京都へ行ってきました。もちろん、ひとりで。

ムカデ祭り。夏の終わりの京都・東寺近辺に於いて繰り広げられる、謎の奇祭です。
世界遺産たる東寺の五重塔が、ムカデの構造に似てなくもないという事実が由来というこの祭、
元々は虫封を御利益とする 「ムカデ供養」 や 「ムカデ封じ」 がこじんまり行われるものでした。
しかし近年、 「人間の上の口と下の口を繋ぎ、ムカデ化する」 という映画 『ムカデ人間』 の影響で、
所謂 「ムカデプレイ」 が余興として闖入し、 「繋がり」 至上主義の世相にもマッチして、振興&浸透。
更には御近所・梅小路公園のその筋の方の中のくそみそな方も巻き込んで、もっと振興&浸透し、
現在は京都アングラシーンに於ける最大&最狂の奇祭として、その地位をすっかり確立しています。
で、その奇祭へ私も参加し、全てを受け入れる悦びで心臓をバクバクさせつつ他人の大便を食い、
前立腺が吊り切って肉離れを起こすような快楽と共に他人の口内へ大便をねじ込んできました。
というのは無論、嘘です。梅小路公園には確かにその筋の方がいますが、それ以外は全て、嘘です。
実際は、東寺近くの映画館・みなみ会館でそんなイベントがあったので、出かけただけの話です。
すんません、東寺の五重塔。すんません、梅小路公園。そして誰よりすんません、みなみ会館。
で、そのみなみ会館ですが、 「京都で映画といえば、みなみ会館」 と思う方は、きっと多いでしょう。
素敵な贈り物が届けられたりするDX東寺があるような、サウスエリアのディープゾーンにあって、
ディープな単館系作品ばかり上映し、ダークホース的な存在感と共にサヴァイヴしてる館であります。
編成を長きに亘り担ったRCSが離脱して以降、しばらくラインナップがガチのシネフィル寄りとなり、
「映画好きを気取りたいけど、本当はよくわからん」 というニワカな私は正直遠ざかってたんですが、
ムカデ祭りなるゲテモノイベントも最近は打ってくれるようになったので、今回出かけたわけです。
あ、 「真夏のムカデ祭り」 の実態は、映画 『ムカデ人間』 の新作公開に併せた、シリーズ集中上映。
伝説の 『1』『2』 、そして新作 『3』 を、3回に分けて、館周辺もうろつきながら観に行きましたよ。
えと、この記事、 「大便」 という単語が頻出し、後半は何故か大便の如き関西弁も爆裂する為、
「ちょっとディープな京都を知りたい」 という感じの方は、読まないことを強くお勧めしておきます。
あと一応言っときますが、こんな楽しい祭が毎夏あるわけでもないので。悪しからず。


ムカデ祭り、まずは 『1』 。旧作である為か上映が夜なので、19時前に出かけましたよ。
みなみ会館の最寄駅は、近鉄電車・東寺駅。東寺駅は、その名の通り、世界遺産・東寺の最寄駅。
東寺は、平安京の南門たる羅城門の東に建てられた寺。ゆえに、その近くのみなみ会館は、みなみ。
世界遺産の近くながら、九条通を中心とする街の賑わいは、煤けた生活感&再開発感が過剰気味。


この辺の九条通、実はR1。なので、沿道の輝く世界遺産にも、車は一瞥もくれず爆走スルー。
あ、東寺、ムカデ祭記念で光ってるわけではありませんよ、一応。年がら年中、ライトアップしてます。
駅から東寺まで散策する間に、巌本金属・本店を拝むのもいいでしょう。みなみ会館のオーナーです。
近年は、邦画の製作委員会に名を連ねてたり、あと 『Mommy』 の提供でも名前を見かけましたね。


で、その巌本金属・本店の九条通を挟んだほぼ向かいにあるのが、御覧のみなみ会館
何となく映画に無縁な射幸心を煽る外観ですが、この館、以前は1階にパチンコ屋が入ってました。
というより、パチ屋の2階にハコがある感じでしたが。上映中、足の下を玉が流れる音がしたもんです。
現在は、映画専業。ですが、パチ遺産たる駐車場は残り、単館系の館としては異常に充実してます。


パチ屋入口跡の駐輪スペースもまた、勝手気味に充実ぶりを見せる、みなみ会館入口前。
パチンコは滅べど、カルト映画館は残る。これが文化都市・京都の矜持でしょう。いや、知らんけど。
あ、バスのアクセスとしては、東寺の南東側の最寄バス停・九条大宮が、そのままここの最寄バス停。
私は八幡人なのでいつも近鉄経由で来ますが、バス or 自転車で来る人の方が多いんでしょうね。


で、2階・映画館への入口。パチンコが無くなった現在は、割に普通の小さい小屋に見えます。
が、私が最初に訪れた頃はまだ昭和的で妖しい雰囲気が漂い、魔境への入口に見えたものでした。
バブル崩壊後の残り金で徒花の如く妖しい文化が隆盛を誇った、古き良き90年代の話でございます。
では、そんな時代の残り香、というかもう一周回って逆襲かも知れないムカデ祭り、行きましょうか。


入口の階段横には、作品ポスター類と共に北村昭博氏の舞台挨拶の告知あり。ラッキー。
北村氏は、ハリウッドで俳優&監督として活躍する人。今夜の 『1』 では、ムカデの先頭であります。
『HEROES』 への出演でも知られますし、 『サイタマノラッパー3』 での極悪ラッパー役も凄過ぎました。
頭良過ぎて狂ってるのか、狂い過ぎて頭良いのか、とにかくそんな理知的にして獰猛な凄い人です。


で、階段を上った先のカウンターで、チケット買って入館。 『ムカデ1』 は、1000円。ラッキー。
カウンター横には、ムカデ人間カレーやトイレットペーパーといったグッズを販売するスペースあり。
カレー買おうかなとか思いながら、東側にある昔から変わらない待合のソファにて、待つこと、しばし。
館内、ソファ以外は結構変わりましたね。大昔は確か売店もあって、カップヌードル売ってたような。


前番組である 『ゾンビーバー』 から聞こえてくる絶叫など聴きながら、更に待つこと、しばし。
やがて、 「ビ~~バ~~」 とスインギンな歌と共に 『ゾンビーバー』 が終わり、入場が始まりました。
ハコの大きさは200席程。パチ絡みなのか何なのか、床に妙なカーブがあるのも、この館の特徴です。
で、人間がセイウチ化する 『Mr.タスク』 予告を観て、こんなのばっかりかと呆れる内、 『1』 、開映。


『ムカデ人間』 、既にクラシックとしての評価を確立してる作品なので、詳細は不要でしょう。
白人女2名+日本男1名が、ドイツの変態野郎・ハイター博士により口と肛門を繋がれ、ムカデ化。
抵抗と哀願、脱走と追跡、排便と食便を繰り返しながら、驚愕のエンディングへ至る映画であります。
「どんな映画だ」 としか思えない設定ですが、何故かこれが、実にちゃんとした映画なんですよね。


「何故こんなことを思いつき、何故こんな思いつきで最後まで映画を作れたんだ」 という、
意味不明の圧倒力、良い映画だけが持ち得る意味不明の映画的圧倒力が、炸裂する作品でした。
「Middle Piece」 の女性、大スクリーンだと肉感が強調され、ゆえにムカデ性感も増して、良いですね。
あと 「高知出身の関西アウトロー」 設定な北村氏の関西弁、荒んだサウス民の耳には刺さりまくり。


で、終映後は本物の北村氏が登場し、面白過ぎる撮影裏話を語るトークショーを展開。
終盤、北村氏のサイン入り 『ムカデ人間2』 トイレットペーパーの抽選会があり、私、当たりましたよ。
客の反応込みで観たくて最後列に座ってたのが、何か申し訳ないです。と、恐縮しながらブツを拝領。
ペーパー、自分の口と肛門を繋ぐのに使わせてもらいます。ではなくて、大事に飾らせて頂きます。


最後、観客全員でムカデ記念撮影をして、新作 『ムカデ3』 予告も見て、この日は終了。
客の大半は、当然というか何というか、独男。20代が多く、次いで30代、そして40代も少しいる感じ。
他は、映画好きの若い連中が、各属性でいる程度。実に清々しい、気持ち良い客層と言えるでしょう。
すっかり清々しい気持ちになったところで、帰り際、気になってたムカデ人間カレーを清々しく購入。


カレー、皿へ開けてみると、色は大便色。粘度は、下痢便のようなスープ状ではなく、普通系。
博士を 「Strong…」 と驚嘆させたカツローに相応しい、健康な色と含水率の大便、いやカレーです。
具はいずれも微細にカットされ、そのサイズ感と煮崩れ加減は正しく、大便に混ざり込んだ未消化物。
食後に口元のルーを拭こうとすると、カツローの魂が乗り移ったかの如く、不屈の粘度を誇りました。


口元の残便、いやカレーも拭かぬ間に、時は3日後。今度は 『ムカデ人間2』 を観に、東寺へ。
画面が突如モノクロと化したのには、理由あり。これは、同作が全編モノクロであることに因む趣向。
にも関わらずロゴが大便色なのも、理由あり。これは、同作で大便のみカラーであることに因む趣向。
そんな趣向の中、映画館までまた散策。モノクロの駅、不気味。モノクロの東寺、ムカデ感が割増。


散策中、九条通で見かけた某鶏肉屋の創業者。モノクロだと、アメリカンホラー風味が割増。
京セラ&京都銀行と無理矢理繋げられ、異形さも加速。眼鏡の奥の眼は、恐らく笑ってはいない。
東寺を看板に掲げる整骨院も、モノクロだと 『ムカデ』 の世界と妙にシンクロ。 「つなげてみたい」 と。
あるいはこれは、宣言なのか。 「骨以外のものも、 つなげてみたい。この五重塔のように」 という。


到着した、19時過ぎのみなみ会館。こちらもモノクロだと、アメリカンホラー風味が割増。
あ、先刻からモノクロ化に加え文体まで異常化してますが、これもまた 『2』 に因んだ一種の趣向。
『2』 の主役、一言も喋らないんですよ。それに因み、でも無言では文章にならん為、訥々化してます。
モノクロのみなみ会館、射幸心を煽ることは最早、なし。感じるのは、殺人狂でも潜んでそうな恐怖。


入口には、やはりいた、殺人狂。それも、アメリカの殺人狂ではなく、イギリスの殺人狂が。
彼が、ロンドンを舞台とする 『2』 の主役・マーティン。その恐るべき眼力・顔力に震えながら、2階へ。
料金は、今夜も1000円。 おまけに 『3』 鑑賞時には、 『1』 『2』 の半券持参で 「ムカデ祭り割」 もあり。
「割」 目当てなのか何なのか、ゲストがいない日ながら待合には客、多し。ただし、性別は全員、男。


全員男の待合で、待つこと、しばし。1000円の半券と番組表を見ながら、待つこと、しばし。
番組表に躍る 「ムカデ」 「ヘドラ」 「ゾンビ」 といった異形の名に夏を感じながら、待つこと、しばし。
客は、15~20人程度。そのほぼ全員が、独男。大半は、20代から40代くらいにかけての映画好き風。
ただ、勤め人風や年配の姿もあり。根強いムカデ人気 or 特殊な方面の需要を感じること、しばし。


やがて 『2』 、開映。素人仕事で12人の口と肛門を繋ぐ、 『ムカデ人間』 ファンのマーティン。
人数4倍・グロ40倍・不快指数400倍な世界、爆裂。ただ、映画自体は 『1』 同様、しっかりした作り。
ほぼ汚物のみで構成されたモノクロ画面は、明確に美しい。そして何よりも、マーティンが素晴らしい。
見惚れんばかりの瞳、そして腹。美しい。あと、ムカデの接続部から噴き出す下痢便もまた、美しい。


頭数が増えた為か、繋ぐ側と繋がれる側の衝突は、希薄。筋も、無に等し。しかし、それも味。
また、劇中延々と鳴る不吉なアンビエントが、この館だと地獄に包まれてるかのように響き、ナイス。
みなみ会館、音、良いんですよ。設備というよりは、鳴りが良い。床のカーブが効いてるんでしょうか。
胎内巡りの中で、マーティンに見惚れ続ける。そんな、まるでスター・ムービーのような映画でした。


ほんで一週間後、今度は新作の 『ムカデ人間3』 を観ぃに、みなみ会館へ出かけたで!!
行ったんは、昼や。東寺が開いとる時間やから、映画館の近所の観光案内も兼ねて、寄ったった!!
これが有名な、東寺や。世界遺産で有名な、東寺や。ほんで奥の方に見えるのが、名物の五重塔や。
ムカデに似とるやろ!! 『2』 観た後やと、付け根のとこから下痢便が噴き出しそうに見えるやろ!!


何や、何で急に関西弁ってか。 『3』 な、台詞がメチャ下品なんや。それに合わせたんや。趣向や。
大半の台詞が 『1』 のカツローみたいに罵倒と暴言ばっかりなんや。せやから関西弁や。辛抱せえ。
あとな、画面が大便色やけど、これも 『3』 の色調が大便色なんに合わせたんや。趣向や。辛抱せえ。
東寺、池では鳩と亀が遊んどる。そや、 『3』 な、この亀みたいな頭した 『1』 の親爺が帰って来るぞ。


着いたで、昼間のみなみ会館!!気色悪い空に 「LASVEGAS」 の字がよう映えとるやろ!!
『3』 の舞台は、狂ったアメリカ。色調は、大便色。その辺のオマージュを込めて、色処理したった!!
『3』 を観るのに相応しい館と思う人、多いはずや。 『3』 の世界にマッチした館と思う人、多いはずや。
断じてこれは、昭和のパチ屋の懐かし写真とちゃうぞ!!ここは映画館や!!現役の映画館や!!


入口脇には、 アホの観光客をビビらすみたいに 『3』 のポスターが張られとる。な、大便色やろ。
『3』 、原題の副題は 「Final Sequence」 。過去作のキャストも仰山出て来る、シリーズの完結作や。
内容は、アメリカの刑務所が食費節減と治安保全の為に、囚人500人の口と肛門を繋ぐっちゅう感じ。
それにしてもこのシリーズ、どの作品も骨子が1~2行で書けるな。頭良いな。あるいは、狂っとるな。


『3』 な、 『2』 のとこでも書いたけど、 『1』 『2』 の半券持参で 「ムカデ祭り割」 が効くんや。
せやから、1300円で入れた。半券、 「ムカデ祭り割」 やて。浮いた金で、血便色のパンフも買うたぞ。
買うとる最中、後に中学生にしか見えん男子らがおったから、何やろ思たら職業訓練で来てるらしい。
その子ら見たら、 「ワシ、昼間から何しとんねん」 と頭が素面化して、恥ずかしなってしもたやんけ。


せやけど、観るで!!と、恥ずかしい気持ちのまま入場したら、客、ほとんど独男やんけ!!
全員が20代~30代くらいで、学生に寄った感じも特にあらへん。お前らも、昼間から何しとんねん!!
で、さっきの子らが場内注意をやって、またちょっと恥ずかしなった後、余裕でR18指定の 『3』 、開映。
で、始まってすぐに、どやろ、と。出落ち感、半端ないぞ。あと、ムカデ&大便の描写、少な過ぎやぞ。


何より、ハイター博士 = 所長を始め、誰一人としてムカデに愛を持ってないのが、残念過ぎる。
暴力が多いのはええけど、ムカデにも大便にも関係ないのんばっかりやしな。ちょっと、淋しいで!!
ただ 『2』 で顕著やった、やたら準備をかけてするオナニーみたいな無為なハイテンション感は、健在。
視野狭窄から生まれる、無意味で生ぬるいこの狂気、何でこの監督はこんなに描き続けるんやろ。


ラストが何か 『バクダッド・カフェ』 っぽい、と気ぃ狂ったようなことを思とる内、 『3』 、終了。
欲求不満や!!何とも、欲求不満や!! 『1』 『2』 と比べたら、食便の恐怖が圧倒的に希薄や!!
500人目のムカデが食う499人の腸を通った大便、もっと観たかった。しゃあない、自分で作ったるか。
と思い、アレンジ用にカレーをまた買おうとしたものの、カウンターには姿なし。残念ですが、退館。


ダルカレーでも食おうかな」 と思いながら帰る私を見送ってくれたのは、 「dull boy」 の笑顔
こちらは、キューブリック・ナイトのポスター。みなみ会館、こういう独自企画の上映をよくやってます。
『ムカデ人間』 も、毎年夏あたりにオールナイトをやってくれると嬉しいな。 『ムカデ・ナイト』 みたいな。
ただ3本とも尺が短めなので、足りない時間は客のリアル・ムカデ祭りを・・・とか妄想しながら、退散。

というわけで、真夏のムカデ祭り in 京都でございました。
客層については、各作品で触れた通り。独男をメインに、若い好き者が来る感じです。
ひとりに向いてる度は、個人的には映画・場所・客層いずれの点でも★★★★★なんですが、
映画の好みは人それぞれである点も一応考慮して、★★★★とさせてもらいます。
みなみ会館、他の上映作品の場合は、作品の堅気度に伴い客の堅気度が上がる感じでしょうか。
立地はディープながら、本気でヤバい輩が館内や館の周辺をうろついてるということはなく、
また現在となっては京都でほぼ唯一 「映画館」 の雰囲気を感じられる点でも、いい館だと思います。
映画好きの方は無論のこと、前を通るたびポスターに 「?」 と思わされてる御近所の方や、
東寺へ行く途中でポスターに 「?」 と思わされた観光の方も、一度寄ってみては如何でしょうか。
「そう思うのなら、大便とか肛門とか書くな」 と言われると、返す言葉はないんですけど。

そんな京都みなみ会館の、真夏のムカデ祭り in 京都。
好きな人と行けば、よりムカデなんでしょう。
でも、ひとりで行っても、ムカデです。


京都みなみ会館
京都市南区西九条東比永城町79

京都市バス 九条大宮下車 徒歩すぐ
近鉄電車 東寺駅下車 徒歩約3分
JR各線 京都駅下車 徒歩約20分

京都みなみ会館 – 公式
 

映画 「ムカデ人間」 – 日本語公式

映画 「ムカデ人間2」 – 日本語公式

映画 「ムカデ人間3」 – 日本語公式