松原通の力餅食堂・加藤商店で、 栗を食べまくってきました。もちろん、ひとりで。

2015年10月21日(水)


松原通の力餅食堂・加藤商店で、 栗を食べまくってきました。もちろん、ひとりで。

2013年に上げた栗餅の記事、思ってた以上に多くの人が見てくれるんですよ。
「両親の郷里・丹波へ名物の栗を食いに行く」 という、かなり私的な気分で作った記事であり、
川床カフェめぐりのように狙って作ったものではなかったんですが、やはり食いもんネタは強いなと。
しかも、 「京都 丹波栗」 という感じでブランド名を打ち込み飛んでくるタイプの方は案外と少なく、
ずばり 「栗」 あるいは 「栗餅」 と、栗食本位なワードで来られる方が多いのにも、感銘を受けました。
どうやら人は秋になると、丹波など産地やブランドに関係なく、栗を食いたくなる生き物のようです。
私は、栗を過小評価していた自身の不明に、気付かされたのでした。すまん、栗。すまん、栗餅。
そして謝ると共に、栗のビッグウェイブに再び乗ろうとも決めました。というわけで栗記事、第2弾です。
今回も、プチ旅情と共に丹波で栗菓子を買い食いするかと思いましたが、正直、行くのが面倒くさい。
あと、栗記事花火記事でもちょこちょこ書いてることですが、自分的には何か色々と、気まずい。
といって近場で済ますとなると、ただ単に買い食いだけで終わる話となり、ネタになるかどうか微妙。
近場で、ネタになり、いい感じの栗の店、ないかな。そう考えていて、松原通の力餅を思い出しました。
力餅。相生餅&千成餅と共に、京阪神にて謎のフランチャイズを形成してる餅系食堂のひとつです。
「餅」 という名前が示すように、この餅系食堂、元来はおはぎなどを扱う甘味処がルーツだそうで、
現在でも多くの店が、うどんや定食など一般的な食堂メニューに加えて甘味を扱ってはいるんですが、
松原通×東大路通の交差点近くに建つこちらの力餅は、10月に扱うその甘味がかなり、栗推し。
定番の栗餅に加えて、栗赤飯、そしてマロンケーキの如き栗蒸し羊羹が、普通の食堂に登場します。
何故この店がこんなに栗を推す理由はよくわかりませんし、正直言って特に興味もないんですが、
しかしこの栗ラッシュ、京都の市井に於ける季節感の味わい方をよりリアルな形で現わすものであり、
同時に 「人は秋になると、栗を食いたくなる」 ことを、如実な形で示すものとは言えるでしょう。
そんな力餅の栗餅・栗赤飯・栗蒸し羊羹、うどんと一緒にがっついて来ました。


松原通は、四条通と五条通の間の通。鴨川を渡る松原橋の辺から、東へ歩いていきましょう。
あ、松原通の力餅は、2軒あります。松原橋を渡った先の川端通の力餅と、東大路通近くの力餅。
いや、鴨川以西も含めたら、もっとあるかも知れません。それくらい謎なチェーンが、餅系食堂です。
で、今回向かうのは、東大路通の方。なので、松原通を東へ。川端通の力餅も、美味しいですよ。


元々は五条通であり、清水寺の参道でもあり、下町的な生活感溢れる店も多く並ぶ、松原通。
歩いてると、渋い商店街看板や、渋い 「Not For Sale」 ディスプレイなどを、そこら中で見かけます。
その一方で新しい店もちょこちょこ出来てて、ロシアン不思議茶屋なんてのが出来てるのも、味です。
この日の人通りは、普段と同じか、観光客が多い程度。何故か中国人が少なく、日本人が多め。


そして松原通といえば、何といっても、六道の辻。この世とあの世のターミナルでございます。
夏の六道まいりでは人間と精霊が入り乱れる混雑となる西福寺六道珍皇寺も、秋口の今は静か。
この日は時代祭の前日でしたが、中国人客はこの辺でも妙に少なめで、代わりに白人客が妙に多し。
時代祭目当ての連中でしょうか。あるいは、鞍馬へ 「ファ~イヤァ~」 と叫びに行く連中でしょうか。


それにしても中国人、爆買が終わったらしいですが、訪日ラッシュも遂に終わりかと思ったら、
六波羅飯店の横の町家カフェでは、道に面した席にてやはり中国人が過剰にリラックスしてました。
轆轤な気分で、そしてあの世へ逝けてハッピー六原な気分で、より強くなった坂をのぼること、しばし。
栗推しの力餅は、もうすぐです。ちなみに川端からこの辺までは、500m程度。間隔、コンビニ並。


で、到着した、力餅食堂・加藤商店。という店名なんだと思います。多分。確証はないけど。
●●●店」 といった支店的な名ではなく、個人店の印象が強い店名が多いのも、餅系食堂の謎です。
看板には 「標商録登」 「力餅 (力餅ロゴ) 食堂」 「加藤商店」 という文字が、右左の制約を超え混在。
餅系食堂のフランチャイズは、時と共に解かれたそうですが、その経過を反映してるんでしょうか。


店前には、栗を食う気で満々の舌へカウンターを放つ 「和食」 「そば」 「うどん」 の幟あり。
また店内からは、常連客に 「暑いな」 と話しかけられた大将が 「素麺にするか」 と返す声が聞こえ、
冗談かと思ったら 「そないするわ、ここの素麺美味いし」 と、完全に麺寄りな会話が展開されてます。
が、前の写真にも写ってる通り、 「栗赤飯」 の張り紙もしっかりとあり。大丈夫、栗はもうそこです。


というわけで栗ものが陳列される、すぐそこの餅系食堂名物・テイクアウト甘味カウンター。
「大福餅」 などのレギュラー陣と共に、 「栗赤飯」 「くり餅」 「栗蒸しようかん」 が雄姿を誇ってます。
14時前ですが、餅類、売行好調。印象的には、栗餅が早く売り切れるかな、と。遠来の方は、要注意。
それにしても、密集して並ぶ餅類を見ると、人は何故こんなにも幸せな気持ちになるのでしょうか。


で、入店。ルックおよびメニューはがっつりと、食堂。甘味処といった風情は、全くありません。
しかし注文したのは、栗赤飯、栗餅、そして栗蒸し羊羹。あとデザートに、きつねうどんも頼みます。
入ってすぐ、松原通をうろつくフランス人グループが、カウンターの前で思案した末に入って来ました。
英語メニューで注文した後、1人はまたもカウンターへ向かって、餅類に激しい興味を示してました。


で、栗赤飯、栗餅、そして栗蒸し羊羹。甘味は、カウンターから小皿で持ってきてくれます。
一人前350円の栗赤飯は、レアな風味を感じさせる栗がアクセントになった、実にベーシックな赤飯。
栗、ザックリとしたルックスが映えますが、赤飯的には過剰な存在感を誇らず、まとまりも極めて良好。
大将は 「ごま塩をかければいい」 と言ってくれましたが、しばらくは素で栗感を楽しむこと、しばし。


続いて、栗餅。かなり大きめに見える撮り方をしてますが、実物も割と大きめの餅です。
小綺麗でスカした餅でもなく、また荒っぽい田舎餅でもなく、その間のいい所取りな感じとでもいうか。
中には、餡と栗が入ってます。が、パクっと行った所に栗が丸ごと入っていて、写真を取り損ねました。
舌で感知する分には、栗の風味はやはりレアで、美味。あと、餅そのものの風味もこれまた、美味。


そして出ました、栗蒸し羊羹。栗蒸し羊羹としか言い様がない、堂々たる栗蒸し羊羹です。
実にスイーツ的なメニューであり、全ての餅系食堂の中でも異彩を放ってるのではないでしょうか。
そのスイーツ加減を意識してるのか、羊羹上部に盛られた栗、栗赤飯&栗餅よりも甘めの仕上がり。
羊羹本体の方がむしろ甘さは控えめで、これまたベーシック且ついいまとまりの羊羹になってます。


デザートとしてオーダーしたきつねうどんは、当然、京都仕様のきつねうどんとして登場。
一般的なきつねうどんの揚げではなく刻み揚げが乗るフォーマットが、問答無用でサーブされます。
優しい出汁と優しいうどんを、マルシアが歌う 「時の流れに身をまかせ」 を聴きつつ、食うことしばし。
食ってると、先刻のフランス人の1人がまたカウンターへ向かい、餅類に激しい興味を示してました。


いや、きつねうどんがデザートというのは、無論、冗談です。実際は、うどんを先に食いました。
で、残った出汁と共に、甘味類を食いました。交互に食いました。幸せです。変態的とも思えますが。
で、食ったら、帰ります。勘定は確か、1350円。350円+320円+140円+540円、という感じでしょうか。
帰り際、先刻のフランス人の1人はまだカウンターに張り付いて、餅類に激しい興味を示してました。


秋になると栗を食いたくなるのは、世界共通なのかな。でもフランス人、栗が嫌いらしいしな。
ただ、イタリアには栗列車があるとかBSの番組で言ってたしな。南仏の連中は、栗、好きなのかな。
と、果てしなくどうでもいいことを考えながら、食後はすぐ近くである東山のベタ観光地を、しばし散策。
東山、栗が好きなイタリア人と、好きかどうか不明なフランス人が、妙に多め。で、中国人は少なめ。


中国人が少ないのは、国慶節が終わったからかな。それとも、いい加減見慣れただけかな。
と、これまたどうでもいいことを考えながら、飛び地の如く建つ高台寺の表門付近も、しばし散策。
猿の様に栗を食う芸を持ってたという秀吉がキャラ化されたポスターを見て、時代の流れを感じたり、
門前の葉っぱがうっすら栗色に色づいてるのを見て、栗の流れを感じたりした後、帰りましたとさ。


で、後日、撮り損なった栗餅の内部の栗を拝むべく、改めてテイクアウトしてきた栗餅の内部。
フランス人が張り付いていたカウンターで、買ってきたわけですね。勢いで、栗蒸し羊羹も2個購入。
栗餅、中には栗が丸々1個、入ってます。半分のラインでカットしたので小さく見えますが、割と大きめ。
味は無論、美味。餅自体もやはり、美味。栗蒸し羊羹も丸食いして、市井の秋を満喫したのでした。

松原通の力餅食堂、この日の先客は、
素麺のおばさんと、地元の家族連れとおばさんグループが一組ずつ。
後客は、餅類に激しい興味を示して入ってきたフランス人グループと、おっさん1人。
少なくとも私がちょくちょく行く昼過ぎ頃は、大体いつもこんな感じの客層だと思います。
店の前は観光客が頻繁に通り、誰もがカウンターの餅類にもそれなりの興味を示しますが、
中に入る人はさほどおらず、落ち着いた雰囲気が維持されてる感じではないでしょうか。

そんな力餅の、栗餅と栗赤飯、そして栗蒸し羊羹。
好きな人と食べたら、より秋の味覚なんでしょう。
でも、ひとりで食べても、秋の味覚です。


【ひとりに向いてる度】
★★★★
場所ゆえか、排他的な地元密着感は案外希薄。
普通に美味くて普通に安くて普通に雰囲気がいい。
ひとりでふらっと寄る分には、実に良い店。

【条件】
平日水曜 13:40~14:00
 

力餅食堂・加藤商店
京都市東山区清水5丁目120
11:00~20:00 日曜定休

京都市バス 清水道下車 徒歩約1分
京阪電車 清水五条下車 徒歩約13分

力餅食堂 – 食べログ