井手町・玉川堤へ桜を観に行ってきました。もちろん、ひとりで。

2016年4月6日(水)


井手町・玉川堤へ桜を観に行ってきました。もちろん、ひとりで。

井手町。京都府南部にあって、元来は晩春に咲く山吹で広く知られた町です。
この町が立地する扇状地を作ったのは、木津川へ注ぐ玉川。山吹が多く咲いたのも、この玉川。
万葉集の編纂で名高い井手左大臣・橘諸兄は、この地を本拠地とし、玉川の堤へ山吹も植え、
更にはその風雅を讃える和歌を巷間に広めて、「ゐで」 を歌枕の定番の地位にまで押し上げました。
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   かはづ鳴く ゐでの山吹 散りにけり 花のさかりに あはましものを by 名無し
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そんな 「ゐでの山吹」 に、散るどころではない壊滅的ダメージを与えたのが、南山城大水害です。
1953年8月15日未明、豪雨により上流の池が決壊し、玉川には吸収不能な量の水が流れ込みます。
扇状地上の井手町は、濁流に呑み込まれて完全に浸水し、107人の死者が出るほど被害が激化。
玉川そのものも、名物である山吹や蛙などを含む生態系が押し流され、その姿を失いました。
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   くだつ世は 悲しきかなや いにしえの 井手の玉川 みる影もなし by 吉井勇
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南山城大水害後の玉川は、住民の安全維持を最優先に考える方向で改修が行われました。
水害防止の為に築かれたコンクリート護岸は、川の姿と、人々と自然の関係を、大きく変えたとか。
しかし、名物である山吹はその後、住民の熱意により復活。そして、桜という新たな名物もまた誕生。
植樹されたこの約500本の桜は、山吹より一足先に、川面の上へ花のトンネルを作り出すのです。
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   山吹を 待っとられんわと さくら満つ 井手の玉川 うどんも美味い by 独虚坊
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私は以前、井手町の讃岐うどんの名店・たなか家を訪れた際、偶然に玉川の桜を観て、驚きました。
凄い、と。こんな所にこんな凄い桜があるのか、と。府にはまだまだ色んな所があるんだな、と。
というわけで今回は、その感動を孤独な同志の皆様にも伝えるべく、桜満開の井手・玉川を訪問。
無論、うどんもこの感動の内なので、爆食@たなか家も込みでの桜見物です。


玉川の最寄駅は、JR奈良線玉水駅。で、やってきた、13時の玉水駅。中々に、侘な駅です。
が、みやこ路快速は停車。桜シーズンだけでなく、常に停車。京都駅からだと、30分ほどでしょうか。
快速車内は、奈良へ行く外人、多し。玉水で降りたのは、親子連れ&おばさんグループが数組程度。
構内には、水難記念碑がありました。天井川が名物の奈良線、大水害の際は無論、水没してます。


駅と同様に侘な駅前には、 『ロケみつ』 で稲垣早希が暖を取ってた伝説の電話ボックスあり。
電話ボックス、何故か 『塩狩峠』 のポスターが張ってありました。近所に教会でもあるんでしょうか。
桜シーズンとはいえ、営業してる感じの店は少なく、近くに軽食&土産を扱う臨時店を見かける程度。
なのでもう、さっと玉川へ行ってしまいます。 「みんなで乗って複線化」 という帯を見ながら、南へ。


で、 「さくらまつり」 看板付きの玉川堤入口へ到着し、この時点で既に物凄い桜を、眺める。


で、堤防道へ入ると、当然のようにもっと物凄い桜を、眺める。


堤防道をのんびり歩きながら、もっともっと物凄い桜を、眺める。


「物凄い」 以外のことを言いたくなるほど物凄い桜を、眺める。


水害対策のコンクリート護岸とも、調和した美を見せる、桜。


JRを越える天井川フェンスとも、調和した美を見せる、桜。


樹幹とは無論、調和し過ぎるくらい調和した美を見せる、桜。


そしてクラシック風味な提灯とも、調和した美を見せる、桜。


子供達が遊んでる川原に降りて、樹と空と桜と橋を拝むの図。


橋の上へ上がり、川と舟とガスか水道の橋と桜を拝むの図。


堤防道から、桜に食われるようなガスか水道の橋を拝むの図。


そんな桜の生命力を間近で拝むと、食欲を刺激されたので、そろそろたなか家へ行くの図。


たなか家は、玉川北岸にあるこの看板に従って玉川から一旦離れ、きつい坂道を登った先。
郊外の大きな家の玄関っぽい門を通ると、香川の製麺所然とした店が現れます。で、そこで、注文。
私は、ぶっかけの冷と、京都拉饂麺なるものを頼みました。で、番号札をもらい、テラス席で茹で待ち。
店、入りは、9割程度。客は、概ね地元系の中年。鶯の声が聞こえる感じが、これまた何か、香川的。


で、出来ましたよ。まずは、初食の京都拉饂麺。味噌ベースのスープと平打麺とのコンビです。
ラーメン的には麺のコシが強烈ですが、スープとはいいバランスで、独特かつ普通に馴染んでます。
ぶっかけは、オーソドックスな讃岐系。麺もいいですが、他で食べたことがない感じの出汁も、美味し。
香川だと、丸亀 『一屋』 とかに近いのかな。初めて来て食べた時と同じ、独特の感動がありました。


で、たっぷり食って腹が膨れた後、改めて玉川へ戻り、物凄い勢いの桜を改めて拝むの図。


改めて拝んでも、やはりしみじみ物凄過ぎる桜を拝むの図。


というか、もう物凄過ぎて、何かよくわからない桜を拝むの図。


物凄過ぎるけど、地元の人はのんびり観てる桜を拝むの図。


コンクリ護岸とも調和するので、石段とも無論調和する、桜。


石段とも調和するけど、自然の水面とも無論調和する、桜。


自然の水面とも調和するけど、人間橋とも全然調和する、桜。


そして、本来の井手玉川の名物たる山吹とも調和する、桜。


再び川原へ降りて、川原に生えた草越しに物凄い桜を、眺める。


足元に目をやり、物凄く澄んだ水の中で舞う花ひらを、眺める。


水害の歴史が信じられない穏やかさの中、物凄い桜を、眺める。


「水害の歴史から生まれた」 と言えなくもないことが信じられない中、物凄い桜を、眺める。


という感じで上流へ歩いてると、桜が途切れたので、地蔵禅院へ行ってみることにします。
途切れポイントから500mほどの所にある地蔵禅院は、枝垂桜が名物。円山公園の桜と兄弟とか。
で、下帯が何ちゃらとか椿坂がどうたらとかの棚田ゾーンを山背古道で抜けて、寺がある上井手へ。
更に古道を進むと、とんでもない坂が現れました。で、その先には、石段。で、寺は無論、その奥。


途中の小野小町の墓も完全スルーで何とか地蔵禅院へ着きましたが、枝垂桜、終了。無念。
隣の玉津岡神社へ寄って、謎の奉納手形を拝んだりしてから、元来た道を戻って、帰りましたとさ。
日が傾き始めた玉川沿いを歩いてると、ウエディングフォトか何かの中国人の撮影隊がいましたとさ。
ドレスの裾を泥で汚した花嫁は、スキニー履いた奴だらけの撮影隊を、死んだ目で見てましたとさ。

玉川、客は基本、地元の人ばかりです。層的には、まあ、烏合。
ただ平日の昼間だった為か、小さな子を連れた親子連れと、老人達が大勢を占めてます。
花見をしてる地元老人の団体もいましたが、そんな人達も基本、実にのんびりムード。
騒ぐようなことは全くなく、写生してたり寝てたりと、とにかくリラックスして桜を眺めてました。
はしゃいでるのは、川の中へ入って遊んでる地元の子供達くらいでしょうか。
観光系の人は、限りなくいません。カップルも、夫婦と区別がつかない地元系がいるくらい。
カメの姿も、あまりなし。こんな天国状態、いつまでもってくれるでしょうね。

そんな玉川の、桜。
好きな人と観れば、よりゐでなんでしょう。
でも、ひとりで観ても、ゐでです。

【客層】 (客層表記について)
カップル 若干
女性グループ 微 or 0
男性グループ 微 or 0
混成グループ 微 (中国人撮影隊)
子供 1
中高年カップル 2
中高年女性グループ 1
中高年その他 5
単独女性 微
単独男性 微

【ひとりに向いてる度】
★★★★★
現状では、天国に近いと思う。
今後、阿呆の来客が増えないことだけを、切に祈る。
地元の人以外は、ひとり5000円くらい取ってもいいと思う。
たなか家は、14時頃には締まるので、気を付けよう。

【条件】
平日水曜+桜ピーク 13:00~17:00

玉川堤
京都府綴喜郡井手町井手里
入場自由

JR奈良線 玉水駅下車 徒歩約5分
 
玉川堤 – 京都府
 

たなか家 井手町本店
京都府綴喜郡井手町井手玉ノ井20-1
11:00~14:00 日曜定休

JR奈良線 玉水駅下車 徒歩約10分

京都のおうどん屋さん たなか家 – 公式