五山送り火の妙法を拝みに行って来ました。もちろん、ひとりで。

2016年8月16日(火)


五山送り火の妙法を拝みに行って来ました。もちろん、ひとりで。

五山送り火は、その名の通りに火を用いる行事ながら、基本、雨天決行となってます。
槍が降っても決行というわけではなく、1963年には豪雨で順延してますが、基本、16日に固定。
少なくとも私の記憶がある範囲では、 「雨で延期になった」 という話は、聞いた憶えがありません。
大変だという話ではあります。が、それも、当然でしょう。送り火はあくまで、送り火なのですから。
ホテル屋上で酒の肴に火を眺める仏罰必定の輩から、五山コンプへ挑む自転車珍走団に至るまで、
様々な愚民を様々な愚行へ駆り立てるライトアップイベントのようになってしまってる、五山送り火。
しかし、その本義はあくまで、現世へ戻った精霊 aka おしょらいさんを、あの世へ送り返すこと。
所詮は雲から下の事情に過ぎない雨で、精霊のステイ日数を延長させるわけには行かないのです。
延長などすれば、現世へ未練を抱いて帰らない居残り幽霊が大量出現するかも知れませんし、
そうなれば、そもそも霊口密度が高過ぎる怨霊都市・京都に於いて霊口爆発が発生するのは、必定。
然るべきスケジュールで、然るべき客出しで、然るべき場所へ帰ってもらう。これが、大事なのです。
なので、2016年の五山送り火は、とんでもない雨の中でも中止されずに敢行されました。
ゆえに、五山送り火5ヵ年計画を遂行中の当サイトは、ズブ濡れで妙法へ出かけました。
阿呆丸出しで何度も何度も様々な方法で五山コンプへ挑むも、それら愚行の全てが失敗に終わり、
反省の後、 「5年かけて、1年に一山ずつ観る」 と決め2015年に発動したのが、当サイトの5ヵ年計画。
初年度の前年は、送り火の代名詞的存在をまず押さえようと、大文字山を拝みに行きましたが、
第2回の今回は、大文字の隣にして大文字に続いて点火される妙法を、拝みに行ったのであります。
松ヶ崎・妙法は、洛北は北山の東にあって、五山の中で唯一 「妙」 と 「法」 の2文字1ペアな山。
この地は、日蓮の孫弟子・日像の教化により村全てが日蓮宗へ改宗したという伝説を持ちますが、
送り火で描かれる 「妙」 の字もやはり、日像上人が西側の山に書いた 「妙」 をルーツとしているもの。
正に霊的事情により決行されてる送り火なのであり、雨程度で中止されることは考えられません。
正直、当日に雨が降り始めた時には、5ヵ年計画を6ヵ年計画にする屁理屈を考えたりもしましたが、
大変な思いをして燃やされる火を拝むなら、こちらも多少は大変な思いをするのが、筋でしょう。
そう考え、雨の松ヶ崎へ出かけたのでした。そして、本当に大変な思いをしたのでした。


松ヶ崎の最寄駅は、市営地下鉄・松ヶ崎駅。で、当日19時半、烏丸御池駅から地下鉄へ乗車。
烏丸御池の時点で雨は既に降ってましたが、駅は浮かれた外人や浴衣の民が多く、車内も大混雑。
ただこの浮かれた連中は、大半が北大路駅で下車。大文字目当てでしょうか。人気ですね、大文字。
余裕で座って松ヶ崎駅へ着きましたが、松ヶ崎ホームは松ヶ崎ホームでやはり送り火客の姿、多数。


「帰りの切符は今の内に」 と共に 「雨で濡れて滑りやすい」 とアナウンスされてるのを聞き、
雨がまだ降ってるのかと危惧しながら出口へ行くと、近付くごとに人間が増え、出口には人間の壁。
壁は当然、雨待ち。通ることさえ、出来ません。しばらく構内で待ちましたが、その内に時間は19:50。
妙法の点火は、20:05。やむなく壁を破り、外へ出ます。外は当然、全身が即ズブ濡れになる豪雨。


向かうのは、 「妙」 が確実に見える宝池自動車教習所。確実に絵を押さえ、すぐ帰る算段です。
駅の北西側に出て、傘を差してることを忘れるくらい濡れながら、北山通の一筋北の松ヶ崎街道へ。
どっかのおばさんから 「送り火、中止でしょうか」 とか訊かれながら数分歩き、御覧の教習所へ到着。
教習所、真っ暗ですが、ガードは開放。中にはバンバン人が入ってて、200人程度はいるでしょうか。


で、着火まで、待機。普通の焚火なら絶対に着火不能な勢いの雨が降りまくる中で、待機。
あ、イントロでも触れましたが、 「妙」 があるのは松ヶ崎の西側の山。 「法」があるのは、東側の山。
で、左から 「妙」 「法」 と。大昔から左読みが行なわれた理由は、単に 「妙」 が先に出来たからとか。
そうこうする内、画面右、題目踊りがある涌泉寺の辺で火の気配が起こり、字が現われ始めました。


で、明るくなって煙が出たなと思ったら、あっという間に 「妙」 の字が完成。完全に、 「妙」 です。
えと、この時、雨は物凄い勢いで降りまくりです。一瞬止んだわけでは、ありません。降りまくりです。
にも関わらず、 「妙」 、浮かび上がるのが妙に早い。 「大」 よりも、確実に早い。小さい為でしょうか。
何にせよ、有り難や、有り難や。照明が若干邪魔ですが、動くのも面倒なので、その場で拝みます。


「妙」 完成と共に、教習所の中は客が増えましたが、雨のせいか、混雑度は大したことなし。
傘で身幅は膨脹してますが、それでも人数と広さのバランスが丁度良いというか。良い場所ですね。
よし、観た。しっかり、拝んだ。充分、押さえた。なので、次はさっさと 「法」 を押さえて、さっさと帰ろう。
と思い、さっさと教習所を退所。先刻は西へ歩いた松ヶ崎街道を東へ歩いて、 「法」 へ向かいます。


雨は相変わらず物凄く、松ヶ崎街道北側の小川みたいな側溝は、水が完全に溢れまくり状態。
眼鏡をかけると視界ゼロなので、裸眼で歩いてると、その側溝が道に見えました。で、はまりました。
はまったというより、落ちました。溢れまくりの水が却ってクッションになってくれましたが、落ちました。
ズタボロで何とか路上へ這い上がると、今度は外道な車がクラクション。帰りたい。もう、帰りたい。


松ヶ崎街道、確か通行止めだったと思うんですが、車内から火を観ようとする輩車が続発状態。
もちろん、私と同様に 「妙」 から 「法」 へ流れる人民も多し。その逆も、多し。かなりの大混雑です。
そんな中、水没は免れたけど路面へ落ちて歪んだカメラの筒を、力ずくで曲げながら歩くこと、しばし。
足が、痛い。明らかに打撲で腫れ、そこを濡れたズボンが締め付けてる。帰りたい。もう、帰りたい。


帰りたい帰りたいという気持ちを押し殺しながら東へ歩いてると、松が燃える匂いがしました。
火が近いのかな。でも、送り火の匂いが道まで漂うというのは、ちょっと有り得ないんじゃないかな。
とか思いながら更に歩いてると、人溜りがあり、そこから思いっきり燃えまくってる 「法」 が見えました。
近い。やたら、近い。近過ぎて何か有難味が薄れる気さえしますが、何にせよ、有り難や、有り難や。


その内、 「もう終わりやな」 という声が聞こえ始めたので、水を払って時計を見たら、20:20。
妙法、消灯時間です。見え過ぎるくらい見えるせいか、 「法」 、火が消え始めたのも視認できました。
あっという間という話ですが、この状況でも私は何とか、両方の字を拝めました。有り難や、有り難や。
で、帰ります。本当は、この送り火と密接な関係を持つ題目踊りを、帰りに観たかったんですけどね。


題目踊りというのは、さし踊りなる踊りと共に、松ヶ崎・涌泉寺にて継承されている民俗芸能。
日蓮宗への全村改宗を喜んだ涌泉寺の和尚が、経を唱えて踊ったことから始まる踊りとされてます。
妙法の送り火保存会と踊りの保存会は、重なってるそうです。で、16日は、送り火後に踊るわけです。
写真は、以前に観た時のもの。豪雨でも、やるんでしょうか。一応、寺の近くまで行ってみようかな。


とか思ってまた東へ歩く内に、側溝落下で打撲した足はどんどん腫れ、豪雨もどんどん豪化。
頭も痛くなり、視野もぼやけて来た為、涌泉寺を通り過ぎ、松ヶ崎大黒天の前まで来てしまいました。
大黒天は大黒天で、檀家の方が 「法」 を焚いてるそうなんですけどね。で、 「妙」 の方は涌泉寺、と。
超間近で観る消火寸前の 「法」 からは、消火してる人達の声が聞こえまくり+消火臭が匂いまくり。


更なる豪雨の中、改めて涌泉寺へ行く気など、全く起こりません。真っ直ぐ松ヶ崎駅へ戻ります。
歩いた北山通は、大渋滞。歩道も、珍走自転車が時折、大爆走。走れ、走れ。で、そのまま、逝け。
と、ネタ採取不全の敗北感+体各部の激痛+エンドレスのズブ濡れで、心はすっかりヤケクソ状態。
浴衣外人グループの止めたタクシーのライトが雨を強調してて面白いので、撮ってもみたり。虚無。


足元注意の張紙が出てる松ヶ崎駅へやっと戻り、不自由な足が漏水で滑ったのは、20:45。
トイレで体を調べると、雨で流れ過ぎて気付きませんでしたが、指の肉が削げ、大量出血してました。
足の打撲は、以後半年に亘って痛み続けました。カメラは、蓋をするとオーブが写るようになりました。
精霊の見送りは、斯様に大変という話であります。が、私は頑張ります。5ヵ年計画、ではまた来年。

妙法、客層は基本、地元の家族連れや夫婦、友達&近所同士などがメイン。
年齢・性別・その他の属性による偏りは特に感じられず、烏合といえば烏合な感じでしょうか。
車でのたくりこむような近隣系の輩も確かに多いですが、それでも基本層はあくまで地元系です。
地元民以外は、やはり烏合。学生が多いとか観光客が多いとかの感じは、特にありません。
というか正直にいえば、細かいことを見てられるような状況では全くなかった、という。
雨の為か何なのか、浴衣姿の浮ついた連中は、むしろ駅とその周辺に多かったように思います。
リア充の劣化コピー or 型落ちというか、消費者根性と貧乏性と無知性が合体した輩、多し。
浮ついた連中は人種・国籍問わずこの手の輩であり、ゆえに出入り口の混み方は実に、阿呆。
単独は、カメと物好きの男がいる程度。女性は、果していたんでしょうか。

そんな五山送り火の、妙法。
好きな人と拝めば、よりおしょらいさんなんでしょう。
でも、ひとりで拝んでも、おしょらいさんです。

【客層】 (客層表記について)
カップル:1
女性グループ:1
男性グループ:1
混成グループ:1
子供:若干
中高年夫婦:1
中高年女性グループ:1
中高年団体 or グループ:4
単身女性:微
単身男性:若干
【ひとりに向いてる度】
★★
送り火を観るだけなら、特に問題はない。
駅の混雑も、さっさと通り過ぎれば問題ないレベル。
ただし、雨の日は絶対に行くべきではない。
どうしても行くなら、精霊と一緒にあの世へ送られないように。

【条件】
平日火曜 19:30~20:50


 
 
 
五山送り火
毎年8月16日 開催

松ヶ崎・妙法
8月16日 20時05分より点火
市営地下鉄松ヶ崎駅から北側をうろつけば、
きっと見える
 

五山送り火 – 京都五山送り火連合会

五山送り火 – 京都市観光協会

京都五山送り火 – 京都新聞

五山送り火 – Wikipedia