祇園祭の長刀鉾町稚児舞披露を観に行ってきました。もちろん、ひとりで。

2013年7月5日(金)


祇園祭の長刀鉾町稚児舞披露を観に行ってきました。もちろん、ひとりで。

注連縄切りで山鉾巡行をスタートさせる、長刀鉾の生稚児。
正に祇園祭の 「顔」 的存在ですが、同時に、実にミステリアスな存在でもあります。
初期の祇園会に於いて貴人より調進されたという 「神の寄り坐し」 としての稚児・馬長童とも、
中世以降の祭で激化した風流の羯鼓稚児とも言われる、そのルーツからして既に、ミステリアス。
また、 「神の使い」 扱いとはいえ十万石の大名と同じ格式を授けられるのもミステリアスなら、
かつては船鉾以外の全ての鉾に乗ってたのに現在は長刀鉾にのみ残るというのも、ミステリアス。
さらに、葵祭の斎王代と同じく知らんところで知らん間に選考決定されるのもミステリアスなら、
でも決まった子供の家は常に誰もが知ってる有名な家だったりするあたりもやはり、ミステリアス。
実にミステリアスなのであります。いろんな意味で、実にミステリアスなのであります。
そんなミステリアスな生稚児が、まだ祭のムードも希薄な7月初頭の街中へ突如として登場し、
山鉾巡行の際と同じ舞を、大半が仕事中の通行人に向かい披露するのが、7月5日の吉符入りです。
吉符入りとは、祇園祭の開始にあたって各山鉾町にて行われる神事始めのことですが、
唯一鉾に乗る生稚児を擁する長刀鉾では、この神事始めに於いて稚児の紹介や盃などに加えて、
山鉾巡行の際に舞う 「太平の舞」 の神前披露および町会役員による審査が行われます。
のみならず、めでたく審査に合格した生稚児は、会所二階を鉾に見立て、外へ向かって舞を披露。
無論、当日の会所前には好き者が集いまくるため、その若干無法気味な混雑も相まって、
事情を知らない人からすれば、かなりミステリアスに見えるであろう奇景が展開されるわけです。
祇園祭の端緒を飾る、そんなミステリアスな稚児舞披露、出かけてみました。
一般人が観れるのは舞のみゆえ、ネタ不足を補うべく街ブラが多量に混入してますが、
その辺から伝わるかも知れない街の温度感も楽しんでもらえると、幸いです。


やってきた、13時半の長刀鉾町会所。左の赤い絨毯が垂れてるとこが、そうです。
普段は前に自販機が置かれ全然目立ちませんが、祭となれば会所然とした佇まいが、全開。
鉾設置のため手前の破風型アーケードも移動、スキーのジャンプ台の如き奇景を現出させてます。
稚児舞披露は、15時から。まだ1時間半もあるためか、見物人はまだまだ見当たりません。


とか思いながら対岸の会所真下へ行ってみると、既に数人が張ってたりしましたが。
会所、離れて眺めると町家っぽいですが、近くで見ると、和風ビルといった感じの新しい建物。
昔の写真を見ると、現在は伏見にある蕎麦店 「京乃四季」 が1階に入ってましたが、今は店子無し。
私にはこんな時間から張る根性は無いので、近所をふらつき時間を潰します。飯、食おうかな。


それなりに観光客で混雑してる道から、何となく錦市場へ入り込み、食を物色。
そういえば昔の写真の 「京乃四季」 には 「甘党」 の札があり、それが美味げに見えたもんです。
そんなことを思い出すと、猛烈に餅系食堂的な出汁+甘味が食いたくなり、近年移転した冨美家へ。
錦の鍋焼きうどん屋として有名だった冨美家ですが、近所に移転して甘味も強化されたんですよ。


稚児舞披露とは特に関係ないですが、がっつり食った焼豚冷麺、690円なり。
夏の京都で鍋焼きうどんを食うのは苦行でしかないので、冨美家、夏は冷麺を推してます。
昔の店と比べると笑うほどおしゃれになった店内で、ほんのり漂う鍋焼きの香りを嗅ぎながら、瞬殺。
それにしても、ここの冷麺の焼豚、こんなしっかりしてたっけ。麺も、こんなしっかりしてたっけ。


やはり稚児舞とは特に関係ないですが、続けて食った抹茶何ちゃら、600円なり。
抹茶あんみつにフルーツ&麩をぶち込んだ逸品です。メチャクチャに甘いけど、でも美味しい。
やはりほんのり漂う鍋焼きの香りを嗅ぎながら、食す。この幸福感、わかる人にはわかるはずです。
店のおばちゃんと客のノリは、おしゃれになっても特に変化なし。そんな冨美家でありました。


冷麺と抹茶何ちゃらで腹がパンパンになっても、時間はまだ14時半。
チェーンロックをぶった切り駐輪自転車が撤去される様を見たりしながら、さらにうろついてると、
大政所町の大政所 = 秀吉に移転された旧御旅所の前まで来たので、何となく眺めること、しばし。
そういえば、ここではかつて 「大政所神剣拝戴」 なる神事が行われ、稚児も来たそうですよ。


などと蘊蓄に酔ってると、その稚児&御一行が、背後を通り過ぎていきました。
どっかのTVクルーが脚立担いで走ってきたので、何事かと思ったら、御一行、烏丸通を北上中。
突如として街へ現れ、ごく普通に道を歩く、神の使い。その存在感、やはり極めてミステリアスです。
というか、着付けは会所以外でやるんでしょうか。そして、タクシー乗るのは駄目なんでしょうか。


御一行が向かったのは、当然ながら、長刀鉾町の会所。
私も後を追っかけるようにして会所へ向かうと、対岸の歩道でさえもう、ご覧の有様だよ・・・。
歩道の3分の2ほどが見物人で埋まり、通行困難状態。会所真下は車道にまで人間で溢れてます。
路上へ堂々と三脚を立てる輩も多数出現し、迷惑そうに通り過ぎる勤め人はもっと多数出現。


そうこうしてるうちに、時間は15時になりました。神事の始まる時間です。
神棚には神酒・洗米を供えられ、壁面に神事日程が貼り出されてるであろう会所2階では、
稚児が盃を飲み交わし、神前および町会役員の前で稚児舞を披露&審査を受けてるんでしょうが、
外からは御覧のように全く何も見えず、ただただ報道陣のミステリアスな背中が見えるのみ。


路上へ堂々と脚立を立てて突っ立つカメの、やはりミステリアスな背中を眺めたり、
車道にはみ出たアマカメへのクラクションで神事の音がかき消されるのを聞いたりしてるうち、
15時半、「太平の舞」 審査に無事合格したのか、遂に稚児が会所の窓側へその姿を現わしました。
この窓の額縁を鉾の櫓に見立てて、2人の禿と共に、これからその稚児舞を披露するわけです。


顔を真っ白に塗り、藤色の地に鶴が飛ぶ図柄の振袖+萌葱色の上下で正装、
金銀の水引で精巧に作られた蝶+孔雀の羽を差した、「チョウトンボ」 の冠も神々しい、稚児。
お腹にくっついてるのは、羯鼓という鼓。小さめの鼓であり、 「太平の舞」 はこの鼓をフィーチャア。
「手を伸ばして清めるような動き+羯鼓を打つ」 という舞を、数分ごとにゆっくり行うわけです。


で、舞。


舞。


舞。


舞。


舞。


舞。


羯鼓。


舞。


舞。


舞。


舞。


で、15:50、舞、終了。去年より、ちょっと長かったかな。
あ、アングルがコロコロ変わったのは、もちろん移動したからですが、道路横断はしてませんよ。
この道路の下は地下道が走ってて、出口がそこら中にあるため、移動が結構楽に出来るのですよ。
でも、だからといって必死で地下を走り回ると、務め人の迷惑になるので、止めときましょうね。

客層のメインは、近所系の中高年。
特に家族連れやグループというわけでもなく、またはっきり単独というわけでもなく、
近所なので適当にやってきて、何となく顔見知りが適当に集まってる感じ。
他は、御覧のようにカメのオッサン+兄ちゃん。あと、カメと観光が混ざった、行儀の悪い奴。
観光丸出しの若者もちょくちょくは見かけますが、基本的にこの辺はビジネス街であり、
通行人の大半は仕事中の人で、足を止めて見入る人はかなり少なめです。
単独は、先述のカメがメイン。女は、若干濃いのがいるくらい。

そんな祇園祭の、長刀鉾町稚児舞披露。
好きな人と観たら、よりミステリアスなんでしょう。
でも、ひとりで観ても、ミステリアスです。

【客層】 (客層表記について)
カップル:微
女性グループ:微
男性グループ:微
混成グループ:微
子供:0
中高年夫婦:1
中高年女性グループ:2
中高年団体 or グループ:5
単身女性:若干
単身男性:2

【ひとりに向いてる度】
★★★
色気のプレッシャーは、特にない。
人圧は高いが、問題になるほどではない。
ただ、特にネイティブ全開で盛り上がるというわけでもなく、
披露自体は結構あっさりと終わる。

【条件】
平日金曜 13:30~15:50


長刀鉾街稚児舞披露
毎年7月5日 長刀鉾町会所にて15:00~ 

長刀鉾町会所
京都市下京区四条通烏丸東入ル長刀鉾町

京都市バス 四条烏丸下車 徒歩約2分
阪急電車 烏丸駅下車 徒歩約2分
市営地下鉄 四条駅下車 徒歩約2分

長刀鉾 – 長刀鉾囃子方公式

長刀鉾 – 祇園祭山鉾連合会

長刀鉾 – 京都観光Navi