宝泉院の春の夜灯りへ行ってきました。もちろん、ひとりで。
大原・宝泉院の春の夜灯りへ行ってきました。もちろん、ひとりで。
宝泉院。いわゆる「額縁の庭園」で有名な寺です。
客殿の柱の間の空間を額縁に見立て、「立ち去りがたき」庭園・盤桓園を鑑賞するという、あれ。
京都を「そうだ」呼ばわりしてださってどうもありがとうな某CMでフィーチャアされてから特に、
絵画のようなその美しいビジュアルが人気を博するようになりました。
独立した寺ではなく、すぐそばに建つ勝林院の僧坊。やはりすぐそばの実光院とともに創設。
70年ほど昔は高浜虚子によって「大原や 無住の寺の 五葉の松」と詠まれる無住寺だったとか。
それが今では「閑」を求めてやってきた観光客ですっかり人だらけ、などということはありません。
三千院&勝林院よりさらに奥にあるという立地、そもそも大原自体が市街地から遠いアクセス性、
加えて昼間でも強制的にお茶とお菓子がいただけて800円という拝観料設定が、
紅葉などのピークタイムを除いてこの寺の侘びの味をしっかりと動態保存。
大原名物・声明の響きの中で落ち着いたときを過ごせる空間を、現在も作り出しています。
そんな宝泉院が4月下旬からGWにかけて行うのが、春の夜灯り。
新緑に萌える庭園をライトアップで彩り、立ち去り難き風景をさらに立ち去り難くするというものです。
大原バス停から三千院への道に入ったあたりに、貸し出し用懐中電灯が置いてありました。
昼間は観光客やお土産屋で賑わうこの辺ですが、夜はとことん真っ暗です。
なので、懐中電灯は客の足元を配慮してのもの。準備がない人は忘れず借りていきましょう。
19:00頃のバス停付近はまだ暮れ切ってない感じでしたが、坂を上った奥の方は既に漆黒の闇。
宝泉院は、三千院の参道をどんつきまで行ったところにあります。
山門横の拝観受付で800円払い、中へ入ります。昼間は付いてくるお茶+お菓子は、ありません。
最近出来たという庭園・宝楽園は、どうやら夜間拝観なし。五葉松、奥でチラっと光ってますね。
ちょっとだけ庭園っぽくなってる玄関付近や法然上人衣掛けの石などを見てから、堂内へ。
住居らしい建物をちょこちょこっと飾りつけた、いい雰囲気。でも足はまっすぐ額縁へ向かいます。
おっとその前に、進行方向左手に現われる鶴亀庭園でございます。江戸時代の作。
本来は部屋の中から格子越しに観るもんらしいですが、戸が開いてたから、直で。
何が鶴で、何が亀かは、知りません。
で、額縁でございます。部屋の奥から眺める額縁でございます。
正に額縁という感じの、額縁らしい額縁でございます。
楓と竹をメインに眺める額縁でございます。
手前にある、理智不二なる水琴窟の理不尽ならぬ美しき響きが、彩りを添える額縁でございます。
五葉の松をメインに眺める額縁でございます。
樹齢実に700年、京都市指定天然記念物指定は伊達じゃないデカさと太さの額縁でございます。
楓と、そして宝泉院最大の売りでもある血天井をメインに眺める額縁でございます。
そう、血天井でございます。何かが動いてるように見える広縁の天井板、これがそうでございます。
慶長5年の伏見城の戦いで、敗れた徳川忠臣・鳥居元忠らが城内大広間で自刃。
忠臣達の霊を仰ぎ見て供養するため、家康は血のついた床板を京都のあちこちの寺の天井に移管。
三十三間堂となりの養源院が有名ですが、ここ宝泉院の血天井も、そのひとつです。
係員の方に質問すると、どこがどう血痕なのか、細かく場所を教えてくれます。
ライトアップのため室内の照明は下げてるので、わかりにくければ訊いた方がいいでしょう。
右の写真は、霊気が凄くて思わず記念撮影したでござるの巻。
額縁や血天井以外にも、宝泉院、いろいろ見所があります。小さい寺なんですけどね。
特に囲炉裏の部屋と、その奥にある床の間(?)みたいなのは、実に渋くていい感じです。
で、囲炉裏の部屋。静かな語らいの場として親しまれてるそうです。
私はひとりで語らう相手がいないので、血天井の霊との交信を試みました。失敗しました。
声明に用いられるサヌカイトの石盤でちょっと遊んでから、退出。
下駄箱の上で靴の番をしてた小さなカエルとも交信を試みました。失敗しました。
宝泉院を出て大原バス停まで至る夜の道は、正に暗黒への挑戦です。
三千院あたりまではかろうじて街灯がありますが、昼間とのギャップが凄過ぎて恐怖感を煽られ、
そこから先の呂川沿いの道に至っては、真っ暗ゾーン、多出。「道がない」とか思うこと、多数。
真っ暗ゾーンは、こんな感じ。断じて撮影ミスではありません。
自前のライトを持ってない方は、くれぐれも貸し出し用懐中電灯を借りていくように。帰れません。
客、少ないです。下駄箱を見る限り、20人くらい。
値段の高さゆえかアクセスの悪さゆえか、雰囲気は極めて落ち着いてます。
単独男以外はおおむね観光客風であり、カップルも多いですが、はしゃぐものはほとんどいません。
客筋は良いとまでは言わないが、非常にマシな方ではないかと。
単独男は、カメラマンでもなく観光客でもなく、血天井を睨み続ける奴など、私を含めて変人ばっかり。
そんな宝泉院の春の夜灯り。
好きな人と見たら、より額縁なんでしょう。
でも、ひとりで見ても、額縁です。
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【客層】 (客層表記について) カップル:3 女性グループ:0 男性グループ:0 混成グループ:0 修学旅行生:0 中高年夫婦:2 中高年女性グループ:0 中高年団体 or グループ:3 (大きい餓鬼を連れた家族連れ) 単身女性:0 単身男性:2(カメラマンはいない) |
【ひとりに向いてる度】 ★★★★ 客層は四面楚歌状態、 同類はエグイ奴ばかりという状況だが、 客自体が少なく、みな景観に飲まれてるため、 色気・人圧ともにプレッシャーはあまりない。 【条件】 |
宝泉院
京都市左京区大原勝林院町187
9時 ~17時
京都バス大原下車 徒歩約10分
春と秋に「夜灯り」を開催
18:00~21:00
公式 宝泉院.net
Wikipedia 宝泉院