青谷梅林へ梅を観に行ってきました。もちろん、ひとりで。

2017年3月12日(日)


青谷梅林へ梅を観に行ってきました。もちろん、ひとりで。

青谷。 「赤坂」 が赤い坂ではないのと同様、特に青い谷というわけではありません。
どちらかといえば、小高い場所に立地し、春先には青ではなく白い梅が咲き乱れる所であります。
場所は、京都と奈良の中間に位置する、城陽市。農地がベッドタウン化した典型例みたいな街です。
宅地化しなかった場所で咲く青谷の梅は、宅地化が進む遥か以前より栽培が行われてきたもの。
江戸期に染料の需要が高まると、ここで作られる鳥梅は、紅花染の色素定着材として高騰しました。
鳥梅とは、青い梅、ではなくて黒い梅です。焼き梅や黒梅とも呼ばれた、燻製状の加工された梅。
無論、青谷ではこの鳥梅を作りまくり、現在を遥かに凌ぐ規模で梅林が形成されたんだとか。

京都ヲ距ル南數里ニシテ、梅林アリ靑谿ト云フ、延袤二里斗リ、衆山回環蹲スル如ク伏スル如ク、
靑松ノ瀟漉、梅花ノ皓潔、之ガ衣トナリ之ガ裳トナル、而シテ市ノ邊、中村ノ二村家、其間ニ隱見シ、
宛然一仙郷ヲ爲ス、且京都ヨリ寧樂ノ舊都ニ通ズル鐡路ハ西麓ヲ過ギ、南北各半里弱ニシテ、
玉水長池ノ停車驛アリ、頗ル便利ノ地トス、予事ニ因テ屢此地ニ往來シ、其淸秀ヲ愛スルコト久シ、
到ル處恒ニ花時ノ風光ヲ說キ、且誇テ日和州月瀬ハ天下ノ勝ナリ、今試ニ靑谿ヲ以テ比スルニ
山水攅聚ノ奇、或ハ讓ル所アリト雖モ、遼廓眇忽規摸雄大、而シテ梅花ノ饒多ハ逈カニ之ニ過グ、
之ヲ本邦ノ羅浮ト稱スルモ我其溢れる溢美ニ非ルヲ信ズ
(山中青谿 『靑谿絶賞』 )

明治以降は、化学染料の登場によって、鳥梅の需要が衰退。青谷梅林もまた、衰退したとか。
梅林の荒廃を憂慮した地元は、観光化を企図して、保勝会を結成&上記の 『靑谿絶賞』 も出版。
すぐ傍で奈良鉄道 = 現在のJR奈良線が開通したことも追い風となり、この誘客戦略は当たりました。
明治中頃には観梅スポットとして認知され、変遷を経ながらも、その名声は今なお確固たるもの。
「天下ノ勝」 たる 「月瀬」 に 「讓ル所」 あれど、京都からの利便性では勝てる名所となったわけです。
で、今回、そんな青谷にて梅を観るべく、空だけは真っ青な小春日和に出かけたわけであります。
もちろん、梅グルメだって、堪能しまくり。観梅だけで満足出来るわけ、ありません。


青谷梅林の最寄駅は、JR奈良線の山城青谷駅。で、13時過ぎに、その山城青谷駅へ到着。
開設当時の名前が 「青谷梅林仮停留場」 というくらい、正に青谷梅林の為に出来たような駅です。
城陽でどっと乗って来た客と共にどっと降り、小さな梅案内所がある駅を抜けると、梅林までは徒歩。
そこら中に立てられてる案内看板と、そこら中にいる観梅客の流れに従って、延々と歩き続けます。


途中の道は、完全なる住宅地。 「農地を潰して出来た洛南の宅地」 の典型、とでもいうか。
ただ、農地も割と残ってて、梅推しも強め。途中で見かける店も、大抵 「梅」 が名前に入ってます。
宅地を抜けると、洛南的な古い街並が登場。八幡の古い町で育った私には、馴染みの雰囲気です。
ただ、古い町だけあって道が狭く、そこで観梅客が団子状態なので、感慨に浸る暇はありません。


で、20分ほど歩いて着いた、単なる農地然としたルックの青谷梅林、入口。


で、梅。


梅。


梅。


梅。


梅。


で、移動すべく歩いた、道。


移動した先で現れた、紅梅。


紅梅のすぐ傍で咲く、白梅。


と、適当に梅を観てる内、荒野の先に見えてきた、花見ゾーンの如き何か。


というわけで、青谷梅林・梅まつりの会場に到着しました。やってるんですよ、そういうのを。
梅まつりは、会期中の休日には売店が出て、パフォーマンスなども行われるという、花見系の催し。
で、今日は日曜日+快晴なので、客が一杯。まるっきり桜シーズンのような賑わいが、現出してます。
この写真では全然イメージ出来ないでしょうが、梅の木だらけで狭い会場、本当に混みまくりです。


露店や売店は、当然ながら、梅推し。売ってるものは、梅干や梅肉のみならず、概ね梅入り。
売店では、梅入りの和菓子や洋菓子、あと梅酒などが人気。露店では、梅うどんなんてのも販売中。
場内アナウンスもやたら売り込みが激しく、 「プラムくん」 なる1000円也の福袋を、やたらと推しまくり。
私は、梅どらなるものに心が強く動きましたが、ネタ的にはやはり梅うどんを食っとくべきでしょう。


で、梅うどん450円也を頼んだの図。見事に、うどんの上へ梅干がそのまま、乗ってます。
味の方は、関西系のオーソドックスな素うどんに梅が乗っただけ。なんですが、これが結構、美味い。
梅のえぐみは、全然なし。うどんが製麺所の麺っぽくて、バザー感が希薄なのも、何だかナイスでした。
すぐ隣に座ってた地元系らしき婆ちゃんは、 「あんなんもん食べたら腹こわすで」 とか言ってたけど。


混みまくりゆえ席が狭く、ゆえに席難民が横を通りまくる中でうどんを食ったら、次はデザート。
デザートは、売り切れ間近だという梅ジェラート350円也にしました。梅ジュース150円也も、添えて。
梅ジェラートは、基本的にはジェラートに梅を乗せただけのもの。なので逆に、梅が普通に良い感じ。
添えた梅ジュースは、これまた単に普通な、梅のジュース。若狭三方敦賀製となってたのは、謎。


で、食うだけ食った後、展望台でも行こうと思って歩き出した先に、車と梅。


で、車の先の荒野で咲く、梅。


展望台へ続く、恐過ぎる道。


道が恐い割に、割とな展望台。


で、梅。


梅。


梅。


梅。


梅。


梅。という感じの、青谷でした。青くはないですが、梅でした。帰りましょうか。


帰る途中、梅どらへの想いが、改めて募りました。散策が過ぎて、小腹が減ったというか。
その内、駅前に 「梅」 何とかという和菓子屋があったのを思い出したので、寄ってみることにします。
寄ったのは、 『梅匠庵 若松』 。梅どらがあるか訊ねると、今日は売り切れとか。残念です。無念です。
が、 「梅」 を冠するだけあり、梅菓子の品揃えは、多彩。となれば、素通りするわけにも行きません。


というわけで、 『梅匠庵 若松』 で梅羊羹と梅マドレーヌ、そして焼き菓子 「梅の香」 を購入。
羊羹とマドレーヌは、梅の抜け感こそ光るものの、まあ、普通。しかし、 「梅の香」 は実に秀逸です。
梅の酸味を焼き菓子の衣の甘味がフォローし、衣のベタな和菓子感を梅が引き締めてて、実に美味。
茶を飲んだ際に感じた豊かな風味もまた、秀逸。この風味、色に例えれば、確かに青だと思います。

青谷梅林、客層は基本、地元あるいは近隣系です。
駅から向かう人は多いですが、遠来系の観光客に見える人は全然いません。
若者は、いないことはないですが、20代後半~30代以上のヤングアダルト系が大半。
カップルは、少なめ。夫婦に見えない感じの輩は、年齢を問わず、少なめ。
中高年の大半は、近隣の夫婦か家族連れで、犬を連れてる人たちがやたら多いです。
中年の団体もいなくはないですが、基本は4~5人の家族 or 知り合いグループ。
小さい子を連れた30前後の家族と、 その親世代が、やたら売店ゾーンで和んでるという。
といっても、ネイティブ全開空間というわけでもなく、そういうノリなのは地元のおばちゃんくらい。
基本テイストとしては、汎関西的な郊外住宅地のノリのようなものが、大勢を占めます。
単独は、男女とも若いカメがチラホラといる程度でした。

そんな青谷梅林の、梅。
好きな人と観たら、より青谷なんでしょう。
でも、ひとりで観ても、青谷です。

【客層】 (客層表記について)
カップル:若干
女性グループ:若干
男性グループ:微
混成グループ:微
子供:0
中高年夫婦:2
中高年女性グループ:1
中高年団体 or グループ:6
単身女性:超微
単身男性:微

【ひとりに向いてる度】
★★★
梅の質・量は、かなりいい。
鄙びた雰囲気やピクニック感、祭的なノリにも味があり、
アウェー感よりも異人としての醍醐味がより楽しめるだろう。
ただ、単純に駅からちょっと遠い。

【条件】
日曜+梅8分咲き 13:00~16:00


 
 
 
 
 
 
 
青谷梅林
京都府城陽市中中山

JR奈良線 山城青谷駅下車 徒歩20分
 

青谷梅林 – 城陽市観光協会