夏越祓の茅の輪を求めて山科をうろつきました。もちろん、ひとりで。 【前篇】

2019年6月30日(日)


夏越祓の茅の輪を求めて山科をうろつきました。もちろん、ひとりで。

改めて考えると、茅の輪くぐりまくりにおいて当サイトは、思い上がってました。
あちこちの社を茅の輪求めて彷徨い、 「これは小社を紹介するいい機会」 とか思ってました。
そして、その思い上がりを反省すると言って禊の天王山攻めなどをやり、それもネタにしてきました。
こうした所業は確かに、あまり良いこととは言えません。態度としては、明確にふざけてるでしょう。
愚かさを超克できず、糊塗することしかできない凡庸さから生まれる、この思い上がり。腐ってます。
が、だからといってこの愚昧&凡庸&腐敗を反省ばかりしてるのも、それはそれで非生産的です。
そもそも、反省の先に何があるというのか。部屋でじっとして、窓から雨粒でも数えてるべきなのか。
違う。それは日和だ。梅雨の雨中で徘徊したくないという日和の声が、内省心を偽装してるだけだ。
めぐりは、続けなければならない。めぐりが罪なら、その罪を一身に背負って続けなければならない。
その徘徊が、雨の中でのその徘徊こそが、めぐりびとにとって巡礼に、そして浄化にもなるはずだ。
私はそう考え、2019年の夏越は雨の中をとことん歩くことにしました。歩いたのは、山科です。
山科。京都の隣にあって、住宅地として猛烈に開発されたエリアであります。が、その歴史は古し。
古代には、大陸にも繋がる越の道の要衝となり、中臣氏が拠点と置くと共に天智天皇御陵も造営。
その縁もあってか山隣の平安京への遷都後は、公家の荘園・遊猟地ができ、寺社も相次ぎ創建。
中世以降は、決戦第2新本願寺ができたり禁裏御料地になったりしながら、山科七郷なる惣も築き、
明治に入れば鉄道の開通で都市化して、さらに昭和以降は京都のベッドタウンとして人口が爆増
そして近年は、地下鉄開通により利便性が増し、新たな形での宅地化が進んでるエリアであります。
そもそも山科という地名は 「山の窪み」 的な意味を持つらしく、その名の通り、エリアは盆地の中
まるで京都盆地を小さくしたような地形であり、外周にあたる山裾部には大小の様々な神社が林立。
で、 「これは山科の小社を紹介するいい機会」 と思って今回、その山裾をめぐったわけです。
山科盆地に降る雨は、めぐりびとが背負った罪を洗い流してくれるでしょうか。


6月30日、雨が降ったり止んだりしてる中、五条京阪から京阪バスで山科へ向かいます。
乗ったのは、六地蔵行き。山科盆地の南西、時計でいえば8時方向の大石神社方面を走る便です。
ので、8時の辺から歩き始め、時計回りで盆地の山裾をめぐろうと思います。で、大石神社前で下車。
で、そのまま大石神社へ直行かといえば、然に非ず。敵を欺いた大石を欺く、という感じでしょうか。


山科をめぐるなら、名前が山科の社からめぐるべき。なので、先に隣の山科神社へ行きます。
大石神社は、茅の輪が出ると公式サイトで言ってたので、殊更に慌てて向かう必要もありませんし。
狭い道をやたら車が通る山科感、またベタな宅地の先に煙る山が見える山科感を感じながら、南へ。
大石神社を通り過ぎた先で、山科神社、見えてきました。昼間なのにスピリチュアルな空気、濃い。


坂道を延々と歩き、途中の急坂で転びかけながら登った先に、山科神社の本殿はありました。
宇多天皇の命で創建され、日本武尊&稚武王と共に豪族・宮道氏の祖も祀る、山科の一之宮です。
茅の輪はなし。ただ、簡素ながらも雰囲気は立派。これからのめぐりの安全、祈願させてもらいます。
お参り後は、花など見ながら今度こそ大石神社へ。山科、家の建ち方は雑ですが、花と水は美しい。


先刻は通り過ぎた大石神社、着きました。御存知、大石良雄 aka 大石内蔵助を祀る社です。
何ちゃらの何ちゃらとして余りに有名な、内蔵助。当然、茅の輪も出ます。サイトにそう書いてました。
が、表の鳥居の周囲に茅の輪はなく、アナウンス看板類もなし。ついでに、参拝客などの気配もなし。
完全にあるという前提で、画面を横長へ切り替えて写真撮ってますが、茅の輪、本当にあるのかな。


とか思いながら境内に入ると、茅の輪、ありました。スタンドアローン型で、本殿前にありました。
サイズは、小さめ。大人はかなり背を丸める必要がある感じ。でも、ありました。疑ってごめん、良雄。
雨に濡れた大石桜の葉と狛犬に見守られながら、くぐらせて頂きます。ちとせのいのちのぶというなり。
境内は、輪をくぐりに来た家族連れが1組いた程度。花見の時にいた小馬は、どうしてるんでしょう。


早くも1本クリアできたことを喜びながら、次へ向かいます。行くのは、近くの折上稲荷です。
うどんに誘惑されながら、また狭い道は車が多く広い道は少ないという山科の謎を感じながら、東へ。
働く女性の守護神・折上稲荷は、工場の専用道みたいな道の先にありました。境内に入ると、工事中。
茅の輪もなし。ただ、賭事に利く神様や古墳などがあって、出かけるには楽しい社かも知れません。


どんどん行きます。次は、折上稲荷の裏の朝日神社。不審者全開で宅地を徘徊し、到着です。
住宅地迷彩な立地ながら境内は樹が多く、 「杜」 の気配を濃厚に出してます。ただ、茅の輪はなし。
お参りして朝日神社を出たら、広い道は車が少なく狭い道は多いという山科の謎を感じながら、北へ。
また、宅地に田んぼ潰した感も感じながら、北へ。ただ山科の水田、活性化したのは近代以降とか。


昔から洛中へ農作物を供給してた山科ですが、疏水開通までは水不足に悩んでたそうですよ。
開通後は、水田が活性化すると共に、工場も林立。御覧の福田金属箔粉工業の工場は、その走り。
砥粉の生産に始まり、昭和期の京セラ村田製作所に続く、山科のもう一つの姿という感じでしょうか。
でも偶に残る水田を見ると、やはり水と稲の色は良いなとも思いますが。ミネラル感が、何か濃厚。


稲を横目に川田道を北西へ進み、花山稲荷へ着きました。三条宗近小狐丸を鍛えた社とか。
しかし、茅の輪はなし。茅の草はあるんですけどね。既に撤収されたか、これから出るんでしょうか。
しばらく待ってみようかなと思いましたが、それほどの義理も動機もないので、次の社へ向かいます。
次は、盆地の山裾から離れ、中央部へちょっと寄り道。山科の中では新しめな宅地を通って、東へ。


中央部へ寄るのは、三之宮へ行くため。大きい社っぽくて、茅の輪、期待できそうなんですよ。
新しめゆえ若干計画性はあるものの、ストレートには東進できない宅地を東進し、山科川にも挨拶。
そういえば、折上稲荷からこの辺、中臣遺跡の外周にあたるそうですよ。鎌足の陶原館もあったとか。
因みに当の遺跡は、宅地化によって、ほぼ全壊。いらないものは残らないと、紫陽花が囁いてます。


紫陽花の声を聞き、そしてやたら多い猫やカラスにも挨拶しながら歩き、三之宮神社へ到着。
醍醐天皇の勧請で創建され、山科七郷の総鎮守的存在だった三之宮神社、正式名称・三之宮です。
歴史ガン無視な宅地を見てると心配になりましたが、健在でした。いるものは残るという話であります。
健在どころか、門前には 「夏越祓」 「茅の輪くぐり」の文字あり。おまけに、7月6日までのロングラン。


宅地の信仰を得たのか、三之宮、広めの境内は割と人の手が入ってて、出入りも多そうな感じ。
茅の輪は、スタンドアローン型のものが本殿前に出てました。やや小振りながらも、標準サイズです。
当然、メビウスくぐりも余裕で可能。ぐるぐるっとくぐらせて頂きましょう。ちとせのいのちのぶというなり。
これで、くぐり2つめ。茅の輪めぐりで2つ以上をくぐるのは、実に2015年以来ですよ。やった、やった。


と、無意味に喜びながら、境内も少し拝みます。頭の存在感が強めな狛犬なども、拝みます。
三之宮、室町時代の再興時、後小松天皇から大般若経600巻を下賜されたんだとか。有難いですね。
そう言われて見ると、狛犬も何か頭良さげです。大般若経を暗誦し過ぎて、脳が血走ってるみたいな。
あとこの脳の感じ、香川県のゲテモノキャラ・うどん脳にも似てるような。腹減った。うどん食いたい。


うどん脳に食欲を刺激されながらも、境内には祓戸大神もあるので、夏越祓の勢いで拝みます。
大般若経は、山科郷士が持ち回りで輪読供養し、この輪読こそが山科七郷の結束を固めたそうです。
で、固められたこの結束こそが、大般若経を下賜されたこの社を山科の総鎮守的存在にしたそうです。
そうした存在感ゆえに、この祓戸大神も合祀されたのかも知れません。祓、充分にさせて頂きました。


三之宮退社後は、食欲に負けず盆地山裾めぐりへ戻ります。が、西へは戻らず、北上します。
北上するのは、R1へと向かうためです。R1へと向かうのは、併走する新幹線の高架を拝むためです。
現代山科に於ける乱開発の大元凶たる、新幹線の高架。これを拝まずして、山科は語れないでしょう。
断じて、バスに乗るためではありません。雨が強くなったので、ワープを決めるためではありません。


で、バスを降りたのは、上花山久保町バス停。すぐ北に、目指す上花山六所神社があります。
その前にファミレスがありますが、無論、入りません。腹が減ってるにしても、入るわけがありません。
飯を食うわけもありません。伝統を体感するめぐりの最中に、ファミレスで飯を食うわけがありません。
「新興住宅地だから美味い店がない」 と遠回しにdisるために、食うわけがありません。以下、後篇

夏越祓の茅の輪を求めて山科をうろつきました。もちろん、ひとりで。 【後篇】


 
 
 
 
 
【茅の輪のあった神社のみ】
 

大石神社
京都市山科区西野山桜ノ馬場町116
拝観自由

京阪バス 大石神社下車 徒歩約5分

大石神社 – 公式

三之宮 (三之宮神社)
京都市山科区東野八反畑町60
拝観自由
京阪バス 八反畑下車 徒歩約6分
市営地下鉄 東野駅下車 徒歩約10分

三之宮 – 京都風光