祇園祭の神幸祭へ行ってきました。もちろん、ひとりで。

2011年7月17日(日)


祇園祭の神幸祭へ行ってきました。もちろん、ひとりで。

「祇園祭は山鉾巡行だけではない」。
こんな物言いも、最近ではすっかり馴染のものとなりました。でもないでしょうか。
神事や行事やイベントなどが、7月1日から31日まで延々と続く、祇園祭。
中には宵山のように山鉾巡行の倍以上の客を動員するイベントもありますが、
「山鉾巡行だけではない」という言葉を最も言葉通りの意味で体現してるのは、
山鉾巡行当日の夜に行われるこの神幸祭をおいて他にはないでしょう。
神幸祭。文字通り、神幸祭です。神がおいでになる、神幸祭です。
神の御霊を遷した神輿が、神社を出て氏子の町内を巡幸してから御旅所へ入る、神幸祭です。
祇園祭の神幸祭も、当然そういう形で行われます。神輿が舁かれ、町内を巡幸します。
超ド派手な山鉾巡行と比べたら、極めてオーソドックスなスタイルの神事と言えるでしょう。
が、やることはオーソドックスでも、やる場所はオーソドックスではありません。
八坂神社は、祇園の真ん中に立つ神社。というか、神社の周りに祇園ができたんですが。
近所にはお膝元の祇園はもちろん、木屋町、先斗町、河原町、寺町と、京都の歓楽街が揃い踏み。
神幸祭の巡行は、氏子区域の東側にあたるそんな歓楽街をメインに行われます。
色っぽい街に神様がおいでになり、伝統・信仰・奉仕・疲労・享楽・景観破壊・無関心などなど、
その全てを祝祭の中でひとつにする、本当の祇園祭が始まるのです。


山鉾巡行のあと、白山湯六条店でゆっくりと風呂に入ってからやってきた、八坂神社境内。
17:00、神幸祭開始30分前にして、この混雑です。
境内をうろつけないほどの混み方ではありませんが、神輿には全然近づけません。


西楼門前で神輿が現れるのを待つ人々。本当にものすごい人出です。
これより前、祇園祭最大のミステリーともいわれる久世の駒形稚児が社参、
長刀鉾の稚児はもちろん皇族でさえ下馬しなければならない境内へ、乗馬したまま入ります。
稚児は神官たちと昇殿、神事を遂行。渡御許可の神宝が宮本講社に渡され、巡行スタートです。
って、中は全然見えないので知りませんが。


渡御許可が出てから、3基の神輿は3回の拝殿まわしを行い、南楼門から外へ。
一度は下河原町通を南下し、ひとしきり町内をうろついたのち、
ラブホと王将の前を通って西楼門へ集結、平成13年から始まった石段前の差し上げに入ります。


三条大宮あたりの三若神輿会が担ぎ、主神・素戔嗚尊がお乗りになられる、中御座。
三条京阪東の四若神輿会が担ぎ、祭神・櫛稲田姫命がお乗りになられる、東御座。
戦後新たに参加した錦市場の錦神輿会が担ぎ、祭神・八柱御子神がお乗りになられる、西御座。
3基の神輿が、真の祇園祭にふさわしい賑わいと熱狂で出迎えられてます。
差し上げの前に、何かの会長の挨拶、何かの市長の挨拶、何かの府知事の挨拶あり。


差し上げです。ホイットホイットです。
何故「ホイットホイット」なのかは、わかりません。「ホイットホイット」が何なのかも、わかりません。
神輿の舁き手を担った船頭たちの言葉らしいですが、正確なことは、誰もわかりません。
宇治の縣祭では「ホイット」と「ワッショイ」が混在してた記憶があるし、
私の地元の八幡では「ホイット」は聞いたことがないので、洛中およびその周辺の言葉でしょうか。


怒号と絶叫と爆笑が渦巻く差し上げをハードに決めたのち、神輿は出発。
3基それぞれが、別のルートで祇園界隈から寺町あたりの氏子町を巡幸します。
もちろん、おたべへ宮入りするわけではありません。


何となく四若を追っかけてやってきた、花見小路交差点前、一力の塀の前。
神幸祭のことを知らない観光客まで一緒になって、大混雑を形成してます。


艶っぽいビルの艶っぽい看板に見守られながら、花見小路を北上する東御座。
似合ってないようで案外似合ってるような、味のあるビジュアルではあります。
巡行ルートは、いずれの神輿も確定されてるわけではなく、氏子の要望で変動もするそうです。


祇園のど真ん中でも、しっかり振舞いは行われます。というより、普通のところより、多い。
写真は「すなっく りょうこ」の前で一休みする、四若。ホームが近いからか、和んでます。


所変わって、団栗通から川端通へ出て北上を続ける、錦の西御座。
南座に見守られながらの巡行ですが、歌舞伎の振舞いは特になかった模様です。
というかそれより、京阪入り口に乗ってる外人姉ちゃんが、足滑らせて落っこちないか心配です。


また所変わって、木屋町通を北上したのち、河原町二条を横断する中御座。
このあたりに来ると、見物人はずいぶん減るというか、見てる人間の方が少なかったりします。
「知らんやん」という感じで神輿の横をそそくさと通り過ぎる人、多し。
それはそれで興味深いというか、端的な現実と端的な祝祭が混濁してて面白いんですが。
中御座はそのまま西進、梶井基次郎が檸檬を買った八百卯跡で左折、寺町通を南下します。


私に「alonekyoto」のドメイン取得を遠慮させた巨大オムライスの店・喫茶アローンの前を通過、
御池通を横断して寺町通のアーケード街へ突入する神輿。


三条寺町へ進入した中御座。この辺へ来ると、再び人間だらけです。
人間だらけゆえか、左折するところを左折し切れず、神輿、暴れ狂いまくり。
みんな呑気に写真撮ってますし、私も撮ってますが、背中は店のシャッターに激突してます。
それを見守る、ファーストキッチンの二階のカップル、そしてダイコクドラッグの電光看板。


三条通を東進し、河原町通に出た神輿は、まっすぐ車道を南下します。
時刻は20時半。そんなに遅い時間でもないですが、街は結構、夜の顔。
「割引券でお昼12時まで1500円」や、京都に多い荒っぽい運転の車が、妙な華を添えます。


四条河原町まで南下したところで右折、御旅所へのラストスパートに入った神輿。
ここらあたりから、見物人の数は爆発的に増えます。


普段は土産屋の四条センターである御旅所へ、中御座がやってきました。
客、増え過ぎ。多分、この数日中に経験したどの混雑よりも、ひどかったんじゃないでしょうか。
もちろん車道は完全通行止め。歩行者は全員、狭い歩道へ押し込められます。
おまけに、その混雑の中を無理矢理に押し通ろうとする者、多出。
「すいません、通してください」と改まった声でいうから、救急かと思ったら、ただの観光客だったり。
もう、怖いです。


神を向かえる雅楽が鳴り響く中、「ホイットホイット」と徹底的に差し回しが展開されます。
途中から私、横幅の広い御婦人に生腕を密着され、前からは大きめのカバンで圧迫され、
背後の店舗のシャッターにめりこんでます。撮りながら、死の恐怖、感じてます。
神輿はのちに御旅所の前へ据えられ着輿祭を行うそうですが、すんませんが、トンズラしました。
近くの阪急地下入り口へ逃げ込み、木屋町出口から京阪四条へ逃げましたとさ。

客層は烏合としかいいようがありませんが、山鉾巡行よりは明らかに若いです。
客の半分以上は、多分観光客。3連休の中日だったので、祇園祭をより楽しもうときたみたいな。
カップルは、まあまあ。数は多いし、中でも観光客カップルは虫のごとくイチャついたりしますが、
色気のプレッシャーより人圧のプレッシャーの方が強く、特に中高年の物理的圧迫の方が、強烈。
地元系は、宵山のような辺境DQN大集合な世界では全くありませんが、
といって宵山深夜の日和神楽のごときディープなテイストでもなし。普通という感じでしょうか。
単独は、どうでしょう。いることはいるでしょうが、何かもう、それどころではありません。

そんな祇園祭の神幸祭。
好きな人と行けば、より祇園会なんでしょう。
でも、ひとりで行っても、祇園会です。


【客層】 (客層表記について)
カップル:知らん
女性グループ:知らん
男性グループ:知らん
混成グループ:知らん
修学旅行生:知らん
中高年夫婦:知らん
中高年女性グループ:知らん
中高年団体 or グループ:知らん
単身女性:知らん
単身男性:知らん

【ひとりに向いてる度】
★★
交通規制と人ゴミを上手くかわせば、
なかなか味のあるビジュアルが楽しめる。

【条件】
日曜 17:30~21:10

八坂神社
京都市東山区祇園町北側625
参拝自由
京阪電車 祇園四条駅下車 徒歩5分
阪急電車 河原町駅下車 徒歩10分
京都市バス 祇園下車 徒歩すぐ

八坂神社御旅所
京都市下京区四条通寺町東入南側貞安前之町
阪急河原町駅駅下車 徒歩2分
京阪祇園四条駅下車 徒歩5分
市営地下鉄四条駅下車 徒歩10分

公式 – 八坂神社

Wikipedia – 八坂神社

三若公式 – 三若神輿会

錦公式(?) – 京のお神輿・西御座|京都の台所 錦市場商店街