祇園祭の還幸祭へ行ってきました。もちろん、ひとりで。

2011年7月24日(日)


祇園祭の還幸祭へ行ってきました。もちろん、ひとりで。

還幸祭。祇園祭であっても、還幸祭は還幸祭であります。
御旅所に着御していた神輿が神社へ還る、いわゆる文字通りの還幸祭であります。
で、山鉾巡行を中心に観光化された祇園祭にあって、正直、かなり地味な扱いの神事であります。
西楼門前の差し上げに人気のある神幸祭は、メディアなどでも大きく取り上げられる昨今ですが、
還幸祭はその数分の一の扱いだったり、あるいは数行のフォローだったりします。
しかし、山鉾が主役化する室町時代以前は、この還幸祭こそが「祇園会」と呼ばれてたそうです。
神幸祭の呼び名が「神輿迎」、還幸祭は「祇園会」あるいは「祇園御霊会」。
後白河院をはじめ多くの貴顕が三条通の桟敷で還幸を見物し、着飾った騎馬の童・馬長を寄進。
この「御霊会の馬長」は、清少納言の枕草子で「心地よげなるもの」として挙げられたりもしてます。
が、後白河院が「もう金、ない。お前ら、出せ」と、洛内の有力町衆「潤屋の賎民」に命じて以降、
祇園祭は町衆主体の「民営化路線」を突っ走り、山鉾町は数百年に渡って祭を継続・発展・巨大化。
現代に入り、山鉾巡行が一本化で更なる観光化を推し進めると、宵山とのペアで一人勝ちが確定。
還幸祭は、今や、ガイドブック等に載らないようにさえなりました。
しかし還幸祭、神事としての重要性は今も変わっていません。それがわかるのが、神輿の巡行ルート。
神幸祭より距離的が圧倒的に長いです。長くなるのは、三条御供所と神泉苑へ出向くため。
祇園祭のルーツである御霊会が催された神泉苑、その神泉苑の池の汀だったという三条御供所。
共に、祇園祭発祥の地であり、「千年以上続く祭り」を文字通りの形で確認できる場でもあります。
数キロという本当に長大な巡行であり、おまけに3基の神輿がバラバラのルートを進むので、
全部のフォローは諦め、神宝奉持列の冒頭と中御座を追っかけてみました。


午後4時半ごろ、神輿が御旅所を出るのに先行して、神宝奉持列が八坂神社から出発。
四条通を西進、御旅所で神宝を奉持してから、中御座に近いルートで氏子地域を巡回します。


神宝奉持列は、四条寺町で左折。小規模ながらも京都の「電脳街」である寺町通を南下します。
違和感があるのか、ないのか、よくわからん絵面ではあります。


祇園祭最大のミステリー・久世駒形稚児も、神宝奉持列の後尾で巡行。
「祭りの間の八坂神社境内では、皇族より偉い扱いになる」という、不思議な存在です。
「わんぱくこぞう licensed by NINTENDO」の前であっても、その聖性は揺るぎません。


17時前、御旅所を出た中御座が、神宝奉持列に続いて「電脳街」へ突入。
普段この辺を歩いてる層とは全く違うテイストの男たちが、何百人となだれ込みます。


「パソコン工房」と「ドスパラ」の前を通過する、神輿&白法被の男たち。
やはり、違和感があるのか、ないのか、よくわからん絵面ではあります。
他にも「信長書店」や「マルツパーツ館」などと奇怪なハーモニーを披露しつつ、神輿は南下。
高辻通に達すると、右折して西進、烏丸通へ出たら今度は北上します。


かつて御旅所であった大政所に立ち寄る、中御座。
秀吉が現在の場所へ御旅所を一本化するまでは、ここが御旅所のひとつでした。
神社側は、ここや神泉苑、御供社など「必須ポイント」へ寄ることだけは強くお願いするそうです。
「千年続く」様が垣間見える瞬間であります。あ、大政所、大原簿記の辺にあります。


四条烏丸で左折した神輿は、夕日を浴びながら四条通をまっすぐ西進。
大河のような道幅である四条堀川の交差点も、人間で埋め尽くすような勢いで横断します。


四条大宮へ到達すると、中御座はバスロータリーを占拠。
丹波からやってきた太鼓グループ・丹波八坂太鼓と一緒になって差し上げを展開します。
丹波八坂太鼓のホームは、京丹波町にある八坂神社の分社・尾長野八坂神社。
ここの神撰田で獲れた稲は、神幸祭とこの還幸祭で神輿に飾られてます。


気の済むまで差し上げを決めたのち、中御座は阪急と嵐電の間の交差点を横断。
凄まじく狭い大宮通を、物凄い数の人間と共に進入します。で、そのまま神苑泉まで北上。


で、神苑泉であります。祇園祭発祥の地・神苑泉であります。
平安京遷都の頃の池が残る、千年続く祭の起源をそのまま残す場所であります。
神秘と聖性に満ちた儀式でも行なわれてそうなもんですが、しかし実際は、普通に休憩タイム。
ここは巡行ルートの西端ちょい手前くらい。このあと三条通へ入って、東進を始めます。


四条大宮に続いて三条商店街でも神輿を盛りたてる、丹波八坂太鼓。
奉納太鼓をルーツに持つ太鼓ですが、現代的なオリジナル曲・撥捌き・絶叫が、とにかく凄過ぎ。
2連荘とは思えないハイテンションぶりでしたが、このあと伊右衛門のあたりでも演ったそうです。


二条駅前から三条会商店街へ突入した神輿は、三条黒門にある御供社、またの名を又旅社へ。
アストドリームスの垂れ幕が下がるアーケード街を、人間で埋め尽くしながら進みます。
このあたりは、中御座をかく三若神輿会のホーム。味のある会所も、すぐ近所。


で、御供社であります。もうひとつの祇園祭発祥の地・御供社であります。
平安京遷都の痕跡があるかは不明ですが、とにかく千年続く祭の起源の場所であります。
神秘と聖性に満ちた儀式でも行なわれてそうなもんですが、しかし、ここも基本、休憩タイム。
法被姿の男達数百人が、そこら中に座り込んで、神輿弁当を食ってる光景が繰り広げられます。


休憩が終わり、巡行再開。ガソリンが入ったためか、中御座、妙にスピードを上げ始めました。
後ろが詰まってるんでしょうか。堀川通も流れるように渡り切り、三条通を物凄い勢いで疾走します。


かつて後白河院たちが桟敷を並べたという三条新町~烏丸付近を、
思いっきり「巻き」で通過、近代建築が並ぶオシャレゾーンへと近づきつつある、神輿。
先回りしてビルを絡めた写真を撮ろうとしましたが、だんだん、追いつけなくなります。
こっちの足もいい加減疲れてますが、明らかに神輿の進行速度も、速い。


烏丸通を渡る手前、伊右衛門の前でまたしてもお迎え太鼓と軽い休憩。
追いついた、追いついたけど人が多いから、追い越せない。
伊右衛門には「けったい」な「京言葉」を使う人がようけいはるから、追い越せない(嘘)。


オシャレ街での写真を撮らせてくれないまま、神輿は三条通を疾走、そのまま寺町通へ進入。
隣の通を走って先回りを試みましたが、もう、全然追いつけません。
神輿、何かに追われてるんでしょうか。写真はかろうじて錦天満宮前で撮れた、爆走感あふれる一枚。


狭い寺町通を抜け、四条通の御旅所前へドバーっと溢れ出す、中御座。
あとは八坂神社まで、真っ直ぐです。


阪急電車の電光掲示板と都タクシーに見守られながら、四条河原町を横断する神輿行列。


縦に並ばれると、改めてその人数が恐ろしくなる神輿行列。


八坂神社石段前に到着すると、もちろん念入りに差し上げ。
ホイットホイットであります。鳴鐶シャカシャカシャカシャカであります。
それから御馴染の王将祇園店前とラブホ前を通り、南楼門から境内へ入ります。


宮入した、中御座。境内にいる見物人から、熱狂的に出迎えられます。


本社前、舞殿をグルングルン回る神輿。差し上げも、徹底的に行なわれます。
ホイットホイットであります。鳴鐶シャカシャカシャカシャカであります。


で、めでたく舞殿に安置。残り2基の神輿が帰るのを待ちます。
三基の神輿が揃うと、神霊を本殿へ遷す遷霊の儀を開始。
境内の照明を全て落とすのに加え、写真撮影厳重禁止。実に神聖な神事です。


遷霊の儀です。
真っ黒画像なのは写真撮れないからではありません。途中でトンズラしたからです。
だって、もう、しんどいですよ。足が、足の裏が何かもう、異物化してるんですよ。
例によって、正しい情報が欲しい方は、いくらでもある正しい京都サイト・ブログへどうぞ。

客層は、地元系がメイン。
というか、わざわざ神輿を追いかけて見物するような人間は、ほとんどいません。
多くは、家の近くで神輿が通るのを見てる人、そして通行人。まっとうな祭りの光景という感じです。
八坂神社の境内も、やはり観光テイストは薄め。外人さんを含め地元系以外の人間は多いですが、
特に観光ハイで馬鹿盛りあがりをやらかすような輩は見当たりません。
カップルはまあ普通にいますが、学生っぽいのは少なかったので、色気を撒き散らすことはなし。
混雑もさほどなく、やはり一番の敵は暑さと疲労というところでしょうか。

そんな祇園祭の還幸祭。
好きな人と追っかけたら、より祇園会なんでしょう。
でも、ひとりで追っかけても、祇園会です。

【客層】 (客層表記について)
カップル:2 ――――-|
女性グループ:1 ——|–地元のアダルト中心
男性グループ:1 ——|
混成グループ:1 ——|
修学旅行生:0
中高年夫婦:1
中高年女性グループ:1
 (普通の家族連れ+知り合い+近所)
中高年団体 or グループ:3
 (普通の家族連れ+知り合い+近所)
単身女性:若干 (おひとりさま予備軍という感じ)
単身男性:若干 (変な若い男とカメラマンが少し)
【ひとりに向いてる度】
★★★
他所の家の盆か正月に上がりこむような、
独特のアウェー感あり。
が、プレッシャーというほどのものはない。

【条件】
日曜 16:15~22:20

八坂神社
京都市東山区祇園町北側625
参拝自由
京阪電車 祇園四条駅下車 徒歩5分
阪急電車 河原町駅下車 徒歩10分
京都市バス 祇園下車 徒歩すぐ

八坂神社御旅所
京都市下京区四条通寺町東入南側貞安前之町
阪急河原町駅駅下車 徒歩2分
京阪祇園四条駅下車 徒歩5分
市営地下鉄四条駅下車 徒歩10分

公式 – 八坂神社

Wikipedia – 八坂神社

三若公式 – 三若神輿会