地主神社の恋愛成就七夕祭りへ行ってきました。もちろん、ひとりで。

2013年7月7日(日)


地主神社の恋愛成就七夕祭りへ行ってきました。もちろん、ひとりで。

「天漢 相向き立ちて わが恋し 君来ますなり 紐解き設けな (by 山上憶良) 」
という露骨極まる歌が示す通り、七夕は、実に愛欲溢れる伝説に因んだ節句であります。
互いを求め合う二つの星、琴座の主星・ベガこと織女星と、鷲座の主星・アルタイルこと牽牛星。
二星を隔てるのは、天の川。年に一度、七夕の夜空が晴れたら、二星は川を渡り、逢瀬を果たせる。
そんな、 「紐解き設けな」 となるのも当然な、それこそ 「セッス!セッス!」 な節句なのです。
が、色恋に関わることなら何であろうが商売のネタにする、腐り切った現代消費社会にあって、
この七夕、イベントとして大きな盛り上がりを見せてる感じは、はっきり言って、ありません。
新暦への移行により七夕当日が梅雨の真っ只中となって、星が大抵見えないのが悪いのか、
年一というスパンが、コンビニエントな性生活に慣れた現代人には生殺しプレイにしか見えないのか、
とにかく現状として七夕は、もっぱら児童向けの短冊吊るし大会になってる感が、否めません。
が、地主神社は違います。京都で最もメジャーな縁結びスポットである地主神社は、違います。
京都観光のキング・オブ・キングである清水寺の境内にあって、神代にまで遡る凄まじい歴史を誇り、
清水寺と共に世界遺産の指定もバッチリと受けている、あまりにも由緒正しき社、地主神社。
しかし近年は 「愛のちかい」 「しあわせ」 「よろこび」 「キューピッド」 「恋の願かけ絵馬」 などなど、
縁結びアイテムを大量リリース、その 「本気」 ぶりが各方面から注目を集めること、しきりです。
そんな地主神社、七夕という商機を見逃すはずもなく、 「恋愛成就七夕祭り」 なる祭を開催。
一対500円の紙こけしに自分&好きな人の名を書き、笹へ結わえ付けて恋愛成就を祈願するという、
「商売繁盛で笹持って、恋」 と思わず連呼したくなるような、実に景気の良い祭りであります。
当日の現場はもちろん、清水寺の超ベタな観光客+色恋に飢えた女子が、溢れまくり。
そんなアウェー地獄へ、「紐解き設け」 る人などいない独男が、特攻してみました。
折しも当日は、日曜。アウェー混雑+猛暑との死闘、見届けて下さい。


というわけでやって来た、糞暑いにも関わらず参道からとんでもない混雑の、清水坂。
清水五条駅から清水寺目指して歩き始めたものの、暑さのあまり道中の写真を撮るのを忘れ、
バス駐車場近くの休憩所まで来て、中国人団体に紛れて一息ついてる際にやっと一枚撮ったの図。
どうでもいいことですが、五条通で前原誠司がほぼ無人を相手に応援演説してました。諸行無常。


で、本気状態な混雑の清水坂を、こちらも改めて本気状態となって、登坂再開。
身内とのコミュニケーションの為なら周囲をどれだけ空気扱いしても構わんと確信してる奴、
見えるものを実況し続けるのに前方は不注意な奴、立ち止まると一番邪魔になる所で立ち止まる奴、
そんなトラップが充ち満ちているのに加え、炎天下の暑さもあり、この時点でもう、死にそうです。


足も心もボロボロになってたどり着いたら、当然ここも人間だらけの、清水寺山門。
さくら祭りの記事の際にも書きましたが、地主神社へ行くには、清水寺へ入らないといけません。
有料である清水の舞台を通り抜けた先に、地主神社はあります。それゆえ、拝観料300円が必要。
本当は無料で行けなくもないですが、相手はキング。敬意を表し、正面から堂々入場しましょう。


堂々入場した舞台でございます。そして、奥の院は只今堂々工事中でございます。
それにしても今日の清水寺は、中国人が多い。個人系も多いですし、ツアー系の団体も多い。
中川家・礼二がよくやる中国人物真似そっくりな中国人ツアコンもいたりして、なかなかのカオスです。
とりあえず、今日はここに用はなし。ちょっと勿体ないですが、ささっと通り過ぎてしまいます。


と思ったけど、最近修復が完了した子安の塔が見えたので、ちょっとだけ見物。
写真左上の赤くて小さいのが、子安の塔です。長くイラスト幕でしたが、やっと本物になりました。
「川床~、行ってみたいんですけど~、どっかいいとこないですか~」 「若い人が行けるもんやない」
という観光女子×爺さんの話を聞いたりしながらしばし眺め、それから舞台を辞し、地主神社へ。


地主神社は舞台出口を出て左側、写真だと中央の石段の先にあります。
出口右手に奥の院が見えるので、左手の地主神社は見落とされることがないでもないですが、
「七夕祭り」 の幟が立てられ、ついでに奥の院も絶賛工事中であるこの日は、参拝客、非常に多し。
アウェー御利益+混雑という状況。武者震いがするってもんです。特攻魂がうずくってもんです。


などと強がって特攻すると、混雑ではなく大混雑、大混雑ではなく超混雑だったの図。
石段の右側は、恋愛成就で奉納する紙こけしを買う人で、大行列。歩くことさえ、ままなりません。
紙こけし、冷やかしで買おうと思ってたんですが、どうにもこうにも無理なので諦め、境内潜入を優先。
太陽からは頭を焼かれ、周囲からは人肌の温もりをもらいながら、忍の気持ちで牛歩を続けます。


何とか境内へ辿り着くと、狭い境内はもはや身動きもできない、すし詰め状態。
またそこへ、「何?何?何?何かやってる!!何かやってる!!」 と叫ぶ輩が突っ込んで来たり、
恐らくは似たような意味であろう中国語を叫んでる中国人団体が突っ込んで来て、なかなかの地獄。
帰りたい、今すぐ、帰りたい。しかし、入口が人間で詰まってるため、もう帰ろうにも帰れません。


本殿前の七夕飾りを、暇つぶしに撮ったの図。紙こけし、これに付けるわけです。
祭儀が始まるまで、巫女さんがくれた地主神社パンフを読んで外界をOFFろうと試みたんですが、
中には 「お母さま方へ」 「長く独身で心配だった息子に」 「神官が毎日神様に御祈願申し上げます」
「ご両親が代理で祈願されても、御利益は同じ」 といった文字が並び、これはこれで、また地獄。


湯の代わりに人間を張った風呂へ浸かり、頭頂部だけ日焼けしてる気分で待ってると、
14:25、混雑の中をくぐり抜け神職さんが登場、本殿で祝詞奏上&雅楽奉納が開始されました。
続いて、参拝客数人が紙こけしを笹へ結わえ、その数体の紙こけしを神職さんと巫女さんがお祓い。
多分ですけど。人間で視界が狭く、暑さと狭さで心が痛いので、細かいことはもうわかりません。


安香水+制汗剤+その壁を破る体臭の中で、30分ほど赤の他人の温もりに包まれてると、
紙こけし結わえ付けの進展+興味の減退で人民が減り始め、身動きが取れるようになりました。
御覧の御幣の無料配布でちょっと混んだりはしますが、受付に詰まってた人間もかなり減ってます。
じゃあ、やってみましょうか。恋愛成就の紙こけし結わえ付け、独男の私もやってみましょうか。


空いたとはいえ入口の鳥居まで続く行列の最後尾へ並び、そこからじわりじわりと前進、
「成績向上守」 「福銭」 なども売ってたりする受付へ着き、500円でめでたく購入した、紙こけし。
文字通り、紙のこけしです。この裏に、自分&好きな人の名を書く、と。記入用ペンも貸してくれます。
が、書く場所が無いのよね。粟光稲荷や願掛け絵馬の伽藍を下敷きにして記入する女子、多し。


私は、拝殿横にあった何かの案内看板を利用し、記入させていただきました。
決まった恋人がいない独な方は、意中の人か、大まかなタイプを書いても、大丈夫だそうです。
私が書いた名前は、秘匿します。実は名前ではなく、極めて浅ましいことを書いたので、秘匿します。
というか、HNで奉納して、効くのかな。ネットの中だけで効くとか。いや、何かそんな奴、いるぞ。


名前を記入したら、紙こけしを笹に結わえ付け、ミッション終了。あとは、トンズラです。
「えんむすび」 の看板を見て 「ここまではっきり書かれてると、引くな」 という修学旅行生の声や、
恋占いの結果を見て騒ぎまくる修学旅行やり直し系女子の声を聞きながら、地主神社を即刻、退社。
ロクに参拝も境内めぐりもしてませんが、とにかく一刻も早く、立ち去りたい、逃げ出したい。


ほうほうの体で地主神社を脱出し、奥の院仮通路を過ぎたところで、一息つくの図。
舞台から眺める工事中の奥の院はアレですが、こちらから見る舞台は当然ながら、実に、舞台。
それより、緑しかない今頃の季節の清水寺も、なかなかに映えるものだと、この時初めて知りました。
7月初旬って、ここへ来る理由、あまり無いですし。特に行事もなく、ひたすら暑いだけですし。


こちらも緑+青空と実にいいマッチングを見せる、新品状態の子安の塔を眺めるの図。
安産の御利益で信仰を集める、子安の塔。私には関係ないですが、とりあえず拝んでおきます。
どうでもいいことですが、近くの寺務所に止まってた車は、どうやってここまで登って来たんでしょう。
さらにどうでもいいことですが、ここで半裸で着物を直してた中国人女性は、何考えてるんでしょう。


子安の塔を心ゆくまで眺めたら、この混雑+灼熱地獄からとっとと脱出です。
恋愛なんか成就しなくてもいいから、平穏に暮らしたい。人間としての尊厳を、見失いたくない。
そんなことを思いつつ、公衆便所近くで陽の光を避けるように咲くあじさいを少し愛でてから、退散。
あまりにも暑いためか、境内にある茶屋がどこも、かき氷を食う客で大繁盛してました。

客層は、言うまでもなく大半が、カップルと女性グループの観光客です。
カップルよりも女性グループが多い感じでしょうか。いや、 「女性」 というより 「女子」 って感じ。
そっくりそのまま清水寺の客層を反映してますが、若干女子率が高くなり、着物率も高くなります。
祭を知ってて来てるのは、全体の半分くらい。女子は概ね、知ってて来てるんじゃないかと。
その他の層としては、阿呆な若者グループ+傍若無人な中国人+修学旅行生が、てんこ盛り状態。
こいつらが、ことごとく脊髄反射で混雑の中へ特攻をかけてきます。それも、エンドレスで。
中高年は清水寺よりもやや少なく、いても完全に観光客風を少し見かける程度。
単独は、男は変人 or 好き者風が少し。カメは、意外なくらいにいません。
単独女は、ちょっと濃いめながら普通の観光客風が、少しいるくらい。
はっきり言って、独男にとってはこれ以上ないというくらい、見事な鬼門です。

そんな地主神社の、恋愛成就七夕祭り。
好きな人と行ったら、より七夕なんでしょう。
でも、ひとりで行っても、七夕です。

【客層】 (客層表記について)
カップル:2
女性グループ:3
男性グループ:微
混成グループ:1 (大半が中国人グループ)
子供:若干 (修学旅行)
中高年夫婦:若干
中高年女性グループ:若干
中高年団体 or グループ:2 (ツアー風)
単身女性:若干
単身男性:若干

【ひとりに向いてる度】

場違いな場所での、場違いな祭。
完全に四面楚歌であり、徹底的に浮く。
「観光ではなく、アカデミックな興味があり来てる」
といった偽装も効かず、とにかくひたすら浮く。
加えて、死ぬほど暑い。心身共に、地獄。

【条件】
日曜 13:30~15:00


恋愛成就 七夕祭り
毎年7月7日 地主神社にて開催

地主神社
京都市東山区清水1丁目317
9:00~17:00

京都市バス 清水道下車 徒歩約15分
京阪バス 五条坂下車 徒歩約15分
京阪電車・清水五条駅下車 徒歩25分

縁結び祈願 恋愛成就 京都地主神社 – 公式

地主神社 – Wikipedia

音羽山 清水寺 – 清水寺公式