狸谷山不動院の火渡り祭へ行ってきました。もちろん、ひとりで。

2012年7月28日(土)


狸谷山不動院の火渡り祭へ行ってきました。もちろん、ひとりで。

火渡り祭。読んで字の如く、火の中を渡る行事です。
タヌキの置物&自動車祈祷&ガン封じで知られる、一乗寺奥の狸谷山不動院にて、
護摩火をバンバカ焚きまくった後、その残り火の中を一般参拝者が裸足で歩く、火渡り。
何ゆえ夏の一番暑い時に、そんなデンジャラスな灼熱地獄を味わねばならんのかといえば、
無論、我々が穢れ切っているからであり、その穢れを聖なる炎で焼き尽くす必要があるからです。
この一ヶ月ほど前にあった夏越祓の茅の輪くぐりまくり記事でも、似たことを書いてますが、
タヌキゆえ手抜きでコピペしてるのではなく、こちらの火渡り祭もまた、夏越祓の一種。
八坂神社・疫神社伏見・御幸宮神社の茅の輪、または下鴨神社の矢取り神事などと同じく、
旧暦のタイミングで穢れを祓い、夏を乗り切るための健全な心身を手に入れようというわけです。
一ヶ月しか経ってないのに、また祓うのか。茅の輪くぐりまくりでは、清め切れなかったのか。
そう問われると、「何も考えず興味本位で行ったんだよ~ん」 と、魂の真実を告げたくなりますが、
しかし、盛夏へ突入するにあたり、スピリチュアルな調整が必要なのもまた、確かなこと。
夏は、誰にとっても、我々独男にとってもなお、煩悩を刺激されやすいシーズンであります。
健全な人間が煩悩を刺激されたのなら、勝手に盛り上がって人口でも増やしとけという話ですが、
我々独男が下手に夏の煩悩を刺激されると、色々と厄介な事態が出来しがちであります。
個人の恥的にも、社会的にも、時に人道的にも、厄介な事態が出来しがちであります。
危険なのです。夏は、危険な季節なのです。なので、前もって穢れの始末をつけておきたい。
しっかりと、蓋をしてしまいたい。できることなら、完全に燃やし尽くしてしまいたい。
そんな思いに駆られ、一乗寺の坂を登ったというのはやはり大嘘ですが、
暑い季節の熱い行事、とにかく行ってきました。


叡電一乗寺駅を降り、ひたすら徒歩で狸谷山不動院への坂道を進むの図。
下り松を通り過ぎ、詩仙堂も通り過ぎ、車祈祷所までたどり着くと、もちろん汗だくです。
道中、好き者系の姿はさほど見当たりません。普通の家族連れや姉ちゃんが、坂を登ってたり。
そういえば、八大神社の前では山伏が 「不動院はこっちです」 と、参拝客を案内してました。


車祈祷所以降の猛烈な坂を、猛烈に汗をかきながら登り、到着。
それなりの数がいる参拝者も、皆さんやはり息が切れるのか、しばし門前で休憩中。
タクシーはこの辺りまで来れるようですが、車は基本、さっきの車祈祷所までしか入れません。
歩くしかないのです。あ、石段の前には 「渡り祭」 の看板が出てますね。


出ました、狸谷山不動院名物・門前タヌキ。
目力有り過ぎの開いた瞳孔と、緑の苔が、謎のコラボ効果を生んでる大量の狸像たち。
特に夕暮時に見ると、可愛さや愛くるしさといった化けの皮が剥がれ、ただただ不気味です。
登山のラストステージである心臓破りの石段を前に、休憩がてら愛でる人、多し。


で、また出た 「渡り祭」 を横目に、心臓破りの石段を登るの図。
「心臓破り」 というより、疲れ切った心臓へ砂を詰められるようなダメ押し感、爆裂です。
脇には、千灯にも及ぶという 「祈り灯ろう」 が並んでますが、正直、登ってる時は目に入りません。
半泣きで登って行くと、上の方から少しずつ、読経&太鼓&山伏の声が聞こえてきました。


何とか生きてたどり着けた、狸谷山不動院・本殿前。
火渡り祭は、写真の目前、本殿真下で行われます。護摩も山伏も既にセッティング済。
境内は、かなりの混雑です。人数自体はそれなりな感じですが、狭いため混雑度が高いというか。
本殿や女坂などの見物場所は、満員御礼。火渡りを待つ人達が並ぶ男坂も当然、満員御礼。


女坂を登り、宮本武蔵の何ちゃらと水子地蔵をスルーして本殿へ行くと、
赤穂化成「マインミナール」 なるペットボトルの水を、タダでもらえました。ラッキー。
赤穂化成、社長は京都の人。幼少時、ここで修行したとか。ボーイスカウトならぬ、ボーイ山伏。
「護摩木、どうですかあ」 という声を聞き流しつつ、水飲みながら護摩を見るの図。


もらった火渡り案内には、正しい火渡りの手順が書いてあります。
それによると、まず本殿でしっかりとお参りを済ませ、それから山伏からお祓いを受け、
火渡りの入口に並び、靴を脱いで裸足になり、清めの塩で足を清めてから、火を渡るんだそうです。
なるほど。わかった。でも、この混雑だと俺が渡れるのは何時間後だ、とか思ってる19時前。


19時ジャスト、山伏たちは整列して、本殿を出発。
女坂を下って護摩の前に集まり、修験道の護摩の段取りを、恭しく行います。
四隅を射った矢が結構飛んで、どよめきが起こったりしたのち、19時半頃にやっとこさ点火。
護摩から 「ブオーーーーっ」 と猛烈な煙が上がり、本殿を覆い隠しました。燃えろ、燃えろ。


煙が取れると火柱が立ちはじめました。燃えろ、燃えろ。


木造の本殿の前でも、火の粉は躍りまくります。燃えろ、燃えろ。


懸造りの舞台正面にまで登る、火の粉。燃えろ、燃えろ。


盛大に護摩が燃える前で、山伏は本来業務の真言唱え中。燃えろ、燃えろ。


「バンバンバン」 とか 「ウニャムニャグニャ」 とか唱えながら、更に炎上。燃えろ、燃えろ。


で、20時、柴灯護摩の終了が宣言され、火が消され始めました。
この護摩の残り火みたいなのの中を、裸足で歩いて、火渡りとするわけですね。
もちろん、完全に消えると火渡りになりません。ので、山伏たちが上手く火を押さえ込んでいきます。
「砂をかいたらあかんで」 とか言いながら、真ん中あたりに通路らしきものを、徐々に形成。


アニメの透過光を使った爆心地みたいな絵がしばらく続いたのち、
20時半、やっと山伏のトップバッターが、まだバンバン火が燃えてるのに、火渡り決行。
写真の左半分が妙に明るいですが、これは護摩にへばりついてるカメラマンの焚いた、フラッシュ。
現場はもっと暗く、火もまだまだ迫力たっぷりです。が、一般参拝客の火渡りも、スタート。


炎の中を歩く、どこの誰とも知らない人。
ショボい写真なのでわかりづらいですが、中央左寄りの微妙に人形のシルエットが、そうです。
やはり全然目視で確認できませんが、皆さん靴を手に持ってるので、当然ながらちゃんと、裸足。
でも、これも当然ながら、熱さで引き返したり、飛び上がったりする人は、特にいません。


火渡り出口から見た、炎の中を歩く、どこの誰とも知らない人。
山伏に肩を叩いてもらってから火を渡り、出口では貫主睨下から加持を授けてもらってます。
そういえばこの写真も微妙に明るいですが、ちょうどこの辺りでカメラマンがフラッシュ焚きまくり。
上から見るのと違い、ほとんど昼状態です。フィルムでも使って撮ってるんでしょうか。


本殿入口まで延びた、全然減る気配のない待ち客の行列。
むしろ、一般の火渡りが始まった頃から、人がたくさん登って来るようになりました。現金な。
火渡り入口では、この日限定という 「火渡り御札」 500円也が、1000体限りで授与されてます。
が、この行列だと、今から並んで、足りるかな。とか思いながら、ボチボチと列の最後尾へ。


21時過ぎになると、行列は案外あっけなく途切れ、火渡り入口へ到着。
「興味本位の人があれば、掟として、渡ることを許さない」 と、心得の表記がありました。
厳しい。追い返されるかも。でも、興味本位だけではないのは、本当だしな。穢れ、祓いたいしな。
などと下らんことを考えてるうちに、私の番が来ました。もちろん、普通に通されました。


裸足になり、山伏に肩を叩いてもらい、塩で足を清め、火の中へ。
足の裏に伝わる温度は、「暖かい」 くらい。横の火も含め、決して熱くはありません。
あ、そういえば 「火渡り御札」 、まだ品切れになってませんでしたよ。私は、買わなかったけど。
現物を見た瞬間、叡電+京阪の電車代が脳裏に浮かび、手がひっ込んでしまいました。


そんな小銭に拘る煩悩こそ、聖なる火で焼き尽くさねばならない。
そう考え、ケチ臭い煩悩や歪んだ穢れを少しでも祓うべく、ゆっくりと火の中を歩きました。
弱火で、コトコトと焼かれていく、己の中の闇。効いてます。確実に効いてることが、実感できます。
効き過ぎて自分全部が消える気がしたところで、山伏に 「前、詰めて」 と言われ、出口へ。


出口で貫主睨下から背中に加持を授けてもらったら、
参拝者は直ちに外へ出て、すっかり足水所と化した手水所で、灰だらけの足を洗います。
足水所、当然、大混雑。のみならず、汚れに加え足臭や汗臭と、様々な臭気が立ち込めまくり。
さらには足だけでなく、やたらと多い白人が放つ腋臭臭も、猛烈に立ち込めてました。


で、おしまい。終了が宣言され、山伏は本殿へ帰っていきました。
残り火の残り火を眺めながら、浄化されたであろう己の内面と、しばし向き合います。
これで今年の夏は、大丈夫だ。決して、●●●●するようなことは、しない。●●も、しない。大丈夫だ。
御札は買わなかったけど、マインミナールはもらったし。大丈夫だ。きっと、大丈夫だ。

客層は、完全に烏合の衆。
あらゆる層がゴチャゴチャと入り混じり、実にとりとめのない層です。
とはいえ、メインの線は概ね、地元勢。ごく普通に、火渡りに来たという人たち。
観光客はいなくはないですが、観光ハイの人は、皆無。冷やかし系の若者も、見かけません。
ディープとまでは言いませんが、それに近いテイストの人や、信心深い人が多い感じ。
カップルは、中年夫婦と区別がつかないようなのが多く、学生風 or 観光客風は、少なめ。
印象的なのは、実に左京区っぽい在住系の外人グループが、やたら多かったことでしょうか。
単独は、男はカメばっかり。女は、カメとディープな信仰系がほんのちょっと。

そんな狸谷山不動院の、火渡り祭。
好きな人と行ったら、狸なんでしょう。
でも、ひとりで行っても、狸です。

【客層】 (客層表記について)
カップル:1
女性グループ:1
男性グループ:若干
混成グループ:1 (外人多し)
子供:0
中高年夫婦:1
中高年女性グループ:1
中高年団体 or グループ:4
単身女性:微
単身男性:若干 (カメ)

【ひとりに向いてる度】
★★★
色気のプレッシャーは、全然ない。
ネイティブ主体の客層だが、アウェー感もほとんどない。
しかし、アクセスが不便というか、ほとんど荒行。
加えて境内は暗くて混むため、
暑さとの相乗効果で、肉体的には単純に疲れる。

【条件】
土曜 18:30~21:30


狸谷山 火渡り祭
毎年 7月28日 19時開催

狸谷山不動院
京都市左京区一乗寺松原町
通常拝観 9:00 ~ 16:00

京都市バス 一乗寺下り松町下車 徒歩約10分
叡山電車 一乗寺駅下車 徒歩約15分

狸谷山不動院 – 公式

夏の行事案内 – 狸谷山不動院 公式

狸谷山不動院 – 京都観光Navi