六道まいりへ行ってきました。もちろん、ひとりで。(1)西福寺

2011年8月10日(水)


六道まいりへ行ってきました。もちろん、ひとりで。

六道まいり。
東山区・六波羅にある六道珍皇寺にて行なわれる、いわゆる精霊迎えの行事であります。
かつては京都の東の葬地であり、現在も大谷宗廟など多くの墓地が存在し、
山の向こうへ行けば京都市中央火葬場が今日も元気に稼動中という、東山・鳥辺野一帯。
六原の地は、この鳥辺野の入り口にあたります。いわば、この世とあの世のボーダー領域。
このことから、衆生が死後に必ず赴く「六界」のゲート「六道の辻」の名を、誘引。
さらに、現世と冥界を股にかける平安時代のダブルワーカー・小野篁の伝説とも、リンク。
京都は何故か、特定の寺へ先祖霊を迎えに行くという習慣を持ち、
千本閻魔堂やかつての化野・福正寺など、いくつか「精霊ステーション」みたいなとこがありますが、
精霊迎えで最も高い知名度と集客力を誇るのは、ここ六波羅の六道まいりです。
六道まいり、やっているのは六道珍皇寺ですが、近所の寺も連携して各種霊的行事を開催。
中でも、本物の「六道の辻」に立ち、「轆轤(ロクロ = 髑髏」町なる住所を持つ西福寺では、
この期間限定で「死後の世界」をハードコアに絵解きした「六道十界図」を開帳しています。
本丸たる六道珍皇寺へ赴く前に、まずはそちらを拝むことにしました。
あ、ちなみにこの西福寺という名前、あの有名な東福寺と対応してるわけではありません。
というか、多分この寺、東福寺より東にあると思います。あしからず。


何をするにもまずは、腹ごしらえであります。
極めてインパクトのあるネーミングの中華屋『六波羅飯店』にて、鶏唐定食700円也。
唐揚げが過剰にジューシーで、油断すると手に激熱の肉汁がこぼれて、泣いたりします(経験者談)。
ビニールで厨房から客席を防煙する店内は、かなり、亜空間。


松原通から六波羅蜜寺へ曲がる角、「六道の辻」の道標が立つ所に、西福寺はあります。
かの弘法大師が立てた地蔵堂をルーツとする寺で、繰り返しますが、東福寺とは関係ありません。
普段から無茶苦茶に濃いオーラを漂わせているところですが、今の時期は格別に、濃いです。


「六波羅蜜寺は南側の小学校横です」の張り紙が、哀愁を誘う西福寺本堂入り口。
迎え鐘が参拝客を出迎える狭い境内には、ほどほどの量の人が途切れずにやってきます。
そんな客を「どうぞお上がりやす」と本堂へ招く、奉仕のおばちゃんたち。
お言葉に甘えて、私も靴を脱いで上がりこみました。拝観料など、もちろんいりません。


本堂内で開帳されてる、地獄絵・六道十界図。そして、檀林皇后九想図。
普通の民家みたいな部屋なので、超至近距離からじっくりと「地獄」を拝観することが可能です。
地獄絵は、下部に血まみれ&鬼だらけの地獄、上部に天国が描かれているわけですが、
将来「落ちる」可能性が高いためか、地獄のディティールばっかりに目が行きます。


舌切ナイアガラ。


斬首ダンデライオン。


炎上エクスタシー。


左 = ハピネス・イン・スレイヴァリー、右 = そんな彼なら捨てちゃえば?


血デジ迷子。
こうならぬよう、皆さんも日頃の行いを改めましょう。いつまでも独男とか言ってると、地獄行きですよ。
「ひとりでうろつく京都」なんか見てては、駄目です。再生産に貢献しないと、駄目です。


続いては、六道十界図よりある意味はるかに怖い、檀林皇后九想図。
自身の美貌のために数多の煩悩を見て来た、嵯峨天皇皇后・橘嘉智子。別名、檀林皇后。
彼女が「この世は無常である」ことを知らしめんと、死後の自分が腐乱する様を描かせたものです。
凄過ぎます。描かせた人も、描かせた理由も、描いた人も、全てが凄過ぎます。


死亡直後の絵には「第一新死相」なるタイトルがついてます。
「死んだばっかり」とでもいう意味でしょうか。本人も、周囲も、実に豪華絢爛であります。
修行中の坊主でさえ色に迷わせたというその美貌、死してなお、揺るがず。


が、死んでしばらくすると、こうなります。第3フェーズ、名づけて「第三血塗想」。
名前からしてもう、スプラッターです。美女だろうが何だろうが、一皮剥けば、こんなもんよ、と。
檀林皇后にとっては、ある種の「解放」だったのかも知れませんが。


犬に屍肉を食われたりしながら辿り着いた第6フェーズは、「第六青疵想」。骨であります。
クーラーがなく、扇風機が回るだけの室内ですが、冷や汗が止まりません。
ちなみに死体が捨てられたのは、ここ六原ではなく、帷子ノ辻。嵐電の、あそこです。
朽ち果てる彼女を見て、坊主たちは煩悩から目を醒まし、修行に励んだとか。美しさは、罪。


諸行無常な気分を紛らわすため、心安らぐ仏さんたちの画像をどうぞ。
皆さん、何だかとっても嬉しそうですね。ハッピー六原!
他にも子育地蔵や水子地蔵など、いろんな意味でハッピーなお地蔵さんが、いっぱいです。


本堂の天井は、四季の花が描かれた鮮やかな花天井。以上、西福寺でございました。
客層は他の寺と同じというか、3つの寺を回ってる人が多いので、後編でまとめてやります。
次はいよいよ、本丸である六道珍皇寺です。

六道まいりへ行ってきました。もちろん、ひとりで。(2) 六波羅蜜寺~六道珍皇寺 へ。


西福寺
京都市東山区松原通大和大路東入ル
2丁目轆轤町
普段は夕方くらいまで開いている
六道まいりの時は夜遅くまで開いている

京阪電車 清水五条駅下車 徒歩約12分
京都市バス 清水道下車 徒歩約5分