六道まいりへ行ってきました。もちろん、ひとりで。(2) 六波羅蜜寺~六道珍皇寺

2011年8月10日(水)


六道まいり、続きです。いや、これからが六道珍皇寺へ向かう本番ですが。

地獄絵と九想図で脳内を地獄の色彩で染められ西福寺を出ると、
ちょうど六波羅蜜寺の萬燈会の時間。なので、六道さんの前にそちらへ寄ることにしました。
六波羅蜜寺。もちろん、空也上人が小人を吐いてる例のあれで有名な寺です。
萬燈会はその空也が発祥、七難即滅・七福即生を祈願して灯りをともし、精霊を迎えるというもの。
小さいですが「大」の字で火を焚くので、五山の送り火と関係あるのかもしれん行事であります。
そのあとで行った今夜の本丸・六道珍皇寺は、言うまでもなく、かの小野篁ゆかりの寺。
昼は官僚&夜は魔界と、「この世」と「あの世」を往復して働きまくった奇人・小野篁。
普段はそんな小野篁が好きそうな方々が、「あの世」へ通じる井戸を見に来る静かな寺ですが、
六道まいりの期間中は、御先祖様を迎えに来た善男善女で深夜まで大繁盛&超ディープ化。
「六道の辻」にまつわる伝承が、そのまま現代に現出したかのような、民俗感爆裂状態となります。
大量の人間と、大量の人間以外のもので形成される、混雑。
「この世」と「あの世」の乗り換えターミナルのような、混雑。
濃過ぎます。あまりにも、濃過ぎます。夜なので余計に、見境なく、濃過ぎます。
そんな「濃い」二寺、めぐってきました。現場の「空気の濃さ」を感じてもらえたら、幸いです。


松原通に掲げられた、「六道まいり」の旗。この道をまっすぐ行ったら、清水寺。
清水寺もこの時期、「1回で千日分」という超ポイントアップキャンペーン「千日詣り」を、実施中。
六道まいりがここまで定着したのは、千日詣りとの相乗効果によるものという見方もあります。


で、六波羅蜜寺、正門。ドドーンとそびえ立つ、公益社献灯による萬燈会の電光看板。
平安中期、観音さんを台車に乗せたり、踊ったりして、一般庶民の救済のに尽力した空也ですが、
一方では金泥大般若経600巻の写経も成し遂げました。エネルギッシュですね、上人。
それを祝して六波羅蜜寺の前身・西行寺を建て、600人の高僧を集め大供養会も開催。
現在の萬燈会は、その大供養会に由来するそうです。


境内では、「大」の字の形で火が灯されてます。あ、これは萬燈会ではありませんよ。
献灯される「大」の字は、密教の地・水・火・風・空の五大思想に基づくもの。
「大きいことはいいことだ」からじゃありません。たぶん。


点火までの間、撫で牛を撫でたりします。もちろん、顔と頭を念入りに撫でます。
そして、迎え鐘。六道珍皇寺と同じく、引っ張ってあの世にコールをかける仕様です。
他にも、平清盛の墓などが、夜ならではの妖しい輝きを放ってます。


萬灯会は、20時ジャストに始まりました。
本堂内で、「大」の字に置かれた108個の灯蓋に、火がともされます。
また、本尊・十一面千手観音の前にも「大」の字形の木製燭台が置かれ、灯明があげられます。
でも、本堂内は今夜に限らず撮影禁止。撮ってる人もいますけど。
なので、萬灯会を後頭部で見守る菩薩の人型天パー髪で、厳かな儀式を様子をイメージしてください。
のち、参拝者の焼香となり、ありがたやありがたやと退出、六道珍皇寺へ向かいました。


密集せず点在して並ぶ、渋めのラインナップの夜店。
六道まいりに使う高野槇を売ってるとこもあり、お盆の「草市」の香りを残す光景であります。
普通の商店も夜間営業してるところが多いですが、「今が稼ぎ時」みたいな商売っ気は、希薄。
知り合いと話し込むために店を開けてるような感じのとこばかりです。


やっとこさ辿り着いた、六道珍皇寺。
「ちんのうじ」でも「ちんこうじ」でも構わないそうですが、「の」で読む人の方が多いそうです。
何故かは、知りません。最終日ゆえか、門前には猛烈な数のゴミ袋が並んでます。
例年、深夜まで繁盛してますが、来年からは22時クローズの告知がありました。ご注意下さい。


門を入ってすぐのところで風流なかき氷屋台が営業してるのを横目で見ながら、
六道まいりの時だけ開帳される薬師如来・弘法大師像・閻魔大王像・小野篁像を、まずは参拝。
「おしょらいさん」の方々は、お参りのあと水塔婆を買い、寺の人に戒名を書いてもらいます。
よく知りませんが、自分で自分の先祖の名前を書くのは、よろしくないんだとか。


六道珍皇寺といえば、何といっても、小野篁。
でも、閻魔大王像や小野篁像は、開帳はされるものの撮影禁止です、一応。
六道珍皇寺名物・地獄への入り口である井戸も、六道まいり期間中は、拝観中止。
何か小野篁アイテムをと思い、やたら何枚も撮ってしまった、闇夜に光る三界萬霊供養塔。


御存知、迎え鐘。綱を引っ張ります。引っ張ると、鐘が鳴ります。
水塔婆を流した皆さんは、十万億土の冥土まで響くというこの鐘で、先祖を呼び出します。
あ、ちなみに私は精霊迎え、しません。といっても、真宗信徒というわけじゃありませんよ。
先祖の戒名、知らないし。悪いけど、俗名の記憶さえ怪しいし。


地蔵コーナー。「ハッピー六原」協賛の献灯が、ハッピーな光で照らしています。
「精霊迎えしないなら、何しに来た」「邪魔だ」という話ですが、
あのですね、霊を連れて帰っても、送り出しの大文字の火が、八幡からでは見えんのです。
いや、八幡山のてっぺんからなら見えたかな。でも、確か妙法しか見えなかったはず。
とにかく、送り出しに失敗して霊に居残られると、事です。見学に徹します。


高野槇に「おしょらいさん」を乗り移らせた皆さんは、寄り道せずに家へ帰ります。
連れて帰った御先祖様は、13日まで井戸などの涼しいところで待機していただき、
13日の朝から16日までの10食は精進料理をお供え。で、送り火で追い出し、いや送り出しです。
本当に混んでて邪魔になるので、地獄絵・十界之図をとくと拝んでから、私も寺を追い出されます。
ナイター営業してる幽霊子育飴を買っていくのを、お忘れなく。


私は霊を連れてないので、陶器まつりへちょっと寄り道です。
六道まいりの客を見込んで、清水焼発祥の地・五条坂で毎年行なわれる、陶器市・陶器まつり。
期間中は車両通行止めになってる路地を抜けて、五条通へ。


五条通の両側に、約400店の陶器屋台が並ぶ様は、壮観です。見てるだけでも、味、あります。
一応23時までやってるそうですが、最終日ゆえか、21時過ぎの時点で店仕舞いしてるとこ、多し。
私は、陶点睛かわさきで安いのばっかり買いました。


陶器抱えて、おけいはんで帰宅。
中書島から宇治川花火大会帰りの若者が、物凄い数で乗り込んできました。
みんな淀か八幡で降りると思ったら、ほとんどが大阪府へ越境。えらい人気ですね、宇治川花火。

客層は、徹底的に地元メイン。親子連れ、御近所さん、親戚ぐるみで訪れる人など。
普段着、あるいは部屋着で来た近所な方が、大部分を占めます。
そこへ、ディープな観光客と物好き系単独男女が混ざる感じ。
どちらもオシャレ系では少なく、京都の暑さにやられて汗臭を発散してる人が多かったような。
カップルは少なく、いても落ち着いた雰囲気の夫婦 or 準夫婦風。
ベタな観光ハイや恋愛ハイではしゃぎまわるようなのは、あまりいません。
三寺とも、客層はだいたい、同じ。というか、客そのものがかなり、同じ。
三寺を続けて回る人が多いため、「この人さっき見た」というのにしょっちゅう出くわします。
六道珍皇寺が他より人出が多く、西福寺は変人が若干多いですが、基本のテイストは変わりません。
人出は、そこそこ。少なくとも、夜は空いてもいないし混んでもいないというところでしょうか。

そんな、六道まいり。
好きな人と行けば、より六道の辻なんでしょう。
でも、一人で行っても、六道の辻です。


【客層】 (客層表記について)
カップル:1
女性グループ:若干(地元系)
男性グループ:若干(観光系)
混成グループ:若干(外人観光客ばっかり)
修学旅行生:0
中高年夫婦:1(地元系)
中高年女性グループ:若干(地元系)
中高年団体 or グループ:7(地元系)
単身女性:若干
(腐、あるいは近所の買い物帰りの人とか)
単身男性:若干
(変人系。カメラマンは少ない)

【ひとりに向いてる度】
★★★
地元密着系だが特に歓迎も排除もされず、
色気のプレッシャーやアウェー感もほぼなし。
坂道を移動するため、むしろ暑さが、敵。

【条件】
平日水曜 19:00~22:00

六道珍皇寺
京都府京都市東山区大和大路通四条下ル
4丁目小松町595
通常拝観 9:00~16:00
六道まいりの期間 8月7-10日は
22時くらいまで開いてる

京阪電車 清水五条駅下車 徒歩約12分
京都市バス 清水道下車 徒歩約5分

Wikipedia – 六道珍皇寺

六波羅蜜寺
京都市東山区五条通大和大路上ル東
通常拝観 8:00~17:00
萬燈会 8月8・9・10日 20時 点灯法要厳修

京阪電車 清水五条駅下車 徒歩約7分
京都市バス 清水道下車 徒歩7分

公式サイト – 六波羅蜜寺