鞍馬の火祭へ行ってきました。もちろん、ひとりで。 【前篇】

2012年10月22日(月)


鞍馬の火祭へ行ってきました。もちろん、ひとりで。

鞍馬の火祭。京都で最もメジャーな火祭です。
今宮神社のやすらい祭広隆寺の牛祭と共に、京都三大奇祭のひとつでもあり、
京都のみならず、全国的にもかなりな知名度と集客力を誇っている火祭と言えるでしょう。
正しくは鞍馬寺ではなく、同寺境内にある由岐神社の秋季大祭である、鞍馬の火祭。
御所内に祀られていたという靫明神が、940年、朱雀天皇の勅命で鞍馬の地へ遷されることになり、
その際、鞍馬の村人たちが篝火を焚いて神を出迎えたことから、始まったとされてます。
祭の舞台は、鞍馬寺の門前集落として、また若狭街道筋の交通集落として栄えた、鞍馬町、全体。
今なお木造家屋が多く軒を連ねる町中を、数mもある松明が火の粉を散らしながら練り歩き、
最後は町内全焼+山火事大爆発の恐怖もいとわず、その松明百数十本を集め、燃やしまくり。
実に、恐るべき祭りです。が、鞍馬の火祭の真の恐怖は、火にはありません。
この祭りの開催日は、10月22日。雅なるコスプレパレード・時代祭の開催日と、同じであります。
時間的にちょうど良い感じのハシゴができるため、流れて来る観光客は極めて、多し。
しかし、鞍馬に一度でも行ったことがある人は御存知でしょうが、あそこはとても、狭い町です。
道もほぼ一本で、これまた、狭い。そこへ1万人以上の人間と、百本以上の松明が、集まるのです。
圧死の恐怖。踏死の恐怖。トイレがなくて、失禁の恐怖。食事ができず、行き倒れの恐怖。
足を滑らせ鞍馬川へ落ちて溺死 or 凍死の恐怖。などなど、恐い、考えただけで、怖い。
鞍馬の狭さを知る人なら、誰もがこの恐怖を想像し、近づきたいとは思わないんじゃないでしょうか。
私も正直、できたら、いやなるべく、いや本当はかなり絶対に、行きたくなかったりします。
が、このサイトの趣旨は、ベタスポットの単独正面突破。逃げるわけにはいきません。
というわけで、炎の狂乱と混雑の狂気の中へ、正面から飛び込んでみました。
人圧と炎熱がスパークする奇祭の様、とくと御堪能下さい。


暇なのでかなり早めにやってきた、14時ジャストの叡山電鉄出町柳駅
鞍馬は厳重な交通規制が行われるため、火祭へのアクセスは、基本、この電車のみです。
ゆえに、時代祭が終わるあたりから混雑は激化しますが、この時点ではまださほどでもありません。
駅にいる客も、多くは地元客。が、もちろん鞍馬へ向かう人も大量にいて、車内は満員状態。


車内が混雑で暑いので、貴船口で降りてみました。貴船、さすがに涼しい。
貴船口駅では、結構な数が貴船行き送迎バスへ乗車。火祭の前に飯でも食うんでしょうか。
駅を出て鞍馬街道との合流点に、規制看板あり。15時から通行止めと。その先に、駐輪場もあり。
ここから先は、自転車も入れません。大枚はたいてタクシーで来たとしても、ここで下車です。


で、10分ほどゆるい坂を登って行くと、おっ。


おっ。


おっ。


現れた家々の前には、大小さまざまな松明が、既にセッティング済。
剣鉾も立てられ、家の中では祇園祭の屏風祭のように屏風や鉾なども展示中。実に、祭りです。
それにしても点火前の鞍馬は、剣鉾のウェイトが大きく感じられます。剣鉾まつりでもあるんですね。
鉾の勇ましさといい、鉾に天狗の面が付けられたりしてるところといい、なかなか男な世界。


もう少し歩いた先にある、由岐神社・御旅所。と、その前を走る消防車。
祭りのクライマックスである松明集合の後、2基の神輿は門前を出発、やって来るのがここ。
で、0時頃、神輿がここへ納まって、祭は終了。それまで、観てるこちらの体力は持つか、不安です。
消防車が混雑の中を走れるかも、やや不安ですけど。御旅所の中では祭DVDとかを上映中。


そして、最混雑ポイントである、鞍馬寺門前。15時過ぎの状況が、これ。
混雑というほどの人出は、まだなし。これくらいの人出の中で松明を見ると、風情、あります。
とはいえ、傍の叡電・鞍馬駅では、電車が着く度に大量の客が吐き出される状況が、既に発生中。
その客目当てのパン屋&切手店も、繁盛中。数時間後には、混雑で営業不能になるでしょう。


鞍馬寺仁王門前には、神輿2基が安座。由岐神社と八所明神のものです。
神輿の前には、利害関係者各位から奉納された立派な酒樽が、ドドーンと4樽、並んでます。
京都府商工部観光課、京都市観光資源保護財団、鞍馬寺、そして、もちろん叡山電鉄株式会社。
唯一、鞍馬寺の奉納は、身内祝いみたいな感じなんでしょうか。あるいは全然違うんでしょうか。


さっきの写真だと門が閉まってるように見えますが、鞍馬寺参拝は定時まで可能。
なので、境内にある由岐神社を参っておきます。ケーブルだと通り過ぎてしまうため、徒歩参拝。
あ、さっきの八所明神はもともと鞍馬寺山上にあったそうですが、現在は由岐神社の境内に合祀。
重文・割拝殿の間を通り、両方の神に身の安全を祈願。中では、火祭MAPを配布してました。


さっきはパスしたケーブルですが、暇なので何となく乗ってみました。片道100円。
「もう終わりですか」 「祭り、間に合いませんよ」 みたいな会話を聞きつつ、待合でしばし待ち、
日も日だし、時間も時間なので、他に乗る奴は誰もいないだろと思ったら、結局満員になったの図。
車内放送では、いつもの鞍馬寺通り 「宇宙エネルギー」 などのスピリチュアルなワード、連発。


車両前面に堂々と突っ立って霊気溢れる鞍馬の写真を撮るおばはんや、
そのおばはんに 「ブーブー」 言ってる外人女を見たりするうち、ケーブルは多宝塔へ到着。
でも、本堂へ歩き始めると急に面倒くさくなり下山、門前まで戻ると、もう混雑が始まってたぞの図。
「立ち止まっての観覧はできません」 という下鴨警察のエンドレス絶叫が、一帯に響き渡ります。


しかし16時頃の段階では、そんな喧騒は門前あたりだけ。
鞍馬街道を少し上へ登ると、すぐに見物客の数は減り、雰囲気は穏やかなものになります。
松明のみならず、エジと呼ばれる篝火&スペアの大量の木を見て、火祭の熱気をイメージしたり、
あちこちに置かれた火力調整用の水を入れる桶などを、歩きながらのんびり見るのも、乙。


やたら多い鎧と、松明のコラボに、男の燃える魂を感じるのも、乙。


やはり鎧に、某ベーダーと某軍曹を感じて歩くのも、乙。


鉾に描かれてるのが、虎か、あるいは何かしらの爬虫類か、悩むのも、乙。


鉾の足元に供えられた塩と米が観覧できるくらい、のんびりとした、鞍馬街道。
家々では、1000円の火札、400円のパンフも販売中。買うなら、この時間しかないでしょう。
それにしても外人、多し。それも、日本文化がどうこうと言うタイプではなく、物見遊山全開な連中が。
外人、火祭とかが好きなんでしょうか。あ、普通の日本人はこんな薄着だと、風邪引きますよ。


鞍馬の集落は、くらま温泉まで登った所で、終わります。
風呂でも入ろうかと思いましたが、1000円もするので、パス。宿泊はもちろん、既に満杯です。
駐車場には、屋台が並んでました。他ではまずメシにはありつけるとこはないので、案外貴重かも。
床机も出ていて、何故か売ってた姫路ちゃんぽん焼を、何故か外人がガッツいてました。


17時前、登ってきた道を振り返り、望遠で眺めてみたの図。
混雑の波が、来たようです。望遠でかなり圧縮されてはいますが、しかし確実に、来てます。
単に人が増えただけでなく、「とにかく火が見たい」 という輩が増えるため、雰囲気は一気に殺伐化。
点火まではまだ時間がありますが、今から門前へ戻ると、二度と身動きが取れそうにありません。


なので、逆にひたすら上へ歩いて、点火まで時間をつぶすことにしました。
さっきと一転して、人もいない、車もほとんど通らない、薄暗くて自然過剰な道を、ひとり歩く。
私は一体何をしてるんだろうとか思いながら歩いてると、前から、白はっぴ姿の人がやってきます。
一瞬、天狗かと思いましたが、地元のスタッフの人。「こんにちわ」 と挨拶をされ、会釈返し。


20分以上歩いて到着した、北側の鞍馬街道通行止めポイント。
そばには 「駐輪場」 の看板とスペースあり。こんな所へ自転車で来る人、いるのでしょうか。
とか思ってたら、後から地元らしき人が現れ、背負った荷物をバイクに乗せて北上していきました。
地元の人でも、きっともう車は使えないんでしょう。混雑に加担しといて何ですが、大変です。


かろうじて一台だけあった自販機でコーヒーを買い、しばし一服したのち、
今から戻ればちょうど良い時間になるだろうと、すっかり真っ暗の道を町まで戻ります。
ここで人に合うとちょっと怖いなとか思ってると、さっきの白はっぴの人とまた会い、驚愕&会釈。
さらに、 「カツカツ」 と後から響く足音に震えてると、警備員のおばさんが抜いていきました。


で、ジャスト18時、町へ戻ると、エジ、炎上中。


松明だか篝火だかよくわからん木も、炎上中。


あちこちで燃え上がる、炎。鞍馬の火祭が、始まったのです。
早くも家の屋根には火の粉がかかり、これだけでも十分面白いというか、迫力があります。
そのうち、門前の方から 「てんじん~」 と、謎の呪文を物凄い声量で張り上げる神事触れが、登場。
「神事へまいらっしゃ~れ」 と言ってるはずなんですが、声がデカ過ぎて、逆に聞き取れません。


「神事へまいらっしゃれ~」 という神事触れは、文字通り、祭り開始のアナウンス。
いわゆる京言葉とも関西弁とも、もちろん標準語とも違う、独特の響きを持った言葉です。
どんどん街道を登り、最後は叫びながら温泉へ入った神事触れの人は、駐車場の松明へ点火。
家々の前に飾られていた松明にも、いよいよ火が入るのでしょう。というわけで、以下、後篇。

鞍馬の火祭へ行ってきました。もちろん、ひとりで。 【後篇】 へ続く

鞍馬の火祭へ行ってきました。もちろん、ひとりで。 【前篇】
鞍馬の火祭へ行ってきました。もちろん、ひとりで。 【後篇】


鞍馬の火祭
毎年10月22日 開催

由岐神社
京都府京都市左京区鞍馬本町1073
通常拝観 9:00~16:30
叡山電車 鞍馬駅下車 徒歩約10分

京都鞍馬 由岐神社 – 公式

由岐神社 – Wikipedia

由岐神社例祭 鞍馬の火祭 – 由岐神社

鞍馬の火祭 – 京都新聞

鞍馬の火祭 – Wikipedia