夏越祓の松原通で、水無月を買いまくり食べまくりました。もちろん、ひとりで。

2021年6月30日(水)


夏越祓の松原通で、水無月を買いまくり食べまくりました。もちろん、ひとりで。

夏越ネタで、水無月を食いまくろうと考えました。人間、そんな時もあります。
問題は、場所です。何処で食えば良いか。そう考えて、松原通が良いと思い至りました。
松原通五条通の少し北側を東西に走る、松原通。そして、元々はその五条通である、松原通。
元・五条通ゆえに長い歴史を誇る一方で、現・五条通みたいな荒い開発からは逃れ気味な、松原通。
また荒い開発から逃れ気味なゆえ、渋めの和菓子屋が渋いまま健在し続けてたりもする、松原通。
水無月食いまくりには、うってつけの場所と言い得るでしょう。しかし、理由はそれだけではありません。
松原通で水無月を買い食いしまくろうと決めた1番の理由は、この通が 「境界」 だからです。
松原通は、祇園祭の氏子域としては南端の境界にあたり、かつては山鉾巡行のルートでもありました。
昭和中期以降は山鉾が通らなくなったものの、祇園祭/稲荷祭の氏子域境界である点は今も同じ。
加えて松原通は、平安期と鎌倉期の端境に生きた歌人・藤原俊成が、邸宅を構えた地でもあります。
和歌史に於いてはその存在そのものが境界とも言い得る、俊成。無論、夏越の歌も残しました。
いつとても 惜しくやはあらぬ 年月を 御祓に捨つる 夏の暮かな (藤原俊成)
当サイトでは、阿呆な京都徘徊の影に隠れる形で 「境界」 なるテーマの探求を続けて来ました。
しかし、1年を前期と後期に分ける夏越については 「境界」 としての探求が足りてなかったと思います。
やって来たことと言えば、茅の輪くぐりまくりなどという神罰必定の所業ばかり。これではいけない。
人間、もう少し芯を食った生き方をするべきでしょう。では、夏越の食うべき芯とは、何か。水無月です。
茅の輪に、食える芯はありません。つまり夏越とは、水無月なのです。そして、松原通なのです。
そう考えた私は夏越当日、水無月を買い食いしまくるべく、昼から松原通へ赴きました。
コロナ禍の真っ最中だと、他にこれといって出来そうなネタもないことですし。


俊成を絡めて松原通で夏越ネタをするなら、まず烏丸松原に来る他ありません。ので、来ました。
此処こそが俊成邸跡たる、現・コメダ珈琲店本社です。というのは嘘で、現・ホテル京都ベースです。
というのも嘘に思えるほど単なるビル全開ですが、俊成宅跡なのは本当。俊成を祀る社も入ってます。
ビルの下部に、神社が内蔵されてるのがわかるでしょ。いや、コメダの方ではなく、その逆の所に。


こんな感じで。ホワイトベースで言えば、ガンダムが飛び出す左前足の辺に内蔵されてます。
俊成を祀る、その名も俊成社。バブル期にでっち上げられたように見えるルックですが、実際は古社。
江戸期より前から何となく祀られ続け、ホテル京都ベースが立つ此辺の地名も 「俊成町」 にしたほど。
このホテルに泊まり、コメダのコーヒーを飲めば、和歌を上手く詠めるようになるに違いありません。


と思ったので、ホテルに泊まることにしました。というのは嘘で、デイユースで部屋を借りました。
コロナで、京都でもやるホテルが増えたデイユース。ホテル京都ベースもやってて、予約できました。
ので、俊成ゆかりの地である此処をベースにして、 「境界」 の食たる水無月、食いまくろうと思います。
此処なら、俊成社の功徳で食いまくりが捗るはずです。食い過ぎで苦しくなっても、すぐに寝れるし。


ベースを確保したら、松原通へ。そして、松原堀川の辺から東へ買い進もうと考えて、一旦西へ。
夏越の昼の松原通は、実に普通。元・五条通の残り香など全く、ひたすら生活感が漂うばかりの通。


なので霊気を補給すべく、いきなり寄道。醒ヶ井通松原をかなり北進した先にある、住吉神社へ。
松原通より高辻通に近くて寄道が過ぎるけど、俊成絡みのネタをやるなら此処は挨拶不可避の社。


だって此社のプロデュース者は、俊成。和歌三神のひとつ・住吉神を召喚した、その名も新住吉。
境内には、柿本人麻呂を祀る祠もあり。水無月を無事買いまくれるよう、和歌の心で祈ることしばし。


祈った後は松原通に戻って、いよいよ買いまくり開始です。最初は、松原通醒ヶ井に近い、亀山。
通の雰囲気に馴染む店の前には、名物の 「あんもち」 と共に 「みな月」 の看板もしっかり出てます。
水無月、扱ってたのは白/黒/抹茶の3種で、全て無事に買えました。和歌神の神徳、利いたみたい。
因みに名物の 「あんもち」 は、亀色 (?) の餡入り餅で、銘餅です。あと、黄粉おはぎも、銘餅です。


初弾を買い込んだら、さらに買い込みを続行。商店街になってる松原堀川~松原烏丸間を東へ。
商店街と行っても店は点在してて、やはり生活者路線な感じ。電柱を飾る花も、生活者路線な感じ。


しかしそんな生活者路線の中に、天使突抜で有名な五条天神や亀山稲荷もあるのが、松原通。
流石は、元・五条通。もっとも亀山稲荷は、江戸時代に此辺にあった亀山藩屋敷の稲荷らしいけど。


「松原通」 になった近世以降も、この通は割と栄えてたのかも。とか思ってると、末富に着きました。
ザ・和菓子といった感じの栄えた佇まいを誇る末富も、建つのは松原通です。水無月、当然買います。
本当は、既に予約してたんだけど。末富、プルプルした純葛製の水無月は予約しないと買えないので。
予約分を受け取りながら、ノーマル仕様の当日分が残ってるかどうか一応訊いたら、売り切れでした。


で、2軒分の水無月を置きにベースへ一時帰還。買い込みはまだまだ続けるけど、水無月、重い。
亀が描かれた包は無論、亀山のん。そして、おもたせ感溢れる末富ブルーの袋は無論、末富のん。


末富ブルー、近くの新玉津島神社に因むのかなとか思ったので、再出発後は少し西へ戻り参拝。
和歌浦に御座す玉津島神、召喚したのは無論、俊成。先刻は水無月が重くてスルーして、すまん。


手ぶらになると、寄道が捗る、捗る。ので、東進を再開したら、超古堂の松原不動にも寄道参拝。
平安遷都以前に出来たという古堂であり、元・五条通どころではない歴史浪漫があるのも、松原通。


そんな浪漫を生活感が凌駕してるのも、松原通。職人街の残り香を仄かに感じるのも、松原通。
烏丸以東は、仕事の車&自転車も多め。つい数十年前まで通ってた山鉾を幻視するのも、厳しめ。


何とか山鉾の左折を幻視しようとして出来ないまま松原寺町を過ぎると、幸福堂に着きました。
本名、幸福堂・松原本店。錦支店も人気の和菓子店です。店前にはしっかり 「水無月」 張紙もあり。
此処、本当は本日水曜が定休なんですが、水無月特需のため営業するとか。予約の際に知りました。
そう、此処も予約してたのです。頼んだのは、やはり白/黒/抹茶種。黒は特に食いたかったので。


「何だ飛び込みじゃないのか」 とか言われても、京都で本当に美味いもん食うには予約が基本。
でも、次は本当に飛び込むべく、松原通をさらに東へ。鴨川も渡り、俊成との縁もある地・六波羅へ。


言うまでもなく平家が拠点とし、俊成に自作の歌集収録を懇願した平忠度に放火された、六波羅。
そんな六波羅の現在の姿は、濃いめの生活感が薄れ、その隙に観光業が入り込んでるような感じ。


そんな六波羅で、生活感は薄いけど観光感もなく、何ともええとこな和菓子店あり。松寿軒です。
完全予約制の香りを濃厚に感じる佇まいですが、戸には 「水無月 始めました」 の張紙が出てます。
冷やし中華感が濃いその張紙に惹かれて中に入ると、水無月はギリ販売中。白と抹茶が買えました。
松寿軒はこの時期、鮎が描かれた上用饅頭も、涼しげでナイス。でも今回は、水無月に集中です。


さて、此処からは清水寺の参道としての松原通をさらに東進したいけど、もう無理。水無月、重い。
ので、買い込みは一旦終了。改めて梅雨丸出しな天気で鬱になりながら、川端通を超えホテルへ。


帰る途中、路傍の紫陽花に見入ることしばし。梅雨丸出しな天気の中で、よく映えてるというか。
植物感が薄い松原通にあって、癒しも感じたり。 「松原」 の名は元来、松林から付いたそうだけど。


「松原」 のネタ元となる松林は、かつては新玉津島神社の界隈に存在し、名勝だったと言います。
その新玉津島神社をプロデュースし、そもそも境内自体も邸宅の敷地ではないかと言われる、俊成。
そして、その俊成邸跡に建ち、俊成自体を祀る社をも内包する、ホテル京都ベース。帰って来ました。
これまでに買い込んだ水無月は、合計11個。俊成の霊気と和歌の心で、食って食って食いまくるぞ。


最初に食うのは、一番高価い末富です。玉津島色の包に、夏越の日札が踊ってます。


中には、パックで包まれた水無月本体と、能書きの紙、そして本物の水無月札あり。


そして水無月本体。ベースに葛を用いてるので、涼しさや華やかさ、際立つばかり。


末富の水無月、味は見たまんまで、葛の上に小豆が載ってる感じ。葛も、普通にプルプル系の葛。
なので、水無月らしからぬスムーズな食感に仕上がってます。味わう前に、既に飲み込んでるという。
文字通り、飲むみたいに食い終わってしまいました。何か、勿体ないな。記念に和歌でも詠んどこ。
ぷるぷるの べーすもうまい 末富のん お洒落でええけど 予約めんどい (独虚坊 慥調)


続いては、亀山。亀の絵、渋い。今思いついたけど、亀山藩屋敷と関係あるのかな。


亀山の水無月は、原料の粉感がしっかりと感じられるというか、オーソドックスなもっちり系の出来。
これぞ水無月といった感じのハードな食べ応えであり、プレーンの白では特にその印象が立ってます。
抹茶ではこの食べ応えがややヘビーになりますが、黒糖では逆にコクみたいな感じになって美味。
食感が おうどうろせん 亀山のん おはぎもほしい あんもちもほしい (独虚坊 慥調)


どんどん食って行きます。次は、幸福堂。予約したからなのか何なのか、熨斗紙付きです。


幸福堂の水無月は、小豆の存在感が強め。ぼた餅の粒餡が上に乗っかってるような感じというか。
ベースは一般的なテイストながら、上の小豆は食感がさくさくしてケーキなどに近いくらい。独特です。
この傾向、白では独自性として楽しめ、抹茶ではむしろ普通に馴染み、そして黒糖では激美味化。
さんしょくの いろも映えてる 幸福堂 白もええけど 黒糖うますぎ (独虚坊 慥調)


そして、これまでに買い込んだ水無月11個のうち、最後の2個となるのは、松寿軒のん。


松寿軒の水無月は、亀山と幸福堂の間くらいな感じ。もっちり系と一般系の中間くらいの食感です。
ベースは特にもっさり系と一般系の間くらいの食感で、トップの小豆は幸福堂のようなケーキ感あり。
ただ小豆自体は、ぼた餅よりかは水無月ならではの小豆感があり、全体としては上品な王道路線。
じょうとうな かんじがうれしい 松寿軒 あゆの上用も 風流でおいし (独虚坊 慥調)


食った、食った。ので、喉渇いた、喉渇いた。ので、下のコメダにてアイスコーヒーをテイクアウト。
コーヒー、美味。というか、口が水無月以外のものを切実に求めてるという。そして何より、腹苦しい。


腹苦しい腹苦しい。水無月、まだまだ食いまくりたいけど、腹苦しい腹苦しい。ので、ちょっと休憩。
ホテルのタダ動画の中にクイーンのライブがあったので、色々と 「境界」 なフレディの雄姿を観たり。


腹苦しい腹苦しい腹苦しい。そう思って休み続けてると、デイユースのリミット時間になりました。
腹は全く空いてくれません。むしろ胃の中の水無月はコーヒーを吸い、さらに膨張するのを感じます。
外はもう、完全に夜。和菓子屋も、何処も仕舞ってるか品切れの時間でしょう。帰るしかないようです。
結局、あまり食いまくれなかったな。俊成社の功徳、なかったな。俊成、水無月嫌いだったのかな。

こんな感じの、松原通での夏越水無月食いまくりでありました。
客層については、ほぼ他の客がいないのでパス。ホテルも、他の客と遭遇しなかったので、パス。
松原通そのものは、生活者か仕事してる人ばかりがいる感じで、車の方が多い感じです。

水無月食いまくりのダメージですが、
帰宅しても全く空腹感は起こらず、翌日の夜まで結局まともな食事は摂れませんでした。
その間は、生体維持に必要っぽい蛋白質や野菜をつまむ程度。なかなかなダメージです。
実は、2020年にも水無月食いまくりに挑んだんですが、
その際は、9個食った後で猛烈に味噌ラーメンが食いたくなり、実際に完食することも出来ました。
なので結論としては、水無月は一日10個を上限にした方が良いのではないでしょうか。
ただ、常識的な助言を言わせてもらえば、
そもそも水無月食いまくり自体を止めといた方が、人間としては無難だと思われます。

そんな松原通での、夏越水無月の買いまくり食べまくり。
好きな人と食べれば、よりちとせのいのちのぶというなりなんでしょう。
でも、ひとりで食べても、ちとせのいのちのぶというなりです。

御生菓子司亀山 
京都市下京区
松原通油小路西入橘町41-10
9:00~18:00 日曜定休
 

京菓子司 末富 本店
京都市下京区
松原通室町東入玉津島町295
9:00~17:00 日祝定休

京菓子司 末富 – 公式

幸福堂 松原本店
京都市下京区
松原通河原町西入松川町388-2
9:00~19:30 水曜定休

幸福堂 – 公式
 

松壽軒
京都市東山区
松原通大和大路西入弓矢町19−12
9:00~18:00 日曜・月曜定休

ホテル・京都・ベース 四条烏丸
京都市下京区
松原通烏丸東入南側俊成町438

ホテル・京都・ベース 四条烏丸 – 公式

コメダ珈琲店 烏丸五条店
京都市下京区
松原通烏丸東入南側俊成町438
7時00分~22時00分

コメダ珈琲店 烏丸五条店 – 公式