2014年の節分をめぐってきました。もちろん、ひとりで。 【後篇】

2014年2月3日(月)


2014年度の節分めぐり、後篇です。

『ウルトラマン』仮タイトルが 『ベムラー』 だったのは、有名な話です。
ベムラーとは、 『マン』 第1話で登場した怪獣の名前。ボツの後、転用されたわけですね。
企画初期の 『マン』 は、名前のみならずビジュアルも実にベムラー的というか、怪獣的であり、
シュルレアリストにより生み出された、極めて抽象度が高い 「正義」 の造形に慣れた我々の眼には、
そのビジュアルは、およそヒーローらしくない、あるいははっきりと 「悪」 に見えなくもありません。
『マン』 が現代的なヒーロー像を確立する以前の、 「悪より怖い神」 としてのヒーローの残滓、
それこそ 『ゴジラ』 の如き 「荒ぶる自然の神」 としてのヒーローの残滓、みたいな感じなんでしょうか。
しかしこの 「悪より怖い神」 、後年には人類を液状化させた 『エヴァ』 にて見事復活 (?) し、
やはり 「ヤヴァい神」 こそが日本の原初的ヒーロー像なのだと思ったもんですが、それはともかく。
「ヤヴァい神」 「悪より怖い神」 を守護神として祀るのは、寺社では現在でも普通のことです。
京都に話を限っても、祇園祭における荒ぶる神・牛頭天王の重要性など、枚挙に暇はありません。
季節の変わり目に生じた境界領域へ鬼が侵入するのを防ぐ節分においても、事情は全然同じ。
吉田の追儺式に現れる、鬼より怖い方相氏。あるいは平安神宮に現れる、鬼より不気味な方相氏
いずれも、不気味です。 「悪より怖い何かを神として崇拝する」 信仰を感じさせるものです。
真に節分の厄や邪気を祓いたいなら、より強く、より怖い神に祈るのが、道理ということなのでしょう。
というわけで2014年の節分めぐり、後半は厄除けを徹底するべく、怖い寺社ばかり回ります。
回るのは、京都最強&最凶の怨霊系神社×2と、大量のダルマがギョロ目で睨みを利かせる達磨寺
バキバキに効く、でも怒らせるとバキバキに怖い、そんな寺社を念入りにお参りすることで、
邪気を完全封鎖しようと思ったのかといえば、無論本当は思いつきでフラフラ動いただけですが、
とにかく一歩間違えるとこっちが邪気認定されそうなところばかり、何となくめぐってみました。
ユルくて怖い、ある意味で京都的とも言えるそんな節分めぐり、お楽しみ下さい。


和気清麻呂の怨念が生んだ護王神社にて、演芸ショー&狂乱の豆まきを見た後、
20分ほど歩いてやって来たのは、島流しにされた崇徳上皇の怨霊を祭神として祀る、白峯神宮
清麻呂と同じく道鏡から酷い目にあった淳仁天皇の怨霊も祀るため、怨みの濃さは正に、二乗状態。
最早、そこらの鬼は近寄ることも出来ないほどの布陣ですが、節分行事は一応やってるようです。


で、その節分行事の看板。祭神の怖さを思うと、追われる鬼がもう、不憫であります。
あ、鬼の絵が描かれてますが、ここには鬼、出ません。きっと、近寄ることもできないからでしょう。
人手が足りない等の話ではないはずです。ただそれだと、何の為の豆まきかわからん気もしますが。
時間は、ちょうど神事が始まる16時。混雑は特にありませんが、境内では何か始まってるみたい。


あ、あんまり適当な事を書いてると、本気で怖い印象を持つ人がいそうで怖いですが、
実際の白峯神宮は都市型の地域型神社であり、拝殿で既に始まってた神事もまた、そんな感じ。
神事自体は特に変わったことはなく、祝詞&献饌などの普通な神事。それが結構な時間、続きます。
社務所に作られた藤か何かの花用の棒で子供が遊んでるのを横目に、とりあえず先にお参り。


20分ほどして神事が一段落し、四方のお祓いの後、まずはマジ追儺の豆まき。
福男・福女がちょろっとまいた後、また10分ほど神事が続き、16時半過ぎにやっと豆まき開始。


豆まきは、2分ほどであっさり終了。最強&最凶ゆえの余裕、という感じでしょうか。
客層は、中高年8割、幼稚園児&母が2割。ここもやはり、多くの人が自転車で帰って行きました。
 

白峯神宮を出て次に向かったのは、達磨寺。正式名称は、嵐山の寺と同じ、法輪寺。
ダルマを前面に押し出してる禅寺で、あまりなダルマの濃度ゆえ 『達磨寺』 の通称が付いてます。
場所は、西ノ京円町の近く。行くのが微妙に面倒なので、今まで足が伸びなかった節分スポットです。
バスで西ノ京円町まで行くと、西大路通は達磨寺の幟や横断幕が並び、御覧の看板まであり。


で、17:40頃、達磨寺へ到着。門前は御覧の通り、幟に看板に提灯の節分祭状態。
本当にダルマの眼光で邪気を祓うのか、この寺では節分祭を2・3・4日と3連日で大々的に開催。
普段は確か300円の拝観料が要るはずですが、この日は無料で入れて、夜も遅くまで開いてます。
山門で売ってる巻き寿司にも強く心が惹かれますが、まずはダルマの渦中へ飛び込みましょうか。


山門には、いきなり大量に吊された、お守りだるまの束。


入ってすぐの特設テントで、睨むより怖い眼差しを向ける、巨大ダルマ。


巨大ダルマの横で、山積みになった、標準サイズの大量ダルマ。


ダルマだらけの達磨堂では、和尚がシャッフルビートで太鼓を乱打し、だるま供養中。


達磨堂の前ではお札奉納をやってて、ダルマがお札の蓑虫状態の図。


私も200円払って、かろうじて見つけたダルマの隙間にお札を貼るの図。


江戸期の創建時そのままという本堂へ上がると、下駄箱にはウェルカムダルマ。


枯山水の 「無尽庭」 を、まるで見せないかのように立ち塞がる、大量のダルマ。


で、衆聖堂へ行くと、バラエティ豊か過ぎるダルマと、ダメ押しの如き十六羅漢像。


そんな像の数々に睨まれながら頂く接待のハト茶は、多分、ハトの味。
そういえば、ここの2階には 「キネマ殿」 があるんですよ。映画人の位牌を何百も置いてるという。
しかし、ハト茶の和み効果にやられて、見るのを忘れました。いや、節分の間はクローズドなのかな。
昔に寄りましたが、 『ゴジラ』 も 『マン』 も手掛けた円谷英二の位牌も、確かあったはずですよ。


寺には、屋台が2軒出てます。1軒は、さっきの巻き寿司。もう1軒は、名物だるま焼。
凄まじいまでの、ダルマ押しです。最早、 「推し」 ではなく 「押し」 と書きたくなるほどの圧です。
達磨寺、創建時からここまで凄いダルマ押しだったわけではなく、達磨の寺と化したのは、昭和以降。
第10代伊山和尚が、戦後の荒れた状況で七転八起の起き上がりダルマ精神を説いたのだとか。


で、買ってみた一個100円の名物だるま焼。基本、普通にあんこの回転焼です。
が、ひとつひとつにダルマの焼印が押されてます。正に、文字通りの 「ダルマ押し」 であります。
伊山和尚はパワフルな方だったようで、この節分会を開始し、さっきの起き上がり達磨堂もまた建立。
おかげで日本全国からダルマ像が集まるようになり、あの凄まじきダルマ界が現出したんだとか。


そんな凄まじさに守護されるべく、念入りに厄除けを祈願してから、達磨寺を後にします。
帰り際、気が惹かれてた巻き寿司を、結局買いました。1本、500円。残り3本になってましたよ。
袋には、 「花登寿司」 の文字。付近を歩いてると同じ名前の寿司屋があったので、そこのでしょうか。
あ、達磨寺の客層は、中高年の家族連れと幼い母子のみ。それ以外の層は、限りなくいません。


ダルマの洪水を浴びてかなり腹一杯ではありますが、しかし時間はまだ18時半。
帰るには早いので、豆まきに加え御霊太鼓の奉納もやってる上御霊神社へ、バスで向かいます。
どうでもいいことですが、私、市バスの中では206系統が一番、好きです。特に、千本通を下る時が。
このバスが206系統かどうかは、忘れたけど。まず北大路に向かったので、南下もしてないけど。
 

烏丸北大路で37系統に乗り換えて適当に降り、歩いて上御霊神社へ到着。
造長岡宮使・藤原種継暗殺の嫌疑をかけられ、淡路へ配流される途中にハンストを決行して餓死、
死後は怨霊と化して祟りまくり、 「呪術都市・京都」 成立の原因ともなった早良親王を祀る神社です。
正に 「鬼より怖い神」 であり、節分の厄除けを仕上げるにはうってつけのスポットと言えるでしょう。


境内は、20時からの御霊太鼓奉納を前に、地元の方が出す模擬店で賑わってます。
私も、敬老会か何かの厄除け善哉100円也を頂きました。かなり甘く、そしてあんこも濃い目。


時間も腹も余裕があるので、続いて志納制の甘酒も頂きました。生姜が、美味。
ネイティブ感漂う光景ですが、標準語率が高いのがこの辺らしいといえばらしい感じです。


まだまだ時間も腹も余裕があるので、さらに蕎麦300円也まで頂きました。美味。
蕎麦というより極細のうどんですが、それ故の美味さ。この美味さって、一体何なんでしょうね。


と、麺についての高踏な思考をしつつ蕎麦を食い切ると、火炉の火が大きくなりました。
火炉、絵馬殿にプールしたゴミ類をお祓いしてから、ファイヤ-。檻の中、結構な勢いで燃えます。


で、舞殿では御霊太鼓のメンバーが、本殿にお祈りした後、20時から演奏開始。
メンバーは子供から成人まで揃ってて、それぞれが10人程度のフォーメーションを組んで、演奏。
三連系の細かいフレーズをかなり正確に打ち込んだり、あるいは前へ躍り出しての客煽りもあったり。
30分弱でしたが、邪気も寒気も吹っ飛ばす、熱い演奏でした。さあ次はいよいよ、豆まきですよ。


20時半前、神職や福男・福娘、そして御霊太鼓の子供たちが、舞殿から豆まき開始。
意外とDQNっぽい方を見かけたり、家の中からDQNな絶叫が聞こえてきたりするこの辺なので、
洛南最強の節分が展開される藤森神社みたいな豆争奪戦が起こるのかと思いきや、割と大人しめ。
鬼の登場も無く、3分ほどであっさり終了。やはり神が恐過ぎるため、鬼リスクが低いんでしょうか。


大人しめとはいえ私は豆をゲットすることもなく、お参りの後、帰らせていただきます。
こちらの客層は、中高年と家族連れが多いですが、他より若干若め。走り回る子供の数も、多め。
テイストは概ね地元系で、コテコテのネイティブ感+郊外住宅地のテイストが、混じった感じというか。
いかにも上京区 or 左京区っぽい外人の姿も、多し。ただ、カップルや観光客の姿は皆無でした。


怨霊や達磨から徹底的に厄除けしてもらった後、帰って仕上げの巻き寿司を食うの図。
切るのが惜しいですが、写真撮るため二分した後、2014年の恵方 = 東北東へ向かってガブリ。
具はシンプルですが、飯と巻き加減が、美味。やはりこのあたりが、寿司屋とコンビニの違いですね。
黒い海苔に向かって 「死よ、お前を食ってやる」 とか言いながら、今回の節分めぐり、終了です。

各寺社の客層は、記事内で書いた通り。どこも基本的に、ネイティブ寄りです。
カップルや観光客で埋め尽くされるようなシチュエーションに出くわすことは、まあないでしょう。
極端にネイティブ寄りな所もないので、程よい風情を感じつつ、節分を楽しめるんじゃないでしょうか。
おすすめなのは、何といっても、達磨寺。あと、護王神社の街中ネイティブ感も、いいですよ。

そんな2014年の節分めぐり。
好きな人と巡れば、よりなやらいなんでしょう。
でも、ひとりで巡っても、なやらいです。

2014年の節分をめぐってきました。もちろん、ひとりで。【前篇】
2014年の節分をめぐってきました。もちろん、ひとりで。【後篇】

2013年の節分をめぐってきました。もちろん、ひとりで。【前篇】
2013年の節分をめぐってきました。もちろん、ひとりで。【後篇】

2012年の節分をめぐってきました。もちろん、ひとりで。【1】
2012年の節分をめぐってきました。もちろん、ひとりで。【2】
2012年の節分をめぐってきました。もちろん、ひとりで。【3】

2011年の節分をめぐってきました。もちろん、ひとりで。【1】
2011年の節分をめぐってきました。もちろん、ひとりで。【2】


 
 
 
 
 
白峯神宮
京都市上京区今出川堀川東入飛鳥井261
通常拝観 6:00~17:00

京都市バス 堀川今出川下車 すぐ
市営地下鉄 今出川駅下車 徒歩約8分

スポーツの守護神 白峯神宮 – 公式

白峯神宮 – Wikipedia
 
 
 
 
 
 
 
 
 

達磨寺 (法輪寺) 
京都市上京区下立売通天神道西入行衛町457
通常拝観 9:00~16:30

市バス 西ノ京円町下車 徒歩約5分
JR嵯峨野線 円町駅下車 徒歩5分
阪急電車 西院駅下車 徒歩15分

法輪寺(達磨寺) – 京都観光Navi

法輪寺 (達磨寺) – 京都風光


 
 
 
 
 
上御霊神社 (御霊神社)
京都市上京区上御霊前通烏丸東入
上御霊竪町495

市営地下鉄 鞍馬口駅下車 徒歩約3分
京都市バス 出雲路俵町下車 徒歩約7分
京阪 or 叡山電車 出町柳駅下車 徒歩約20分

御靈神社(上御霊神社) – 京都府神社庁

上御霊神社 – Wikipedia