夏越祓の茅の輪を求めて宇治をうろつきました。もちろん、ひとりで。 【後篇】

2017年6月30日(金)


夏越祓の茅の輪を求めての宇治徘徊、前篇に続いて後篇です。

宇治のイメージといえば、平等院や、それこそ宇治十帖が、一般的なものなんでしょう。
しかし、私にとって宇治のイメージは、 「住宅地」 の方がよりしっくり感じるものだったりします。
地場の生活者ゆえのイメージ、という奴です。が、家が建築をやってたという事情もまた、理由です。
京都へのアクセスの良さが目を付けられた宇治は、昭和中期頃より住宅地の開発が進みました。
ユニチカの前身・日本レイヨンなどの企業が、巨大工場を進出させると共に近場で社宅を建て始め、
それを端緒として一般住宅地の開発も進行し、山削りまくり&名物の筈の茶畑潰しまくりが、多発。
結果として、宇治市の人口は数倍に増え、京都府下では京都市に次ぐ規模を誇るまでに膨張し、
また、宅地増殖と共に増殖した主婦の手を借りる形で、アニメ下請会社が生まれたりもしたわけです。
私が育った頃の宇治は、既に主たる 「商圏」 ではありませんでしたが、その名はよく聞きました。
山削りまくり&茶畑潰しまくりな類の開発、その恩恵を私が享受したのは、恐らく間違いないでしょう。
なので、荒っぽく開発された宇治の姿を目にすると、私は、何とも言えない気分になります。
そして、その開発自体さえ既に老い始めてる様を目にすると、更に、何とも言えない気分になります。
「何だ、そのローカルかつ余りに極私的な感慨は」 と言われると、それまでの話だったりしますが、
しかし、このちっぽけなブルース = 憂鬱は、ある意味で、宇治に相応しいものと思えなくもありません。
格落ちな演者が型落ちな愛欲に悩み、浄土リセットも出来ず、ただ消えていくだけの、宇治十帖。
その 「憂じ」 な世界は、剥き出しで現代的&凡庸な事象と共鳴するとは、考えられないでしょうか。
「生温かい憂鬱がどうにも晴れてくれない煉獄」 という点で共通してるとは、考えられないでしょうか。
私が本気でそう思い、自分語りも交えてその思いを記してるのかといえば、そんなことは全然なく、
観光エリアで全く茅の輪がくぐれず、宅地をめぐることにしたのを、理屈付けてみただけなんですが。
というわけで、2017夏越@宇治、後半です。後半は、飯食ってがっつり回って行こうと思います。
茅の輪が持つ魂リセットのパワーなら、この生温かい憂鬱だって吹き飛ばせる筈です。


で、十三重石塔鵜飼を借景として鴨鍋セットを食いまくる浜座敷@鮎宗、続きです。
鴨鍋セットは、ウェルカム茶菓子、前菜、茶そば、鴨小鍋、そして 「鰻いいむし」 なるものが付く構成。
茶菓子&前菜に続き小鍋+コンロ+鍋具材が運ばれ、鴨肉を煮る間に茶そばを食う流れになります。
で、煮る前の鮮やかなる鴨肉を拝んだりしながら、茶そばなどを食す。茶そば、味の方は割と、普通。


鴨鍋、具は鴨肉とオーソドックスな野菜類、そして餅。肉から煮込み始めて、後は適当です。
鴨肉も、味の方は割と、普通。ただ、出汁の方は中々美味く、特に七味を入れると美味くなりました。
で、バクバク食ってる内に、 「鰻いいむし」 登場。竹皮で包まれた鰻載せ御強で、これが実に美味い。
宇治川、昔は鰻が名物だったとか。しかしこの御強は、米の食感と山椒の効きが、独特に光ります。


そう、ここの山椒、何か、美味い。と思い、鍋出汁にも入れてみると、これまた実に、美味い。
喜んで山椒出汁を飲み、季節感無視で山椒餅も食い、鴨鍋セット、完食しました。御馳走様でした。
食後はのんびりしたい所ですが、現在はあくまでも茅の輪めぐり中。すぐ勘定を済ませ、退店します。
去り際、風流な光景を再び拝むこと、しばし。ただ、天気はヤバげ。先を急いだ方が、良さげです。


ので、すぐ歩き始めたら、すぐの所に喜撰茶屋のソフト看板あり。デザート欲、刺激されました。
抹茶系らしき喜撰ソフト、食おうかな。中村藤吉で抹茶系ネタ、押さえられなかったしな。食おうかな。
でもな、やっぱり中村藤吉がいいな。本店、行ってみようかな。いや、あっちは多分もっと混んでるな。
しょうがない、中村藤吉の代わりに生長の家、行こうかな。生長の家・宇治別格本山、行こうかな。


というわけで、中村藤吉が建設奉賛会長を務めた宇治別格本山へ。境内には、多数の社あり。
山を削って建てられたという宝蔵神社は、超々巨大な拝殿が威容を誇ってましたが、茅の輪はなし。
一転して風情が溢れる末一稲荷神社も、また他の社も、茅の輪はなし。夏越、やらないんでしょうか。
別格本山、徘徊を咎められることはなく、逆に歓迎されることもなし。ごく普通の温度感、みたいな。


あ、天気の方、別格本山へ寄った途端、晴天化。私、生長の家と相性が良いんでしょうか。
私の地元・石清水が仲良し日本会議からは、生長の家、離脱したらしいんですけど。関係ないか。
とにかく、現状のくぐり数は、ゼロ。ヤバいです。次はとりあえず、一番近くの白山神社へ向かいます。
急激にアマゾン化する宇治川沿いを、しばし東進。放流看板&アナウンスに怯えること、しきりです。


宇治川沿いをしばし歩き、東海自然歩道の入口を右折して坂道を登れば、白川エリア。
白川金色院ゆかりの地であり、宇治田楽の本拠地とも見なされてる地であります。渋い惣門もあり。
で、その惣門をくぐり集落の奥にあるのが、金色院なき後も里人より崇敬され続けてきた、白山神社
激烈な石段を登った先の境内に、茅の輪はなし。ただ、神寂た雰囲気は爆裂してる、良い社です。


とはいえ、やはり茅の輪くぐり数は未だ、ゼロ。おまけに時間は現在、17時。さて、どうしよう。
ここから先、宇治田原方面へ進むのも面白そうですが、茅の輪は正直、期待出来そうにありません。
ので、まだ多少は期待出来る住宅地へ向かうべく、古道・勘定坂の激坂を登り、西側へショートカット。
激坂を抜けると、古道と真逆な住宅地が現われました。折居山を削って出来た、折居台であります。


折居山は、折居川の水源地。折居川は、水&地形で宇治の茶畑に大きな恩恵を齎した川。
で、その折居川の水流が形になり始める辺には、同じ 「おりい」 の下居神社あり。行ってみましょう。
住民としか擦れ違わない凡庸なる宅地を、登坂で汗だくの不審者全開状態で歩き、下居神社へ到着。
茅の輪はなし。ただ、これまた住宅地とは真逆というか、開発前の山の姿を思わせる社であります。


とはいえ、くぐり数は、ゼロのまま。焦ってマップを確認すると、歩いた道の途中にも小社あり。
一応チェックすべく少し戻り、思いきり民家の裏にある白長社へ行ってみました。が、茅の輪はなし。
地蔵もあったりして、雰囲気は絶妙ですけどね。これまた、開発前の山の姿を思わせる社であります。
が、不審者が民家裏に居続けるのも不審なので、次の社へ。路傍の花にも急かされること、しばし。


様々な路傍の花に急かされながら、汗だくで無駄に疲れた不審者は、琵琶台方面へ移動。
琵琶台は、宇治七名園のひとつ・琵琶を潰して出来た住宅地。今となっては、昭和的なる宅地です。
日本レイヨンの社宅が最初に出来たという辺には、茶畑の虫害に御利益があったという野神社あり。
「のじんじゃ」 に非ずして、 「のがみのやしろ」 。規模の割によく手が入ってますが、茅の輪はなし。


時間は、18時半。暑い。足痛い。何より自分で自分が不審でしょうがない。もう、帰りたい。
と、半泣きでマップを見ると、南側に神明神社 aka 栗隈神明あり。で、一応向かうも、茅の輪はなし。
駄目だ。終わりだ。と自棄になってると、門前に和菓子店あり。城陽に本店がある、与楽という店です。
で、せめて水無月はと、抹茶水無月を3つ購入。よかった。これで、何かは締まった感じでしょうか。


いや、やっぱり駄目です。続けます。何としても、最低でもひとつくらいは、茅の輪をくぐります。
というわけで、次は、菟道稚郎子的にも 『源氏』 的にも重要な木幡方面を目指すべく、北上を開始。
宇治京阪駅だって、通過です。めぐりを放棄して電車に乗るなんてこと、あるわけないじゃないですか。
仮に乗っても、木幡で降りる筈です。冷房が沁みて寝落ちなんてこと、あるわけないじゃないですか。


と、めぐりへの熱い意気込みを抱いたまま、気が付けば何故か、家で水無月を食ってたの図。
尻切れトンボとも思える結末を迎える、宇治十帖。その完結の仕方に、インスパイアされたわけです。
くぐりたくともくぐれず、凡庸な煩悩の煉獄をただ揺蕩い、消えるだけとなったわけです。いやあ、深い。
あ、与楽の抹茶水無月、上に乗る豆は、ずんだ系。ケーキ感さえ感じる、独特で美味なものでした。

茅の輪をくぐれずじまいな夏越の宇治徘徊、以上でございます。
以上も何も、始まってさえいないという話ではありますが、とにかく、以上でございます。
何も始まらず、何処にも行けず、終わる時は突然終わる。それが、 「憂じ」 なのです (狂) 。
客層については、いわゆる観光ゾーンを除けば、何処もほぼ無人でした。
観光ゾーンの客層は、本文中でも触れてる通り、中国人が多し。宇治上神社は、特に多し。
しかし、行動に支障が出るような混雑には、運が悪くない限りブチ当たらないと思います。
めぐりを総合的に見れば、ひとりの気まずさ度については★★★くらいでしょうか。
白山神社→下居神社→白長社への流れは、強烈に渋い雰囲気が満喫出来るものであり、
ここだけなら普通の社めぐり or 宇治の歴史体感の意味で、かなりおすすめ。

そんな宇治での、茅の輪を求める彷徨。
好きな人と彷徨えば、よりちとせのいのちのぶというなりなんでしょう。
でも、ひとりで彷徨っても、ちとせのいのちのぶというなりです。

夏越祓の茅の輪を求めて宇治をうろつきました。もちろん、ひとりで。 【前篇】

夏越祓の茅の輪をくぐりまくりました。もちろん、ひとりで。 (2011 前編)
夏越祓の茅の輪をくぐりまくりました。もちろん、ひとりで。 (2011 後編)
夏越祓の茅の輪をまたくぐりまくりました。もちろん、ひとりで。 (2012)
夏越祓の茅の輪をまたまたくぐりまくりました。もちろん、ひとりで。 (2013)
夏越祓の茅の輪をまたまたまたくぐりまくりました。もちろん、ひとりで。 (2014)
夏越祓の茅の輪をまたまたまたまたくぐりまくりました。もちろん、ひとりで。 (2015)
夏越祓の茅の輪を求めて乙訓をうろつきました。もちろん、ひとりで。 (2016)


 
 
 
料理旅館 鮎宗
京都府宇治市宇治塔の川3
不定休

JR奈良線 宇治駅下車 徒歩約15分
京阪電車宇治線 京阪宇治駅下車 徒歩約15分

料理旅館 鮎宗 – 公式
 
 
与楽 神明店
京都府宇治市神明宮北14-21
9:00~19:00 火曜定休

JR奈良線 宇治駅下車 徒歩約20分

京菓子司 与楽 – 公式