祇園祭の宵宮祭へ行ってきました。もちろん、ひとりで。

2013年7月15日(月)


祇園祭の宵宮祭へ行ってきました。もちろん、ひとりで。

祇園祭を 「二つの祭が同時進行している」 と言ったのは、山路興造
いわく、平安期から八坂神社主体で行われている神輿渡御が中心の 「祇園御霊会」 と、
中世以降の下京町衆主体で行われる山鉾巡行中心の 「祇園祭り」 が、同時進行している、と。
( 平凡社刊 『別冊太陽 京の歳時記 今むかし』 中 「月次の京・七月」 の項より )
もちろん実際は、両者は密接に関わり合い、山鉾巡行もそもそもは神輿渡御の先触れです。
が、現場を歩くと、山鉾町と八坂神社近辺で空気が違うと感じられるのもまた、確かだったりします。
山鉾町に漂う、むしろこちらを 「御霊会」 と呼びたくなる、闇や恐怖さえ孕んだ独特の雰囲気。
そして八坂神社と門前の祇園町に漂う、一転してオーソドックスかつ大らかな、神祭りの雰囲気。
いろんな意味&点でややこしそうなので、私には何もわからんとしか言えない話ですが、
とにかく空気の違いは明白に存在し、その辺がクリアになるのがこの宵宮祭以降ではないかな、と。
もう充分に知られてるようで、案外やっぱり知られてないようですが、祇園祭にも神輿は出ます。
神輿は無論、神様の乗り物。ゆえに、神輿が出る場合、本殿から神様を遷す儀式が、必須。
というわけで、祇園祭でもこの儀式は当然執行され、行われる日は神幸の2日前である、7月15日。
一般的には 「宵々山」 の夜に、八坂神社では 「宵宮祭」 として遷霊神事が行われるわけです。
遷霊の儀式そのものは、境内の照明完全オフ+撮影も完全禁止という、極めて厳粛なもの。
厳粛過ぎて、何やってるのかわからんくらい地味だったりしますが、とにかく、極めて厳粛なもの。
しかし、門前の祇園商店街は、 「宵宮神賑奉納・前夜祭」 として様々なイベントを開催。
その賑わいの空気が、先述のように山鉾町とはちょっと違うテイストなのが、面白かったりします。
そんな宵宮祭、混雑の酷さは山鉾町よりほんの少しだけマシ or ほぼ変わりませんが、
より本義に近い儀式と賑わいの香りを嗅ぐべく、突っ込んでみました。


やって来ました、宵宮祭当日17時半の、八坂神社南楼門。
四条通歩行者天国化直前の西楼門周辺は、猛烈に混むかと思い、こちらへ日和ってみました。
来てみると、祭りの気配は意外なくらい、希薄。混雑も、普段より少し人が多いかなという程度です。
が、眼前には今が祭の最中であることを示す、長刀鉾町衆の姿あり。奉納でもするんでしょうか。


で、境内へ進入。三基の神輿が奉安される舞殿を中心に、普通に混んでます。
もちろん神輿は注目を集め、祭ならではの混雑も感じますが、普段通りのテイストも結構、濃厚。
本殿前にも、普段通りに参拝の行列あり。観光客が、祭に遭遇して居残ってるという感じでしょうか。
そういえば、一時減った中国人が、再増加。八坂神社、何でこんなに中国人が来るんでしょうね。


今夜の主役、いや本来は祭の間中ずっと主役である、三基の神輿。
写真右から、東御座、中御座、そして西御座。いずれの神輿も、御霊が入るのを待ってます。
10日の神輿洗式で組み上げられた神輿は、この日の遷霊を経て、17日の神幸祭までここに奉安。
神幸で御旅所へ出向き、24日の還幸祭で帰るわけです。で、これが祇園祭の本義なわけです。


そんな神輿を賑わすべく、南楼門東隣の能舞台では伝統芸能を奉納中。
狂言・舞・今様・琴曲・琵琶などなどが披露される、伝統芸能奉納。宵宮祭の前祝であります。
観るのはタダなので、客席は大入り。この時は、詩吟サークルの発表会みたいな雰囲気でしたが。
この日のみならず、祇園祭の期間中は様々な奉納が連日のように開催。式包丁もありますよ。


詩吟にソウルを感じてると、露店の鉄板が放つソウルフード臭に食い気を刺激されました。
御霊遷しが行われるのは、20時頃。まだ2時間もあるので、一旦境内を出てウロウロしてみます。
と、西楼門への参道へ出ると、いきなり大混雑。露店の量+人間の量+狭さの相乗効果で、大混雑。
露店、節分大晦日の時みたいな味のある店は出ず、ラインナップは普通。ただただ、大混雑。


で、牛歩で到着した西楼門から、歩行者天国化寸前の四条通を見るの図。
ホコ天スタートは、18時。車の最後の締め出しを、大勢の人民と共にボ~っと眺めること、しばし。
京都近隣のDQN若者が、金も落とさずひたすらウロウロ歩くだけで知られる祇園祭のホコ天ですが、
宵宮神賑奉納では、露店なし、代わりに舞妓はんビアカウンターがあったりするのが、特色です。


で、18時になったら急に大雨が降ってきたので、なか卯・八坂神社前店へ逃げたの図。
安い浴衣をびしょ濡れにしてる安い若者を眺めながら、安い和風牛丼280円を食すこと、しばし。
食い終わっても雨が止まないので、冷凍麺のコシが光るすだちうどん(小)230円も食すこと、しばし。
途中、中国人男が入店し、店員がオーダー取りに来るのを、ペットボトル片手に待ってました。


待ち続ける中国人男を残し店を出て、雨の上がった四条通で山鉾町を眺めると、
人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間
人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間
人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間。


人間の海の中を川端四条あたりまで西進し、振り返って八坂神社を眺めても、
人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間
人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間
人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間。


と、混雑をやや大袈裟に書いてみました。望遠圧縮の絵が面白かったので。
実際の祇園周辺のホコ天は、結構普通に歩けます。もちろん、無茶苦茶に混んではいますが。
写真は、そんな四条通に爽やかな風をもたらしながら、鉾町の混雑へ向かい進む、長刀鉾の町衆。
八坂神社で何かを奉納した帰りでしょうか。後ろに立つ南座と、不思議な相性を見せてます。


大雨が突然降ったせいか、宵宮神賑奉納・前夜祭の路上イベント準備は、遅延中。
舞妓はんの500円ビアカウンターも、まだ組立中。早くも、10数mの行列が出来てましたが。
それにしても、この辺に漂う空気感と、山鋒町のそれとの違い、感じてもらえるでしょうか。無理かな。
一言で言うなら、こっちの方がユルいんですが、写真で見ると、やっぱりひたすら混んでますね。


そうこうしてるうちに、時間は19:20。ぼちぼちと、辺りが暗くなってきました。
神事の準備が始まってるかなと思いながら境内へ戻ってみると、舞殿などに灯りが点くと共に、
その舞殿と本殿の周囲へロープが張りめぐらされ、一般参拝者立入禁止の厳重なる結界、形成中。
繰り返しますが、これから一切の照明を落とし、撮影禁止の厳粛な神事が、行われるのです。


結界からの人出しを進めると共に、神職は撮影禁止絡みのアナウンスを連呼。
「まもなく御霊遷しの儀を執り行います」 「儀式の間、写真・ビデオの撮影は一切お断りします」
「これは厳粛な神事です」 「光を出さないようお願いします」 といった注意が、何度も放送されます。
「NO PHOTO」 という言葉を各国語で書かれたボードを持つ神職も、境内をパトロール中です。


19:50、まだ舞殿などの灯りは点いたままですが、神事が始まりました。
真っ暗ではないものの、神威に配慮して撮影自粛。以下、漆黒の闇+文字でお楽しみください。
ここでの神事は、雅楽が奏でられ、神饌の献饌や祝詞奏上などが行われる、オーソドックスなもの。
清々講社・宮本組・八坂雅楽会など、神輿寄りな祭関係者の方々が、本殿で拝礼していきます。


そうした神事が終わり、20:10、遂に境内の全ての照明が、消灯。
「うお━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━っ」 と、阿呆の喜ぶ声が響くこと、しばし。
全てが消されたはずなんですが、どこかが消え切れず、そこへ向かって慌てて走る神職の姿、あり。
また、あちこちでカメラのフラッシュが光り始め、そっちにも向かって慌てて走る神職の姿、あり。


しかしそんなことは関係なく、本殿の奥からは和琴の幽玄なる響きが聞こえてきます。
音色も、音質も、共に生演奏でありながらまるで古いレコードのような、実に不思議な音色です。
「お゛ぇあ━━━━━━い」 とか言いながら乱入を試みるDQNに向かって、またも走る神職をよそに、
雅に和琴が奏でられ、そして白布で厳重に霊的ガードされた御魂が、本殿から現われました。


御魂を持つ神職たちは、舞殿の神輿へ向け、静かに、静かに、歩を進めます。
足下を照らす灯りは、恐らく神輿洗の儀に際して起こされた神火、その火を遷した松明のはず。
と思ってよくよく目を凝らしましたが、灯り、どう見てもペンライトです。光質が、どう見てもLEDです。
神様も、エコ志向なんでしょうか。まあ、松明だと、夏は暑いですしね。今日、結構涼しいけど。


御霊遷しは、基本、何も見えません。暗闇の中、神職が神輿に何かモゴモゴするのみ。
「昔は鏡が3枚見えてた」 という声が聞こえましたが、昔はもっと視認性が高かったんでしょうか。
あ、書くのを忘れてましたが、現場、大混雑。私は汗臭いオッサンに挟まれ、片方は頭が腕に密着中。
加えて、近くの中国人餓鬼は退屈げに嘆息をつき、バカップルはエンドレスでカスの如き駄話中。


オッサンの残り少ない髪の質感と汗ばんだ頭皮の湿度をダイレクトに感じながら、
バカップルの 「どこでメシ食うか」 についての議論を聞いてるうち、御霊遷しはつつがなく完了。
しばらくすると灯りも点き、 「うお━━━━━━━っ」 と阿呆の喜ぶ声が、また境内に響き渡ります。
あとは、御覧のように関係者が舞殿前へ移動し、神様が無事お遷りになった神輿へ改めて拝礼。


で、関係者拝礼が終わると一般の拝礼タイムとなり、舞殿の周囲はもう、
人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間
人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間
人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間。


脱出しようとしたら、人の流れに流されて西楼門への参道へ入ってしまい、
人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間
人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間
人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間。


牛歩で西楼門を出て、そこからホコ天の四条通を眺めたら、やっぱり、
人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間
人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間
人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間。


すっかり完成し営業を始めてた舞妓はんビアカウンターも、当然ながら、
人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間
人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間
人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間。


路上では伝統芸能のストリートライブもやってて、この周りにも、
人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間
人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間
人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間。


路上ミニシアターなんてもいくつかのスクリーンでやってて、こちらの方も、
人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間人間・・・ということは、特になし。
ヨーロッパ企画などが短編を上映してたりしますが、このゴザ敷きの謎上映が一番味があるかなと。
山鋒町の宵々山でやったら即座に踏み殺されそうな独特のユルさを堪能して、退散しましたとさ。

宵宮祭の客層は、基本的には普段通り八坂神社のそれと変わりません。
大半は、単なる観光客です。ディープもひったくれもない、単なるベタな観光客です。
それを、人数を3~4倍にして、地元風の人間を若干足した感じでしょうか。
若者は、全体の7割ほど。カップルと混成グループ、非常に多し。いずれも学生風で、馬鹿。
女性グループは割と地元風が多いですが、でもレアな神事を見に来たという感じは、ほぼゼロ。
一時は減った中国人団体もまた激増し、全体の10分の3くらいは中国人だったような。
少ないですが中高年および家族連れは、観光系+近隣や神輿関係者。
単独はやはりあまりいませんが、男性はカメ+ちょっと変な奴がいるくらいで、
女性はちょっと濃いめながら普通の観光客というところです。

そんな祇園祭の、宵宮祭。
好きな人と行けば、より祇園会なんでしょう。
でも、ひとりで行っても、祇園会です。

【客層】 (客層表記について)
カップル:3
女性グループ:1
男性グループ:若干
混成グループ:2
子供:0
中高年夫婦:1
中高年女性グループ:0
中高年団体 or グループ:2
単身女性:微
単身男性:若干

【ひとりに向いてる度】
★★
山鉾町より若干空気はユルいが、
混雑そのものは、こっちはこっちでいい加減、凄まじい。
色気・人圧ともにプレッシャーは高く、ほぼ完全に四面楚歌。
ある程度、特攻の覚悟をもって望んでもらいたい。

【条件】
祝日月曜 1730~2120


祇園祭 宵宮祭
7月15日 20時頃より 八坂神社にて執行
 
 
八坂神社
京都市東山区祇園町北側625
参拝自由

京阪電車 祇園四条駅下車 徒歩約5分
阪急電車 河原町駅下車 徒歩約10分
京都市バス 祇園下車 徒歩すぐ

八坂神社 – 公式

八坂神社 – Wikipedia

祇園商店街振興組合 – 祇園商店街公式