早朝の嵐山へ行ってきました。もちろん、ひとりで。

2011年4月14日(木)

嵐山の桜と一の井堰
早朝の嵐山へ行ってきました。もちろん、ひとりで。

早朝の嵐山が好きです。
何故好きかと言えば、港町の空気の匂いがするからです。
港町、あるいは海沿いの地方都市を旅した時に感じる、独特の空気。
日常の中で、生活の糧として、水と関わる人々が放つ、独特の張った感じの空気。
そんな空気の匂いが、早朝の嵐山にはちょっとだけ残ってる気がします。
昼間になって人が増え、場の雰囲気が観光丸出しテイストになると、もう何もわかりませんが、
ほとんどの人が仕事で渡月橋を走ってる早朝だと、港町にいる気分がちょっと、味わえます。
鎌倉時代に後嵯峨天皇が大和吉野山から多くの桜を移植し、桜の名所になった、嵐山。
もちろんそれより前の平安時代から、貴族の別荘地であった、嵐山。
しかし、そんな華やかな側面と同時に、丹波の材木の集積地としての顔も、嵐山は持ってました。
平安京建都以前に秦氏が一の井堰を建築した頃から、角倉了以による保津川開発を経て、
実に昭和へ至るまで、嵐山は「仕事」の場でもありました。
そんな時代の残り香と桜の香りが混ざり合う、春の嵐山、早朝。
その匂いは、水上交通をフルに活用していた時代の、本当の京都の匂いなのかも知れません。

嵐山公園の桜
「水上交通を活用していた時代の、本当の京都の匂い」などともっともらしいことを言ってますが、
実際はそんなこと考えて早起きしたわけではありません。
天龍寺が開くまでの時間つぶしに寄っただけです。

中之島の桜渡月橋と桜
嵐山に港町の匂いを感じるのは本当ですけどね。それが大好きなことも。
人の少ない嵐山駅を出て、人の少ない道を歩き、やってきた嵐山公園。

嵐山公園のしだれ桜
あ、まさか朝まで呑んでたとは思えませんが、宴席の片付けをしてる方もいました。
すっかり春とはいえ、夜中は結構寒いですよ、この辺。

渡月橋右岸側の桜
昼間にここを埋め尽くす観光客は、嘘のように全然いません。
あの人たちは、一体どこから来て、そしてどこへ帰っていくのでしょうか。
散歩、ジョギング、カメラマン、いずれもちょっとずつ。

生活道路・渡月橋
生活道路・渡月橋。軽快に走る軽トラが、似合います。
「歩行者天国にしろよ」と思う方も多いでしょうが、ここ通れないと、不便なんですよね。
下流にある橋は1km先だし。上流には橋ないし。新しく橋作ると景観台無しだし。

渡月橋左岸側から嵐山を望む
左岸から嵐山を望む。このあたりにも流木がごろごろ流れてたんでしょうか。
川を使った水運というと、明治維新で鉄道できて全終了みたいに思ってしまいますが、
嵯峨や千本の材木業はむしろ近世より明治以降の方が繁盛したそうです。
渡月橋の手前あたりでチョロっと分流する西高瀬川も、材木用の運河で、実に明治の開通。

嵐山の山桜
しょぼい写真で恐縮ですが、一応、山の桜も。
わかりやすい優雅さを湛える、春の嵐山。でも戦国時代には、城があったそうですよ。

始業前の貸ボート屋と桜練習でもしてるらしい船頭さん
大悲閣の「絶景 GREAT VIEW」の看板に見送られながら、右岸をてくてくうろついてみます。
客も主もまだいない貸ボート屋、そして練習でもしてるらしい船頭さん。

嵐山通船の船着場あたりを流す船
嵯峨嵐山の集積場を出た材木は、さらに下流の梅津や桂へ流れたり、
三条通に沿って流れる西高瀬川を千本まで運ばれたりしたんだとか。
「千本」「三条」「材木」「嵯峨」と聞いて「千本組」と浮かぶ方はどれくらいいるんでしょうか。
図書館でしか見たことない怪著『千本組始末記』、どこか復刻してくれると嬉しいんですけど。
京都市民ではない私は、借りて読めないんですよね。

上流の岩
時おりゴツゴツした岩の下におりてみたりします。
保津峡あたりの岩だらけの川を見ると、いかにも「大自然」な印象を受けますが、
あれでも角倉了以の手がしっかり入ったあとの川。火薬で岩を吹っ飛ばしまくったそうです。
このあたりの岩も、その名残りでしょうか。

こなみ茶屋近辺
大悲閣千光寺の入り口や、最近やたら名の売れてる「星のや」がある辺までやってきました。
渡月橋近辺が港の顔をしてるのに対し、このあたりは歴然と川の顔。
左側には、トロッコ列車の線路が隠れてます。

メンチを切る鳥
カメラを向けると「何じゃこら、見んなこら」という眼差しを向ける鳥。
腹減ったので、帰ります。といっても、帰ったところで営業してる店は全然ないんですけど。
8時の時点で、嵐電駅内の店も準備中。脇にある喫茶店も、準備中。観光向けの店は、全滅。

一の井堰
現在の桂や梅津に港の気配が全く感じられないのに対し、
嵐山は木材筏舟の末裔たる保津川下りの舟がバンバカ下りてくる、いわば現役バリバリの川湊。
観光とはいえ舟が「仕事」で走ってると、匂いは残るものなのかも知れません。
そんなことを思いながら、偉大なる一の井堰を改めて、謁見。
先述の西高瀬川や洛西用水を分流し、おまけにライトアップ用の電力も自家発電してます。偉い。

客は、非常に少ないです。
桜目当てのカメラマン数人、写真サークルか何かの撮影っぽいグループ、
中高年夫婦数組、単独妙齢女性一人、あとは地元の散歩が数人。

そんな早朝の嵐山。
好きな人と歩けば、より嵐山なんでしょう。
でも、ひとりで歩いても、嵐山です。

桜と大堰川
【ひとりに向いてる度】
★★★★★
全くなし。おすすめ。

【条件】
木曜 6:30~8:00

嵐山
京都府京都市右京区嵯峨
終日うろつき可能
阪急嵐山駅下車 徒歩約8分
嵐電嵐山駅下車 徒歩約5分
JR嵯峨野線嵯峨嵐山駅下車 徒歩約15分

京都府ホームページ 嵐山公園・嵐山東公園

京都嵐山保勝会 公式

Wikipedia 嵐山