今熊野の魚市へ鱧を食べに行ってきました。もちろん、ひとりで。

2011年8月5日(金)


今熊野の魚市へ鱧を食べに行ってきました。もちろん、ひとりで。

『ひとりで食べる鱧』、復活です。
己の財政状態を省みず鱧を食い始め、わずか2回で予算爆発&中断したこの企画ですが、
絶食してみたり、命の次に大事な動画を消してHD購入を先送りしたりすることで、奇跡の予算確保。
想定枠も5000円から3000~4000円に修正して、何とか再開にこぎつけました。
実は中断してる間、鱧ネタを続けるために「ひとりで作って食べる鱧」なんてことを試してたんですよ。
スーパーで生鱧を購入し、おとし・天ぷら・出汁・鱧寿司を見よう見まねで作り、食す、みたいな。
結果はそれはもう恐ろしいこととなり、ちょっと詳述出来ないような臭気が家に満ちたんですが、
しかしその際、鱧の生頭に直接触れる経験を持てたのは、ちょっとした収穫でした。
出汁をとるため、炙ってから肉を落として洗ってる時に感じた、あの不思議な感触。
子犬の頭骸骨を撫でてるような禽獣感と、今にも噛み付いてきそうな鋭い口先との、ギャップ。
「確かにこいつはパワー、あるな」と無条件で納得させられる何かがありました。
鱧のラディカルな魅力、食材以前の生物としての魅力とでもいいましょうか。
で、鱧のそんな魅力にとりつかれてるような気がするのが、こちらのはも料理・魚市。
鱧のレントゲン写真を展示してることで有名な店です。そう、レントゲン。骨でも拓でもなく、レントゲン。
鱧には、思わずそんなことをしてみたくなる何かがあるということなのです。


魚市は新熊野神社のすぐ南、今熊野商店街の中の一軒。
それにしてもこの看板の渋さといったら、どうでしょう。「海川魚御料理」。一桁の市内局番。渋過ぎ。
海から遠い京都では、川魚を出す店、多かったそうです。今でも街中にちょこちょこ残ってますよ。


店先には、寿司や惣菜を並べる箱。好き者の方が随喜の涙を流す姿、目に浮かびます。
今熊野商店街は、新熊野神社を中心として、智積院と東福寺の間の東大路通に展開。
泉涌寺の門前でもあり、三十三間堂のすぐそばでもあり、ハイアットリージェンシーもすぐ近所。
観光客がウジャウジャいてもおかしくないエリアなのに、この手加減のない渋さ。


あまりに渋いので、別角度からもう一枚。いいでしょ、魚市および今熊野商店街。
魚市の向かいには、380円の宇治茶パフェソフトで名を馳せる大谷園茶舗があります。
離れたところには、料理に鉄拳の如きボリュームと勢いがある 「男の中華屋」 明記大陸食堂もあり。


店先はとことん風情のある佇まいの魚市ですが、中は凄くきれいな料理屋風。
横の壁には、一押しであろう 「今熊野弁当 はも落としつき」 の色紙が大きく張り出されてます。
もちろん、これをオーダーしました。言うまでもなく、鱧の落としつきで。


一応、メニューにも目を通しておきます。
鱧の落とし御膳3150円も気になりますが、はも丼1890円なるものが著しく食指をそそりますなあ。
ちなみにこのはも丼、焼いた鱧を大量に飯の上に乗っけてがっつく、というものだそうです。


出ました、鱧のレントゲン写真。お医者さんにわざわざ撮ってもらったそうです。
それにしても何故、レントゲンなんでしょうか。捌いたところじゃダメなんでしょうか。
単なる食材としてだけではなく、生物としての面白さも客に伝えたいということなんでしょうか。
それにしては写真の鱧、開いた後で撮影してるようにしか見えないんですけど。
小骨の多さを見せたいということでしょうか。でも写真では小骨、ほとんど霧状になってます。
結局、何だかよくわかりません。そのよくわからんところが、鱧の魅力ということなんでしょうか。


と、謎な気分にいっぱいになってる間にやって来ました、今熊野弁当+はも落としつき。
ご覧のとおり、落とし+弁当+ご飯+吸い物という構成。


「美味しいので最初に食べて下さい」と奨められた、鱧の落とし。
ベーシックな梅肉醤油ではなく、凡庸なわさび醤油でもなく、甘酢にわさびを入れて食します。
鱧の根源的魅力と向き合ってるがゆえの、独特のこだわりを感じさせるチョイスです。


鱧きゅう+錦糸玉子、野菜+鱧卵+卵の焚き合わせ、大きめの焼き鱧、
生麩の田楽、湯葉、手作りという飛竜頭っぽい豆腐、そして甘納豆。
こちらは実にベーシックな京都の味という感じでしょうか。


吸いものも、実にベーシック。ごちそうさまでした。
食べ終わってから店の奥へ勘定しに行くと、表へ連れてかれて、惣菜のレジで清算。渋過ぎる。
客層は、貸切だったので省略です。

そんな魚市の鱧。
好きな人と食べたら、より京都の夏の風物詩なんでしょう。
でも、ひとりで食べても、京都の夏の風物詩です。


【ひとりに向いてる度】
★★★★
プレッシャーはなし。アウェー感もなし。
鱧のレントゲン写真を見たい人は、是非。

はも料理 魚市
京都市東山区今熊野椥ノ森町25
10:00-19:00 (入店まで)
夜は予約のみ利用可 木曜定休
京都市バス 今熊野 or 泉涌寺道下車 徒歩2分
京阪&JR東福寺駅下車 徒歩10分

公式 – はも料理 魚市

食べログ – はも料理 魚市 うおいち