神應寺の紅葉まつりへ行ってきました。もちろん、ひとりで。

2010年11月27日(土)


神應寺の紅葉まつりへ行ってきました。もちろん、ひとりで。

石清水八幡宮が立つ男山には、元々、寺が林立していました。
その数、48。時に、それ以上。男山四十八坊と称され、宿坊を営んだりしてたそうです。
石清水八幡宮は、もちろん、神社。今の目で見れば、完全に、神社。
しかし明治維新以前までは、「八幡大菩薩」と仏教丸出しな名前の神を祀り、
神社の運営の実権も寺側が握るほど、神仏習合の加減が濃い、正に文字通りの宮寺でした。
山を埋め尽くすほど建ち並んだ諸坊には、大名などからたんまりと金が入りまくり、
おかげで寛永の三筆の一人である文化人・松花堂昭乗なんかも生み出したりしましたが、
おごる坊主久しからずというか何というか、明治初頭に神仏分離令が出て、坊、全滅。
山内の仏教施設は、松花堂などの移築組を除いて、大半が徹底的に破壊され尽くされました。
男山ケーブルのトンネル近くに立つ神應寺は、その数少ない生き残りです。
創建は、石清水八幡宮と同時期。開祖も同じ、行教律師。同宮の別当所とも言われてます。
現在は小さい禅寺ですが、神仏分離のゴタゴタで酷い目にあった平安期作の行教座像や、
かつて庇護も受けていたという豊臣秀吉の坐像など、寺宝はなかなかにエクセレント。
また、京阪八幡市駅から徒歩5分ほどの参道は、駅前とはとても思えない渓谷が広がり、
「駅前渓谷」の名で静かにその認知度を高めつつあったりもします。
普段は本当に普通の寺であり、寺宝も非公開の神應寺ですが、秋の紅葉まつりではご開帳。
なので、駅前渓谷と紅葉とお宝を、まとめて見に行ってきました。


八幡市駅から南下して、スーパー・ツジトミと走井餅の前を過ぎ、
石清水八幡宮・一の鳥居の前に来ると、右へそれる道があります。それが、神應寺への参道。
山門の少し奥には、私たちが「海軍大将の墓」と呼んでた航海記念五輪塔も、あり。
何故「航海記念」なのかといえば、ここらが淀川経由で瀬戸内航路に直結してたことの名残かなと。
しかし、何故「海軍大将」なのかは、さっぱりわかりません。


いわゆる「駅前渓谷」は、五輪塔からまっすぐ川沿いに歩いて行くと早いですが、
今日のメインはあくまで、神應寺。紅葉まつりの案内看板を見ながら、山門をくぐります。
八幡温泉建設の際に整備されたという石段を、秘境感を味わいながら登ること、しばし。
あ、八幡温泉というのは、明治のころ神應寺奥に作られ、一年でぶっつぶれたレジャー施設。
あ、といっても例の「血の病院」や「ビルマ僧院」とは違いますよ、多分。跡地かも知れないけど。


着きました。神應寺本堂の正面に立つ。
紅葉まつりというより、銀杏まつりといった方がいいかもしれない、黄色づくし状態です。
本堂がいつ出来たのかは知りませんが、書院は伏見城の遺構を使ってるとか。


さらに銀杏まつりっぷりを、堪能します。
境内には露店とか、ありません。というか、そもそも人があんまりいません。
あるのは、地元の手作り竹製品販売、あるいは手作りまんじゅう類の販売くらいでしょうか。


ちょっとは紅葉まつりっぽい鐘周辺を歩いてから、本堂へ。
署名してから靴を脱いで上がりこみ、じっくりとレアアイテムとご対面です。
堂内撮影禁止のため、以下しばし漆黒で失礼します。


お宝メインは、石清水八幡宮を創建した行教の座像。平安時代製で、重文。
もとは八幡宮の開山堂に安置されてたものですが、明治の廃仏毀釈で存在自体が具合悪くなり、
頭部に烏帽子を釘付けされた上で「還俗」の儀式が行われた、悲運の木像。
他にも、豊臣秀吉坐像や家康の何ちゃらなど、ボランティアの爺さんが解説してくれました。


書院では、茶席が開かれてました。
木津川・宇治川・桂川の三川合流地点を窓から見渡しながら、お茶をいただけるという。
飲もうかとも思いましたが、合流地点ならいつでも見れるので、やめときました。


で、神應寺を辞し、駅前渓谷へ。
境内から延びる山道をちょこっと歩くと、鉄橋が現れます。そこが、駅前渓谷。
鉄橋の上からケーブルの車両込みで眺めても実に凄みがあるんですが、
ここはやはり、渓谷そのものをじっくりと見てもらいましょうか。では4倍のサイズで、どうぞ。


男山橋梁。別名、大杉谷鉄橋。
高さ43mの、トレッスル鉄橋です。ケーブルの鉄橋としては、日本一とか。
ちょうどこの真上で、登りと下りの車輌が離合してます。下に見えるのは、これから行く不動尊の参道。
ちなみに私が子供の頃は、ここよりも下をよく歩きました。参道よりさらに、下。川の中。
砂防ダムみたいなのを這い登り、鉄橋真下の畑みたいなとこを通って、
猿みたいに急斜面の森を抜け、ケーブル山上駅から本殿へ向かう道へ無理やり出るという。


もちろん現在そんなことしたら一発で死ぬので、
おとなしくお不動さんへ向かい、お参りだけ済ませておきます。
正式名称、杉山谷不動尊。空海が不動明王を法力で刻んだのが起源だとか。
本堂奥では、不動明王、そしてはコンガラと制咤迦が、恐ろしい顔でにらみを利かせてます。


こちらのお不動さん、修行用の滝も完備されてます。
本堂から山下へ少し戻ったところから谷へ降りていくと、そこはもうバリバリの、霊場。
「駅前」なのは渓谷だけじゃありません。この霊場も、駅から徒歩10分ほどです。駅前霊場。


霊場には、かなり霊場的ながら、脱衣場が完備されてます。
滝そのものも、プライバシーに配慮された現代人に優しい霊場といえるでしょう。さすが、駅前。
霊各種に対しても優しいのか、脱衣場には「持ち込み」禁止を告げる張り紙、多数。


さっきのデカ写真の下部に写ってた参道を通り、下山。
それにしても、これだけ秘境な写真ばかり並べると、何か八幡が山奥の町に思えてきました。
実際は平野が多いんですけどね。というか、平野の中で唐突に隆起してるから、「男」山なわけで。
「駅前渓谷」やケーブルのあるあたりは、男山も中でも最も「男」な場所にあたります。
男になりたければ、男を磨きたければ、男が欲しければ、皆さんこぞっておいで下さいませ。

客層は、私以外ほぼ全員が中高年。カップル、影も形もありません。
若者は、ニューファミリーが若干いたくらいでしょうか。あとは、子供。小さい子。
というか、そもそも客層がどうとかいうほどの数の客がいません。なのでその分、静かではあります。
正直、神應寺だけを目当てに来て満足できる方は、よっぽどマニアックな方だけでしょうが、
でも、八幡宮参拝のついで+駅前渓谷見物とかなら、結構楽しめるんじゃないかと。
京都市内の観光をやめてまで来てくれとは言いませんが、
紅葉シーズンの混雑に疲れた時など、ふと立ち寄ってみるのもいいかもしれません。

そんな神應寺の紅葉まつり。
好きな人と来たら、より駅前なんでしょう。
でも、ひとりで来ても、駅前です。


【ひとりに向いてる度】
★★★★
人がいないので、浮きようもない。

【条件】
土曜+紅葉盛り過ぎ 13:30~14:20

神應寺
京都府八幡市八幡西高坊24
拝観時間 知らん

京阪電車 八幡市駅下車 徒歩約5分
京阪バス 京阪八幡下車 徒歩約5分

神應寺(じんのうじ) – 八幡市観光協会

神応寺 – 八幡をぶらりゆく

神応寺 – Wikipedia