京都市内の神社で七草粥を食べまくりました。もちろん、ひとりで。

2011年1月7日(金)


京都市内の神社で七草粥を食べまくりました。もちろん、ひとりで。

お粥は、不味い。
貧乏な家庭 or 料理の下手な家庭に育った人間が抱く、固定観念です。
バリバリの貧乏家庭に生まれ、化学調味料を「おふくろの味」として育った私も、
当然ながらバリバリのお粥ヘイター。「こんなもん、ゲと一緒やんか。食えるかっ」と。
幼少時に瀕死の熱病にかかった際も、断固として普通の米飯を要求した記憶があります。
米飯を湯で崩しただけの「おふくろの味」など食ったら、むしろ体と心に悪いと。
実際、お粥は、不味い。少なくとも、ちゃんと作らないと、不味い。
薄味の出汁のセンスや、米の微妙な崩れ加減を見るセンスが要求されるので、
奥が深いというか、下手すると一般的な料理より作るのが難しいものかも知れません。
野趣あふれる野草を7種類も投入する七草粥になれば、その難易度は更に上がるはずです。
人日(じんじつ)の節句である1月7日朝に食べる、七草粥。
芹・薺・御形・繁縷・仏の座・菘・蘿蔔を入れた粥を食べ、一年の無病息災を祈ると共に、
正月の暴飲暴食で疲れた胃腸を休め、青物の栄養も取ってしまおうという風習であります。
特に京都ならではの行事でもありませんが、市内のいくつかの神社では接待を展開。
その気になればお粥の食べ歩きなんてのも、できないことはありません。
本当に普通のお粥を他所で食べる機会はあんまりないですから、
お粥の奥の深さを体感すべく、接待めぐり、七草粥食べまくりをやらかしてみました。
件数が多いので、細かい客層は省略+ダイジェスト風でご覧ください。


まずは松尾大社にやってきました。
時刻は、早朝6:30。早過ぎるという話ですが、松尾大社の七草粥は先着250名限定。
大事をとって、ほぼ徹夜で駆けつけた次第です。健康のためなら、徹夜など軽いものでしょう。
暗いので全然わかりませんが、一帯には雪が残り、もちろん死ぬほど寒いです。
(2012年註・松尾大社の七草粥は2012年度から中止になりました)


七草粥が接待されるのは、鳥居をくぐって右にある、客殿。
靴を脱いで上がり、上がってすぐの部屋で「初穂料」の名目で500円を払います。
6:45の時点でも、室内はかなりの混み。配膳が追いついてない感じでした。
客は、老人か、老人を含む家族連れがほとんど。観光客っぽいテイストの人は、皆無です。


しばし待ってサーブされた、七草粥。
味は、草がすごく、生。そのまま入れたのかと思うくらいに、シャキシャキ感が多大です。
味つけは何もしてない感じでしょうか。付け合せの山椒じゃこと漬物で舌をつなぎ、美味しく頂きます。
ひとりの気まずさは、身内的な雰囲気に間の悪さを感じなければ、特にないでしょう。


早朝の境内は、少ないながらも人は途切れることがありません。
やはり観光客は、皆無。地元の人が毎朝のルーティンという感じで、手際よくお参りしていきます。
「今年から鈴を外す」という初詣案内や、大量の奉納酒などを見てから、松尾大社を退社。
気温1度で凍結寸前の松尾橋を渡り、バス停へ。次は、上賀茂神社です。


で、着きました、朝9時の上賀茂神社。真っ白です。
大晦日に降った雪が、そのまま残ってます。というか、更に上積みされてます。
「君がため 春の野に出でて若菜つむ わが衣手に 雪は降りつつ」 by 光孝天皇。
そんな歌の世界をイメージさせるビジュアルです。こんなヘボな写真じゃ、1%も伝わりませんけど。


七草粥の接待は、二ノ鳥居前、神馬舎の向かいで行われます。
早速食ってもいいんですが、上賀茂神社の七草粥は白馬奏覧神事の一環な感じの扱い。
白馬奏覧神事とは、年始に白馬を見て年中の邪気を祓う宮中儀式・白馬節会に倣った神事で、
どうせならそれを見てから食おうと。白馬はもちろん、右の神馬舎の馬が務めます。


境内も当然、銀世界。きれいさ、伝わらんなあ。
客のメインは、夫婦とも家族連れともつかない中年グループがメイン。
観光テイストは希薄で、地元民の興味本位参加という感じが多し。まあまあ落ち着いた雰囲気です。
そうこうするうちに、神馬舎の白馬が外へ連れ出されました。白馬奏覧神事の始まりです。


白馬は、大勢のギャラリーを引き連れ境内を歩き、本殿内へ。
七草粥が供えられた御神前にて、大豆を与えられる「御馬飼の儀」なるものが行われます。
大豆は冬を象徴し、それを白馬が食べることで、春の訪れを願う意味があるんだとか。
横から見てると、巫女さんが馬に掌を舐めさせてるようにしか見えませんが。


白馬に続いて、我々も食事です。七草粥、500円。
すぐきの漬物がついてます。味は、草を細かく刻んで米と一緒に煮込んだ、普通な感じ。
狭いテントは非常に混んでましたが、単独率が妙に高いので、ひとりの気まずさは意外となし。
ごちそうさまでございました。続いては向かうのは、福王子神社です。


福王子神社。仁和寺の鎮守として知られる神社です。
宇多天皇の母・班子女王の陵墓と伝わる地に立つことから、皇后の霊を篤く祀り、
また、宇多天皇が開いた仁和寺の鎮守神としての役割も果たしてきました。
仁和寺の西、何度かに一度は進行方向を間違えるややこしい五叉路のそばにあります。


こちらの七草粥は、オーソドックスな接待。
整理券を配布し、番号を呼ばれるまでは外で待機。呼ばれると、食堂となる社務所へ入る流れ。
11時半の時点で、もらった整理券は、78番。少ないようですが、境内は待ち人がウロウロしてます。
ちなみにここの接待、無料です。志納制でもなく、完全に無料。ありがたや、ありがたや。


客は老人主体。若い家族連れもいますが、メインは、老人。
近所の仲良しオバちゃんグループが多く、そこへ中高年夫婦が若干混ざる感じでしょうか。
カップルというか、若者はほぼいません。逆に単独男、同志みたいなのは、チラホラといたりして。
30分ほどウロウロしたのち、番号を呼ばれ、食堂へ。


こちらが、福王子神社の七草粥。
味、良いです。無料なのに、すごく良いです。順位つけても意味ないですが、この日、一番。
よく煮込まれ、草の生の感触がなく、しかも普通の野菜とは違う旨味を引き出してます。
軽く焼いた小さい餅が入ってるのが、食感に彩りを添えてて、これまたベリナイス。


添えられてた漬物がまた、美味しいのです。
ほんのり香る柚子の風味が、粥の彩りをさらに豊かなものにしてくれてます。
柚子は、水尾でしょうか。すぐ近所の三宝寺の大根焚きで食べた柚子御飯を、思い出しました。
美味しいお粥は、こんなに美味しいんだ。と、ちょっと感動しながら、次は西院春日神社へ。


やってきました、西院春日神社。七草粥ではなく、若菜かゆ、と。
ここでは接待に先駆けて10時頃、粥を作る火を人力で起こしてるそうです。神事として。凄い。
私が到着したのは、昼の13時。なのでもちろん、その神事を見ることはできません。
というか、接待自体、まだやってるのか。不安になりながら、「下乗」の立て看を抜け、境内へ。


接待、まだやってました。受付で300円払って、粥を頂きます。
味は、福王子と上賀茂の中間くらいでしょうか。小芋の煮物と梅干が付いてました。
客、接待開始時は行列があったそうですが、この時間になると、数はそこそこ。
中年夫婦、子供づれ、老人、以上のメンツ。単独は、女性一名を除いて見かけませんでした。


粥は境内に設置されたテントとテーブルと椅子で食うわけですが、
そこまで巫女さんが配膳してくれる様は、沁みる方には沁みるものがあるかも。
食うだけ食い、この日限定公開の白馬飾りをチラ見してから、神社を辞す。
次は、どこへ行こう。時刻は、13時半。どこの接待も、もうあらかた終わっただろうな。


何も期待せずにやってきた、若一神社。
西院春日神社からは西大路通を南下するだけなので、何となくやってきました。
一応ここも接待はやってますが、時間が時間なので、拝観メインでしばし境内周辺をうろつきます。
右は、市電と道路を怨霊パワーで捻じ曲げさせたことで有名な、平清盛手植えの楠。


清盛の別邸・西八条第があった場所に立つ、若一神社。
境内には最近のものながら、開運出世の象徴として清盛像も鎮座しております。
本殿の近くには、結構大きめの特設授与スペースが作られていて、お守りなどを絶賛販売中。
自転車のお守りいいなとか思ってると、奉仕の人に声をかけられました。接待、あるよと。


で、若一神社の七草粥。無料でございます。ありがたや。
少し草の味が残る煮込み感は、春日神社に近いかなと。手作り感は、福王子に近いかなと。
このあと、「どうぞどうぞ」と、御神酒まで頂きました。もちろん、こちらも無料。これがまた、美味い。
私はいったい、昼間から何をしてるんでしょうか。


客は、何故か、時ならぬ女子会状態。
くっちゃべるOL風二人組と、入れ替わり現われる単独妙齢熟女のみ。若一神社、謎。
時刻は、14時。さすがにもうどこも接待はやってないだろうし、やってても腹がいっぱいなので、
七草粥食べまくり、これにて打ち止め。粥であっても5杯も食うと、しんどんもんです。

神社によって多少客層と客数の変動はありますが、
七草粥にやってくるのはおおむね地元の人間ばっかりです。
といっても、特にディープ全開というわけでもなく、ひたすら淡々とした行事なんですが。
ひとりで赴いて、観光客から不快な目に合うようなことは、多分ないでしょう。
興味のある方やお粥ファンの方は、めぐってみるのもいいんじゃないでしょうか。

そんな七草粥の食べまくり。
好きな人と食べまくったら、よりおかいさんなんでしょう。
でも、ひとりで食べまくっても、おかいさんです。


松尾大社
京都市西京区嵐山宮町3
5:00~18:00
(2012年註・松尾大社の七草粥は2012年度から中止になりました)

阪急電車 松尾駅下車 徒歩約3分
京都市バス or 京都バス 
松尾大社前下車 徒歩約3分

松尾大社 – 公式
松尾大社 – Wikipedia

上賀茂神社(賀茂別雷神社)
京都市北区上賀茂本山339
10:00~16:00

市バス or 京都バス 上賀茂神社前下車すぐ
上賀茂御薗橋下車 徒歩約7分
市営地下鉄 北大路駅 or 北山駅下車 徒歩約25分

上賀茂神社(賀茂別雷神社) – 公式
賀茂別雷神社 – Wikipedia

福王子神社
京都市右京区宇多野福王子町52-6
拝観終日自由

京都市バス 福王子下車すぐ
嵐電 宇多野駅下車 徒歩約5分
JR嵯峨野線 花園駅下車 徒歩約22分

福王子神社 – Wikipedia
福王子神社 – 京都観光Navi

西院春日神社
京都市右京区西院春日町61
拝観終日自由

阪急電車 西院駅下車 徒歩約4分
京都市バス 西大路四条下車 徒歩約4分 
嵐電 西院駅下車 徒歩約6分

京都・西院春日神社 – 公式
西院春日神社 – Wikipedia

若一神社
京都市下京区七条御所ノ内本町98
拝観終日自由

京都市バス 西大路八条下車 徒歩約1分
JR京都線 西大路駅下車 徒歩約5分
阪急電車 西京極駅下車 徒歩約25分

若一神社 – 京都観光Navi