吉祥院六斎念仏を観に行ってきました。もちろん、ひとりで。

2011年4月25日(月)

太鼓曲の演奏
吉祥院天満宮の吉祥院六斎念仏へ行ってきました。もちろん、ひとりで。

六斎念仏。全国的に広く伝承されている念仏踊りの一種です。
元々は仏教の六斎日=8・14・15・23・29・晦日に斎戒謹慎して鬼神の災いを避けてたのが、
いつしか空也上人の踊躍念仏と結びつき、さらにお盆にも結びつき、現在に近い形となったとか。
京都にも六斎念仏はあります。それも、2つの派閥みたいなのがあります。
ひとつは、あくまで念仏に重きを置く、干菜寺系。鉦と太鼓でシンプルに念仏を歌うという。
もう一方は、花の都ならではの芸能華やかな、空也堂系。で、主流は圧倒的に後者。
獅子舞・歌舞伎などの流行芸を取り入れ、原型を止めないほど芸能化した六斎 = 芸能六斎は、
江戸時代、娯楽に飢えた京都西南部の農村を中心に劇的に普及。
で、正に京都の西南にあたる吉祥院は、そんな芸能六斎の一大中心地となりました。
最盛期には8組もの講が夏祭で芸を競い合い、演舞は夜通し、あるいは日が明けても続いたとか。
時代の流れで現在残る講は一つだけとなりましたが、今なお活動は活発であり、伝承を守ってます。
盆の活動が多い六斎念仏ですが、こちら吉祥院は夏に加え春の大祭でも演舞を披露。
で、それに出かけたわけです。

吉祥院天満宮・祭の露店
吉祥院天満宮は、西大路十条を少し西へ行ったあたりにあります。
周囲はビルやマンションだらけで再開発丸出しですが、神社の境内は昔からの風景を維持。
祭の屋台も、そこに集まる人も、実にネイティブな祭の雰囲気です。

吉祥院天満宮・吉祥天女社
このあたりはそもそも、パブリック怨霊ナンバーワンである菅原道真、ご生誕の地。
菅原家の領地であり、道真の父祖が世話になった吉祥天女が天満宮創建以前から祀られてます。
写真奥、露店に隠れてるのが、吉祥天女社です。

吉祥院天満宮・本殿
で、こちらが吉祥院天満宮、本殿。日本最初の天満宮であります。
道真の死後31年目、怨霊パワーに震え上がった朱雀天皇の勅命により、道真生誕の地に建立。
境内には道真公のへその緒を埋めた「胞衣塚」などもあります。
それにしても、正面で善男善女を迎えるウサギ野郎は一体、何なんでしょうか。

謎の白馬と某ファンシー猫電動獅子舞おみくじ
「知恵と能力開発の神様」として信仰を集める本殿前では、謎の白馬と某猫もお出迎え。
ここでは「ハローキティのお守りで運勢のパワーアップを!」てなお守りを売ってるので、
版権的には大丈夫なんでしょうが、奇観ではあります。
右はもっと奇観な、100円入れると電動でミニ獅子舞が踊り狂う、おみくじ販売機。

婦人会の踊りの奉納
六斎念仏が始まる前に、地元の婦人会の方々でしょうか、踊りの奉納があります。
客の数は、特に増えず。六斎開始30分前でも、最前列は楽々取れる感じです。

発願①
20時ジャスト、大太鼓が連打されて六斎、スタートです。最初の演目は、『発願』。
鉦のみの拍子で発願の文「発願巳至心帰命阿弥陀仏」を唱えてから、鉦と太鼓の拍子を打ちます。

発願②
この『発願』の念仏に始まり『回向唄』の念仏で終わるのが、六斎念仏の本来の姿だそうですが、
現在は曲を抜粋した構成になってることが多いそうです。今夜もいわば、ベスト盤仕様。

四つ太鼓①
『発願』に続いては、『四つ太鼓』。
中太鼓四つを枠にはめて舞台中央に据え、子供たちが一人ずつ太鼓を打ち分けていきます。
小さい子から打ち始め、音を途切れさせずに次の者に交代し、年長さんの凄技で締めるという流れ。

四つ太鼓②
六斎を見て最も強烈なインパクトが受けるのが、太鼓の打ち方でしょう。
フレーズを両手に分けて打つということを、基本、しません。
例えば「タンタカタン」というフレーズなら、通常は「右、右左右」と左右にバラけて打つもんですが、
六斎では基本、片手。モタっても、片手。両手を使うときも、左右交互に打つ感じはありません。

四つ太鼓③
普通の打楽器なら最初に注意されそうな世界ですが、六斎では多分、意図的にそうしてます。
1本ブチの際、余った片手を戒めるように首の後ろへ置くくらい、片手重視。
でも上手い人は片手だけでも高速連射を決めたりします。
リズムではなく、笛のメロや歌詞を叩く感じの、トーキングドラム的演奏。無茶苦茶面白いです。

岩見重太郎①
太鼓曲で盛り上がった後は、いよいよ芸能六斎の本領発揮である芸物、『岩見重太郎』。
重太郎のヒヒ退治を演じるのですが、まずは白髪の妖怪変化が現われ、大立ち回りを演じます。
もちろん鉦・太鼓・笛も鳴りまくりです。

岩見重太郎②
妖怪変化が敗れて退散すると、遂にヒヒが登場。
側転で舞台を飛びまわったり、持参したペットボトルの水をこれみよがしの飲み干したり、
暴れすぎて柵を壊したりと、トリックスター的なギミック全開。でも重太郎に成敗され、おしまい。

太鼓曲
続いて行われた太鼓曲。獅子舞の前振りとしての『獅子太鼓』、あるいは別の曲。
『岩見重太郎』を始める前、舞台が大騒ぎになるのを見越して番組表が片付けられたので、
よくわかりません。とにかく、手持ちの中太鼓をトリッキーに叩いて見せてくれます。

獅子舞
で、遂に出ました、獅子舞。
「獅子舞、もう出た?」「獅子舞、まだ?」と、地元の子は獅子舞に興味が集中してます。
二人立ちの獅子舞が地回り・後足立・前足立・獅子返りなどのアクロバティックな曲芸を披露。
時折座り込み、ノミトリの仕草を見せて、笑いを取ったりもします。

土蜘蛛
獅子が眠ってる間に、花道から土蜘蛛、登場。
100%ヒールな雰囲気を放ってますが、一応、善玉です。
獅子 vs 土蜘蛛の演目を持つ六斎は多く、概ね土蜘蛛が善玉ですが、たまに違うこともあります。

獅子 vs 土蜘蛛
で、バトル。土蜘蛛が豪快に蜘蛛の巣を吹き、獅子の負けで公演終了。
約1時間の熱演でありました。

前田のベビーカステラ+舞台
京都の祭りといえば、前田のベビーカステラ。見てるうちに腹が減ったので、買いました。
記念に舞台の2ショットを撮ってると、後から「きっしょ」とか言われました。

人、非常に多いです。特に狭い参道の混雑は、かなり強烈。
境内は広いので無茶な混み方はしませんが、ぼーっとしてるともみくちゃになったりします。
客層は、圧倒的に子供。小中高生。先生らしき人までいて、まるで学校へ来たみたいです。
当然みんな、祭ハイ。六斎で盛り上がるのではなく、祭りそのもの、屋台などの空気でハイ。
タイミング外れの拍手をして勝手に盛り上がる子や、演者の挨拶に「うるさいっ」などという子もいます。
大人ももちろん徹底的な地元モードであり、客の大半が顔見知り。
観光客はおろか、近隣の他所者さえあまりいない感じです。
「うちのおばあちゃん、踊らはるんやって」「あれ、○○○さんがやってはるんやろ」と、
演者のディティールについての超ローカルな会話があちこちで聞こえます。
カップルは、限りなくゼロに近し。子供なしの夫婦でさえ、あまり見かけません。
単独、最前列のカメラ親父を除いて、ほぼなし。若い奴の単独は、絶無に近し。
いわゆる「京都っぽい伝統芸能」を期待すると、徹底的に面食らうこと間違いなしですが、
客の雰囲気も含めてリアルな伝統が味わえることも間違いなしの祭だと思います。

そんな吉祥院天満宮の六斎念仏。
好きな人と見たら、より六斎なんでしょう。
でも、ひとりで見ても、六斎です。

獅子舞逆立ち
【客層】 (客層表記について)
カップル:若干
女性グループ:微量
男性グループ:微量
混成グループ:0
 (高校生までのグループは子供でカウント)
子供:7
中高年夫婦:0
中高年女性グループ:0
中高年団体 or グループ:3
単身女性:0
単身男性:微量

【ひとりに向いてる度】
★★
色気のプレッシャーは皆無。
ただ、ひとりの点でも、他所者の点でも、
間違いなく浮く。
ウロウロすると人にぶつかりまくるので、
貫通行動をしっかりもって臨みたい。

【条件】
平日月曜 19:20~21:15

吉祥院天満宮
京都市南区吉祥院政所町3
参拝昼夜自由
京都市バス 吉祥院天満宮前下車 徒歩4分
JR西大路駅下車 徒歩15分

京都十六社朱印めぐり 吉祥院天満宮

Wikipedia 吉祥院天満宮

本殿のウサギ