城南宮の曲水の宴へ行ってきました。もちろん、ひとりで。

2011年4月29日(金)

曲水の宴
城南宮の曲水の宴へ行ってきました。もちろん、ひとりで。

曲水の宴。
それは平安時代の貴族の間で流行したという、優雅な歌遊び。
烏帽子に狩衣姿の公卿たちと小桂姿の女官たちが、庭園の遣水のほとりに座り、
御所伝来の羽觴なる盃台の酒が流れてくるまでに、出された歌題に沿った歌を詠みけり。
古代中国より伝わり、奈良から平安時代までは無病息災を願う三月上巳の宮中行事であそばされ、
のちには貴族の姫の雛飾りと重なって、3月3日の桃の節句へ発展したのもいとおかし。
そんな雅な宴が、白河上皇院政の地・鳥羽離宮跡地のど真ん中に立つ城南宮には、残ってます。
観光資産化不能で困るぐらい鳥羽離宮が跡形もなく消滅したがゆえに、城南宮の曲水の宴は、
平安の姿のまま現代に至るまでひっそりと動態保存されてきた・・・というわけではありません。
方除の神様として名高いこの神社が、
「昭和の小堀遠州」中根金作による「楽水苑」を造営したのは、昭和36年。
その中の「平安の庭」で行われる現在の曲水の宴は、もちろんそれ以降に再興された行事。
良く言えば新たなる歴史の継承、悪く言えばほとんど単なるコスプレショーですが、
わかりやすく「雅」を具現化したビジュアル、そしてこの日は庭の拝観料が無料になることもあって、
年々人気を高めてます。そんな雅な世界、行ってみました。

境内で一旦整列
地下鉄竹田駅から西へテクテク歩き、宴の始まる14時前に城南宮へ着いた頃には、この状態。
人多過ぎて、会場の平安の庭には直接入れず。境内で一旦整列させられ、裏門から入場します。
さすが拝観無料。じゃなくて、さすが祝日。でもなくて、さすが現代に蘇った雅の世界。

混み過ぎな平安の庭①
ありがたく手渡されたリーフレットの式次第など眺めてるうちに、やっと入れた平安の庭。
あまりにも、あまりにも雅な有様です・・・。

混み過ぎな平安の庭②
鑑賞できる場所そのものがそもそも狭いんですが、
その上に特別席やら来賓席やらを設営してるため、密集率は半端ありません。
後方へ下がり、木へ登ろうとして枝を折りかける奴、多出気味。雅過ぎて、もう帰りたい・・・。

参宴者登場
「今となっては脱出こそ至難の業かと」というトワイニング状態をじっと我慢してると、
水干姿の童子に導かれ、あでやかな平安貴族の衣装に身を包んだ男女の歌人など参宴者が登場。
ここらあたりからカメラ親父たち、大暴れです。

素敵な老後の趣味を見つけたという感じの方々
カメラ親父たちといっても、ちゃんと写真やってる人は無茶なことをしません。
素敵な老後の趣味を見つけたという感じの方々が、割り込みや体当たりや柵&杭へのよじ登り、
来賓席へ無断ではいる、その椅子に土足であがるなどの雅な振る舞いをあそばされます。
この頃宴では、歌人が各々遣水沿いの思い思いの場所に座る「水辺著座」や
歌題を歌人に進める「歌題拝見」が行われてたようですが、全く何もわかりません。

白拍子の舞
白拍子の舞が始まりました。
楽人が楽を奏し今様歌を歌うなか、どこかしか哀しげな表情をしながら舞う、白拍子。
祇王や仏御前の悲しみを再現した形で舞っているのでしょうか。
あるいは「バシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャ
バシャバシャバシャバシャ」と音曲をブチ壊す連写シャッター音に心を痛めてるのでしょうか。

白拍子の舞・モニタを拝借
などと白拍子の心に思いを馳せていると、カメラで視界を遮られました。
しょうがないので、視界を遮ったそのカメラのモニタを拝借して中継鑑賞を続けます。雅です・・・。

流觴曲水・一觴一詠が行われてるはず
白拍子の舞を堪能し尽くしたら、いよいよ歌会の始まりです。
童子が、おしどりをかたどった盃台・羽觴に朱、酒を満たした色塗りの盃を載せて流す「流觴曲水」、
そして歌人が各々最初の羽觴をスルーしてから和歌を詠み短冊に認める「一觴一詠」が行われます。
といっても全然見えないので何が何だかわかりませんが、多分、行われてるはずです。

またしても誰かのモニタを拝借
入れ歯が腐った香りがする素敵なおじさまに視界を塞がれたので、またしても誰かのモニタを拝借。
羽觴が流れ着くまでの時間内に顔色一つ変えず歌を詠むという、
歌心のない者には至難の業である「神酒拝戴」が行われてるような気がします。きっと、そうです。

被講
続いて、詠まれた和歌を朗詠者が朗詠、観衆に披露する「被講」が行われます。
写真は、報道向けにわざわざもう一回「宴」をやり直した模様を撮ったもの。
ですが、カメラ親父が乱入して似たようなことやらかしてても、不思議はありません。

参宴者退場
被講が終われば参宴者は退場、宴は終了でございます。
いろんな意味で、夢うつつなひとときでございました。

人形流し
参観者は、300円ほど払えば、先ほど羽觴を流してた遣水に御祓いの人形を流せます。
巨椋池のほとりにあり、御祓いが盛んだったという城南宮ならではの神事であります。

人形流しの行列
素敵なお年寄りたちは蜘蛛の子を散らすように立ち去り、若めの方々が人形流しに行列。
私もこの1時間でいろいろ邪悪なものを浴びた気がするので、厄祓いしておきます。

平安の庭・段落ちの滝
無料より安いものはないので、普段は入苑料500円が要る庭園もしっかりタダ見していきます。
あちこちに源氏物語に登場する草木100種あまりが植栽された、花の庭でもあります。
写真は、本日の曲水の宴が行われた平安の庭の、段落ちの滝。実に平安です。

室町の庭
日本史上最も優れた作庭が行われた時代である室町時代の石組の手法を用い、
新町通の三井邸から大小600の石を持ち込んで作られたという、室町の庭。実に室町です。

城南離宮の庭
城南宮を囲むように造営された城南離宮をイメージして作られた枯山水庭園・城南離宮の庭。
実に城南離宮です。帰りましょうか・・・。

客層、中高年メインの烏合状態。
夫婦、女性グループ、家族連れ、いずれもいて、特に偏りがない感じ。
カップルは少な目。というか、ほとんど見当たりません。
いても、夫婦と見分けがつかない落ち着いた人たちで、はしゃぐようなことはなし。
観光テイストは希薄で、大半が地元か近隣の人。
ディープサウス全開エリアですがDQNテイストは薄く、市内中心部と変わらない穏やかなテイスト。
単独は、ほとんどがお年寄りカメラマン、というかカメラをもったお年寄り。
まともに宴を見ようと思えば早めに行って場所を確保するべきですが、それはそれで、
後から体を密着されたり、後頭部を望遠レンズで突かれる可能性が発生するので、覚悟はいるかと。

そんな城南宮の曲水の宴。
好きな人と見たら、より雅なんでしょう。
でも、ひとりで見ても、雅です。

白拍子の舞②【客層】 (客層表記について)
カップル:若干
女性グループ:1
男性グループ:0
混成グループ:若干(外人ばっかり)
修学旅行生:0
中高年夫婦:1
中高年女性グループ:2
中高年団体 or グループ:5
 (若めの夫婦、若い子連れも含む)
単身女性:若干
単身男性:1

【ひとりに向いてる度】
★★
色気のプレッシャーはなし。
ただし、人圧とカメラ老人の狼藉が凄過ぎる。

【条件】
祭日金曜 13:30~16:00

城南宮
京都市伏見区中島鳥羽離宮町7
境内参拝自由
神苑拝観 9:00~16:00 (有料)
京都市営地下鉄竹田駅下車 徒歩約15分
京都市バス城南宮下車 徒歩3分 城南宮東口下車 徒歩3分

公式 方除の大社 城南宮

Wikipedia 城南宮

案内看板