伏見十石舟と、酒蔵通り伏見灯ろうのライトアップへ行ってきました。もちろん、ひとりで。

2011年8月3日(水)


伏見十石舟と、酒蔵通り伏見灯ろうのライトアップへ行ってきました。もちろん、ひとりで。

伏見。
海が無い都・京都にあって、江戸期、港の役割を担った元・港町です。
現在は干拓された巨大湖・巨椋池、それと一体化したほとんど宇治川に面し、
京都へは高瀬川、大阪および瀬戸内海には淀川で繋がってた、水上交通の一大ターミナル・伏見港。
半分以上発狂して明征服を目指した秀吉が、伏見城を築城したことで城下町として整備され、
江戸時代に入ると、伏見城はぶっ潰されたものの、京阪間の経済都市として発展。
明治維新に至るまで、十石舟・三十石舟・伏見舟などが川の上を活発に往来してたわけですが、
しかし幕末、ややこしい奴らが現れ、血ぃパッパ。さらに、鳥羽伏見の戦いにより市街地、全焼。
命の綱の舟運も、京阪間に省線の鉄道(現在の東海道本線)が開通したことで、大打撃。
明治末までは蒸気船を走らせて頑張りましたが、おけいはんが伏見経由で開通して、絶滅。
「不死身」の街として起死回生をはかる伏見は、「伏見の酒」で知られる酒造で盛り返します。
また、陸軍演習場も誘致。鉄っちゃんご存知の無橋脚トラス橋「澱川橋梁」なんかも、誕生。
現在では京都・大阪・奈良へのアクセシビリティが活き、市内有数の人口増加率を誇示、
「港町」としての顔は、すっかり過去のものとなりました。
が、風情は今でもあちこちに残っていて、その代表格が、街の川を走る観光舟・伏見十石舟。
そして、その風情を酒蔵のビジュアルと共に夜も楽しもうと言うのが、
夏季恒例・十石舟の夕涼みライトアップ運行と、酒蔵通り伏見灯ろうライトアップであります。


十石舟には、月桂冠大倉記念館裏にある弁天橋のふもとから、乗り込みます。
場所は、どう説明すればいいんでしょう。長建寺の前、川に出張った畳屋の向かい、とかでしょうか。
とにかく「宇治川派流」って書いてある川の近くをウロウロしてたら、多分、そのうち、着きます。


川辺にある受付へ言って、乗船料1000円を払い、さっそく十石舟へ乗り込みます。
写真は、舟の中から見た乗船口。私が乗った便には他に客はなし。
一応「出ますか?」と訊いたんですが、一人でも普通に出航するそうです。


船内。十石ゆえ、ちっちゃいですね。完全なる貸切ですが、ちっちゃく見えます。
「重心が変わるから、航行中の席の移動は勘弁」「船頭の目がやられるから、フラッシュは勘弁」
というような注意を受けてから、19時半、二人の船頭さんにより十石舟は出航します。


テープによる案内を聞きながら、柳が全く見えない夜の宇治川派流を進みます。
滑走路のような配置のライトが美しいですが、写真を撮るにはいかんせん、航速が速い。
揺れはさほどないものの、手持ちの安カメラでは撮影がかなり困難です。


琵琶湖疎水と宇治川派流の合流点、いや分岐点の上にかかる「伏見であい橋」をくぐり、
旧高瀬川をまきこみながら港を目指す、十石舟。
えと、琵琶湖疎水って、あの琵琶湖疎水です。ここまで流れてるんですね。
高瀬川も、もちろんあの高瀬舟の高瀬川です。昔の原型はほとんどありませんけどね。


で、最近リニューアルされたという三栖閘門に到着です。
ここで一度下船し、三栖閘門資料館なるスポットを見学するという流れになってます。


閘門。水位の異なる水路の間で、船を上下させるための装置です。
大正時代、治水のため河川の改修工事をしたことで、伏見港と宇治川の間を船が通れなくなり、
その不便を解消するため、昭和4年、三栖閘門は作られました。
昭和4年といえば、京阪も既に開通してるので、全然使われなかったんじゃないかと思いきや、
最初の年は20000隻も船が通ったそうです。が、もちろん、その後はひたすら衰退あるのみ。


現在はこのあたり一帯、伏見港公園として整備されてます。
私は近所の人間なので、この辺、昼間にちょこちょこ来たことあるんですよね・・・。
20分ほど見学時間が設定されてますが、早く帰るならその旨を告げ、早めに出航してもらえます。
もちろん、私は「巻き」で帰ることにしました。


19時50分、三栖閘門を出発。もと来た水路を帰ります。
壕川上で大きくターンを決める、独男だけを乗せた十石舟。
橋の上から時折聞こえてくる、日常そのものの話声や車の音が、妙に心地よく聞こえます。


宇治川派流へ入り、今一度、誘導路ライトアップを拝観。美しい。
ただ、完全に日が暮れたので、日中なら定番ビジュアルである酒蔵が、、影も形もありません。


「巻き」を頼んだからか、猛スピードで走り始めた十石舟。
いや、もちろん嘘です。光量が全然無いので流れまくってるだけです。それくらい、暗い。


で、20時過ぎ、出発点の弁天橋へ帰着。30分強の舟旅でございました。
やはり物凄い暴走状態みたいな絵になってますが、実際はのんびり航行ですから、ご心配なく。


舟を降りたあとは、酒蔵通りのライトアップを楽しみます。
酒を呑みたくなる幻想的な雰囲気あふれる、大倉家本宅の遠見遮断付近。


酒を呑みたくなる幻想的な雰囲気あふれる、黄桜・麦酒工房付近。


酒を呑みたくなる幻想的な雰囲気あふれる、神聖鳥せいちゃん本店付近。


酒を呑みたくなる幻想的な雰囲気あふれる、月桂冠大倉記念館付近。


酒を呑みたくなる幻想的な雰囲気あふれる、月の蔵人前、
そして酒を呑みたくなる幻想的な雰囲気あふれる、自転車。
実はこの辺の酒蔵通り、むしろライトアップがない普段の夜の方が、良い雰囲気なんですけどね。


で、寺田屋は、ライトアップ不参加。夜間営業も、特にしてる気配はありません。
隣接する龍馬通り商店街も、ライトアップはおろか開いてる店さえほとんどありませんでした。

客層は、十石舟については上記の通り、貸切状態。
ただし、すれ違った前便の舟には家族連れが乗ってました。
酒蔵通りライトアップは、親子連れ一組とグループ一組、あとは通行人の立ち寄り。
一応観光地ではあるんですが、夜は帰宅を急ぐ人と車が特に多し。完全に生活道路と化してます。
ぼんやり写真なんか撮ってると、轢き殺されるかも知れないので、ご注意下さい。

そんな伏見十石舟夕涼みライトアップ運行と、酒蔵通り伏見灯ろうライトアップ。
好きな人と見たら、より伏見なんでしょう。
でも、ひとりで見ても、伏見です。

【ひとりに向いてる度】
★★★★
プレッシャーの類は、一切なし。
ただ、舟は昼に乗った方がいいかも知れない。

伏見十石舟+
酒蔵通り伏見灯ろうライライトアップ

毎年8月上旬~中旬に運行+開催
 (2012年度より事業は伏見観光協会へ移管、
                 詳細は同協会HPへ)

京阪電車 中書島駅下車 徒歩約5分
近鉄電車 桃山御陵前駅下車 徒歩約12分
JR奈良線 桃山駅下車 徒歩約20分

公式 – NPO法人伏見観光協会
伏見観光協会 – 十石舟・三十石船のご案内

三栖閘門 公式 – 三栖閘門資料館 公式サイト