壬生寺の六斎念仏を観に行って来ました。もちろん、ひとりで。

2011年8月9日(火)


壬生寺の六斎念仏を観に行って来ました。もちろん、ひとりで。

壬生寺で民俗芸能といえば、真っ先に思い浮かぶのは、壬生狂言。
ですが、壬生狂言保存会とは別に、六斎念仏の保存会も存在し、活発に活動をしています。
もともとは六斎日に念仏を修する信仰行事だったものが、
町人文化の開花した江戸中期の京都に於いて急激に芸能化して現在の形になった、六斎念仏。
芸の基本こそ鉦と太鼓に置きながらも、先端の芸能が集約される京都にあっては、
当時流行していた長唄や地唄、歌舞伎の曲や振りなどに影響受けまくり&貪欲に取り入れまくり。
民衆の人気は果てしなくあがり、幕末の頃には狂言をとりこむ講中まで現われたといいます。
壬生狂言のホーム・壬生寺の壬生六斎も、狂言の『土蜘蛛』をしっかり六斎へ移入。
祇園祭の綾傘鉾に奉仕してきた伝統から、棒振も六斎化して「祇園囃子」の入れ事として導入。
また、「獅子舞を土蜘蛛と絡ませる」という、現在の六斎の王道展開は、
壬生六斎が伊勢太神楽から移入したのではないかとも言われてます。
そんな壬生六斎がホームグラウンドで奉納されるのが、万灯会の最初の夜・精霊迎え火。
ステージは、本堂前の特設舞台。バックには、千に近い数の壁のごとき行灯、そして千体仏塔。
ほとんど異次元状態の舞台を背に、圧巻のパフォーマンスが展開されました。


何をするにもまずは、腹ごしらえであります。
四条大宮近くの、伝説のラーメン屋・珍元にて並450円也。安い、安過ぎる。
伊丹十三が『タンポポ』を撮る時に取材に来たことで有名な店。もちろん、サインもあります。
初代珍遊の系列である背油醤油、そして多目の生姜が、ディープでナイス。
餃子250円とライス150円もあわせて食い切り、準備は万全です。


万灯供養会を開催中の壬生寺、表門。そして、眩しく輝く「壬生延命地蔵尊」の文字。
普段は17時くらいで門が閉まる壬生寺ですが、8月9日から16日までの盂蘭盆の間は、夜間営業。
本堂前面へ壁のように灯篭が並ぶ万灯供養会や、精霊迎えに、多くの善男善女が集まります。
あ、夜間営業といっても、拝観は無料ですよ。


19:30ごろの境内。「六斎キッズ」なる子供たちによる六斎発表会が行なわれてました。
六斎のステージ、もともとは本堂でやってたそうですが、火事&再建で現在の特設ものになったとか。
雨が降った場合は、壬生寺会館の2階、狂言堂の向かいで上演されます。
壬生寺会館の1階は、壬生寺保育園。グレゴリ青山が、砂場で仏像見つけたりしてたところですね。


壬生寺といえば、新撰組。しかし、今夜の主役はあくまで六斎です。
壬生塚や壬生寺歴史資料室など、新撰組絡みの施設はこの時間、一切クローズであります。
隊士の墓参りのついでに六斎も見ていこうとか思ってる方は、ご注意を。


出ました。本堂前面を全面的に埋め尽くす、灯籠。
六斎は、この「光の壁」をバックに上演されます。まるで、ピンク・フロイドの『ザ・ウォール』です。
といっても、こちらはラスト直前に壁が崩れるわけではありませんので、あしからず。
灯籠の光源は、LEDを使用。どうでもいいですが、デジカメで撮ると妙に、緑がかります。


千体仏塔には、お盆ということで霊が降りてます(嘘)。ピンボケではありません、来てます(嘘)。
パゴタ風のこの仏塔は、京都でそこら中から掘り出された仏を、まとめて安置したもの。
それこそ「子供が砂場で遊んでても仏像が出てくる」街ですから、まだまだ出てくるでしょう。
中には、室町時代のブツも混じってるとか。霊を呼んでも、不思議がないというものです(嘘)。


20時ジャスト、そんな霊気過剰の千体仏塔に見守られながら、六斎念仏、スタートです。
ホームグラウンド公演ですから、もちろん全曲通しで演じる「一山打ち」であります。
まずは、『発願』。六斎念仏本来の念仏を唱えます。発願已至心帰命阿弥陀仏 南無阿弥陀仏。


続いて、『願人坊主』。お参りの代行みたいなことやってる乞食坊主を描いたもの。
坊主の格好をしてますが、金と色に目がない連中のコミカルな動きが楽しめます。
江戸に多数実在したという願人坊主、上京して遊び呆ける彼らを皮肉るだけでなく、
京都の偉そうな坊さんへの皮肉の意味でも演目に加わったんでしょうか。


出ました、『四つ太鼓』。
演る方には練習の入口だそうですが、見る者にとっては最もエキサイティングな演目のひとつです。
巧みさや激しさはもちろん、太鼓の叩き方、あるいは太鼓の認識みたいなのが、面白いというか。
あの片手を頭の後ろに置いて叩く「一本ぶち」というのは、一体、何なんでしょうか。
どう考えても両手で交互に叩いた方が効率的で体にもいいフレーズを、片手だけで叩き切るという。
リズムというより言語、あるいは歌、というかずばり念仏。不思議な太鼓です。


『四つ太鼓』でヒートアップした場を、さらに上げまくる『祇園囃子』。
祇園祭のお囃子を六斎化し、途中に「入れ事」として各種芸能を盛り込んだ演目です。
激しい太鼓バトルののち、棒振りが乱入、暴れまわるかのようにそこら中で棒を振り回します。


棒振りも凄いですが、太鼓のおじさんたちも大熱狂。動きが激しく、写真、ブレまくり。
ちなみに壬生六斎は、昔から傘鉾のお囃子を奉仕し、現在も綾傘鉾に棒振りとお囃子で参加。
そう、山鉾巡行とかで時々立ち止まって棒振りを披露してるの、この壬生六斎の人達です。


騒乱状態から一転して、渋い男たちが渋い太鼓を聴かせる『海士』。
藤原不比等との間に出来た子供を、大臣に取り立ててやるといわれ、
そのために奪われた名宝を竜宮へ奪還しに行く海士(海女)の物語を、太鼓で切々と語ります。


ラストはもちろん、『獅子舞』です。前奏曲である『太鼓獅子』ののち、獅子舞登場。
碁盤をグラグラ言わせながら、光の壁をバックに見事な逆立ちを決めてくれます。


獅子舞が出れば、もちろん土蜘蛛だって出てきます。
盛大に糸を吹きまくり、大団円。ここの六斎は、どっちが善玉でどっちが悪玉なんでしたっけ。

客層は、完全に地元メインです。
普段着でやってきた家族連れや近所風の人が、大半。観光客っぽい人間は、ほとんどいません。
カップルは少なめ。いても、地元風。他の属性の若者はおおむね、そんなテイスト。
実にネイティブなテイストあふれる公演です。
逆にディープな人がいっぱいということもなく、新撰組系な人もあまり見かけません。
単独は、カメラマンと物好き風の男が若干と、やはり近所風の女性が微量。

そんな、壬生寺の六斎念仏。
好きな人と観たら、より六斎なんでしょう。
でも、ひとりで観ても、六斎です。


【客層】 (客層表記について)
カップル:1(地元系)
女性グループ:1(地元系)
男性グループ:若干
混成グループ:1(地元系)
修学旅行生:0
中高年夫婦:1(地元系)
中高年女性グループ:1(地元系)
中高年団体 or グループ:4(地元系)
単身女性:若干
単身男性:1(カメラマン、好き者)

【ひとりに向いてる度】
★★★★
プレッシャーもアウェー感も、さほどなし。
境内が広いため混雑もあまりなく、
じっくりと六斎が楽しめる。

【条件】
平日火曜 19:30~21:30

壬生寺
京都市中京区坊城仏光寺北入る
通常拝観 8:00~17:00
万燈会期間中は21:30頃まで

阪急電車 大宮駅下車 徒歩約7分
嵐電 四条大宮下車 徒歩約7分
京都市バス 壬生寺道下車 徒歩2分

壬生六斎 公式 – 壬生六斎念仏講中
壬生村 壬生六斎ページ – 壬生六斎念仏踊り

壬生寺 公式 – 壬生寺